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太平洋島嶼地域のセキュリティ、漁業、米国 [2017年04月04日(Tue)]

これもまた勉強不足でハッキリと言い切れないのですが、太平洋地域は米国自由連合国を含め、法執行や警察の支援は、伝統的にオーストラリアやニュージーランドが担っており、先輩の地域の専門家からは、戦後の地域秩序の文脈で、米国とオーストラリア、ニュージーランドが何らかの協定を結んでいるはずだと助言をいただいたことがあります(まだ見つけていないので、確信はありません)。

上記が本当だとすれば、パラオ、ミクロネシア連邦、マーシャルはどうなるかという話です。米国コンパクトによりこれら3国の安全保障は米国が担うことになっていますが、漁船や越境犯罪への対応として軍を出すべきだろうか?一方、警察で対応する場合は米国は出ることは控え、伝統的にオーストラリアに頼むのか?

これも自分の考えが正しいのかわかりませんが、もともとのPPBPの背景には、メラネシアの治安維持もあるとは思いますが、フォーラム漁業機関(FFA、14太平洋島嶼国+オーストラリア、ニュージーランド、トケラウ)、入漁料交渉、資源管理が関係しているのではないかと思います。

米国にとっても、地域の重要課題の一つが漁業権であり、2009年頃までFFAを介したマルチ協定で年20百万米ドル程度でFFA加盟国のEEZ内で操業可能だったものが、ナウル協定締約国グループ(PNA)の取り組みがあり、年90百万米ドル(マルチ協定の短期の延長扱い。PNA側、特にキリバスはマルチ協定ではなく、バイの協定を求めています)を超えるようになり、米国民間漁業会社側が、採算が合わないとして撤退する姿勢を見せ、交渉がまとまらないというニュースが時々目に入ります(現状確認していません。すいません)。ちなみに漁獲はツナ缶になるものが多数を占めます。

ということを踏まえてみると、先日の現地のニュースが興味深いものになります。

「Pacific regional security on the line amid relationship breakdown with US」
http://www.pina.com.fj/index.php?p=pacnews&m=read&o=99465178958dc4f3a508768e63500c

密漁船など違法船の取締りをオーストラリア、ニュージーランド、米国、フランスの“Quad”が協力し、年数回、太平洋島嶼国と共に合同取締作戦を行っていますが、この記事からは“Pacific regional security”の大きなカギはやはり漁業であることが読み取れます。

FFAが管理しているVMS(船舶監視システム)というのがあり、上記作戦中には“Quad”とも共有されることとなっていますが、キリバスなどは米国がこの情報を悪用するとして、米国のQuadからの離脱を求めるような話となっています。

VMSについてですが、自分も何年も前にホニアラのFFA本部で見せてもらったことがありますが、大画面の上で、正規の漁船の名前と位置がすぐにわかるようになっています。入漁料を払っている船はEEZ内ではそのスイッチを入れておかなければならず、オフにすると(確かロックがかかっていると思いますが)取締りの対象となります。

反対に言えば、VMSデータのないEEZ内で活動している漁船は、取締りの対象となります。

かつて、このVMSデータは、入漁料を払った国に提供するもので、入漁料が払われていない太平洋島嶼国間では共有ができず、また漁船の位置が良い漁場を示すこともあり、できるだけクローズに扱われていました。PNAにおけるVDS(隻日法)という入漁権販売スキームが始まってからは、PNA加盟国間では、VMSデータを共有できる約束(担当閣僚の署名)が結ばれています。(実際にパラオがその書類を作成し、自分が間違いを指摘し訂正されたということがあったという記憶があります)。


何の話でしたっけ?

地域の安全保障の例えば米国から見た重要な項目の一つが漁業で、密漁船の取締はこれに関係しているかもしれず、ミクロネシア3国については警察権についてはオーストラリアが支援しているという話でした。

一方で、近年は、米軍と自衛隊が参加する工兵隊や医療が中心の活動、パシフィック・パートナーシップで、自分が記憶している範囲では、パラオ、ミクロネシア、フィジー、キリバスなどに軍艦が滞在し、頼もしいと感じる場面が多々ありました。

パシフィック・パートナーシップの他に、米国はミクロネシア地域への関心がないのかどうかというと、自分が現地にいた感覚では、米国は、少なくとも日本政府が持つ以上の多くの現地情報を収集しているでしょうし、スイッチが入ればバシっとくるということになります。10年ほど前に、クワジェリン基地の土地の権利を中国に売るとした現地の動(ごにょごにょ)とか、一時期、キリバスに作られた中国の衛星追跡基地(ごにょごにょ)とか、潜水艦追跡(ごにょごにょ)、、。

今後、世界情勢、特に東アジア情勢が緊張すれば、いろいろなものが明確になるのかもしれません。
ベトナムからの青い密漁船 [2017年04月04日(Tue)]

これまでパラオの南西諸島で拿捕される密漁船は、インドネシアやフィリピンからのものが多くありました。ここ2〜3年は、特にベトナムからのいわゆる“ブルーボート”が目立っており、たびたび現地でニュースになっています。

このブルーボートによる被害が発生しているのは、特にパラオ、ミクロネシア連邦、パプアニューギニア、ソロモン、オーストラリア、ニューカレドニアなど特に太平洋の西端にある国や地域です。この名称もこれらの国々により名づけられ、地域漁業機関の太平洋諸島フォーラム漁業機関(FFA)も、ブルーボートの締め出しなど強い関心を有しています。

下記リンク先の記事は英語ですが、写真を見るだけでも興味深いと思います。

http://asia.nikkei.com/Politics-Economy/International-Relations/Vietnamese-poachers-plunder-South-Pacific-sea-cucumbers

http://www.ecowatch.com/palau-authorities-burn-vietnamese-illegal-fishing-boats-saying-we-will-1882049968.html

http://www.radionz.co.nz/international/pacific-news/322923/ffa-to-look-at-tackling-pacific's-blue-boat-problem

http://www.radionz.co.nz/international/pacific-news/327809/vietnamese-fishing-boats-labelled-'reef-robbers'

http://www.radionz.co.nz/international/pacific-news/328005/new-caledonia-catches-more-vietnamese-poachers


これらの船はマグロだけでなく、ウミガメ、ナマコ、サンゴ礁のリーフフィッシュ、ロブスターなども密漁の対象としています。リーフフィッシュにはグルーパー類も含まれます。


パラオでは、自分が知る範囲では2009年から2014年は、北部は中国など、南西諸島(目安としてコロールから南に200〜400キロ。ヘレンリーフ含む)ではフィリピン、インドネシアの密漁船が目立っていました。

しかし、つい先日パラオの海上保安関係の友人と話していたときには、このブルーボートが目立つとのことでした。その友人によれば、ベトナム漁船側からは「南シナ海の漁場を失ったため、太平洋まで出なければならなくなった」との話があったようです。

例えば太平洋島嶼地域のナマコ漁については、密漁でなくとも、資源が枯渇すれば次の漁場に移動するという話を耳にすることがあり、ベトナム漁船側の話をどこまで聞いていいのかわかりませんが(南シナ海の漁場に入れないからなのか、南シナ海の漁業資源が減少したからなのかが分からない)、友人の話は興味深いものでした。

上記、下から2つ目のニュースでは“Reef Robbers”と言われています。


少し話はずれますが、戦時態勢、準戦時態勢ではない、現在の太平洋島嶼国・地域で太平洋島嶼国・地域から見た場合、安全保障というと最も大きな対象は密漁船になります。現地の事情でいえば、薬物や物品の密輸(マーシャルにいたときには米ドルをコンテナに詰めて輸送する外国人がいるという話もありましたが、、)などの越境犯罪もありますが、圧倒的に密漁船に大きな関心が向けられています。

マーシャルでは、時に、何週間も何か月も漂流していたというメキシコ人が保護されることがありましたが、なぜか健康的であったり、あまり日に焼けていないというケースもありました。(ごにょごにょ)

密漁船は時に小火器や(水中で使えるダイナマイト漁に使用する)ダイナマイトを所持している場合があり、その取締には危険が伴います。

自分はまだ勉強不足でハッキリとわからない部分がありますが、この密漁船や越境犯罪に対する対応は警察なのか軍なのか、冷静に考えれば警察ということになるでしょうか。軍のないミクロネシア地域を見ているからそうとも言えるし、海軍のあるフィジーでいえば軍が対応するので、どちらもありなのでしょう。しかし、例えば日本で自衛隊が出るとなれば相当な理由(領土・領海を侵略される恐れなど)が必要かと思います。

太平洋島嶼国の場合、軍があるのがパプアニューギニア、フィジー、トンガ、その他は警察機構が海上保安を担当しており、オーストラリアはPPBP(Pacific Patrol Boat Program)により、軍、警察を問わず、グレーの警備艇を各島嶼国に提供しています。

(つづく)