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第19回ミクロネシア大統領サミット共同コミュニケのポイント(独断です) [2019年02月28日(Thu)]

2月20、21日、パラオで開催されていた第19回ミクロネシア大統領サミットの共同コミュニケがようやく届きました。ざっと、個人的に注目したいポイントだけ書いていきたいと思います。

今回のサミットでは、太平洋諸島フォーラム(PIF)事務局、CROP機関と呼ばれる地域機関から太平洋共同体事務局(SPC)、太平洋地域環境計画(SPREP)、太平洋諸島フォーラム漁業機関(FFA)、太平洋航空安全機関(PASO)、そして太平洋電力協会(PPA)の代表が出席しました。また、パートナーとして、米国、豪州、日本、台湾の代表が参加しました。

2003年に同サミットが始まってから、15年を経て、昨年ようやく米国自由連合国だけでなく、キリバスとナウルが正式に参加し、5か国の集まりとして、より力を持つ枠組みになっているのだと感じます。一方、MCES(行政首長サミット:グアム、北マリアナ、ミクロネシア連邦4州を含む)が発展したMIF(ミクロネシア諸島フォーラム、事務局パラオ)はちょっと動きが見えない気がします。


このコミュニケにざっと目を通すと、様々なサブリージョナルな課題を地域全体の政策に反映しようとか、地域や国連など国際機関の取り組みを北部太平洋で効果的に実施しようとか、そのための熱い意志が感じられます。地域機関を読んだことはその証左と言えるでしょう。

PIF事務局は固く、ビューロクラティックな報告を出しています。SPREPは北部事務所設置とGCFレディネス(昔、リーディネスと読んで恥をかいたことがある)。FFAはタニア駐日大使の妹である新事務局長(そっくり)がIUU対策などに地域協力の重要性をあげています。SPCはSDGsデータとりまとめの支援や女性に対する暴力の撲滅。PASOは(まだ生きていたんですね)、地域航空担当閣僚会議の再開を。PPAはダカさんが、民間部門の投資が重要だと主張したようです。

気候変動は当然のこと、全体的に「North Pacific」という文言が目に付く感じがします。例えばPIFの枠組みは独立の早かった南太平洋諸国のリーグのようなところがあり、10年ほど前から、ようやくミクロネシア3国が意見を出せるようになってきましたが、依然として不満があったのかもしれません。本来南側のキリバスとナウルがこれに加わったことで、北と南のゲートがしっかりと開いた感じがします。

そう、"Center of the Pacific"、2010年頃から経済破綻危機を脱し、経済回復を実現したナウルの存在は大きい。

パラオがホストするOur Ocean Conference 2020、IUU Free Pacific 2023に向けたチャレンジ。

米国自由連合国のパラオ、ミクロネシア連邦、マーシャルが、空域管理に関して、コンパクトの下で米国に制限されている航空情報について、情報共有を求める点も書かれています。地味に興味深い。ちなみなPASOは事務局がバヌアツのポートビラにあり、各国の航空安全担当局・機関が加盟していますが、これら3国は直接のメンバーにはなっていません。その代わり米国航空局(FAA)が加盟しています。

反腐敗地域会議とか、地域貿易課題とかもあります。

しかし、今回、特に注目したいのは、下記の2点。

1点目、PIFに対する、台湾と中国を平等に扱えという要望(転載します)
"Pacific Islands Forum - Equitable Treatment of all Jurisdictions
39. The Presidents and Heads of Delegation strongly encouraged that the PIF and the Secretariat establish a more respectful and fair policy regarding the conduct of the PIF activities relating to the participation of the People's Republic of China and the Republic of China (Taiwan), mindful that PIF meetings are held in Pacific Island Countries and should reflect Pacific hospitality. The Presidents and Head of Delegation therefore recommended that starting in Tuvalu and moving forward, meetings with post forum dialogue partners be held in the same venue."

これは、特に先日のパプアニューギニア出身のメグ・テイラー事務局長の中国の要望に前向きに答えるような発言を意識していると思います。PIF(首脳を含む国政府間の枠組み)とその事務局(首脳の合意事項を実践する立場の組織)に対して要望しています。またポイントは政治ではなく、「パシフィック・ホスピタリティ」ということ。先日ここで書きましたが、排除ではなく、包み込むこと。

同じ場所で開発パートナーとの会議を開くべきというのも、大変興味深い。今年のツバルでのPIF会議では、台湾承認国ツバルが議長としての強さを発揮し、台湾も同席することになるかもしれません。

2点目が、次のPIF事務局長について。

事務局長の任期は3年2期までです。現在のテイラー事務局長は2014年12月就任ですから、来年の12月で任期切れを迎えます。事務局長は、2004年〜2008年が豪州のグレッグ・アーウィン氏(故人ですが、自分は日本でアテンドしたことがあり、感謝状をいただき、マーシャル赴任後に偶然マーシャル行きの飛行機で隣に座って話をしたことがありました)、一瞬ツバルのテオさんを挟み、2008年〜14年がサモアのスレード氏、法律家で非常に堅苦しい方でしたが、フィジーと地域の関係に苦慮していました。2014年〜2020年(予定)がPNGのテイラー氏。

ポリネシア、メラネシアと来たので、次はミクロネシアの番だ!と主張しています。今年のツバルでの総会で、候補者の調整を行うようです(事務局長選出は、加盟国の投票による)。

PIFの結束を維持するためには、当然ミクロネシア地域から事務局長が選ばれるべきで、ミクロネシア5カ国のうち4か国は台湾承認国です。ということは、上記の動きも含め、台湾にとって、この2年が重要であり、次の事務局長の期間である2020年〜2026年につながります。


この2点を読むと、行間から、PIF事務局とテイラー事務局長に対する静かな怒りが感じられます。(パプアニューギニアと小島嶼国の話については、省略します)


いずれにせよ、興味深い展開です。

日本は、パラオ、ミクロネシア連邦、マーシャルは日本のインド太平洋ビジョンを支持しているので手厚く支援し、次にそれを見たキリバスとナウルを取り込み、ツバル、そして他の南太平洋諸国に影響力を伸ばしていくというのも、考えられるかもしれません。

来年のミクロネシア大統領サミットは、ナウルで開催されるようです。(PIF総会はツバル)

先週、フィジーでちょっとガッカリしてしまったけれど、また元気が出てきました!
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