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ニュージーランド: Pacific Reset [2018年09月25日(Tue)]

昨日、ニュージーランドが国連で、太平洋島嶼国の気候変動対策に3億米ドル(約360億円)の支援を行うと表明しました。

https://www.radionz.co.nz/news/political/367194/pm-announces-increase-in-climate-change-funding-for-pacific

下記は、今NZの現地テレビが上記ニュースと合わせて報じている内容です。
https://www.radionz.co.nz/news/political/367192/jacinda-ardern-on-us-breakfast-tv-show-joy-of-parenthood-far-surpassed-expectations

3億米ドルの多くは、先日の太平洋諸島フォーラムでもアナウンスされた、Pacific Climate Change Fundへの投資となるようです。Pacific Climate Change Fundは15億米ドル(約1800億円)の積み立てを目標とした気候変動への適応を目的とした基金で、その2割が気候変動への適応を対象とし、さらにその何割かが太平洋島嶼国に向けられる緑の気候基金(GCF)とは別に、太平洋島嶼国自身が管理する災害を含む気候変動への適応向けに設立するものです。

島嶼国各国の民間経済部門の成長による財政的余裕も背景にあり、自ら資金も出すようです。すでに複数の太平洋島嶼国が手を握っており、注目すべきは、政治的にシビアな対立関係にあったサモアとフィジーが共通の脅威である気候変動を対象としてこの基金設置に対して協力していることかと思います。これが今自分が観察しているPIF枠組みの変化の要素の1つになります。

https://www.radionz.co.nz/international/pacific-news/363976/pacific-countries-may-set-up-huge-climate-change-fund


さて、NZに話は戻りますが、昨日、ウィンストン・ピーターズ外相の近くで2年半ほど仕事をしてきたという方々と意見交換を行う機会がありました。特に現在のアーダーン首相になってから、Pacific Resetとして、ニュージーランドの太平洋島嶼国に対する関与を強めています。上記の話もその一貫ということになります。

https://www.radionz.co.nz/international/pacific-news/360841/nz-s-foreign-minister-announces-next-steps-in-pacific-reset-aid-strategy

前にアーダーン首相はニウエのことを知っているとか、ナウルでのPIF総会で島嶼国首脳に歓迎されたとか書きましたが、このNZのPacific Resetは、単に援助額を増やすというものではないと思います。彼らが言っていましたが、援助国・被援助国の関係から共通課題に対峙するパートナーになるのだという考えが背景にあるようです。

例えば、NZはポリネシア地域でもっとも太平洋島嶼国出身の人々が生活している国であり、ポリネシア地域で最大の島嶼国とも言えます。国内ではODA拡大について批判もあるようですが、政治の力でしっかりと国内にNZの持つ責任を説明し続けるということでしょう。

NZを太平洋島嶼国と考えると、地域に対する考え方がいろいろと変わってきます。まさにReset。このように現在のNZは太平洋島嶼国との関係が、豪州とは異なるアプローチであることが前提になりますが、NZの援助増加がパートナーとしての支援、途上国間の南南協力とは異なる、上からの押し付けではない島嶼国間支援のような形であるため、島嶼国側も歓迎しているようです。

また、NZは太平洋島嶼国の一員であるとして、これまで主にポリネシアを対象としていたものが、北部を含む太平洋地域全体を支援対象とすることになります。外交官数も増やすようです。

太平洋島嶼地域を面で見た場合、国際社会での存在感や経済力をみると、PNG、フィジー、ニュージーランドがピークとして引っ張るようなイメージになります。そうすると北部が弱く見え、パラオ、北マリアナ、グアム、ハワイのいずれかがピークの1つとなるかどうか。

本当は、日本が島嶼国の1つとして北部を中心にニュージーランドのような役割を担えると良いのですが。。


ニュージーランドは、過去の資料を見ると、40年以上前から、太平洋島嶼国とともに地域環境保全・保護、非核化など取り組んできているし、2014年ごろにフィジー問題に関連してNZ外交団と話した際には「NZは太平洋島嶼国出身の国民が多く、太平洋島嶼国の問題はNZの問題でもあることを理解してほしい」と先方が話していたこともあり、何も基盤がない中で、Resetは突然打ち出した考えではないと思います。

日本は漁業国として関係が深いですが、地域の方向性は、環境保護・保全、資源の持続的利用、気候変動の負の影響を受ける側となっており、ここに島嶼国と日本の距離感が生まれているような気もします。。

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