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書評『悪の遺伝子』(バーバラ・オークレイ) [2010年12月12日(Sun)]
『悪の遺伝子』(バーバラ・オークレイ、訳・酒井武志、イースト・プレス、2009年)を読んだ。

 本書の問題意識は面白い視点なのだが、研究とロジックが追い付いておらず、本としては失敗作だ。

 私が本書を手にとったのは、「悪」が遺伝する、というところだ。著者は「悪」になる要素の大きい精神病の遺伝子を受けている者が、その傾向を親の育て方や自身の生活の仕方によってより増大させているというのが結論である。

 例示としてでてくるヒットラーは、十数種類の病気や障害をかかえていたと考えられている。≪自己愛性パーソナリティ障害、境界性パーソナリティ障害、反社会性パーソナリティ障害、統合失調症、精神病質、梅毒、嗜眠性脳炎、パラグアイ、悪性ナルシズム、モラル欠如、パーキンソン病、さらには「弱く未発達な自我」「破壊主義的で被害妄想をいだいた預言者」、「生来の左脳の弱点によって、右脳が思考と行動に強い影響力を及ぼしていた」といった評価もあるし、意外なことに、兄弟どうしの確執が影響を与えたという説まである。≫

 以上のような提示があり、スターリンやポル・ポト、毛沢東などがでてくる。しかし、伝記作家の言葉を引用しているだけで深い突っ込みはなく終わる。

 また、時折、以下のような紹介がある。≪VAL遺伝子が二つある人々はきわめて記憶力がよいことがわかっている。実のところ、VALが二つある場合の記憶への影響は、これまで研究された他のどの要因よりも強いようである。≫

 ところが、≪そうした人々が神経症にかかる割合が大きい。不安、暗い気分、敵意といったものを否定的にとらえる傾向が強くなるからだ。これもまた、単一の遺伝子が複数の効果を持つという多面発言の一例である。≫

 こういう発言も、いくつかある。≪ふつうの家庭で育った殺人者は、虐待を受けて育った殺人者よりも右前頭皮質の機能が低い。おそらく、「暴力に向けて心理学的には後押しをされない殺人者らは、神経生物学的に後押しされて殺人を起こす」のだろう。≫

 そして、このような人は遺伝子上の何番の染色体の欠損がある、また、これは脳のどの部分の機能に該当する、という論理展開だ。大変に興味あるある展開であり、多分正しい類推なのだろうが、本にするときには、その証明らしき論理展開が欲しい。残念だ。

 著者は、「境界性パーソナリティ障害」に関心を持っている。これはいろんなパターンがあって、「非常に衝動的で、感情の起伏が激しく、そのため対人関係がいつも不安定」「その結果として、衝動的な暴力や迷惑行為、性的誘惑などを繰り返したり、自殺を企てたり、自分を傷つけたりする行動を続け」るということだ。

 そして、この「境界性パーソナリティ障害」を持つ人物として毛沢東を例示し、「悪魔に魅入れられた男」として解説している。かつ、著者は毛沢東は「自己愛性パーソナリティ障害」も併発していたという。

 毛沢東は、未だ中国では否定されていない。ロシアのスターリンのようには。だが、何千万人にかの中国人を殺したり、「紅衛兵」の動きをつくったり、最後の妻である江青との関係をみると頷けなくはない。

 このように精神障害が一定の遺伝性があるのは事実であり、それが多分の脳の働きと関係しているのであろう。こうした分野からの研究が進むことは嬉しいが、問題は、こうした精神障害者になぜ多くの人が支配されてしまうのか、ということに私の関心はある。

 たしかに、ヒットラーやスターリンや毛沢東は何らかの精神障害があったとしか考えられない。だが、彼らの育ちの中で「悪」の部分が増幅されたわけで、これを途中で阻止できなかったのか、ということも研究対象にして欲しい。
Posted by 田中尚輝 at 13:03
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