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グッドガバナンス [2019年02月20日(Wed)]

太平洋島嶼国というのは、各国とも、戦後少しずつ力をつけ、主権と自決権を確保し、独立してきた歴史があります。
「途上国だ!」「ガバナンスが弱い!」という人も多く、その通りだと思いますが、一方で、各国は国際社会の中で、小さくとも誇りを持つ国として、立場を築いていくという意志があると思います。

ラフな言い方をすれば、基本的には小さい国と舐められないように、国際法などルールをしっかりと守る国であることを示したいはずです。

それ故に、例えば中国の経済力を背景とした地域進出について、日本は太刀打ちできないとか、先進国は負けてしまうとか悲観的な見方がある中で、自分は日本の「自由で開かれたインド太平洋ヴィジョン」を堂々と地域に浸透させていけばいいと思っています。

同ビジョンは、法の支配だとか連結性による経済繁栄などを唄っているものであり、先進国のリーダーとして、堂々と自信を持ち、かつ丁寧に意見交換をしていけばいい。

他の先進国、アメリカ、豪州、NZ、英国、フランスなども、同様にルールに基づく秩序を基盤に地域への関与を高めています。

例えば、中国の地域への支援や経済活動は、過去10年の地域の経済成長に大きく貢献してきました。仮にこれらの支援や活動が、先進国のルールに沿っていて、透明性を確保するなど良いガバナンスに基づくものであれば、先進国側が批判することはないし、できなくなります。

ルールを守るというのは、現地の法令や規則を守ることが当然含まれます。それにより、原資はどこであれ質の高いインフラが整備され、地域の持続性のある経済成長に繋がります。

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(記事とは直接関係ありません)

しかし、現在フィジーでは、住民の間にストレスが溜まりつつある、残念な事象が起こっているようです。


フィジーの本島のビチレブ島西部、観光地デナラウの沖合にマロロ島という離島があります。

その島で、ある中国の投資家がフィジー最大級のホテルを建設しているそうです。しかし、その工法なのか設計なのか、フィジー国内の法令に違反し、自然環境への悪影響が強く懸念されるため、政府が中国の施工業者に対し工事の停止を求めたそうです。

しかし、その業者はこれを無視して工事を継続しており、それがフィジー国内で問題となっています。結果的に、中国の評判を落とす可能性があります。

日本など先進国としては、持続可能で強靭な社会実現のために、海ばかりではなく陸や沿岸域を含め、太平洋島嶼国各国の法令の不備の解消や、違反行為に対する取り締まり能力強化のための側面支援を丁寧に行っていくのも、良い手段ではないかと思います。

伝統的にはこの分野の地域支援は豪州とNZが強く、日本は両国とこの分野においてタッグを組むのも1つでしょう。

かつてフィジーで案件形成に関わったUNDPとの平和構築案件がありました。それは司法の手が届きにくい村落部の住民が、国内法を知り、権利を知り、移動法律相談もできるようにするものでした。

これにより法律を知らず、慣習に縛られ、救いを求めることも出来ず、耐える事しか出来ない被害者、例えばドメスティック・バイオレンスの被害にあっている村落部の女性が、法の下で人としての尊厳を守ることができる、平等な権利があるということを、村落部の人々に伝え、彼ら・彼女らの社会参画を促す取り組みでした。移動相談車両は今も活用されているそうです。

当時、まだフィジーが民政復帰する前から、フィジー法務省、女性子供省、UNDP、法律事務所、南太平洋大学などと数カ月協議を行い、プロジェクトを設計しました。

費用は中国の大規模な支援や投資に比べれば、10分の1とかそれ以下ですが、効果は大きかったものと思います(今だにそのような話が耳に入るので)。

自分は実施段階の時期にはフィジーから帰国していたので、実際の活動については人伝に聞いた話だけですが、そこには日本人専門家の献身的な活動があったそうです。

金額ではなく、中身が重要なのだと思います。
パラオの地域密着型エコツーリズムとフィジー [2019年02月20日(Wed)]

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友達の猫。ティンカーベルじゃなくて、何かそんな感じの名前だったのだけれど、、、結局触らせてくれなかった。

昨日、フィジー外務省の事務官に挨拶に行った際、話の流れでパラオで行っている地域密着型エコツーリズムの話をしたところ、何かピンと来た様子でした。

昨夕、その事務官から、明日(今日)の9時に、産業貿易観光省の観光課長(Director Tourism)と会合をセットしたとの連絡がありました。

地域密着型ツーリズムがエコツーリズムの1つの形態ということは知っているのですが、一般的にエコツーリズムは自然環境に関わるもので、地域密着型は地域の文化に関わるようなイメージがある中で、自分のプロジェクトは「地域住民がイニシアチブを持ち、自然と文化と伝承などを活用するエコツーリズムなのだ」と主張するために、あえて「地域密着型エコツーリズム」と呼んでいます。頭痛が痛いと似たような感じかもしれませんが。

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それで、今朝9時から先方2人を相手に、当財団の紹介に続き、昨年12月にパラオでのビジネスミッションの際に作成したパワポを使って、パラオでの取り組みをダーっと説明したところ、「合わせたい人がいる。午後3時にまた来てくれないか?」と頼まれ、午後にまた顔を出しました。午前の会議は45分程度。

予定をやりくりして同省に戻ると、人が増えていました。遺跡担当課長やコミュニティ担当課長らが集結していました。

そこで、もう一度パラオでの取り組みをパワポファイルを使って、特に下記にポイントを置いて説明してみました。

・自然環境、文化、遺跡などの適切な観光利用は、住民によるそれらの持続可能な保全につながる。(熊野古道で学んだこと)
・ローインパクト、ハイバリュー。
・コミュニティにお金が流れるように設計する。

4段階のステップ
1. 概念の理解(上記など)
2. 日常生活から観光資源の発掘、フェノロジーカレンダーとその作成過程の活用
3. ツアープラニングとローカルガイド育成
4. ローカルレベルの運営能力強化、プロモーション

さらに聞いてるみんなの様子を見て、特に2で多くの点となる観光資源を発見し、3でそれらをどのように、テーマや住民が伝えたいことを骨として、つなげ、点を線にするか、という話を強調してみました。

すると彼らの間で議論が始まります。

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彼らが懸念している町があるのですが、パラオでも経験しましたが、すでに彼らはその町について海外から支援を受けて、遺跡のマッピングやフェノロジーカレンダー作成などは終えたものの、そこで支援者がプロジェクトの目的を達成したとして帰ってしまい、地域住民の間でニッチもサッチも行かない状況で、スタックしているとのことでした。

つまり、ステップ2と3の間にあり、どのように次に進めればいいのか、さらにどのように住民を巻き込むかというところで、悩んでいたと言います。

そこで自分の経験をもとに、失敗談も含めて伝えたところ、何かピンと来た様子で、彼らだけで議論がまた始まります。

そして質問や議論が始まり、自分からは、ヒントになるかと思い、いろいろな話を共有してみました。

例えば、州と国のデリケートな関係。

例えば、こちらのプロジェクトでは対象となるのは10の州で、最初は公平に各知事あてに国の大臣レターとうちらのレターを届けて、8州が参加。しかし2州が抜け、昨年は4州にまで減り、後半6州になった。自分は残っている州をサバイバーと呼んでいて、1つでも2つでも生き残ってツアーを実現できれば、それがモデルとなり、他の州が参加するようになると期待している。フィジーでは州ではなく、村(コロ)とかコミュニティ(マタンガリ)とかになるかもしれない。

例えば、我々は学術論文を作成しようとしているのではなく、シビアな民間ビジネス部門でのリアルな経済活動につなげようとしていること。


この午後の会議は2時間を超えました。

我々のパラオでの取り組みが、何かヒントになったようで、現在の彼らの行き詰まりの状況を改善させるため、早速コミュニティとの取り組みを始めるとのことでした。

パラオのような小さい国の話とフィジーのような地域では大きい国の話は、今一つ繋がらないと思っていましたが、もしかすると有効なのかも。
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