空外(くうがい)上人のドキュメンタリー映画・DVD『無二的人間・空外書道の世界』を見ました。
以前より、尊敬する人生の先輩から空外上人のお名前を聞いていました。昨年の暮れに京都旅行が決まったとき、ネットで空外上人のことを調べてみました。すると、尊敬する久米さんが空外上人のことをブログで書かれていらっしゃたのです。不思議なご縁を感じました。
経営者会報ブログ・久米繊維工業株式会社 『空外記念館で今岡昭雄さんに山本空外上人の素顔を教わる縁起』私もすぐに、
DVDと本をネットで注文しました。ネットに在庫数が出ていました。本は834冊、DVDは83冊(2007年1月8日)です。
・『空外の生涯と思想 KUGAI,THE GREAT BUDDHIST,PHILOSOPHER,AND ARTIST』 龍飛水著(A4 602頁 2003年8月刊行)
・空外上人の記録映画DVD 『無二的人間・空外書道の世界』
空外上人は、京都
知恩寺で永眠されています。京都旅行の前に是非ともDVDを見たかったのですが、かないませんでした。
今日、ゆっくりDVDを見ました。DVDは、2時間くらいでしょうか。まるで今そこに生きていらっしゃるかのように、空外上人が語ってくださいます。
山本空外上人の略暦を簡単にまとめてみます。
明治35年(1902年)広島県生まれ。旧制松山高校から東京帝国大学へ。ギリシャ哲学を専攻。卒業後は、広島文理科大学で教鞭をとる。昭和4年から、ヨーロッパに留学し、ハイデッカー、ヤスパース、フッサール、サルトル、ピカソなどと昵懇。
原爆投下のとき広島で被爆し「生き地獄」を目前にする。教え子を亡くす。昭和二十年の秋に京都の智恩院で「得度(とくど)式」をする。その後、出雲の隆法寺(りゅうほうじ)の住職となる。その後請われて、愛媛大学教授、広島大学教授に復職し、合間を縫って、各地で念仏の指導をした。
湯川秀樹博士も私淑し、現在は空外上人の隣で永眠されている。
英語、ドイツ語、フランス語、古代ギリシャ語、ヘブライ語、中国語、梵語(サンスクリット)、パーリー語、などにも精通した語学の天才。
書家としても著名。レーガン大統領が来日の際、空外上人の書を希望したという。
平成13年(2001年)保寿100歳にて遷化(永眠)。
空外上人の「無二的人間」については、『空外の生涯と思想』に語りとして記されていますので、抜粋して引用します。
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■無二的無二的の二というのは仏教用語で「能取」と「所取」のことで、簡単に言えば自分と相手。この
双方が対立せず、自分も楽しいし相手を喜ぶという状態が、「無二的」です。自分勝手をせず相手を生かす。そうすれば自分にも満足のいく仕事ができるのです。
「弘法筆を選ばず」という言葉は、どんな悪い筆でも弘法大師は上手に書くと解釈されているが、それは誤り。筆と紙、紙と墨、墨とすずりにはすべて相性があり、それぞれを生かし合ってこそ真価が発揮される。「筆を選ばず」は逆に「生かす」という意味です。
法然上人の『選択(せんちゃく)集』には、ちゃんと「筆を選ぶ」となっている。選ぶ、は自由ということでもある。自由はもちろん自分勝手ではないし、選ぶには知恵も必要。つまり広い考えで相手のためを思い、そして自分を喜ぶ境地が説かれている。
人間は、自分なりの自分にしかできない仕事をすべきで、だれもがそうすれば、世の中の文化は目覚しいものになるに違いない。光としてその人の心を照らすものがあれば、その人の人生も開けてくるのではないでしょうか。
相手は、人間のときもあれば、国の場合もあり、物、道具、機械のときもあるが、その相手を生かしきっていくのは、自分の心の深さによるほかはない。そうして
相手を生かし、自分の働きも実るのを「無二的」というのです。
■言葉は心の声「南無阿弥陀仏、ナムアミダブツ」と称えるのはなんだか口先だけのようですが、そうではない。人間で大事なのは心であり、言葉は心の生の声なのです。
■「おかげ」は阿弥陀さん私たちは寝ていても自分の吸う空気を心配することはないし、心臓を自分の力で動かしているわけでもありません。みな「おかげ」によって空気も吸えるし、心臓も動くのですが、その「おかげ」のことを「阿弥陀」さんというのです。
その中身を、別の言葉で「自然」といってもいいし、あるいは「大自然」と言ってもいい。
私たちは大自然とのつながりのなかで生かされているのです。
私たちにしても生まれてくるまでに何十億年もかかっているのです。お父さんお母さんがおられないと、あなたは生まれてこない。そして、おじいさん、おばあさんがおられなければ、お父さんもお母さんも生まれてこられなかった。そういうふうに考えますと、何十億年もたっている。地球が回りだしてからでも四十六億年ですが、命のつながりはそれ以前までさかのぼれるのです。
しかも、途中で何か一つ欠けても、今の私たちは生きてはいなかった。
いま生きられる「おかげ」にみんなつながっているのです。それを
縁起というのですね。お釈迦さまがお悟りになったのは縁起です。
人のあるべき生き方を簡単に言えば
「自分を大事にする」ということです。お金や地位のために自分をごまかしたりするのは社会のためにも感心しませんが、何よりも本人にとって意味がない。せっかく生まれてきて才能もあるのに、それを無駄にして人さまにも迷惑をかける。
本来、だれもが自分勝手なことをしないで相手を尊重し、損だ得だと腹を立てたり喧嘩などをせず、みんな助け合って楽しく日々を過ごす。
きょうはきょう、明日は明日で自分の力いっぱいの仕事ができる。つまり満点の生活が南無阿弥陀仏と命の杖をついていればできるのです。
まさに人生の秘訣は念仏にあり、と言えるでしょう。
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空外上人は、自らの思想を集大成した
空外記念館を、島根県雲南市加茂町に1989年に建築されています。運営は、財団法人空外記念館。空外上人の思想と教えを永遠に伝えたいという、帰依者の皆さんの熱望で実現しました。
この記念館は素晴らしい建物です。千年もつように、鉄釘を1本も使わっていない木組みの木造。壁は土や漆喰で、屋根は世界で初めてチタン合金を使っているとのことです。
「心の荒廃が進んで、人間の主体性がますます失われがちな世相の中で、人々が自分なりの人生を全うする生き方を考えてもらうよすがとなれば幸いです」と空外上人は語っています。
機会を作って、空外記念館に是非行きたいと思います。そこで、自分を見つめなおしてみたい、そう思います。そのときは何を思っているのか、今から楽しみです。
素晴らしい空外上人に出会えることができた偉大なるご縁に、心から感謝いたします。ありがとうございます。南無阿弥陀仏。
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