サービスグラントのビジネスモデルを考える [2013年03月04日(Mon)]
ニューヨークで開かれたグローバルプロボノサミット2013。
日本を含む世界12ヵ国からプロボノのコーディネート団体、さらに、米国内の中間支援団体30団体などが集まり、活気に満ちた5日間のプログラムとなりました。 会期中の様子はFacebookのタイムラインでも簡単にご紹介していますが、ここでは、12ヵ国のプロボノ・コーディネート団体が、それぞれのビジネスモデルについて共有するセッションの内容と、そこで得たインスピレーションについて、少し書いてみたいと思います。 各地のプロボノ・コーディネート団体のビジネスモデルについて、ここではいくつかご紹介しましょう。 AED/Pongamole(コスタリカ) AEDは、企業のCSRに関連するサービスを提供する会員組織。会費として2,000ドル〜15,000ドルを集める。会員企業数は110社程度。 Pongamoleは、AEDから最近スピンアウトしたプロボノ専門組織。この会員組織に所属する3社(インテル、Credomatic(金融)、Florida(飲料メーカー))がスポンサーとなっている。 Volunteering New Zealand(ニュージーランド) ボランティア・CSRに関する中間支援組織。 40%が企業のCSRに関するコンサルティングサービス提供などの自主事業、35%が政府からの補助、残りが財団や企業からの寄付金、という構成。予算規模は36万ドル。 恵沢人ボランティアセンター(中国) もともとは財団からの支援が60%、企業が40%だったが、その比率が逆転して、現在では企業との協働プロジェクトが増えている。 主な協働先はIBM、HPなど。昨年は14件のプロジェクトを実施。今年は年間30件を目標。1件のプロジェクトにかかるコストは約2,000ドル。 Endeavour(カナダ) 専従スタッフは0名。メンバーはフリーランスのコンサルタントが中心。 プロボノプロジェクトは企業との連携により実施。プロボノ・コーディネートに要する事務局業務については、担当したメンバーに発生した業務に見合うコストを企業に請求するため、組織としてのリスクがないというスリムな構造。プロジェクト実施件数は年間10件。 Catchafire(米国) 上記4団体と違い、NPOから対価を徴収するFee-for-serviceモデル。団体の規模に応じて2,500〜4,500ドルのサービス利用料をNPOから徴収。 Taproot Foundation(米国) 60〜70%が財団、30%程度が企業。サービスグラントの運営経費として、数多くの財団から、1件当たり約7,500ドルの支援を受けている。現在全米5都市で年間300件、1地域につき年間で60〜80件のサービスグラントを提供。企業については、コンサルティングサービスの提供による収入。 ・・・世界のどこを見渡しても、NPOの収入源は、個人、財団、企業、行政という区分は、変わりありません。こうした中で、世界各地のプロボノ・コーディネート団体は、それぞれの市場環境に応じたビジネスモデルを形成し、事業を運営しているわけです。 さて、こうした世界各地の動向を聞いていると、我々日本のサービスグラントのビジネスモデルの特殊性のようなものを、改めて自覚してしまった、、、というのが、この日の率直な感触でした。 サービスグラントのビジネスモデルは、70%が企業、30%が行政です。 ここまで聞けば、上記とそれほど変わらない感じがすると思いますが、重要な点は、年間に提供しているサービスグラントが約30件程度あるとしたら、そのうち、このビジネスモデルが成立しているものは10件あるかないかというところで、それ以外のプロボノプロジェクトについては、ビジネスモデルが成立していない「にもかかわらず」運営しているのです。 同時に、組織を維持運営していくために、企業や行政との連携プロジェクト等を運営しています。ここには「サービスグラント」というプログラムとは別に運営されているものもあります。大阪市の「大阪ホームタウンプロボノ」や、NECさんとの協働事業「NEC社会起業塾ビジネスサポーター」などがそれに該当します。こうしたプロジェクトの場合、支援先の選定を通常のサービスグラントとは別の基準やプロセスで行ったり、参加するプロボノワーカーが当該企業の社員に限定したりなど、通常のサービスグラントと異なるプロセスで運営しています。こうした形で運営されるプロボノプロジェクトが年間で15〜20件ほどあり、これらを合わせると、サービスグラントという組織は年間で実に50件ほどのプロボノプロジェクトを動かしていることになります。 前回のブログにも書きましたが、経済合理主義的な判断で行けば、収益を生まないサービスグラントの件数を極力抑えて、収益事業に注力するという判断もあり得るでしょう。しかし、私はその道は選ばないようにしたいと思っています。もしそのような近視眼的視点で収益事業に特化してしまったら、サービスグラントは、NPOの多様なニーズに触れる機会から一気に遠ざかり、活動はたちまちのうちに活力を失い、行き詰まってしまうと思うからです。 ただ、そんな中にも、財務上の健全性は必要です。 過度に無理をしすぎると、どこかに歪みが生じるのも、道理というもの・・・。 サービスグラントの2013年度のチャレンジは、米国のように、10万を超えると言われる助成財団がひしめきあう市場環境にない日本において、サービスグラントを低コストかつ高品質に運営できる体制を築きながら、企業および行政との連携によるプロボノプロジェクトを確実に運営できるような体制を構築する、ということなのだと思います。 それにしても、5日間の米国でのプログラムでは、いろいろ盛り沢山でしたが、本当にたくさんお金の話もしたような気がします。それがまた、いまの私たちにはちょうどタイムリーだったような気がします。 |