「国家権力無き国」日本 [2012年04月13日(Fri)]
『日本/権力構造の謎」(早川書店)の名著を書いたカレル・ヴァン・ウォフレンが『日本を追い込む5つの罠』(角川書店、236頁、940円、20 12年)を出版した。
5つの罠とは、 @TPPへの参加はアメリカの謀略 A「財政緊縮論」の誤り B「脱原子力発電」を阻止しようとする危険な権力 C沖縄には国家が無く、それで苦しむ D無気力な日本人である。 いずれも具体的な分析があり、面白い。 全体を通して、私が感心したのは「一体、権力の実態とはどこに存在するのか?日本の国家権力は形式的・法的に言えば、権力の中枢は政府であり、その軸は内閣だ。ところが実はここがもぬけの殻になっている」という分析だ。 ウォフレンは、日本のことを「国家無き国」といっている。私は日本の国家権力の実態に関心を持っているが、ウロフレンの主張が最も真実に近いと思う。 彼は具他入れを上げて説明している。鳩山元首相の沖縄問題についての対処についてつぎのように言っている。 鳩山元首相はアメリカとの対等な同盟関係を築くこと、そして、中国との関係を大切にする東アジアとアメリカとの三角形を構想した。これが、アメリカにとっては日本の自主外交・自立を意味するものであり、気に食わなかった。 「私が記憶するかぎり鳩山氏は少なくとも三度にわたって、将来の日米関係について、そして東アジア地域の安定促進のための諸策について、膝をつきあわせて真剣に論じようオバマ大統領に面会を求めた。ところがそれはすげなく拒絶された。」 なぜ拒絶されたのか?拒絶させるような装置が働いていたからだ。外務省や防衛省の公式ルート、また、非公式のルートで鳩山元首相をバックアップせず「危険人物」のレッテルを貼ったのだ。ウォルフレンによれば、「アメリカ政府のスポークスマンの中には、鳩山氏は民主党内の内輪もめの解決にアメリカ大統領を利用するつもりか」という発言をした者もいたらしい、と指摘している。こういうことは日本側からの情報だ。 一事が万事、このような調子だから、政府、そして内閣の代表としての総理大臣は実質的な権限を剥奪されているわけだ。ここに「国家権力無き国」としての日本がある。 国家権力が無い、ということは個人にたとえれば頭がない、判断中枢機能がないということですから問題は深刻だ。 ウォフレンは、日本人が真剣に考えなければならない課題を鋭く提起してくれている。 |
Posted by
田中尚輝
at 04:23