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海洋をめぐる‘せめぎあい’と日本の「新たな海洋立国の実現」 [2019年03月26日(Tue)]
笹川平和財団勤務の最後に20余年にわたる海洋ガバナンスの取組みを本にまとめて出版しようと取り組んでいることは本ブログでも紹介してきた(本ブログ1月16日、3月2日参照)…が、書いているといろいろな出来事がよみがえってきて時間がかかっている。

そのひとつに、200カイリを超えるわが国の大陸棚についてその限界に関する情報を「大陸棚限界委員会」に2009年5月までに提出しなければならないのに誰が責任を持って対処すべきか明らかでないまま調査が進まなかった時に、日本財団が2002年に発表した「海洋と日本 21世紀におけるわが国の海洋政策に関する提言」がきっかけとなって内閣官房に「大陸棚調査対策室」が設置されて調査が進み、無事「大陸棚限界委員会」に情報を提出できたことがあった。

この関係で「大陸棚限界委員会」について書いた海洋政策ブログを探していたら2009年8月7日のブログ「テレビ東京の「海の日」番組で言いたかったこと」にぶつかった。

思い返すと、2009年7月20日の「海の日」に、テレビ東京が「ワールドビジネスサテライト」で、海の日にまつわる話題として海をめぐる国際協調や国同士のせめぎあいについて取り上げたいということで、1時間ほどのインタビューを受け、海底資源開発の戦略、アメリカの国連海洋法条約批准の動きとその影響、今後、世界で日本が果たすべき役割などの質問に日頃思っていることを述べたが、番組ではその一部しか放映されなかった。

そこで、あらためて、「海をめぐる’せめぎあい’と日本の新たな海洋立国の実現」に焦点を当てて、思いの一端を述べたのがこのブログである。10年も前のブログだが、それらは、私が常々考えてきたことで、現在でも十分に通用すると思うのでその一部を改めて紹介してみたい。

「最近の海をめぐる‘せめぎあい’の実体は、海洋管理をめぐる新しい国際ルールの下での‘競争’と‘協調’であると考える。

1994年に、広大な海洋に関する法秩序の枠組みとルールを包括的に定める国連海洋法条約が発効した。これによって、領海幅が12カイリに統一され、距岸200カイリに沿岸国の管轄権が及ぶ排他的経済水域(EEZ)・大陸棚が設定され、地球の表面の70%を占める広大な海洋の4割がいずれかの国の管轄下に入った。

しかし、国連海洋法条約による新たな海洋の法秩序が確立するためには、まだまだいろいろな取組みが必要である。中でも、海洋の線引き、即ち各国の管轄海域の画定(=確定)はその大前提となる。

問題は、日本の200カイリ水域は中国大陸沿岸にまで伸び、中国大陸の大陸棚は南西諸島の一部を越えて太平洋側に伸びるというように、各国のEEZ・大陸棚が大きく重複しているケースが多いことである。重複する海域の境界の画定は、当事国間で、衡平な解決を達成するために、国際法に基づいて合意により行う、と条約は定めている。このため協議が必要となるが、これには資源等の問題も絡んでおり、各国間の‘せめぎあい’が起こる。

わが国は、管轄海域が周辺の7つの国・地域(ロシア、北朝鮮、韓国、中国、台湾、フィリピン、アメリカ)と重複しており、これらと境界を画定する必要があるが、その交渉は、進んでいない。

わが国は、目下、大陸棚限界委員会にわが国の200カイリを越える大陸棚の延長審査を申請しており、その対応に注力しているが、それとともにEEZ・大陸棚の周辺国との境界画定についても、当事国間での粘り強い交渉、条約が定める紛争解決手続き(国際司法裁判所等への付託等)の活用、さらには、多国間での境界画定基準の協議の提案などにより、積極的にこれに取り組んでいくことが重要である。

一方、広大な海洋空間は水に覆われていて一体性が強く、海洋の問題は、相互に密接な関連を有している。例えば、各国が海洋上に境界線を引いても環境汚染や生物資源はそれにお構いなく移動し、また、海賊は各国の境界線を警察の追及を逃れる手段として利用する。したがって、海洋の管理には各国間あるいは国際社会の協調・協力が不可欠である。

わが国は、2007年に海洋基本法を制定し、内閣に総合海洋政策本部(本部長:内閣総理大臣)を設置し、海洋基本計画を策定して、新たな海洋秩序の下で総合的に海洋の問題に取り組む体制を整備した。その目指すところは、国際的協調の下に、海洋の平和的かつ積極的な開発・利用と海洋環境の保全との調和を図る「新たな海洋立国の実現」である。

わが国は、この海洋基本法の枠組み・取組み体制を最大限に活用して、世界で6番目に広大なわが国の海域の開発・利用・保全・管理に鋭意取り組むとともに、そこで培った科学技術、ノウハウを活用して国際的協調をリードし、国際協力を推進する海洋外交を積極的に展開して、「新たな海洋立国の実現」に努めるべきである。」

なお、我が国大陸棚の延長に関する情報の委員会への提出については本ブログ2008年12月3日、それに対する委員会の勧告については本ブログ2012年5月2日で取り上げているので、関心のある方はそちらも合わせて参照ください。


Posted by 寺島紘士 at 22:09
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