2月20日を持って、全ての講座を修了しました。ご参加いただいた皆様、ありがとうございました。
第1回実施報告はこちらから(外国人を取り巻く状況について)第2回実施報告はこちらから(企業が知っておくべき制度〜在留資格を中心に)第3回実施報告はこちらから(「『多文化な職場』における異文化理解について)****************************************************************************
第4回
「多文化共生社会の実現に向けた企業の役割」トーマス・グロエンダル氏1.講師の異文化体験 私は、アメリカミシガン州の出身です。2000年7月にJET(「語学指導等を行う外国青年招致事業」The Japan Exchange and Teaching Programme)から大分県佐伯市(旧鶴見町)に派遣され、国際交流員として活動の後、留学生の多い立命館アジア太平洋大学の学生課に勤務しました。
大学での勤務では、多様な国からきている留学生のトラブルにも、数多く出会いました。「●●国の留学生だから」という対応では解決することはできず、留学生とのきめ細かなコミュニケーションが求められる職場でした。
異文化職場体験や国際理解アドバイザーとしての経験から、「多文化な職場で使える技術・考え方」を提示していきます。
※講座では、言葉を発音しないコミュニケーションの体験ワークショップを使ってグループ分け行っています。
2.外を知るために内を知る/自分の感覚を知る 様々な背景を持つ人のいる職場では、「相手の背景を考えてみること」が大切であることを、第3回の講義で学びました。相手を知る(外を知る)ことのファーストステップは、自分を知る(内をしる)ことです。そこで、「多文化な職場」に対する自分自身の感覚を確認してみましょう。
【質問】
(1)自分の団体で外国人を雇用している。常に一緒に仕事をしている。
(2)将来、外国人と常時一緒に仕事をすることになる(と思う)。
(3)将来、自分の部下に外国人がいると考えられる。
(4)将来、自分が外国人の下で仕事をする可能性が高いと思う。
(5)自分の子どもが、外国人の下で仕事をする可能性が高いと思う。
外国人と一緒に仕事をすることは考えられても、上司が外国人であることは想像しにくかったり、一方で子どもの世代になると「外国人上司−日本人部下」も珍しくないのではないか?と無意識に感じているようです。「多文化な職場」は確実に現実のものとなるでしょうから、いかにスムーズに職場を作っていくのかが大切になります。
●「多文化」な状態を生み出す要素を知る 第3回の講座でもあったように「多文化」な状態は、様々な要素に起因します。一番大きな要素としては出身国、小さな要素としては個人ということになるでしょう。では、具体的にどのような要素が考えられるのか、全員で出し合ってみます。
※参加者で10個を目標に要素を出し合った。
(例)生命価値観のちがい ある工事現場での事例です。海外の企業がある国で現場を持つことになり、現地で従業員を採用しています。ところが、企業の本社のある国とこの国では生命価値観(=生命の維持、安全に対する価値観)に違いがありました。非常に危険な現場であるにもかかわらず、一度二度の説明ではサンダルで現場にきたり、ヘルメットをかぶらない従業員もいます。事故が起きてからでは大変なので、とても厳しい説明が必要でした。
個人の生命価値観も、環境によって変わります。平均余命の低い環境で育ったひとは、危険性に慣れていて、当たり前と思って、職場安全にルーズな態度を示すことがあります。例えば、独身であったものが結婚し、家族を持つと、「家族のためにも自分の身を守らなければならない。」という認識に変わることが多くあります。
「多文化」な状態を生み出す要素は様々ですし、状況によっても変わってきます。全てに一つ一つ対応することは難しいことです。
そこで、「多文化な職場」で有効となる手法を考えていきましょう。
3.「多文化な職場」の道具箱 様々な要素で起きてしまう「多文化な職場」での摩擦を回避したり、軽減したりするにはどうすればよいでしょうか。摩擦が起こる大きな原因の一つにコミュニケーションの問題があります。この問題を考えるときに「あなたが相手から受け取った反応が、あなたのコミュニケーションの成果である」と言うことを忘れてはいけません。
ここでは、摩擦を回避するための3つの方法を紹介します。
●Mirroring(鏡) 相手の言ったことを繰り返して互いに確認し合う手法です。摩擦の未然防止の“技”になります。
(例1)日本人上司と外国人の部下が、明日から出張することになった。今まで待ち合わせが上手くいかないことが度々あった。
上司:明日の出発は8時だよ。だから、15分前に駅の駐車場で待ち合わせよう。
部下:課長が、駅の駐車場で7時45分に待っているのですね。駅の南側の駐車場ですか?それとも、北側の駐車場ですか?
(例2)工場で大きな音がした。しばらくして、外国人の従業員がこちらにやってきた。
従業員:すみません。足が痛いです。
上 司:どうしたんですか?足が痛いの?膝が痛いの?
(自分の足や膝、腰などを手で指し示すゼスチャーをつけながら
例1では、部下が上司の指示を確認しています。
例2では、上司がゼスチャーをつけて、足のどこが痛いのかを確認しています。これは、日本語の表現が不十分な外国人従業員が、「膝」を「足」と表現していたり、「腰」という単語を間違えて「足」と発音してしまった可能性を確認しています。
●用語集 職場では、しばしば同じ物事に対して、違う表現を用いることがあります。日本語が熟練していない外国人従業員の場合、複数の表現が混在すると、非常にわかりにくく誤解や摩擦を生みやすい状況になってしまいます。
例えば「ねじ」という単語に対して、「スクリュー」「●●番(製品名)」などの表現が考えられます。学習用のテキストで出てくる日本語と、職場で使われる日本語は違いますし、方言などもあります。職場で使われる日本語の用語集を作成することは、スムーズなコミュニケーションに有効です。
また、職場の多言語化、絵や写真を活用することも大切です。
●High Context と Low Context 日本はとてもHigh Contextな社会です。「10全てを言わなくても、3まで言えばわかる」という状態です。裏を返せば、言葉だけ(3まで)を知っていても10まではわからないと言うことになります。
一方、Low Contextな社会では「10全てを伝えなければわかってもらえない」ということになります。
職場では、Low Contextである方が、誤解や摩擦を生まずにすみます。High Contextの例を確認しましょう。
【High Contextの例】
職場での服装
「当社にふさわしい服装」「営業にふさわしい服装」とは、どのような服装を示しているでしょうか。
出勤時間
始業時間が9時にもかかわらず、1時間も前に出勤する人がいるのはなぜでしょうか。1時間前に出勤しなければならないのでしょうか。
昼休みの使い方
1時間の昼休みがあります。午後の仕事に間に合うならば、ゆっくりと食事をしたり休憩を取りたいのですが、周りの人たちは、食事が終わるとすぐにデスクに戻ってきます。
職務分担
仕事がたまっている人を手伝っている人がいます。私に与えられた仕事ではないのですが、どうすればいいでしょうか。
つづき