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織田正昭先生より [2007年04月09日(Mon)]
応援メッセージをいただいておりますので、ご紹介します。


私は、機会あって龍の子学園の運動会を見学させていただいたことがあります。子どもたちが音のない世界でまるで背中にも目があるかのごとくあらゆる方向に自由に動いている姿を見て、実に驚きました。龍の子学園の学校法人設立に向けたプロジェクトが立ち上げるに当たり、継続的な教育支援になるよう、行政、民間団体、そして学会(学者)が連携していくことが重要だと思います。そして願わくば、ろう児に留まらず様々な子どもの教育活動にもひろがっていく大きなきっかけになればと思うばかりです。

織田正昭 先生
東京大学 大学院医学系研究科教官 発達医科学・母子保健
こども環境学会 副会長

特別寄稿「ろう児のための教育支援活動の発展を願って」


特別寄稿
ろう児のための教育支援活動の発展を願って   織田 正昭

世の中には様々な子どもが生まれてきます。子どもたち本人そしてその子の親になってみなければわからないことがたくさんあります。ろう児もその一つです。確かに耳が聞こえなければいろいろな問題もでてくるでしょう。そもそも彼らは自分が育つ環境を上手に選べません。おそらく神様はその夫婦にしかこの子が育てられないから、そしてこの夫婦こそがこの子を育てるのに最良であると判断してろう児をその夫婦に託したのかもしれません。ただ、そのための最適な方法までは託してくれません。その方法の一つが様々な形の育児支援、教育支援です。でも一方通行の支援には限界があり、時に健常者・大人のエゴが顔を出します。ろう児を外から見れば大概の場合、大変だ、気の毒だ、可愛そうだと考えます。でも当の子どもたちはそう思われ続けることを歓迎しないでしょう。社会の中でハンデイをいかに克服し自立していくか、耳が聞こえなくても彼らは第六感、第七感を用いてこれを克服する術を潜在的に持ち合わせています。これを上手に引き出してあげるのが教育であると思います。障がい児という目の前の現実を憂えるよりも、生まれた子どもに対して肯定的な環境を作り、更には当事者自身が環境に上手に適応し、自分に最良の環境に作り変えていけるよう支えていくことが重要です。

彼らは時に私たちに命の大切さ、そして感動すら与えてくれます。 私は、機会あって龍の子学園の運動会を見学させていただいたことがあります。子どもたちが音のない世界でまるで背中にも目があるかのごとくあらゆる方向に自由に動いている姿を見て、実に驚きました。。これが本当にろう児なのかと、、こどもはどこかに障がいがあっても相当程度まで潜在能力が表出し、代替機能として働くものだとつくづく実感した次第です

このたび龍の子学園が学校法人設立に向けてそのプロジェクトを立ち上げるに当たり、あらためて、“ろう教育”のもつ意味の重要さを感じます。それは単にろう児個人の教育にとどまらず、社会的にもきちんと認知された形で教育を受けられるようにするという意味で、きわめて素晴らしい目的を持つプロジェクトであります。これが一時的なものでなく継続的な教育支援になるよう、行政、民間団体、そして学会(学者)が連携していくことが重要です。

日常の家庭生活では親子関係がその基本であり、社会生活では教育はその基本となります。学校教育には設定された当面の目標がありますが、人間教育は決してゴールがない“過程”です。ともすれば情報にも物資にも満ち足りた飽食社会に流されがちの今日、まだまだ障がいをもつ子どもに十分な“社会的な目”が向けられていません。今回のろう児のプロジェクトはきわめて重要な社会的要請でもあり、正式な学校法人設立の形で実を結ぶことを願ってやみません。

事情は違いますが私の周りにも様々な障がいをもった子どもたちがいます。子どもは、二人として全く同じ人間などありえません。生物学者、分子遺伝学者たちのエゴによりクローン人間が間違って登場しても時空間を同時に共有できません。子どもにはその子にしか当てはまらない最もふさわしい環境が存在します。しかし、社会的受け皿がなければ、医学の進歩に名を借りた研究者のエゴ以外の何者でもありません。科学としての医学の進歩は重要ですが社会の進歩との協調性が求められるのです。

こどもは“可能性と夢の塊”です。どんな状況でも、夢があり将来に向かっての“可能性”を秘めています。この夢と可能性を最大限に引き出してやる努力それがこうした子どもたちの教育支援、教育環境の提供の本質であると思います。

たまたま私は「こども環境学会」の設立に微力ながらかかわり、現在学会の役員としてお手伝いをしておりますが、こうした学際性が極めて高い学会こそが、様々な立場から、ろう児、そしてさまざまな子どものための育児−、教育−、生活環境の構築を支援するのにふさわしいものと考えております。今回のこのろう児のための教育支援活動プロジェクトが公的活動、民間活動学会活動の連携の下に途切れることなく継続的にそして円滑に進められることを、そして願わくば、ろう児に留まらず様々な子どもの教育活動にもひろがっていく大きなきっかけになればと思うばかりです。




織田正昭

東大(医)卒。母子保健、こどもの感染免疫、予防接種が研究テーマ。現在東大大学院医学系研究科教官。2004年こども環境学会設立とともに現在まで副会長。20年ほど前に世界に先駆けて新タイプの百日咳ワクチンを開発、またダウン症の研究でスイスSandoz医学賞授賞。WHO(ジュネーブ)、FDA(米国、ワシントンDC)のほか、JICA、JSPSを通じてアメリカ、タイ、マレーシアなどとの国際共同研究を進め、また国際学会などでの講演も多い。近年は都市化による母子の健康影響問題を国際的視点から研究。


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