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「今後の障害者雇用促進制度の在り方に関する研究会」の報告書 [2018年08月21日(Tue)]
「今後の障害者雇用促進制度の在り方に関する研究会」の報告書を取りまとめました(平成30年7月30 日)8/21
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_00679.html
X 障害者が長く安心して安定的に働き続けられる環境整備に繋げる制度の在り方

2.障害者雇用納付金制度の在り方
(障害者雇用納付金財政の経緯等について)
・ 障害者雇用納付金制度、障害者雇用調整金の額
企業が法定雇用率を超えて新たに障害者を雇用するために通常追加的に必要となる特別費用の額を踏まえて、障害者雇用納付金の額は、企業が法定雇用率に達するまでの間に新たに障害者を雇用するために通常追加的に必要となる特別費用の額を踏まえて、決定することとされており、それぞれ独自に額が決定されるもの。障害者雇用情勢が進展を続ける場合には、障害者雇用納付金を納付する企業が減少し障害者雇用調整金の支給を受ける企業が増えることから、基本的には、法定雇用率が引き上げられる等の制度的要因が生じない限り、障害者雇用納付金財政は逼迫していくという課題が制度自体に内在しており、いわば「財政的に逼迫する方が望ましい制度」であるとの指摘もあった。
・ この点、同様の仕組みを導入しているフランスやドイツにおいては、法定雇用率が障害 者雇用の実態よりも高めに設定されていることや、障害者雇用調整金と同類の仕組みは存 在せず、障害者雇用納付金財源は個別の助成金や事業運営に充てられていること等が、日 本とは大きく異なる点である。 日本の場合、制度が創設された昭和 50 年代においては、障害者雇用義務を達成している企業割合が低かったこと等から、財政支出の多くを助成金が占め、障害者雇用調整金や報奨金の占める割合は極僅かであった。障害者雇用納付金財政はこれまでに三度、財政収支の赤字が二年度以上連続した時期があるが、最初の二度は障害者雇用納付金制度に基づく助成金によるところが大きく、障害者雇用納付金制度に基づく助成金の額を縮小させることで財政を健全化してきたという経緯がある。他方、直近においては、既に障害者雇用納付金制度に基づく助成金のメニューを縮小させてきたこと等もあって、財政支出の構造が変化しており、障害者雇用調整金や報奨金の占める割合が相当高水準となっている。年間の収支についても、平成 28 年度は 71 億円の黒字となっているが、障害者雇用納付金や障害者雇用調整金の額の動向を踏まえれば、仮に平成 30 年 4 月から法定雇用率が引き上げられなかった場合には、単年度収支が赤字に移行する可能性は非常に高かったものと考えられる。

(障害者雇用調整金について)
・ この点、障害者雇用納付金制度の持続性を確立する観点からは、フランスやドイツのよ うに障害者雇用調整金を支給する枠組み自体を廃止する方法もあり得るが、現に、障害者 雇用調整金の支給額を障害者雇用に必要な環境整備等に充ててきた企業もある中で、今後、 雇用している障害者に対する合理的配慮の提供等をさらに進めていくためには、慎重な対 応が必要と考えられる。 ○ 他方、障害者雇用納付金財政の状況について検討を行うにあたり、一部の大企業や法人 に障害者雇用調整金が集中しているのではないかという指摘もあった。 障害者雇用納付金と障害者雇用調整金について従業員規模別に納付・支給の割合を見ていくと、常用労働者の数が 1,000 人以下の企業であれば、その中で中小企業か否かといったことに関わらず、障害者雇用納付金の納付額と障害者雇用調整金の支給額の関係に大きな差は生じていないが、常用労働者 1,000 人超の企業については障害者雇用調整金の支給割合が非常に多くなっている。このため、構造的には常用労働者 1,000 人以下で障害者を雇用していない企業が、常用労働者 1,000 人超で障害者を雇用している企業の特別費用を負担しており、いわば、経営基盤の安定的な大企業の障害者雇用を、中小企業が支えるか のような構造となっている。
・ 就労継続支援 A 型事業所については、一般雇用が困難な障害者に対して雇用契約に基 づく就労の機会を提供するものであり、障害者の就労・社会参加を促進する観点から重要 な役割を担うものである。こうした就労の困難性等に対応しつつ、障害者の雇用環境を整 備する必要があること等から、利用者の数等に応じた利用料等に相当する障害福祉サービ スの報酬として、一事業所あたり年間で平均約 2,400 万円の報酬を支給されている。しかしながら、こうした報酬は、就労継続支援 A 型事業所の事業を行う上で必要となる人的配置や環境整備等に充てられることとなるところ、障害者雇用調整金についても、新たに障害者を雇用するために通常追加的に必要となる特別費用を踏まえて支給されているものであり、その目的が重複しているのではないかという指摘についてどのように 考えるかという課題がある。
・ 加えて、障害者雇用 1 人当たりに伴う費用は、事業所当たりの雇用障害者数が増えるごとに逓減する傾向にあることから、大企業や就労継続支援 A 型事業所等で障害者を多数 雇用しており、かつ障害者雇用調整金を集中的に支給されているようなケースにおいては、 企業同士の社会連帯に基づく範囲を超えて、負担の調整を受けているのではないかとの意 見も示された。 例えば大企業の場合は、雇用障害者 1 人が雇用率に対して与える影響が小さいこと等もあって、法定雇用義務を大きく超えて障害者を雇用しているケースも多く見られるが、結果として、常用労働者 1,000 人以上の大企業に支給されている障害者雇用調整金のうち 約4 割が、法定雇用義務に対して超過 20 人以上に関して支給されるものとなっている等、一部の大企業に対して障害者雇用調整金が集中して支給されている状況にある。 また、常用労働者数 300 人以下の法人に支給される障害者雇用調整金のうちの 3 割超が社会福祉法人に対して支給されており、そのうち約 4 割が、法定雇用義務に対して超過 20 人以上に関して支給されているが、このように集中して支給されている障害者雇用調整金の多くは就労継続支援 A 型事業所を運営する法人に対して利用者分として支給され ているものと考えられる。
このように、大企業の場合には、障害者を雇用する前提である経営基盤が比較的安定していること、就労継続支援 A 型事業所の場合には、利用者である雇用者数に応じて施設に対して障害福祉サービスの報酬が支給され必要な人的配置等に充てられていることを前提に、障害者を雇用する場合の追加的な特別費用が逓減していくことを考慮すると、障害者を多数雇用し、集中的に障害者雇用調整金の支給を受けている事業主に対する障害者雇用調整金については、一般的な中小企業への影響には配慮しつつ、法定雇用義務を一定以上超過した場合には支給額を逓減又は停止させる、障害者雇用調整金の単位調整額を一定程度減額するといった措置を講ずることが考えられる。
・ 今後については、これらの一部の法人に集中して支給されてきた障害者雇用調整金等の 原資を活用し、中小企業における障害者雇用の促進のための環境整備等を着実に進めてい くことで、障害者雇用ゼロ企業を減少させる等、「障害者と共に働くことが当たり前の社会」にしていくための取組を進めていくことが求められているものと言える。

(障害者雇用納付金について)
・ 障害者雇用納付金の額についても、実際に障害者を雇用した時にかかる費用と同水準に まで引き上げるべきとの意見や、障害者雇用ゼロ企業を含め実雇用率が特に低い場合には 障害者雇用納付金の額を引き上げるべきとの意見が示された。
・ この点、あくまで障害者雇用納付金は、企業同士の社会連帯に基づき、障害者雇用に当 たって特別にかかる費用に限定して調整する趣旨のものである。障害者を雇用した場合に 要する諸費用と同水準にまで障害者雇用納付金の額を引き上げることとする場合には、む しろ社会的義務を果たしたかのような感覚を企業側に起こさせ、結局、雇用促進の阻害に 繋がるのではないかという意見が示された。また、額を引き上げることによって、その性質が罰金的な要素を有するとするならば、障害者雇用納付金を納めればその後は雇用義務を免責されるという免罪符のような見方も生じ得ること等から、その影響を見極める必要がある。
・ また、障害者雇用ゼロ企業を含め実雇用率が特に低い場合には、障害者雇用納付金の額 を引き上げるべきとの意見も示されたところであり、障害者雇用ゼロ企業等による障害者 雇用への意欲を喚起し、その取組を促していこうというもの。現に、障害者雇用ゼロ企業等が新たに障害者を雇用する際には、通常想定される設備整備や人的配置等の費用に加え、障害者の従事する業務の決定やマニュアルの作成、就業規則の整備、周りで働く社員による障害者理解の促進等の「初めて雇用する企業」ならではの目に見えづらい追加的な費用や負担感等も想定されることから、障害者雇用ゼロ企業の場合には、新たに障害者を雇用するために追加的に必要となる特別費用の額も高くなる傾向にあると想定される。このような想定に従えば、障害者雇用ゼロ企業等に対する障害者雇用納付金の調整基礎額を、既に一定程度障害者雇用に取り組んでいる企業とは異なる水準とすることで、障害者雇用ゼロ企業による障害者雇用に取り組む意欲を喚起させるといった方法も考えられる。
○ ただし、ハローワークによる行政指導の成果等もあり、法定雇用義務が課されているに も関わらず障害者を全く雇用していない、いわゆる障害者雇用ゼロ企業のうち、約 99% が常用労働者 300 人以下の中小企業となっているように、こうした仕組みにより負担増 になる企業の多くが中小企業であることから、実現に当たっては慎重な検討が必要である。
・ 加えて、障害者雇用義務の数と現在雇用する障害者の差分や、法定雇用率と実雇用率の 差分に応じて、障害者雇用納付金の額の引上げ又は引下げを行うことで、企業における障 害者雇用への意欲を喚起し、その取組を促していくこととしてはどうかといった意見も示 された。

(障害者雇用納付金財政の調整機能について)
・ また、障害者雇用納付金、障害者雇用調整金及び報奨金の額については、前述のとおり 独自に決定される仕組みとなっていることから、過去にも三度財政赤字となっているが、 障害者雇用納付金による収入のみで自立的な運営を行ってきた障害者雇用納付金財政の 持続可能性を確立するためには、支出か収入のいずれか又は両方を、障害者雇用納付金財 政の状況と連動して決定される仕組みとすることも考えられる。
・ この点、現在の障害者雇用納付金財政の状況としては、制度創設時と比較して障害者雇 用調整金が相当広範囲にわたり支給される状況となっており、フランスやドイツでは障害 者雇用調整金の仕組み自体が設けられていないこと等も踏まえると、障害者雇用調整金の 支出を抑制的にすることが考えられる。具体的には、これまでも障害者雇用納付金財政の 単年度収支がひとたび赤字になると、制度要因等が大きく変化しない限りその状況が継続 する傾向が見られたことから、単年度財政が赤字になった時点で、赤字額の程度に応じて 翌年度以降の障害者雇用調整金の額を減額させる仕組み等をあらかじめ規定しておくこ と等も考えられるのではないかというものである。
・ ただし、障害者雇用調整金の支給額について一定の枠組みを設けることからすれば、ま ずはそうした制度改正の影響等も踏まえつつ、中期的に検討を進めていくことが望ましい との意見も示されたところであり、今後更なる検討を重ねる必要がある。

Y おわりに
・ 本報告内容については、労働政策審議会障害者雇用分科会に対して事務局より報告し、 制度の見直しに向けた議論に繋げていくとともに、予算措置等において対応し得るものに ついては、今後の事業や制度運営において円滑に実現していくことが望まれる。
・ そのほか、本研究会のヒアリングで示された意見については「関係者ヒアリングにおい て関係者及び委員から出された意見等の整理」(第 6 回研究会(平成 29 年 12 月 22 日) 事務局報告資料)において整理しているところであるが、このうち今回の取りまとめに含 まれない内容についても、厚生労働省においてしっかりと受け止めていくことが求められ る。
・ 本研究会では、就労を希望する障害者の希望や障害特性が多様化する中にあって、働き 方の選択肢の拡大や、長く安定的に働き続けられる環境整備に向けた対応や制度の在り方 のほか、中小企業における障害者雇用の推進等を図るための方策についての提言を行った。 私たちとしては、こうした取組の推進により、障害者雇用の量的側面・質的側面のいずれにおいても更なる改善が図られることを目指すものであるが、自らの希望や特性に応じて働き方を選択し、安心して安定的に長く働き続けられる環境が整備されていくことは、障害の有無に関わらず、全ての労働者にとっての働く上での基盤であるということも、改めて認識しておく必要があるのではないだろうか。
人生全体で考えれば、誰もが、自らの仕事と、育児・家事や介護、病気の治療、障害、 体力の低下等といった事情とを共存させていくこととなる可能性がある以上、お互いの抱 える事情を理解・配慮し、お互いの「できないこと」ではなく、お互いの「できること」「得意なこと」に目を向け、チームとしての成果物を作り上げていく姿勢は、全ての人にとって「自らの希望や特性に応じて働き方を選択し、安心して長く働き続けられる環境」が常に整えられているという状況に繋がるものである。
・ 今回提言した政策方針が実現されることによって、障害者雇用の質の向上が図られると ともに、全ての労働者にとって働きやすい環境が整備され、一億総活躍社会の実現に向け た取組が推進されるよう、祈念するものである。

○(参考) 今後の障害者雇用促進制度の在り方に関する研究会開催要綱
○(別紙) 今後の障害者雇用促進制度の在り方に関する研究会参集者
○今後の障害者雇用促進制度の在り方に関する研究会(開催状況)

次回は、新たに「平成30年版 子供・若者白書(概要版)(PDF版)」からです。
「今後の障害者雇用促進制度の在り方に関する研究会」の報告書 [2018年08月20日(Mon)]
「今後の障害者雇用促進制度の在り方に関する研究会」の報告書を取りまとめました(平成30年7月30 日)
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_00679.html

X 障害者が長く安心して安定的に働き続けられる環境整備に繋げる制度の在り方
・ 障害者雇用率制度や障害者雇用納付金制度は、大企業に対する法令遵守意識の徹底や、 中小企業等の障害者雇用意欲の喚起等によって、我が国における障害者雇用の進展に大き く寄与してきた。
制度としては、当初の身体障害者のみを雇用義務の対象とする仕組みから、知的障害者や精神障害者を対象に追加した仕組みへと大きく変化しつつ、対象となる企業も拡大してきており、制度の社会的な認知の高まりと相まって、その意義は益々大きくなっていると言える。
・ 他方、障害者雇用状況が継続的に進展してきたことで、法定雇用率の連続的な引き上げ や、障害者雇用納付金財政の状況が厳しくなる等、制度が創設された当時には、十分には 予想されていなかった事態も生じているところである。
・ 本制度が障害者雇用状況の進展に大きく寄与してきたことを踏まえ、障害者雇用の促進 が図られ、障害者が長く安心して安定的に働き続けられる環境の整備に繋がっていくよう、 制度の在り方についても検討を行った。

1.障害者雇用率制度の在り方
(障害者雇用率制度について)
・ 民間企業の法定雇用率については
、昭和 51 年に民間企業に対して雇用義務を課した際、 当初は 1.5%と定められていたが、昭和 63 年 4 月に1.6%、平成 10 年 7 月に知的障害者を雇用義務の対象に追加した際に 1.8%、平成 25 年 4 月に 2.0%と、結果として 10 年以上の間隔をおいて徐々に引き上げられてきた。障害者雇用促進法に基づき、 法定雇用率は「(中略)少なくとも 5 年ごとに、当該割合を勘案して政令で定める」とされているが、これまで、見直しの度に法定雇用率を改定することとならなかったのは、現在に比べて障害者雇用状況が横ばいで推移する等、進展の状況が必ずしも堅調ではなかったことによるところが大きい。
・ 他方で、近年、法定雇用率は短期間で連続的に引き上げられている。これは、障害者用 促進法の規定により、法定雇用率は、労働市場全体における障害者の労働者や失業者の割 合を導き出す計算式の結果に応じて決めるという、障害者雇用の進展状況と法定雇用率の 見直しの動きが相互に連動する仕組みであるために、最近の障害者雇用状況の着実な進展 の動向を反映する結果となるためである。
・ このように、企業が障害者を雇用すればするほど法定雇用率が上昇していく仕組みにつ いて、企業が障害者雇用を進める際に中期的な視点をもって環境整備を図ることが困難な ため、障害者雇用における最終的な目標設定となる雇用率を示すべきとの意見もある。しかし、法定雇用率が労働市場の実態に合わせて設定されてきたからこそ企業の中に達成す るべきとの考えが浸透してきたとする見方もあることや、障害者の雇用環境が整うことで 潜在的な就労希望者が労働市場に出てくるようになること、障害者手帳の所持者数が増加 し続けていること等から、現時点で、障害者雇用対策における固定的な法定雇用率を設定 することは困難であると言える。
・ このため、現行の法定雇用率の設定に関する基本的な考え方は維持する必要があると考 えられるものの、計算式の結果を踏まえて、直ちにその通りに設定することとしてきた方 法については見直しが必要との意見が多かった。
・ 平成 30 年 4 月からの法定雇用率の設定の際には、当面 5 年間の暫定措置として激変緩和措置が盛り込まれていたところであるが、これは、障害者団体等からも、長く安定的に働き続けることのできる環境を整備するためには、激変緩和措置を適用し、社内の環境整備等を行いながら徐々に引き上げていくべきとの意見が多く示された結果として、法定雇用率を徐々に引き上げていくこととしたものである。
・ 現行制度をもとにすると、法定雇用率は、平成 33 年 4 月の前に 2.3%に引き上げられた後も、激変緩和措置の適用期限が到来する平成 35 年 4 月の見直し等において、過去にない頻度で連続して上昇していく可能性がある。その際、特別支援学校や就労移行支援事業所等から一般雇用への移行状況等を踏まえると、障害者の職業準備性を高めながら短期間で法定雇用率の上昇分に対応した送り出しを行い、各民間企業が法定雇用率の上昇分に対応した採用を進め、直ちに法定雇用義務を達成することは困難との意見が示されたところである。
・ このため、今後の法定雇用率の見直しに当たっては、計算式の結果を踏まえて直ちにそ の通りに設定することとしてきた現行の制度と比べて、障害者雇用の促進を阻害しないも のとすることは前提としつつ、できる限り中期的な法定雇用率の展望を示し、企業や支援 機関等において障害者が長く安定的に働き続けられる環境が整備されるよう促すため、法 定雇用率の計算結果を踏まえつつも、企業の雇用状況や支援機関の体制、障害者実雇用率 の現状及び見通し等を踏まえ、労使及び当事者並びに有識者の議論により決定していくこ ととしてはどうか。
・ また、現在の法定雇用率の計算に当たっては、就労継続支援 A 型事業所の利用者についても雇用契約を締結していることから、計算式の分子(雇用されている障害者)の内訳に含まれている。就労継続支援 A 型事業所における雇用については、利用者である雇用者の数等に応じて障害福祉サービスの報酬が支払われる等、いわゆる一般の雇用とは異なることからも、就労継続支援 A 型事業所が増えれば増えるほど法定雇用率が引き上げられていくような仕組みは適当ではないとの意見が多く示され、法定雇用率の設定に当たっては、計算式の分子の数値から就労継続支援 A 型事業所の利用者数を控除した数を用いるべきとの意見も示された。 今後、法定雇用率の設定について、前述のような方法で決定していくこととする場合に は、議論の際の参考データとして就労継続支援 A 型事業所の利用者数を控除した結果に ついても考慮しつつ、議論していくことも考えられる。
・ その場合、後述の論点とも関連するが、就労継続支援 A 型事業所の利用者については、 一般の雇用とは異なるものであることを前提にするのであれば、法定雇用率の計算式から 控除するだけでなく、障害者雇用調整金及び報奨金の支給対象としないことや、当該事業 所の利用者を障害者雇用率制度における雇用者とみなさないこと等の対応を検討すべき との意見も示された。

除外率制度について)
・ また、障害者雇用率制度における除外率制度については、平成 14 年の法改正で廃止す ることとされたものの、個別の企業に対する影響に鑑み当分の間は維持することとされ、 平成 16 年、22 年の二度、10%ポイントずつ引き下げられた後は、率設定が維持された状 態となっている。除外率制度は、相対的に障害者雇用が困難とされてきた業種に対する特 例的な措置であることや、平成 25 年以降連続して法定雇用率自体が引き上げられている こと等から、特定の業種の障害者雇用に対する意欲を削がないようにするためにも、現在 適用されている除外率の更なる引下げについては慎重に対応すべきとの意見も多い。
○ しかしながら、法律的には除外率制度が廃止することとされている中にあって、雇用が 困難とされてきたこれらの業種においても障害者雇用に対する先進的な取組は様々に見 られることや、「障害者と共に働くことが当たり前の社会」という理念にもそぐわないこと、いずれの業界においても近年障害者雇用は進展してきていること等から、平成 22 年の引き下げ後、これら特定の業種における障害者雇用がどのように進んできているのかを整理し、今後の対応についての検討を進める必要がある。

次回はこの続き、「X- 2.障害者雇用納付金制度の在り方」からです。
今後の障害者雇用促進制度の在り方に関する研究会」の報告書 [2018年08月19日(Sun)]
今後の障害者雇用促進制度の在り方に関する研究会」の報告書を取りまとめました(平成30年7月30 日)8/19
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_00679.html

3.中小企業に対する障害者雇用調整金及び障害者雇用納付金の適用
・障害者雇用納付金制度(障害者雇用調整金及び障害者雇用納付金)
→現行制度上、常用労働者が 100 人を超える企業に対して適用、法定雇用義務の課されている企業の適用対象(常用労働者 45.5 人以上)とは、差が設けられている。これは、障害者雇用納付金制度自体は、原則として雇用義務のかかる全ての事業主に適用されることとなっているものの、制度創設時に、中小企業の負担能力に対する配慮や、当時の中小企業は比較的法定雇用率を達成していたこと等から、当分の間、常用労働者 300 人超の企業に適用対象を限定することとされたことによるもので、その後、平成 22 年 7 月から常用労働者 200 人超、平成 27 年 4 月から常用労働者100人超と、障害者雇用調整金制度の適用対象は徐々に拡大されてきた。その結果として、100 人超の企業においては適用拡大の時期を中心に障害者雇用が特に進むとともに、その後も法定雇用率の引き上げ等に合わせて障害者雇用の状況が進展しており、制度改正の効果が表れているところである。
・ 常用労働者 100 人以下の企業→制度の適用対象となっていないこと等も相まって、全体としては障害者雇用が停滞しているが、一方で、平成 29 年時点(法 定雇用率 2.0%時点)において、法定雇用義務を達成している企業の割合は 46.5%、法定雇用義務による雇用者数を超えて障害者を雇用している企業の割合は 25.7%であるように、障害者雇用に積極的に取り組む企業も相当程度にのぼる。しかし、報奨金の対象となる一部の企業を除き、継続的な経済支援を受けることはできない状況となっている。
障害者雇用調整金は、障害者を雇用するために必要となる施設整備や人的配置といった 特別な費用を支えるためのものであることから、常用労働者 100 人以下の企業であって も、雇用義務が課されている以上、支給されるようにしていくことが望ましいと言える。その際、障害者雇用納付金制度が、企業による社会連帯の仕組みとして、他財源を投入することなく独自の財源により維持されてきた制度であることを踏まえれば、これまでの制 度の変遷等を踏まえても、障害者雇用調整金の支給対象範囲を拡大する際には、障害者雇 用納付金の納付義務についても同時に適用範囲を拡大していくこととするのが自然。
・ この点、常用労働者 100 人以下の企業についても障害者雇用に積極的に取り組む企業 が相当程度にのぼること等を踏まえれば、障害者雇用納付金の納付義務についても拡大し ていくことが考えられるのではないか。また、その拡大する範囲については、フランスや ドイツと同様に、雇用義務対象企業全てに納付義務を課すことも考えられるが、平成 25 年から雇用義務の対象とされている 50 人規模以上に限定して適用拡大していくこととするのが適当ではないか。なお、本制度の適用対象となる企業規模を、常用労働者が 50 人 以上の企業にまで拡大する場合、企業規模や経営基盤等を勘案し、その後の更なる適用拡大は行わないこととすべきとの意見も示された。
・ なお、中小企業に対して障害者雇用調整金及び障害者雇用納付金の適用を拡大する際に は、障害者雇用納付金の額を引き下げる等の猶予措置が必要ではないかという意見が出さ れた。その際、障害者雇用調整金及び障害者雇用納付金の適用対象企業を、常用労働者 300 人超の企業から常用労働者 100 人超の企業に拡大してきた際の方策が参考になるのでは ないかという意見も示された。
○ また、障害者雇用調整金の適用対象を拡大した場合、報奨金の対象となる企業の規模は、 より小規模のものに限定されること等から、障害者雇用の促進に向けて現行の障害者雇用 者数の要件を緩和することも考えられるのではないかという意見も示された。

次回は、「X 障害者が長く安心して安定的に働き続けられる環境整備に繋げる制度の在り方」からです。

◆農水省、障害者雇用率の水増し認める 「精査中」の省も
8/18(土) 8:48配信(すごく残念ですね!!)
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180818-00000012-asahi-pol
「今後の障害者雇用促進制度の在り方に関する研究会」の報告書 [2018年08月18日(Sat)]
「今後の障害者雇用促進制度の在り方に関する研究会」の報告書を取りまとめました(平成30年7月30 日)8/18
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_00679.html

W 中小企業における障害者雇用の推進
1.中小企業における障害者の雇用状況と支援措置
(中小企業における障害者の雇用状況)
・ 中小企業における障害者雇用は、常用労働者 100 人超の中小企業について
は、障害者雇用納付金の適用対象が拡大されてきたこと等の影響もあって着実に進展していく傾向が見られるものの、常用労働者 100 人以下 の中小企業については障害者雇用の状況が比較的停滞している。
・実際、障害者雇 用ゼロ企業は全部で 26,692 社(平成 29 年 6 月時点)であるが、そのうち常用労働者 100 人未満の企業は約 78%(20,976 社)、常用労働者 100 人以上 300 人未満の企業は約 21% (5,658 社)となっているように、障害者を雇用していない企業のほぼ全てが中小企業である。こうした背景としては、障害者雇用に対する経営者の認識が深まっていないことや法令 遵守意識が十分には浸透していないこと、実際に雇用するイメージが十分には広まっておらず採用活動の開始に繋がっていかないこと、障害者を実際に雇用するだけの業務量を想 定できないことに加え、就労を希望する障害者も中小企業への応募には積極的ではないといったミスマッチがあること等、様々な要因が考えられる。

(中小企業に対する支援措置について)
・障害者の希望や特性を踏まえた働き方を実現していくためには、身近な地域の中で、できる限り多様な働き方の選択肢が確保されていく必要がある。このためには、上記の中小企業において障害者雇用が進展していない様々な要因を十分に踏まえつつ、中小企業における障害者雇用の促進に向け、これまで障害者を雇用してこなかった中小企業への対応等を含め総合的な支援を講じていく必要がある。中小企業における障害者雇用が進み、希望や特性等に応じた身近な地域で働く選択肢が確保されていくことは、「障害者と共に働くことが当たり前の社会」を目指していくための重要な鍵を握る取組である。 特に障害者雇用の経験やノウハウが不足している中小企業に対しては、企業ごとのニーズに合わせて支援計画を作成し、採用の準備段階から採用後の定着支援まで一貫した支援を実施することが重要である。障害者雇用ゼロ企業を減らしていくためには、ハローワークによる相談支援に加えて、実際に障害者が働く現場や特別支援学校の実習の見学会の開催等、障害者雇用ゼロ企業が障害者雇用の具体的なイメージを掴めるようにしていく取組や、障害者雇用に知見のある企業 OB や現役の企業在籍型ジョブコーチ等を障害者雇用ゼロ企業に派遣して具体的な相談に対応していく取組等も進めていく必要がある。
・ 本研究会で議論されてきた週所定労働時間 20 時間未満の雇用に対する支援措置の実施や在宅就業障害者支援制度の拡充等については、就労を希望する障害者の特性が多様化する中、障害者の雇用・就業の選択肢を拡大する観点から重要な取組であるが、こうした取組に対する支援措置は、積極的に障害者雇用に取り組んでいる企業だけでなく、フルタイムの労働者を新たに雇用する分の業務量が見つからないとしている中小企業や、実際に採用して共に働くイメージが十分につかめていない中小企業の観点からも、本格的な障害者雇用に向けたハードルを引き下げ、取組の選択肢を増やすものである。
・ その他、障害者の雇用の質の向上で議論してきた、地域における就労支援機関の機能強 化や、障害者のキャリア形成等の促進に対する助成措置の創設等の取組についても、障害 者雇用のノウハウのない中小企業にとっては、長く安心して働き続けられるための環境を 整備するための重要な要素であると言える。 障害者就業・生活支援センターに対しては、従来の雇用管理等に関する企業支援に加えて、障害者雇用に関わっている現場の労働者が孤立することのないよう支援する取組の推進や、地域内で障害者雇用経験の豊富な企業によるノウハウの移転等の支援を図るなど、障害者雇用が広がっていく中で雇用経験のない中小企業向けの新たな取組を求めていく必要がある。
・ また、前述のとおり、障害者雇用の質の向上を図るため、企業による取組を障害者雇用 率制度や障害者雇用納付金制度の中で評価してはどうかという意見も多く出されたもの の、この点は、働く障害者や企業それぞれの事情により取組の困難度が異なること等から、 一律に制度の中で評価する方法については慎重な検討が必要と考えられる。

2.障害者の働きやすい環境を整備する中小企業の認証制度の創設
・ 大企業と比べて中小企業の障害者雇用が進まない背景としては
、前述のとおり、経営者 の理解が十分ではないことや、企業に対する社会的な関心が必ずしも高くなく結果として 障害者雇用に対する法令遵守の意識が低いケースが多いこと、積極的に障害者雇用に取り 組んでいる中小企業の情報も広がりづらいこと、採用活動を行っても就業を希望する障害 者とのマッチングが困難なケースが多いこと等の事情が挙げられる。中小企業における障 害者雇用を進めていくためには、従来の制度的枠組みだけでなく、個々の中小企業におけ る障害者雇用の進展に対する社会的な関心を喚起し、経営者の障害者雇用に対する理解を 深めていくとともに、こうした取組を進めている企業が、社会的に様々なメリットを受け られるようにしていくことも必要である。
・ この点、中小企業における障害者雇用の進展により、身近な地域の中で、多様化する障 害者の雇用の選択肢が確保されることが期待されること等から、中小企業において、こう した働く選択肢の確保に資する取組を進めている場合に、その企業の取組を支援する仕組 みを導入することが考えられる。その際、障害者一人ひとりの希望や特性に応じた働き方 を可能とするための選択肢を身近な地域の中で確保していくという観点から、例えば、治 療や通院等に対応した柔軟な時間管理や、ICT を活用した在宅でのテレワーク、加齢によ る体力の低下等を踏まえた配置転換や職域開発等を導入している等、障害者雇用の質の向 上に資する取組を進めている中小企業に対する支援策としていくことが考えられる。
・ また、雇用の質の向上に資する取組は、障害者にとって安心して安定的に働き続けるこ とのできる環境の整備に繋がるものであることは言うまでもないが、障害の有無に関係な く全ての労働者にとって、働きやすい職場環境の整備、通院・治療に伴う休暇や多様で柔軟な働き方・休み方の実現といったワーク・ライフ・バランスを実現できるといった効果をもたらすものでもある。こうした観点から、障害者雇用の質の向上に関する取組を進め る企業に対する支援策としては、個別の支援措置だけでなく、社会の関心を喚起し、社会全体に影響を及ぼし得るような仕組みを用いることが望ましい。

・これらを総合的に勘案すると、具体的には、企業の実雇用率や職場定着状況のほか、雇用されている障害者本人の求める処遇改善への可能性や社員の障害理解の促進などの 様々な取組を進めている中小企業については、この取組内容を総合的に評価し、ハローワ ークでの重点的PRや認定企業による面接会等の開催、自社の商品や広告等における認定 マークの活用等を行えるようにするため、中小企業向けの公的な認証の仕組みを新たに創 設することが考えられるのではないか。
・その際、企業や雇用される障害者の各々の事情によって、安心して安定的に働き続ける ことのできる環境を整えるために必要な取組の内容は異なることから、公的な認証に当たっては、障害者雇用の質の向上に関する取組として考えられる候補の全体像を整理した上で、各企業において取り組んでいる内容を総合点で評価できる仕組みとすることが考えられる。また、公的な認証に関するルールを策定するにあたっては、中小企業の障害者雇用や経営の実情等を踏まえたものとしていくことも重要である。
・また、公的な認証の仕組みと合わせて、障害者雇用に取り組む企業の設備整備等に対す る政策金融における低利融資の実現や、公共調達における積極的評価といったメリットを新たに与えることも、中小企業における障害者雇用を促進するため、より強力なインセンティブになり得るものと考えられる。公的な認証の仕組みを創設する際には、対象となる企業のニーズや公的な認証に対する申請件数の推計等も踏まえつつ、さらに検討を進めていくことが求められる。

次回はこの続き、「3.中小企業に対する障害者雇用調整金及び障害者雇用納付金の適用
」になります。
「今後の障害者雇用促進制度の在り方に関する研究会」の報告書 [2018年08月17日(Fri)]
「今後の障害者雇用促進制度の在り方に関する研究会」の報告書を取りまとめました(平成30年7月30 日)
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_00679.html

C障害者雇用の質の向上に向けた事業主の取組に対する支援措置の創設等
(障害者の雇用継続に対する支援について)
・ 障害者の雇用の質の向上を図るためには
、企業による積極的な取組を障害者雇用率制度 や障害者雇用納付金制度の中で評価することが望ましいとの意見も多く見られた。その際、 雇用の質としては、正規雇用労働者であること、フルタイム雇用(週所定労働時間 40 時間の者や、他の社員と全く同じ勤務時間である者)であること、長期間雇用継続されていること等をメルクマールにしてはどうかというものであり、いずれも、希望する者にとっ ては望ましい働き方であると言えることから、企業による雇用改善のインセンティブとな るのであれば、望ましい取組であるとも言える。
・ しかしながら、事業主に対して規制をかける制度の中で評価を行うとすれば、枠組みの 明確な一律の指標を設ける必要があると考えられるものの、一人ひとりの障害特性や希望 等によってその困難度が大きく異なり、企業ごとの雇用形態の特徴等にも大きく左右され ることや、そもそも一人ひとりにより望む働き方が異なること等から、評価軸を絞ること が難しいのではないかという意見も示された。

・ この点、障害者雇用の質に関して多くの意見に共通するものとしては「希望や特性に応 じて、安心して、安定的に働き続けることができる環境が整っていること」が挙げられるのではないかと考えられるところ、長期雇用継続を実現している企業については、長年に わたる雇用管理上の努力を障害者雇用率制度等の中で評価してはどうかという意見もあ った。障害者の長期的な雇用継続を実現している企業において、以前より様々な配慮を講 じてきたであろうこと自体は容易に想像でき、現在の職場定着等の課題に対する対応とし ても重要な意味を持つものと言える。
・ 現在雇用されている者の雇用継続期間の傾向は、労働者全体と身体障害又は知的障害の 労働者の間では大きな差は見られないとの意見もある一方で、前述のとおり、中高年齢層 の障害者については加齢による体力等の低下も見られる中で雇用継続のための様々な配 慮を必要とするケースが多いことや、いずれの障害種別についても中高年齢層の雇用者割 合が低水準にとどまっていること、精神障害者等をはじめ職場定着率が低いことが障害者 雇用対策の大きな課題となっていること等から、長期間にわたり雇用継続してきた障害者 については、雇用率制度におけるカウントを上積みする措置を講ずることも考えられる。
・ 今後の検討に当たっては、こうした仕組みについて、当分の間はこれまでに雇用継続し てきた結果に対する評価が中心となり、新たに障害者雇用の促進に向けた取組を進めてい く企業にとって直ちには恩恵が生じない仕組みであること等の課題も踏まえる必要あり。

(雇用の質の向上に向けた助成措置等について)
・ また、障害者雇用に対する助成措置の全体像を見ていくと、雇入れ段階に対する支援策 が額・メニュー共に非常に多くなっているものの、直近では、採用活動段階の前にあるよ うな企業が障害者の実習を受け入れた場合に対する謝金の支払い措置や、雇用する障害者 からの合理的配慮に関する相談を受け付けるための窓口の設置に対する助成措置、障害者 の雇用管理改善や病休制度等の導入を行った企業に対する助成措置が創設される等、雇入 れ前から雇入れ後の配慮まで、比較的幅広い支援策が用意されているものと言える。 障害者が安定的に働き続けられる環境を整備してくためには、このように雇入れ前だけ でなく、雇入れ後の環境整備等についても着実に進めていくことが求められている。
・ この点、障害者の中期的なキャリア形成を図るため、障害者職業能力開発校における障 害特性に応じた職業訓練の実施や、一般の職業能力開発校において精神障害者の受講を受 け入れるための体制整備といった取組を進めてきているところではあるが、雇用する障害 者について、障害の状況や業務の内容等を踏まえながら積極的に能力開発を進める事業主 に対する支援が十分ではないとの指摘があった。
・ 一般労働者と比較して障害者である労働者の場合には、OJT、Off-JT ともに受けられる機会が非常に少ない状況にあるが、いわゆる高度な専門的知識を習得するような訓練の みならず、障害特性等に応じて一般的な事務的技能を修得するものを含め、様々な訓練機 会を確保することで、職域の拡大や配置転換等の可能性が広がっていくものと考えられる。 具体的には、中途障害となった場合に、新たに技能を修得することによりそれまでの経歴 を活かす職域に引き続き従事できるようになることや、加齢等により体力等が低下する中 であっても、新たな技能の修得によって職域が広がり比較的長期にわたり働き続けられる といったことが考えられる。こうしたケースには、一般労働者のキャリア形成を促すため の助成措置では支援対象とならないものも含まれるが、中途障害者の雇用継続を含め、障 害者の職業生活の安定やキャリア形成等を図るためには必要な、障害者雇用に特有の課題 であると言えることから、こうした取組に積極的な企業に対する何らかの支援措置を講ず ることが考えられる。
・ なお、現状、障害者の訓練機会の拡大が進まない背景としては、事業主に対する支援措 置が十分ではないことに加え、事業主や障害者がこうした訓練機会に関する情報を十分に は持っていない中にあって障害者本人からの積極的な申し出が難しいことや、一般的な職 業訓練と比較すれば訓練機会に制限があり職務命令として障害者を訓練に派遣する場合 の事業主の負担感が重くなる場合があること、訓練機会の提供によりどの程度職域が回復 又は広がるのかという理解が十分には進んでいないこと等が考えられる。
・ 今後、雇用されている障害者の能力開発やキャリア形成の促進に向けた取組が進んでい くことは合理的配慮の精神を十分に浸透させていく観点からも重要な要素、事業主が雇用している障害者に対して、中期的なキャリア形成等を図る観点から障害特性等に配慮した訓練機会を提供する場合等には、障害者雇用納付金財政を活用して、 こうした事業主の取組を支援していくことが考えられるのではないか。その際には、雇用する障害者の職業訓練等を進めることによる、具体的な効果やメリット等が適切に周知されるよう、企業に対する周知の取組も併せて進めていく必要がある。また、障害者の訓練ニーズを踏まえた訓練の実施に更に努めるべきとの意見が示された。
・ また、合理的配慮の進展のため必要となる就労支援機器や職場介助者等については、現 行の助成金制度等において一定の対応を図っているところではあるが、特に中小企業にお ける障害者雇用を促進するため、最新のテクノロジーを活用した支援器具も速やかに支援 の対象とする等、より一層使い勝手の良いものとしていく必要がある。

次回は、「W 中小企業における障害者雇用の推進」からです。
「今後の障害者雇用促進制度の在り方に関する研究会」の報告書 [2018年08月16日(Thu)]
「今後の障害者雇用促進制度の在り方に関する研究会」の報告書を取りまとめました(平成30年7月30 日)
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_00679.html
B地域における就労支援体制の機能強化
(地域における就労支援体制の現状)
・ 障害者の就労支援を行う地域の体制について
、現在は、ハローワーク(全国 544 か所)、 地域障害者職業センター(全国 52 か所)、障害者就業・生活支援センター(全国 334 か 所)のほか、自治体が設立した支援機関や、民間の就労系福祉サービス事業所、障害特性ごとの専門支援機関等が、地域の状況等に応じて、多岐にわたって活動している。 加えて、専門的知見を有する医療機関や産業医、精神保健福祉士、作業療法士等も、それぞれの分野から障害者の雇用改善等に関わっている。
・ 近年、地域における民間の就労支援機関や障害者雇用に携わる専門職等が増加していく 傾向にあり、障害者や雇用する企業にとっては望ましい側面も見られるものの、それぞれ が独自のノウハウや考えに基づき取り組んでいること等により支援の質や力量の差も大 きく、地域のネットワークも十分には形成されていないことにより、障害者本人にとって 望ましい支援を受けられていないといった課題が散見される。例えば就労移行支援事業所 についても、一般雇用への移行率が 2 割以上の事業所が全体の約 5 割にまで上昇してき ている一方で、移行率が 0%の機関も依然として約 3 割となっている等、選択する支援機 関により受けられる支援には大きな差が生じている。また、福祉や医療、その他の専門家等が、それぞれの視点で支援を行っている場合に、他の支援機関との情報連携や協力関係が適切に構築できないといったケースも見られることから、蓄積されてきた障害者雇用の知見を、どのように展開していくかということも課題となっている。

(ハローワークの取組の現状と今後の対応)
・ ハローワークにおいては
、就職を希望する障害者の求職登録を行い、専門職員や職業相 談員がケースワーク方式により、障害者本人の希望や特性等に応じたきめ細かな職業相 談・紹介、職場定着支援等を実施。具体的には、ハローワークの有する機能を活かして、雇用率達成指導や各種助成金制度の活用等と結びついた職業紹介や、障害者雇用促進法に基づく合理的配慮の提供の徹底等を図るための取組により職場定着支援を進める等、有機的な広がりを見せている。
・ ハローワークには、他の就労支援等を受けていない障害者も多く来所することから、引 き続き、就労を希望する障害者の障害特性の多様化等に対応して、障害者本人が実際に必 要とする地域の支援に適切に結びつけていくとともに、地域の就労支援機関とのチーム支 援等を活用した効果的な職業紹介・職場定着支援に結びつけていく必要がある。

(地域障害者職業センターの取組の現状と今後の対応)
・ 地域障害者職業センターについては、
障害者に対する専門的なリハビリテーションを提 供する施設として全国に展開しており、障害者一人ひとりのニーズに応じて、職業評価、 職業指導、職業準備訓練等の支援を実施するとともに、事業主に対しても、雇用管理に関する専門的な支援を行ってきている。
・ また、地域障害者職業センターの役割として、障害者雇用促進法上、「雇用されている 知的障害者等に対する職場への適応に関する事項についての助言及び指導」が掲げられており、引き続き重要な取組ではあるが、近年、地域の就労支援機関等であっても知的障害者の職場適応支援等は比較的対応できるケースが増えてきていること等から、今年度から開始された第四期中期計画(独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構による五ヶ年の事業計画)においては、より個別性の高いサポートを必要とし成果の出づらいケースの多い精神障害・発達障害・高次脳機能障害に対する支援を重点的に実施するよう目標設定を行っている。また、地域の支援機関の質を引き上げていく ため、職業リハビリテーションに関する助言援助等を就労移行支援事業所等に対して実施することとされており、積極的な取組が求められる。
・ ジョブコーチについては、精神障害者等の職場定着が課題となる中、精神障害者等を雇 用する企業にとっては企業内で直接的に支援を行っていくことの効果が認識されている こと等から、研修の受講ニーズが高まっており、今年度から、独立行政法人高齢・障害・ 求職者雇用支援機構におけるジョブコーチの養成数を倍増させた。養成に当たっては、特に企業在籍型のジョブコーチが引き続き能力の醸成を図れるよう、フォローアップ研修の積極的な活用やネットワークの構築・活用等を進めていく必要がある。また、 精神・発達障害、聴覚障害や視覚障害等について、ジョブコーチのフォローアップ研修等を活用して、それぞれの支援対象者に応じた専門的な知見を修得できる場を整備していく必要がある。 (障害者就業・生活支援センターの取組の現状等)
・ 障害者就業・生活支援センター→障害者一人ひとりに対して就業面と生活面 の一体的な相談支援を実施し、自立した職業生活を実現するため、それぞれの支援対象者の必要に応じて、地域の就労支援機関や福祉施設、医療機関等との間でサービスの利用調整や現況に関する情報交換を行う等、「地域の支援機関のハブ」としての役割を果たしてきている、全国 334 か所と、障害福祉圏域の9 割以上に設置される状況にまで広がってきている。就労支援の経験が比較的豊富で、精神障害者の職場定着等でも成果を出しているが、今年度からは、 ソーシャル・スキル・トレーニングの活用等によるグループワークや、独自に開発したアセスメントツールの活用など、職場定着に向けた新たな取組への支援措置等も講じている。
・ 地域障害者職業センターが都道府県に1 カ所程度の設置となっているのに対し、障害者就業・生活支援センターは概ね障害福祉圏域ごとに設置されていることや、就業面と生活面の双方を一体的に支援していること等から、就労支援機関や企業等にとって身近な存在であり、地域の実情等を踏まえた対応が可能であるとの声が多く聞かれる。

(障害者就業・生活支援センターにおける今後の取組)
○ このため、障害者就業・生活支援センターにおいては、従来の障害者一人ひとりのニーズに応じた「地域の支援機関のハブ」としての役割に加え、今後、「地域の支援機関のネ ットワークのハブ」としての役割が期待される。具体的には、地域のあらゆる支援機関等の支援力の底上げを図り、地域の支援機関が自らの支援する障害者に対して自力で適切な就労支援等を実施できるよう、障害者就業・生活支援センターが、地域の支援機関の支援手法に対する助言・相談支援を実施するほか、障害者就業・生活支援センターで培った就労支援ノウハウの移転を進める等、地域の中心としての役割を果たしていくというもの。特に、地域障害者職業センターにおいては、障害者職業カウンセラー等が障害者雇用の困難事例への対応や先進的事例の収集等を行っているのに対し、障害者就業・生活支 援センターにおいては、こうした事例等を十分に咀嚼し自ら実践する中で、地域の様々な支援機関や医療機関等における障害者雇用の促進に対する理解の浸透を図るとともに、生活面での支援と一体となった就労支援の進め方等に対するノウハウの提供等が求められているものと言える。
・ こうしたネットワークを構築していく中で、事業主団体や地域の事業主との間でも密接 な関係を構築し、地域全体で障害者雇用の気運を高めていくとともに、障害者雇用や実習 の受け入れに理解のある事業所の開拓を進めていくことも期待される。
○ また、障害者の雇用環境を整備していくため、できる限り多くの人が障害に関する知識 を有していることが望ましいことから、政府としても「精神・発達障害者しごとサポーター」の養成講座等を開催するとともに、独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構におけるジョブコーチの養成数も倍増させる等の対応を図っているが、特に中小企業等にお いては、企業内の障害者雇用に関するノウハウを有する人材が限定的で、企業内で雇用管 理上の相談等を共有することが難しいという現状が見られる。地域の中小企業での雇用を 進めていくためには、実際に障害者の雇用管理に携わっている社員や、周りで仕事をして いる社員等が、気軽に雇用管理上の課題や悩み、接し方等を相談できる環境を整えていく ことも重要であり、障害者就業・生活支援センターの役割として期待されるところ。
・ また、従来から明示的に支援対象とされてきた精神・発達障害者や知的障害者等に加え、 難病や依存症等で就労に困難を抱えているケースや、生活困窮者等でコミュニケーション や日常生活管理等に課題があり障害がうかがわれるケース等でも、同様の課題から就労や 職場定着が困難な場合が多く見られる。こうした対象者の場合に、担当している支援機関が専門的なノウハウを有しておらず、就労や職場定着等に困難を抱えたままとなるケースも見られることから、障害者就業・生活支援センターで蓄積されてきた就労支援のノウハウ等を活用し、一人ひとりの状態に着目した支援を充実していくことが求められている。実際、地域によっては、難病や依存症等のそれぞれに特化した支援機関等との連携を図りながら、こうした人たちへの就労支援に積極的に取り組んでいるセンターも見られる一方、こうした取組が進んでいない地域も見られる。 このため、障害者就業・生活支援センターにおいては、できる限り、こうした専門特化した支援機関等との連携を進めるとともに、センターでの支援が効果的と考えられる者を中心に、センターによる直接訪問支援を実施する等、専門的な就労支援を行うことも求められている。
・ 自らの圏域を超え、都道府県単位で障害者就業・生活支援センター同士の協議会を立ち 上げている事例の報告もあったが、こうした取組は、障害者就業・生活支援センター全体の能力向上や情報交換等に資するだけでなく、特別支援学校や都道府県の商工労働部等の ように障害福祉圏域を超えた業務を行っている公的機関との連携・調整も円滑かつ適切に 進めることができるといった効果が見られることから、他の都道府県においても同様の取 組を進めていくよう、促していくことも考えられる。

(障害者雇用における産業医の活用)
・ 産業医については、健診やストレスチェック等の結果を踏まえた生活習慣やメンタル不 調等へのアドバイスに加え、障害者本人の主治医とも協力しつつ、就労環境の整備や職場 復帰支援等について企業に助言する役割も担っており、障害者の雇用環境を整備していくため、その役割には期待されるところが多い。中途障害者が企業内での配慮を相談する場合や、障害の状況に対して必要以上に就労困難性を抱えていると判断するような企業に対する理解の促進を図る場合等、医療的知見を活かすべき場面も多い。現状では、産業医が選任されている場合であっても勤務時間が限定的であることや、労働者 500 人未満の事 業場では産業医の選任率が低いこと等の前提を踏まえた議論が必要であり、産業医の研修 の場面で障害者雇用に関するノウハウを提供する等、障害者雇用における産業医の活用を 進めていくための取組が求められている。
(障害者雇用のノウハウ等を有する人材の活用)
・ 近年、これまで障害者雇用経験のなかった中小企業等においても、多様な特性を有する障害者の雇用が進展する中にあって、「安心して、安定的に働き続けることができる環境」 をあらゆる企業で整備していくためには、企業が、障害者雇用経験の豊富な人材や専門職 人材に対して悩み事や対応方針等を気軽に相談でき、各企業等の実情や雇用されている障 害者の特性等を理解した上での適切な助言や支援を受けられる環境を整備することが重 要である。
・ このため、今年度から、独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構において、地域 の中で障害者雇用に関するノウハウを持っている様々な専門家の情報を蓄積し、障害者雇 用経験の少ない企業等に対して紹介・派遣するといったネットワーク事業を行っている。全国どこでも、支援を必要とする企業が必要な支援を受けられるよう、こうしたネットワークを積極的に活用し、大企業や特例子会社等で障害者雇用の豊富な経験を有する企業在籍型ジョブコーチや、精神・発達障害、視覚障害、聴覚障害、難病等、それぞれの障害特性ごとに支援経験の豊富な人材、障害者雇用に知見のある作業療法士や言語聴覚士等の専門職などについて、地域ごとの人材情報を蓄積し、必要とする企業に対する紹介・派遣等を行っていくことが求められる。

(教育機関との連携)
・ 近年、都道府県労働局やハローワーク等においては特別支援学校等との間で、特別支援 学校の生徒の実習受け入れ企業の確保や、地域の企業が特別支援学校の実習を見学するバ スツアーの開催等、就職活動の前の段階からの一貫した協力関係を構築してきており、引き続き、連携関係の強化に努めていく必要がある。
・ 他方、発達障害をはじめとする障害特性の多様化や教育機関における合理的配慮の提供 等により、キャリア形成の道筋も一人ひとり大きく異なる状況となっており、新卒障害者 の就労支援に当たっても、大学等の高等教育機関や普通高校、通信制の高校等、多様な教育機関との連携が求められる状況となっている。他方、これらの教育機関では、障害特性に応じた就労支援の経験が少なく、通学する学生や生徒も十分な就労支援を受けられない ケースが見られることから、ハローワーク等においては、こうした多様な教育機関とも協 力関係を構築し、必要に応じた実習先の情報提供や確保、希望や特性に合った職業紹介等 を行うとともに、教育機関に対する就労支援ノウハウの提供等も進めていく必要がある。

次回は、「C障害者雇用の質の向上に向けた事業主の取組に対する支援措置の創設等」です。
「今後の障害者雇用促進制度の在り方に関する研究会」の報告書 [2018年08月15日(Wed)]
「今後の障害者雇用促進制度の在り方に関する研究会」の報告書を取りまとめました(平成30年7月30 日)
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_00679.html

3.安心して安定的に働き続けられる環境の整備
@精神障害者等の個別性の高い支援を要する場合の支援の充実
(精神障害者の雇用の現状)
・ 近年、雇用者数や就労希望者数が大幅に増加しつつある精神障害者
については、一般に、 職場定着に困難を抱えるケースが多く見られ、他の障害種別と比べても職場定着率が低く なる傾向にある。この点、障害者求人、一般求人(自らの障害を企業に開示して採用された場合)、一般求人(ハローワークに対しては自らの障害を開示した上で、本人の希望により企業には障害情報を開示しないで採用された場合。以下「自らの障害を企業に開示しないで採用された場合」とする。)の求人・採用種別に見ていくと、いずれのケースでも精神障害者の定着率は低く、この点は障害特性による影響も大きいものと考えられる。
・ 他方、他の障害種別についても同様に、障害者求人、一般求人(自らの障害を企業に開 示して採用された場合)、一般求人(自らの障害を企業に開示しないで採用された場合)の順に職場定着率が高い傾向にある。このことは、障害者雇用促進法において障害者に対する合理的配慮の提供が義務付けられていること等を背景としたものと考えられるが、精神障害者の場合には一般求人(自らの障害を企業に開示しないで採用された場合)により就労する者が多いことも、精神障害者全体の職場定着率を引き下げる要因の一つである。なお、精神障害者が、障害情報等を開示しないで就職するケースが多く見られる背景としては、精神障害が外から見えづらい障害であることや、精神障害に対する偏見が残っていること等が挙げられるものと考えられる。
・ また、求人種別にかかわらず、採用前の段階から、当該障害者の就労支援を目的として、 職業訓練の受講経験や、ハローワークと地域の就労支援機関との連携による支援を受けて いる場合には職場定着率が高くなる傾向にある。この結果、例えば、地域の支援機関を活用しないで障害者求人に採用された精神障害者の場合と、地域の支援機関を活用して一般 求人(自らの障害を企業に開示して採用された場合)に採用された精神障害者の場合では、 一年後の職場定着率がほぼ同水準となっており、就労に当たってどのような支援を受けて いるかが、障害者の職場定着状況に大きく影響していると言える。

(精神障害者等に対するハローワークの対応)
・ こうした状況を踏まえると、企業による効果的な職場定着への配慮に繋げていくために は、本人の障害理解や特長・特性の理解を促すとともに、支援機関の支援を適切に受けつつ、支援機関間での情報共有を促していくことが効果的であると考えられる。このため、 まずハローワーク等においては、障害者本人に障害情報の開示・非開示の自由があることを前提として丁寧に説明しつつも、支援機関を活用しながら障害情報を開示して就労することのメリットについての理解が得られるように努める必要がある。

精神障害者等の個別性の高い支援を要する場合の就労パスポートの作成等)
○ その上で、障害者本人が自らの情報を開示して就労しようとしても、関係する就労・福 祉・医療等の関係機関と企業が、これらの情報をしっかりと受け止め、適切な支援に結びつけられなければ、意味のない情報となってしまう。これまでも精神障害者等のマッチン グや職場定着を支援するための情報共有フォーマット等は個別に作成されてきたが、支援 機関ごとに必要とする記載内容等が大きく異なるものとなっていたところである。こうし たこともあり、就労・福祉・医療といった専門分野の支援機関や企業によって、支援対象の障害者の就労準備性等の状況をどのように判断するかといった認識が共通化されてい ないことや、就労を希望する障害者の特性等に関してどのような情報まで共有して良いの かといった前提が異なっていること等の課題が生じており、支援機関同士の円滑なコミュ ニケーションに対する支障となってきた。
・ このため、今後、障害者が希望する場合には、企業や支援機関等において、支援対象者 の障害特性等についての情報を共有し、適切な支援や配慮を講じていくための情報共有の フォーマット(就労パスポート)を整備していくこととしてはどうか。その際、労使及び当事者並びに支援関係者等の関係者による実務的な検討会を新たに立ち上げ、既存の様々 な様式をもとに記載内容を整理するとともに、その内容には個人情報が多く含まれている ことにも配慮し、どのような内容を就労パスポートに書き込んでいくのかということや、 支援機関同士の具体的な情報連携をどのように進めるのかといったこと等についても、で きる限り速やかに整理して示すことが求められる。 こうしたフォーマットを、就職時のマッチングに向けた準備段階から活用することで、 採用・就職段階から必要かつ適切な配慮が明確になり、精神障害者等の適切なマッチングや職場定着に繋がっていくものと考えられる。従来はこうした情報共有フォーマッ トを活用してこなかったような支援機関を含め全ての就労支援機関等に対して、利用方法 や効果等の周知啓発に努めていく必要がある。
・ また、精神障害者の就労能力等を、一定の基準の下で線引きするべきとの意見もあった が、精神障害の症状と職業適性等には必ずしも連動が見られないケースも多いことから、 現時点での知見では、こうした対応をとることは困難。これは、当人がどういった仕事に就けるのかについては職業適性(職務遂行に必要な知識や能力)等に負うところも大きい一方で、日常生活管理や健康管理の状況にも強く影響を受けるものであること、就労する企業ごとの環境によっても実際に働けるかどうかは大きく変化すること等、それぞれが相互に関わり合う中で、一人ひとりの就労能力が表出されるためである。
・ しかしながら、フランス等の諸外国では、現にこうした就労能力の判定の仕組みを導入 しているとされていることから、まずはその調査等を進めるとともに、就労パスポートの 活用状況等も踏まえつつ、日本の雇用現場へ適用できるか等を引き続き検討していくこと としてはどうか。また、障害者雇用率制度の対象となる精神障害者等の範囲について、精神通院医療の自立支援医療受給者証の交付者を対象としてはどうかというもの等、様々な 意見が出されたほか、障害者雇用率制度の対象となる身体障害者の範囲について、障害者 手帳ではなく就労能力の判定等によることとしてはどうかという意見が出されたところ、 制度の公平性等を担保するため、まずは、フランス等の諸外国における就労能力の判定の 仕組み等を十分に精査した上で議論することとすべきである。同様の議論として、難病患 者の就労支援等の観点からも、障害者手帳を所持していない者に対する障害者雇用率制度 の対象とすることについての意見が出されたが、これについてもまずは、フランス等の諸 外国における就労能力の判定の仕組み等を十分に精査していくことが重要である。

A中高年齢層の障害者が希望により長く安定的に働ける環境の整備
(中高年齢層の障害者の雇用の現状)
・ 最近の障害者雇用の動向
→身体障害者については、社会全体の高齢化や、中途で身体障害になるケースも多く見られること等から高齢化の傾向が見られるものの、60 歳以降については身体障害者手帳の所持者数に比べて雇用者数が目減りする傾向がある。ハローワークにおける新規求職申込件数については、身体障害の場合には 60 歳以上 64 歳以下が最も多く、次に 55 歳以上 59 歳以下、50 歳以上 54 歳以下と続いているものの、就職率については、60 歳以上で急激に落ち込む状況にある。
・ 知的障害者→全体として若年層の雇用が大きく進展していることに比べて、 依然として、中高年齢層での雇用は限定的。知的障害者の雇用状況の進展が、 比較的最近の動きであること等も考慮する必要はあるが、平成 20 年と平成 25 年の雇用状況の比較による推計においても、40 歳代後半から 50 歳代前半にかけて多くの者が引退 している様子が見られた。ハローワークにおける職業紹介状況についても、 求職者の就職率は、若年層から 50 歳代までほぼ同水準となっているものの、新規求職者数自体が40歳代後半あたりから急激に低下する傾向がある。
・ 精神障害者→全体として若年層の雇用が大きく進展しているのに比べて、中高年齢層での雇用は限定的。ハローワークにおける職業紹介状況については、 40 歳以上 44 歳以下が最も多くなっており、壮年層の雇用は徐々に増加していくことが考えられるが、就職率は他の障害と同様に 60 歳以上で低下する傾向にある。
・ 社会全体では高齢化が進展してきているものの、前述のとおり、中高年齢層の障害者の 場合は比較的引退時期が早いこと等もあり、中高年齢層の雇用されている障害者数はそれ ほど増えておらず、むしろ、最近の急激な雇用状況の進展等も相まって、知的障害者をはじめ雇用されている障害者のボリュームゾーンは若年層である。しかしながら、以前から 障害者雇用に積極的に取り組んできた企業においては、中高年齢層の障害者雇用が増加し ており、将来的には現在のボリュームゾーンに当たる若年層が高年齢化していくことも勘案すると、今後、いずれの企業にとっても、中高年齢層の障害者が希望により長く安定的に働ける環境の整備は重要な課題となっていくものと考えられる。
中高年齢層の障害者において、比較的引退時期が早くなっている背景としては、加齢に 伴い就労能力や体力に課題が出るケースも多いとされていること等が考えられる。求職中 の中高年齢層の障害者に対して、前職において離職した理由のアンケート調査を実施した ところ、「職場の環境が働く上で整っていない」との回答が多かったが、実際、その具体的内容としては、病気や障害への社内の認識・理解の促進や、体力の低下や体調の変化、業務スピードの変化などへの理解・配慮等、就労能力や体力に関係すると思われる回答が多く見られた。そのほか、障害者からの声としては、仕事の内容を簡易・軽易なものにしてもらいたいという声やノルマを減らしてもらいたいという声も一定程度聞かれた。なお、勤務時間を減らしたいという声は比較的少なかった。

(中高年齢層の障害者に対する雇用継続支援の在り方)
・ 障害者の長期的な雇用継続を図るためには、加齢による体力等の低下が見られる中で、 できる限り事前の段階から本人の希望や適性等を踏まえ、体力等の制約の下でできる仕事 への移行を目指していくとともに、中途障害の場合を含め、配置転換も視野に入れた職業 訓練の促進等によるキャリア形成の促進を図ることが重要。
・ また、障害者が希望に応じてできる限り長く働くことができるようにするためには、雇 用する障害者に対する適切な雇用管理や合理的配慮の提供を行うことはもちろん、例えば、 グループホームにおける日常生活や健康上の管理の支援、地域活動における余暇活動の支 援といった福祉との連携も重要である。加えて、障害者本人の体力が低下してくること等 を踏まえると、企業がキャリア形成や配置転換等の環境整備を行った上でも、本人が希望 する場合等には、福祉的就労への移行が円滑に進むような支援体制を整備しておくことも、 障害者本人の就業・生活支援の観点から重要である。
・ これらの取組については、雇用管理上の支援と日常生活上の支援の狭間に入りがちな内 容ではあるが、企業にとって、雇用した障害者に長く働いてもらうためには雇用管理上の 重要な支援の一つであるとも言える。具体的には、中高年齢層の障害者については、体力等の低下や家族構成等も変化していく中にあって、当面の職務内容や配置転換、就業時間 の設定等から、退職までの間の働き方全般、働くための土台となる地域での安定的な住ま いや居場所づくりの確保等、職業生活全体を再設計していくことで、障害者本人、使用者側の双方にとって、長く安定的に働き続けることができるとともに、円満な定年退職等の 時期を迎えられ、その後の人生も含め、できる限り本人が自ら選択できる環境が整えられ ていくものと言える。
・ このため、中高年齢層の障害者本人が希望する場合には、企業にとって可能な範囲で、 狭義の雇用管理の枠を超えて、その家族や自治体、地域の支援機関等の協力も得つつ、雇用している障害者本人との間で職業生活全般の再設計を丁寧に話し合う場を企業が整え ていくような取組を拡げていくことが望ましいと言える。
そのためまずは、企業、市町村、その他の支援機関等が、現在、どのように連携して、 就労している中高年齢層の障害者に対する支援を行っているのかということや、本人の雇 用継続に向けてどのような取組が求められているのかといった配慮に関する事例を収集 し、整理したうえで、広く周知していくこととしてはどうか。その後、こうした事例を踏 まえた相談支援等を展開していく中で、今後、雇用する障害者の高齢化が課題となっていくような企業において、中期的に中高年齢層の雇用支援に関する取組が浸透していくよう にすることが重要と考えられる。
・ また、後述の、長期にわたり雇用継続してきた障害者について雇用率制度におけるカウ ントを上積みする措置は、雇用する障害者の高齢化等に対応する観点からも望ましい取組 であるとの意見も示された。

次回はこの続き「B地域における就労支援体制の機能強化」からです。
「今後の障害者雇用促進制度の在り方に関する研究会」の報告書 [2018年08月14日(Tue)]
「今後の障害者雇用促進制度の在り方に関する研究会」の報告書を取りまとめました(平成30年7月30 日)
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_00679.html

V 多様な働き方のニーズ等に対応した障害者の雇用の質の向上に向けた取組の推進
1.障害者の雇用の質について
・ 我が国の障害者雇用、その量的側面
→民間企業の障害者雇用者数が過去最高を更新し続ける等、進展の傾向を続けていることは前述のとおりであるが、就労を希望する障害者の障害特性等が多様化している中、その希望や特性等に応じた働き方を実現していくためには、雇用の質に着目した取組が必要であるとの意見が多く示されたところ。

(処遇・待遇の改善等)↓↓
・ この点、雇用の質をどう捉えるかについては、障害者本人や家族等の視点からも、雇用 形態や賃金等の処遇・待遇の改善について様々な言及が見られたように、雇用されている 障害者の処遇・待遇の改善については、重要な論点であると言える。
・ 雇用されている障害者の処遇等→まず、雇用されている身体障害者の約6 割が正社員(勤め先での正社員又は正職員等の呼称)となっているのに対して、知的障害者の場合は約 2 割、精神障害者の場合は約 4 割となっている。また、いずれの障害種別においても、30 歳代の決まって支給する給与の平均は、正社員、正社員以外の無期雇用、正社員以外の有期雇用の順に高く、身体障害者や知的障害者の場合には正社員の賃 金は雇用継続期間に応じて改善していく様子が見られる。例えば 40 歳代における状況→身体障害者の正社員の者が多く、その多くが 長期雇用継続されている者であり、知的障害者の正社員の場合には比較的長期にわたって雇用継続されている者が多い一方で、有期契約のまま長期間雇用継続されている者も一定割合にのぼっている。精神障害者の場合には、全体として雇用継続期間が短く、データの十分な分析が困難であった(「平成 25 年度障害者雇用実態調査」(厚生 労働省)を用いて集計。)。
・ このように、例えば、正社員であることと、雇用継続期間や処遇改善等の間に一定の関 係性が見られることも踏まえると、いずれが原因であり、結果であるのかの把握は困難な ものの、障害者本人が希望する場合に、障害者雇用安定助成金による正規雇用転換等を支 援する取組については、継続していくことが求められていると言える。

(安心して、安定的に働き続けられる環境の整備) ↓
・ 他方、障害者本人や家族等の視点に限っても、障害特性や障害者が置かれた状況等によ り、雇用の質に対する具体的な受け止めが異なることも改めて明らかとなった。障害特性 により、体力面での制約等が生ずるケースも多く見られる中で、時には、労働条件そのものよりも、仕事にやり甲斐があること、自らの仕事に対して顧客や事業主、周囲の労働者等から評価を得られること、社会に参加し貢献すること等、自らの周囲や社会との繋がり ができることが重要であるとの声が多く聞かれた。疲れやすさや、体力面で の課題等を抱える中で、むしろ無理のない働き方や、現在の体力等に合った勤務形態等を 求めるケース等も多く見られること等を踏まえると、全体に共通するものとしては「希望 や特性に応じて、安心して、安定的に働き続けることができる環境が整っていること」が 挙げられるのではないだろうか。
・ そうした自らの周囲や社会との繋がりを生み出す前提としては、何よりも、就労を希望 する障害者自身が、自らの特性や希望、体力等に応じて多様な働き方の選択肢の中から、 自らに適した働き方を選択することができる環境が整備されていることが挙げられる。 また、こうした周囲の環境を整え「安心して、安定的に働き続けることができる」環境 としていくためには、企業自身や就労支援機関等が、障害者本人の希望や特性を踏まえ、 会社の一員として一人ひとりの能力を活かすための取組を進めることも重要。
・ 障害者が安定的に就労の場で活躍し続けるためには、その土台として、生活リズムや金 銭管理・余暇生活の過ごし方といった日常生活面や、栄養や体調等の健康面について、必要な支援を受けられる状態であることも重要。適切な雇用管理を行う観点から、企業によっては、こうした日常生活面等への支援に関連して、家族や支援機関との情報共有・ 連携、社外活動の積極的な実施などを行っているケースもある。
・ このように、就労を希望する障害者が、それぞれの希望や特性等に応じて働き、社会と の繋がりや結びつきが強くなっていくことは、「障害者と共に働くことが当たり前の社会」 の実現にも繋がっていくものであり、一億総活躍社会を作っていくための基盤であると言 える。
・ こうした環境を整えていくため、まずは、平成 28 年 4 月から障害者雇用促進法において事業主に義務化された、障害者への差別禁止や合理的配慮の提供を徹底していくことが重要。今後、雇用の質の向上を図っていくため、障害者の能力や希望が適正に評価され、過重な負担とならない範囲で、障害の特性に配慮した措置を講じることにより、その能力を有効に発揮できる環境の整備等が求められており、障害者それぞれの希望や特性等が異なることを、事業主や同じ職場で働く者が適切に理解し、事業主と障害者との相 理解を深めることも必要である。また、引き続き、ハローワークや地域障害者職業センター、障害者就業・生活支援センター等において、障害者本人の希望や特性等を踏まえた就労支援を推進するとともに、障害特性に配慮した雇用環境の整備等を着実に進めていく必要がある。
・ 加えて、最近の就労を希望する障害者の多様化等の進展等に対応し、「安心して、安定的に働き続けることができる環境」を整えていくため、新たに取り組むことが考えられる 施策として、次に整理した「2.多様な希望や特性等に対応した働き方の選択肢の拡大」、 「3.安心して安定的に働き続けられる環境の整備」を踏まえた検討を進めていくことが 考えられる。

2.多様な希望や特性等に対応した働き方の選択肢の拡大
@週所定労働時間 20 時間未満の障害者の雇用に対する支援措置の創設
(週所定労働時間 20 時間未満の障害者雇用の現状等)
・ 現行の障害者雇用率制度や障害者雇用納付金制度
においては、週所定労働時間 20 時間 未満での働き方は支援の枠組みの対象とされていない。これは、通常の労働者の所定労働 時間の半分に満たない時間での労働は、それにより職業生活において自立しているとは言 えないのではないかという従来の考えに基づくものである。
・ 他方、週所定労働時間 20 時間未満で雇用されている障害者は、近年増加傾向にある。 こうした勤務形態で働く者の割合の推移を、平成 20 年と平成 25 年の比較で見ると、特 に、身体障害者では 1.8%から 5.5%に、精神障害者では 0.6%から 4.2%と、それぞれ増 加している。また、平成 28 年度の障害者就業・生活支援センターの精神障害者の就職実績を見ると、週所定労働時間 20 時間未満の者は 9.0%にのぼっている。
・現在における週所定労働時間 20 時間未満での働き方を見ていくと、例えば、ICT の進展や多様な働き方の浸透等も相まって、常時病院内で過ごす必要のある重度の身体障害者が ICT スキルを活用して雇用されるケース等、体力面や介助等の制約があるために 通常の労働時間での勤務は困難であるものの、職業能力が一定水準に達していること等から、短時間での雇用労働に結びついているケースが見られる。
・ 精神障害者についても、
平成 30 年 4 月から雇用義務の対象に追加されたことや、手帳 所持者自体が増加していること等も相まって、就労希望者が大幅に増加傾向にあるが、その中には、障害の特性から、中長期にわたり現行の雇用率制度の対象となる働き方(週所定労働時間 20 時間以上の勤務)に移行できない者や、こうした働き方を求められること 自体がストレスに繋がる者も一定程度見られる。他方で、週所定労働時間 20 時間未満の就労であれば働ける者や、働く意欲をもって前向きに就職に取り組めるように なる者が一定程度見られ、結果として、週所定労働時間 20 時間以上の勤務に移行していく者や、安定的に長く働き続けられる者等も多く見られる。

(週所定労働時間 20 時間未満の障害者雇用に関する議論)
・ 週所定労働時間 20 時間未満で勤務する障害者
→通常の労働者と同じ勤務形態で働くことのできる者に比べて体力やストレス耐性等に課題を抱えていることも考えられる。こうした短時間での働き方については、長い時間の勤務に自信が持てず負担が大きい、週所定労働時間 20 時間以上の勤務へのステップアップの手段として必要といった事情を抱える障害者にとって、望ましい働き方の一つであるとも言えることから、 それぞれの希望や特性等に応じて働き方を自ら選べるよう、選択肢の一つとして確保されていることが重要。こうした働き方の選択肢を確保することで、精神障害者等にとっては、雇用労働の側面だけでなく社会参加の機会を確保するといった観点からも望ましいとの意見も示された。
・こうした週所定労働時間 20 時間未満で障害者を雇用する場合であっても、言うまでもなく、事業主には、障害者雇用促進法の規定(障害者差別禁止・合理的配慮の提供義務)に基づき、一定の雇用管理上の責任や配慮、施設・設備の整備、障害者の従事する業務を決めるための作業等が求められることとなる。働く障害者にとって望ましい環境を整えていくため、事業主は、週所定労働時間 20 時間未満での雇用の場合でも、 週所定労働時間 20 時間以上での雇用の場合と同様の環境整備等を求められる部分があることにも留意が必要である。
・ 障害者雇用促進制度の中には、就業機会の確保や一般雇用への準備期間を確保する観点 から、後述のとおり、雇用とは別の働き方である在宅就業障害者に対する支援の枠組みが 設けられている。他方、週所定労働時間 20 時間未満の雇用者についても、同様に、こう した働き方に対する支援を行うことで、体力やストレス等に課題を抱えている障害者の就業機会の確保に繋がることや、より勤務時間の長い雇用への準備期間となり得ること等も考慮することが考えられる。
・ このように、就労を希望する障害者の特性が多様化し様々な働き方を希望する者も増え ている中、上記のような事情を踏まえると、週所定労働時間が 20 時間以上であるか否か といった時間の線引きにより、障害者雇用促進法における職業生活において自立している 状態にあるかどうかを整理し、週所定労働時間が 20 時間未満の勤務を支援の対象としな い現行の仕組みについては、見直していく必要があるのではないか。
・ ただし、こうした働き方を雇用義務の対象に追加することについては、週所定労働時間 20 時間以上での雇用の場合と比較した場合に、社会保険制度の適用対象となり得るかど うかといった差があることや、こうした働き方において経済的な意味での十分な自立には 繋がりづらいこと等の課題があることから、慎重な検討が必要と考えられる。

(週所定労働時間 20 時間未満の障害者雇用に関する新たな支援について)
・ これらを総合的に勘案し、週所定労働時間 20 時間未満の常用労働者として障害者を雇 用する場合についても、現行の在宅就業障害者支援制度と同様の仕組みを新たに設け、障 害者雇用納付金財源を活用して、特例的な給付金による負担の調整を行う仕組みを、制度 上組み込んでいくこととしてはどうか。具体的には、各企業において週所定労働時間 20 時間未満で常用労働者として雇用される者の数又は労働時間の合計に応じて、当該給付金を支給することが考えられるのではないか。また、こうした算定の対象とする者の要件として、例えば短時間トライアル雇用助成金と同様に少なくとも週所定労働時間 10 時間以上とする等、一人あたりの週所定労働時間の下限を設けることも考えられるのではないか。
・ また、その対象となる障害者については、雇用率制度の対象となる身体障害、知的障害、 精神障害を対象とする方法を基本的なものとしつつ、障害特性上、短時間での雇用を望む ケースの多い精神障害のほかは医師等により短時間での就労が必要との判断があった障 害者に限定して対象とすべきとの意見も見られたところであり、加えて、週所定労働時間 20 時間未満の雇用状況について把握する必要性も指摘されており、支援策の具体化に当 たっては、さらなる検討を行うことが考えられる。
・ 特例的な給付金の額については、本制度が、調整金の対象となる雇用労働よりも短時間 での雇用に対する調整の枠組みであることを前提に、障害者雇用納付金財政への影響も適 切に考慮した上で、週所定労働時間 20 時間未満での働き方を必要とする障害者の就労環 境や選択肢を確保していくため、企業にとっても一定の経済的調整を受けられる水準のも のとしていく必要がある。
・ また、こうした働き方に対する支援を講ずることは、特に中小企業において、障害者本 人の特性や希望に合致するだけの仕事量を十分に確保できない場合や、特定の時間帯のみ に業務が集中することから他の労働者についても週所定労働時間 20 時間未満の労働者を 多く雇用している場合等、様々な制約によって障害者雇用を進められてこなかった状況に 対して、障害者本人の希望や特性を踏まえつつ雇用することへの新たなインセンティブに なるものと考えられる。社内で、誰かが処理しなければならないにも関わらず、現実に対応できていない業務等を特定し、その業務を遂行できる人を採用するという発想をとるこ とで、中小企業にとっても生産性が高まり、従来であれば雇用労働が困難であった障害者 にも雇用の機会を生み出す可能性を有するものと言える。
・ なお、こうした短時間の働き方に対する支援を実施するに当たり、雇用される障害者の 所定労働時間にかかわらず、事業主が、適切な雇用管理やキャリア形成の促進を図るよう、 周知啓発にも努める必要がある。

A自宅や就労施設等での障害者の就業機会の確保
(自宅や就労施設等での就労の現状等)
・ 現在の障害者の生活状況
を見てみると、生産年齢人口に当たる障害者(手帳所持者)で あって在宅で生活している者のうち約半数は、何らかの雇用・就業活動等に携わっており、 例えば就労継続支援 B 型事業所の利用者数が 22.4 万人に達するなど、雇用以外の働き方 や社会参加の手段も年々充実してきている。
在宅就業障害者支援制度→本人の置かれた状況等に応じて選択肢を拡大していくことが重要であるとの観点から、 @ 障害の程度、交通機関等の状況から現時点においては通勤が困難な障害者にとっての就業機会としての選択肢となり得るという側面と、 A 障害者が一般雇用に移行するに当たっての準備期間として、職業能力・職業経験を高めることが可能であるという側面 の2つについて、障害者雇用促進制度の枠組みを活用することで、企業による支援が期待されるとの考えの下、平成 18 年 4 月に創設されたもの。
・ 在宅就業障害者支援制度の創設から 10 年以上が経過し、その当時と比較して、Aのケ ースで想定されているような就労継続支援 B 型事業所や就労移行支援事業所の利用者数 は大幅に増加してきたものの、在宅就業障害者支援制度の利用は依然として非常に低水準 となっており、本研究会でも様々な制度上の課題が指摘されたところ。一般雇用への更なる転換等を進めるとともに、通勤等に困難を抱える障害者の就業・就労機会の選択の幅を拡げていくためには、本制度の利活用促進に向けた見直しが求められているものと言える。なお、@のようなケースについては、ICT の進展等により、最近では在宅雇用労 働者として働いているケースも多く見られるようになっていること等には留意が必要で ある。 (在宅就業障害者支援制度の拡充等について) ○ まず、本制度は、在宅就業障害者直接発注する場合のみでなく、施設内就労や施設外(企業内)就労に対して発注する場合についても対象とするものであるが、名称による誤解等から、施設発注等が対象となっていることが制度創設から 10 年を経過しても浸透してきていない。今後、制度の利活用に向けた周知を図るためにも、双方の範囲、特に施設への発注等を対象としていることを適切に表現した制度名に改めることとしてはどうか。 その際、現行の1つの制度の枠組みで捉えるのではなく、制度自体を、フリーランス的な 働き方をする在宅就業者のための枠組みと施設就労者のための枠組みの2つに分けて整 理し直すことも考えられるのではないか。
○ また、本制度では、一般雇用への移行に向けた準備期間として職業能力等を高める機会 の創出を目的としているものの、一般雇用されるために必要となる技能修得や訓練機会の 獲得等の取組を企業側が実施しても、発注内容に応じて評価される仕組みとなっていない。 この制度の趣旨目的等を踏まえると、一般雇用への転換が図られやすい施設外就労を受け 入れている企業に対しては、当該就労の受け入れに対するメリットを設けるため、在宅就 業障害者特例調整金等の額を上乗せすることも考えられるのではないか。
・ また、在宅就業障害者特例調整金の支給額の算定にあたり、施設就労等に対する発注の 場合には、企業から施設への発注額ではなく、その中から実際に障害者に支払われる報酬 を算定の基礎とすることとしている。このことは、フリーランス的に働いている在宅就業 障害者に対する発注の場合とのバランス等を踏まえた対応であると言えるが、結果、企業 の発注額に対する在宅就業障害者特例調整金等の支給額が極めて少額であり、制度のイン センティブ効果が薄くなっている。本制度が、障害者の職業能力等を高め、一般雇用への移行の機会を確保することを目的の一つとしていることからすれば、施設外就労の場合等 には算定の基礎を報酬ではなく発注額とすることも考えられるのではないか。こうした取 組により、発注する企業側としては、より実践的な働き方に近い企業内就労の場を提供す ることに対するインセンティブになるものと考えられる。
・ こうした改正を行う場合には、当該施設に対して発注された業務が、確実に障害者の就業内容に繋がっていくよう、再委託等がされない仕組みを整理する必要がある。また、就労継続支援 B 型事業所の枠組みを用いて施設外就労に就き、請負労働のような働き方をしている場合に、実際には現場で受入れ企業の指揮命令を受けているといったことのないような注意を図ることも必要である。 制度化に当たって、在宅就業支援団体となっている就労継続支援 B 型事業所等を利用する障害者の中には、障害者雇用率制度の対象となる障害者以外も含まれている点にも留意が必要。
・ 現行の評価額である 35 万円は、障害者の平均的な給与に経費等を加えたものとして設 定されているが、施設就労の場合等には施設側が設備投資を行っており、障害者自らが用 意する必要のないケースが基本と考えられることから、こうした額設定の考え方を整理し 直すことも考えられる。
・ 本制度の利活用の促進を図るためには、在宅就業支援団体自体が全国で拡がっていく必 要があるが、制度創設から 10 年以上経過するものの、依然として 22 団体に留まってい るという現状がある。在宅就業という働き方が望ましい者にとっても、直接、企業と契約等を締結して業務に従事することは負担が重いことからも、こうした団体の存在は必要不 可欠と言える。しかしながら、現在の在宅就業障害者支援制度は、在宅就業支援団体が、 その受注量や仕事の種類を増加させ、当該団体に登録している障害者を一般雇用に転換させること等への評価の仕組みが全く設けられておらず、こうしたことも、団体数の停滞に 大きく影響しているものと考えられる。このため、在宅就業支援団体が、職業能力の向上に積極的に取り組み、利用者の一般雇用への転換等を実現することに対して、障害福祉サ ービスとは別に個別の助成措置を講ずることも考えられる。
・ また、本制度は、障害者を全く雇用していない企業(障害者雇用ゼロ企業)は活用でき ないこととなっているものの、本制度の活用により、障害者の多様な就労・就業機会の拡充に繋がることや、障害者と共に働くことに対する理解が促進されること等も考えられる ことから、障害者雇用ゼロ企業についても、本制度の利用を認め、在宅就業障害者特例調整金の受給による障害者雇用納付金との相殺を一定程度認めることも考えられる。 この場合、後述の障害者雇用調整金及び障害者雇用納付金の適用拡大と併せて進めることで、常用労働者が 50 人以上 100 人以下の規模の中小企業においても障害者雇用等に取り組む契機となるものと考えられる。ただし、障害者雇用納付金の収入を活用して、障害者を全く雇用していない企業に対して給付を行うことについては、その後、実際に障害者雇用の取組に繋がっていくのかといった強い懸念の声も聞かれた。
・ なお、障害者の就労系福祉サービス事業所等に対する企業からの発注を増やしていくた めには、こうした個々の制度見直しと合わせて、企業から見て、安心して発注できるよう な質の担保や納品期日の厳守、企業ニーズに対応した商品を納入するための能力の向上といった取組も欠かせないものであることは言うまでもない。
・ 本研究会におけるヒアリング等では、障害者の就労する施設に対する発注額について、 その額に応じて雇用率制度上の「障害者雇用」とみなすことが望ましいとの意見も示され た。しかしながら、近年、障害者雇用に対する理解が進み、平成 30 年 4 月の引き上げ前 の法定雇用率に民間企業の実雇用率が迫りつつあったこと等を踏まえると、こうしたみな し制度の導入により障害者雇用の促進が阻害される恐れがあることから、慎重に検討を行 うべきである。

B希望する障害者のテレワークの推進
(障害者のテレワークの現状等)

・近年、一般の労働市場において、在宅型テレワーカーの数は増加傾向にあり、テレワークを導入している企業の数も増加傾向。テレワークの活用は、例えば「障害のため働けなくなった」「通勤が困難」といった事情で離職した身体障害者をはじめ、移動や通勤に困難を抱えている者が就労を希望する場合に、有効な雇用機会の確保につながり得るものである。週所定労働時間 20 時間未満の対応の中で例示した、入院しながら雇用労働者として働いている者も同様のケースであると言える。ウェブ会議ツール等を接続することで、執務室内で就労している場合と同じようなコミュニケーションを図ることが可能になりつつあることも、こうした働き方が可能になっている背景の1つと言え、以前に比べて空間的な制約が無くなりつつあるものと言える。

(障害者のテレワークの課題と今後の取組)
・ この点、障害者求人における都市部と地方部の関係について見てみると、例えば、障害 者求人(事務職)について、都市部では充足率が比較的低く地方部で充足率が高い傾向にあるが、障害者雇用の場合には仕事に合わせた引っ越し・移動や長時間の通勤にも様々な 困難を伴うケースが多く見られることなども踏まえると、テレワークの推進に対する期待 は非常に大きいものがある。これまで厚生労働省において行ってきたモデル事業等でも、 ICT の利活用等により、仕事の質は十分に担保され得ることの理解は広まりつつあり、具 体的な活用実例も徐々に生まれてきている。従って、ハローワークの職業紹 介等において、こうした遠隔地の就業希望者と企業を、在宅雇用によりマッチングする仕 組みを整備することが求められている。
・ その際、従来、障害者の就労支援や職場定着支援は、企業と地域の様々な支援機関、本 人の三者が必要に応じて一堂に会して、綿密なコミュニケーションを図りながら進めてき たのに対して、地方在住のままテレワークに従事する者との間では、企業と障害者、支援機関等の間に、物理的な距離があることから、支援のニーズをどのようにマッチングして いくかという課題がある。現在行われているテレワークの多くが、定期的に、直接コミュ ニケーションを取る場も設けた上で行われていることを踏まえると、物理的に直接コミュ ニケーションを取る機会が相当程度制約されている中で、相互の繋がりをどのように生み出していくかという点も重要な論点。
・障害者である労働者の場合、安定的な雇用を実現するためには、体力的な制約等から小まめな休憩を必要とする者の時間管理や、日々の体調の把握、業務に起因する不安の解消等をどのように行うのか、企業側が医療機関や生活支援施設等の就労支援機関以外に対しても様々な確認を行うべき場合の連絡調整等をどのように行うか等、きめ細かな対応が求められる場面が多い。こうした遠隔地での雇用の場面では、これまで就労支援機関に求められてこなかった様々な負担や役割が生じ得ることから、これらに、どのように対応していくのかを整理しておくことが求められる。
・ 今後、都市部を中心に未充足のままとなっている障害者求人等を充足させていくためにも、ICT の活用により、地方部に在住している障害者の雇用の機会に結び付けることもできるよう、ハローワークを中心に遠隔地に在住している障害者を含むマッチングを積極的に進めていくことが求められる。また、その際に生ずる前述のような様々な雇用管理等の課題については、就労支援機関が取り組むことが望ましい支援内容を整理したマニュアルを作成する等、障害者と雇用する企業の双方にとって、働く上での不安をできる限り解消していくための取組を進めていく必要がある。

次回も続き、V 多様な働き方のニーズ等に対応した障害者の雇用の質の向上に向けた取組の推進「3.安心して安定的に働き続けられる環境の整備」からです。
「今後の障害者雇用促進制度の在り方に関する研究会」の報告書 [2018年08月13日(Mon)]
「今後の障害者雇用促進制度の在り方に関する研究会」の報告書を取りまとめました(平成30年7月30 日)
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_00679.html
◎「働き方改革実行計画」(平成29年3月28日働き方改革実現会議決定)を踏まえ、今後の障害者雇用促進制度の在り方に関する研究会(座長:阿部正浩 中央大学経済学部教授)を開催し、平成29年9月から議論を重ねてきました。
この度、本研究会の報告書を取りまとめましたので、公表いたします。なお、本報告書の内容は、今後、労働政策審議会(障害者雇用分科会)に報告し、議論に繋げていくこととしています。

◎今後の障害者雇用促進制度の在り方に関する研究会 報告書(平成30年7月30日)
https://www.mhlw.go.jp/content/11704000/000341830.pdf
T はじめに
・現在、政府をあげて取り組んでいる「働き方改革」→我が国の少子高齢化や生産年齢 人口の減少といった構造的な問題に加え、イノベーションの促進等を通じた付加価値生産 性の向上を図るため、誰もが生きがいを持って、その能力を最大限発揮できる社会を創る ことを目指すものであり、一億総活躍社会を作るための重要な鍵となる改革。 その一つに位置付けられている障害者の雇用・就業の推進に向けても、同様に、障害者の希望や能力、適性を十分に活かし、障害の特性等に応じて活躍できることが普通の社会、 障害者と共に働くことが当たり前の社会を目指しているところである。
・この点、障害者雇用の現状→企業の障害者雇用に対する理解の深まりや、障害者本人の就労意欲の高まり等が相まって、14 年連続で民間企業における障害者雇用者数が過去最高を更新する等、障害者雇用の量的側面は着実に進展。 近年、連続して法定雇用率が引き上げられているが、こうしたことも、障害者である雇用者や就労希望者の急激な増加等を背景としたものである。
・障害者本人の希望や特性等を活かしつつ、安心して働き続けられる環境を整備するとい った、いわゆる雇用の質の改善についても、企業や地域の就労支援機関における理解の促 進や雇用管理上のノウハウの蓄積といった様々な改善点が見られる。他方で、精神・発達 障害者や重度障害者等の個別性の高い特性のある就労希望者が増加する中にあって、多様な特性に対応した職場定着支援や就労環境の整備等が、より一層重要な課題となっている状況。また、障害者の希望や特性等を踏まえた働き方を実現していくためには、身近な地域における中小企業に期待される役割も大きくなっていると言える。
・こうしたことから、「働き方改革実行計画」(平成 29 年 3 月 28 日働き方改革実現会議 決定)において、「多様な障害特性に対応した障害者雇用の促進、職場定着支援を進めるため、有識者による会議の場を設置し、障害者雇用に係る制度の在り方について幅広く検討を行う」とされた。本研究会は、この実行計画を踏まえ、平成 29 年 9 月から開催され てきたもので、昨年中は、関係者の協力の下、障害者団体や支援者、労使等の広範な関係団体のヒアリ ング等を行い、本年は、その中で多くの意見が提示された課題や施策のアイディア等を踏まえ、精力的に議論を進めてきた。 このような障害者雇用の論点に関して、今後進めて行くことが望ましいと考えられる政 策の方向性について、本研究会での議論の結果を取りまとめたので、報告する。

U 障害者雇用の現状と課題、本研究会における議論の論点
1.障害者雇用の現状と課題
(障害者雇用の現状)
・ 我が国の障害者雇用促進制度
→昭和 51 年に民間企業における身体障害者の雇用を義 務化した後、順次、知的障害者や精神障害者を雇用義務の対象に追加したほか、雇用の場 における事業主の障害者差別禁止や合理的配慮の提供義務を課す等、制度の機能強化が図られてきた。この間、地域の就労支援機関の体制の充実や、障害者雇用に関するノウハウの蓄積、企業における障害者雇用に対する意識の変化等、障害者雇用の土台となる環境も大きく変化してきた。
・ こうした制度の機能強化や、障害者雇用の環境の変化等により、直近(平成 29 年 6 月 時点)の民間企業(常用労働者 50 人以上に限る。)における障害者雇用者数は 49.6 万人 と、14 年連続で過去最高を更新し、法定雇用義務達成企業の割合も 19 年ぶりに 50.0% に到達する等、いわゆる雇用の量的側面については着実な進展が見られる状況にある。民 間企業全体の実雇用率は 1.97%と、平成 29 年時の法定雇用率(2.0%)に迫る勢いであっ たが、特に常用労働者が 1,000 人以上の企業における実雇用率は 2.16%と、法定雇用率を大きく上回っていた。
・ ハローワークにおける障害者職業紹介状況→新規求職申込件数が平成29年度に 202,143 件(平成 19 年度 107,906 件)と、10 年前に比べて 87.3%増加し、就職件数についても平成 29 年度に 97,814 件(平成 19 年度 45,565 件)と、10 年前に比べ て 114.7%増加する等、いずれも過去最高を更新。 就職件数→身体障害者が 26,756 件(対平成19年度比 9.1% 増)、知的障害者が 20,987 件(対平成 19 年度比 72.2%増)、精神障害者が 45,064 件(対 平成 19 年度比 431.5%増)、発達障害や高次脳機能障害、難治性疾患の患者等による「その他の障害者」については 5,007 件(対平成 19 年度比 1,271.8%増) と大幅に増加、就職者の障害特性は多様化していることがわかる。
・ 地域の就労支援機関による支援体制も充実してきている。障害者就業・生活支援センタ ーは平成 30 年 4 月現在、全国 334 ヵ所設置され、1 センター当たりの相談・支援件数(平 成 29 年度)は 5,644 件。このうち精神障害者が 37.6%、発達障害者や難治性疾患の患者等が 7.6%と、就労希望者の多様化の影響が大きく見られる。 また、就労系福祉サービスの利用者数も急激に増加しており、平成 29 年 3 月の実績(事業所数は平成 28 年 10 月時点)は、就労移行支援事業所が 3.2 万人(全国 3,323 事業所)、 就労継続支援 A 型事業所が 6.6 万人(全国 3,455 事業所)、就労継続支援 B 型事業所が 22.4 万人(全国 10,214 事業所)と、合計 32.2 万人となっているが、このうち一般雇用への移行者(平成 28 年)は 13,517 人(平成 18 年 2,460 人)と過去最高を更新。また、特別支援学校から直接一般雇用に就職する者の数は 6,411 人と、こちらも過去最高を更新している。
・このように、我が国の障害者雇用の状況について整理していくと、就労支援体制の強化等とも相まって、障害者雇用者数は毎年着実に増加するとともに、就労する障害者の障害 種別についても多様化が進んできていることが改めて見て取れる状況にある。

(障害者雇用の課題)
・近年、就労希望者数や雇用者数が大幅に増加している精神障害者の場合、長く安定的に働くことに課題を抱え職場定着率が低い傾向にあり、精神障害者の離職理由(個人的な理 由による離職の場合に限る。)としては、労働条件や仕事の内容と同程度に、職場の雰囲 気・人間関係や体力面での厳しさ、症状の悪化等を挙げる声が多い。他方で、採用前からの就労支援機関の活用や企業による合理的配慮の提供、周囲の理解等によっても、精神障 害者の職場定着状況には大きな差が出ることから、こうした実態を踏まえ、希望に応じて、 安心して安定的に働き続けられる環境を整備していくことが求められている。
・障害者雇用者、年齢別に状況→社会全体の高齢化の影響等もあり、身体障害者である雇用者については高齢者の増加傾向が見られるが、知的障害者や精神障害者については全体として若年層が増加傾向にある中で、高齢層の雇用者の割合は依然として限定的。これは、加齢による就労能力や体力等に課題が出るケ ースが多いとされている中で、他の労働者と比べて引退時期が早期となっていること等が原因と考えられることから、年齢に関係なく、希望に応じて安定的に働き続けられる環境を整備していくことも求められている。
・就労を希望する精神障害者のほか、重度の身体障害者や高次脳機能障害者、難病患者等の就労希望者→体力面での制約や症状の特性、通院、治療等の必要から、それまでの働き方を維持することが困難となるケースが多く見られる。他方で、ICT の進展等に伴うテレワーク等の活用により、多くの民間企業において、勤務場所や勤務時間等についての柔軟な働き方が認められてきていること等から、それぞれの体力や症状等に対応しつつ希望に応じた働き方の選択肢を確保していくことも求められている。
・ 民間企業における障害者雇用の状況→全体的には着実に進展、中小企業の中には依然として障害者を全く雇用していない企業(障害者雇用ゼロ企業)も多く、特に、常用労働者 100 人以下の中小企業における障害者雇用が比較的停滞している状況であることから、身近な地域における障害者雇用の場を確保していくことも求 められている。
・ 地域における就労支援機関→その数は相当増加しつつあるが、就労移行支援事業所においても一般雇用への移行率に大きな隔たりがあることが見られるように、選択する支援機関により受けられる支援には大きな差が生じている。就労を希望する障害者についても、精神障害者や発達障害者、高次脳機能障害者、重度の身体障害者等、個別の背景や特性のある者が増加しているが、新規求職申込件数・就職件数がともに減少傾向にある視覚障害者や聴覚・言語障害者を含め、障害の種別や部位等に関わらず全ての障害者に、就労上の様々な特性や必要とする配慮がある。このことから、地域の就労支援機関等が適切に連携し、支援機関ごとの特長・特性も生かしつつ、障害者の希望や特性等に応じた就労を実現していくことも求められている。

2.本研究会における議論の論点
・ 本研究会、平成 29 年 9 月以来、合計 16 の障害者団体や支援者、労使等の広範な関係団体からのヒアリング
→ @ 近年、障害者雇用者数は大幅に増加しつつあるが、雇用の量に加えて、希望や特性に合った仕事で長く安定的に働き続けられる等、いわゆる雇用の質の向上を図るためには、雇用継続を支援する措置やキャリア形成を促進する措置、雇用管理改善をはじめ、どのような対応が求められているのか。 特に、平成 30 年 4 月から雇用が義務化される精神障害者をはじめ個別性が高く就労 支援が困難とされる方や、体力等が徐々に低減していく中高年齢層の障害者などについ て、希望に応じた働き方を実現するため、どのような対応が求められているのか。A ICT 技術の発展等に伴い、時間と場所を有効に活用できる多様で柔軟な働き方が拡がっていくと考えられるが、障害のある方についても、テレワークや在宅就業を含め、希望や特性等に応じた働き方を実現するためには、どのような対応が求められているのか。 B 依然、中小企業では障害者雇用が停滞しているが、障害者と共に働くことが当たり前の社会を作り上げていくため、中小企業等に対し、どのような対応が求められているのか。 C 障害者の希望や特性に合った働き方を実現するため、地域の就労支援機関や、教育、 福祉、医療等の現場において、どのような支援策や連携関係構築が求められているのか。 D こうした現状や論点を含め、障害者雇用率制度や障害者雇用納付金制度等、障害者雇 用促進制度には、どのような対応が求められているのか。
・ こうした論点に対する平成 29 年中のヒアリングを踏まえ、本年の本研究会では、主な 議題である、中小企業対策の在り方や障害者雇用促進制度の在り方に係る議論においても、 いかにして障害者雇用の質の向上を図っていくのかということも一つの軸として議論が 進められてきた。こうした議論の中では、障害者雇用促進法に基づく障害者雇用率制度や障害者雇用納付金制度の見直しが考えられるものや、地域の資源を活用しつつ企業や支援 機関等の有機的な連携を図ることが考えられるもの、むしろ、障害者個々の事情等を踏ま えると障害者雇用率制度等による一律的な対応を講じない方が望ましいと思われるもの 等、様々な方策が議論されてきたところである。
・ このように議論されてきたものについて、本報告書では、本研究会での議論の進め方に 沿って、以下の通り、「多様な働き方のニーズ等に対応した障害者の雇用の質の向上に向けた取組の推進」、「中小企業における障害者雇用の推進」、「障害者が長く安定的に働き続けられる環境整備に繋げる制度の在り方」の三項目に整理し、報告するものである。

次回は、続き「V 多様な働き方のニーズ等に対応した障害者の雇用の質の向上に向けた取組の推進  1.障害者の雇用の質について」です。
第15回今後の障害者雇用促進制度の在り方に関する研究会 [2018年08月12日(Sun)]
第15回今後の障害者雇用促進制度の在り方に関する研究会(平成30年7月27日開催)
《主な議題》「研究会の取りまとめについて」等
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_00685.html
◎平成30年7月30 日に報告書が発表されますが、第14・15回今後の障害者雇用促進制度の在り方に関する研究会で報告書作成に向けています。

◆今後の障害者雇用促進制度の在り方に関する研究会(報告書完成まで)
https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/other-syokuan_480542.html

次回は、「今後の障害者雇用促進制度の在り方に関する研究会 報告書」を見ていきます。
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