イギリスのニューカッスル大学に留学中の小田切徳美先生からメールをいただきました。先生の研究動向などがうかがわれるほほえましいメールですので、皆様にもご紹介します。
(以下、小田切先生からのメールの引用です)
英国・ニューカッスルの小田切(明治大学)です。ご無沙汰しております。
当地は、街もテレビも大学も、クリスマス一色となっております。街の商店街は、
平日でも時には通行が困難なほどの賑わいで、妻は「むかしの『酉の市』みたい」と
言っていますが、意外と的確な表現かもしれません。
この間、震災復興、TPPや農業・農村再生をめぐる議論などにもかかわらず、異国
の地におり、なにもお手伝いすることができず、大変申し訳なく思っております。せ
めてもの「存在証明」として、この間の報告をさせていただき、年末年始のご挨拶に
も代えさせていただきたいと思います。
先に少しお伝えいたしました北イングランドの「凄い」冬の実態ですが、確かに言
われていた通り、日の出は8時過ぎ(明るくなるのは9時過ぎ)、日の入りは4時前
(3時にはもう夕方)ですが、意外にも何とか乗り切っています。
その要因のひとつとは、イギリスがかつてないほどの「暖冬」であることで、ラジ
オの農業番組では「冬野菜が大きくなりすぎて、スーパーマーケットが引き取らな
い」という状況がレポートされています。そのため、北海からの強風には悩まされて
いるものの、それに加えての豪雪はなく、ほっとしています。
また、個別的な要因としては、友人より「鬱病かアル中かの選択だと」と言われ
て、私達夫婦は躊躇無く「アル中の道」を選び、毎晩1本4ポンド(480円)の安
ワインと、スコッチウイスキーのハイボールを、「越冬対策」として頂いてます。そ
のためか、英国滞在半年以上も減り続けた私の体重も、ついに底打ちして、ピーク時
からマイナス12キロで止まり、喜んでおります。
研究面では、残念ながら研究所を主導する著名な社会学者のロウ先生が夏に病気で
倒れられ(やっと今週退院されました)、スーパーバイザー不在の状態となっていま
すが、多くの研究所同僚に助けられて、遅々たる歩みではありますが研究を進めてい
ます。
先のメールでも少しご報告しましたが、10月に「Rural Regeneration in Japan
」というセミナー報告をさせていただきました。それ以降、何人かの英国人研究者が
日本の農山村の「地域再生」の動きに関心を持ち始めたことは、私にとって少し嬉し
いことであります。地元で活躍するなコンサルタントでもある「客員研究員」(女
性)は、日本の「中山間直接支払」を学びたいと言い出して、EUの取り組みとの比
較により学位論文を書くことを計画しているようです。今後は滞在研究所(農村経済
センター、CRE)と日本との共同研究の企画も進めようと考えておりますが、研究所
内にはEUと日韓との共同研究ではどうかという議論もあり、なにやら投げ込んだ
「火種」が燃え始めるかもしれない様相となり少し驚いております。
また、9月から始めた農村歩きは、この厳冬期は、やはりお休みです。9−10月
は農村のリニューアブル・エナジーに関して、少し歩きましたので、連載「英国漫遊
記」(JC総研『JC総研レポート』)の第2回目としてまとめています。ヒヤリングの
大部分は技術的なもので、言葉の問題もあり、よくわからない部分もありましたが、
しかしここに書いた、「景観対環境」の対立は大変興味深く、今後さらに深掘りし
て、実践面でも政策面でも議論すべきものと考えております。
その後11月には、いわば「6次産業」(こちらの呼び方は"New Rural
Economy”)の調査として、地元ブルワリーを回っています。イギリスでは、今「地
ビール」ブームで、国内産のビール麦が不足して、全英農民組合(NFU)がその増産
を呼びかけているほどです。そのダイナミックな動きはそれ自体として魅力的です
が、調査として「試飲」ができることも、もっと魅力的です。「アル中」向きの調査
課題として、新たな専門のひとつとすることも考えております(笑)。
なお、これは興味深いことでもありますが、実は「6次産業」を「法律にもなって
いる日本の農村再生のキーワード」として、一生懸命に説明するのですが、研究者に
も現場リーダにも、通じません。「1×2×3」を「なぜ掛けるのか?」「(足し算
でも良いと言うと)なぜ足すのか?」「なぜ日本人はこれを計算に持ち込むのか」と
いうことになり、雰囲気がやや険悪になることを複数回経験しております。「造語」
に対する意識の違いだと思いますが、次に英国人と2人でパフに言った時には、「こ
んなジョークも通じないのか」とからんでみようと思います。
これ以上、とりとめもないことを書き続けると、予算等でご多忙の皆さんに、ご迷
惑をおかけしてしまいそうですので、このあたりで切り上げたいと思います。
あえて、付け足させていただければ、この8ヶ月間ではっきりとわかったここと
は、農村の実践はもちろん、農村再生にかかわる理論的水準や具体的な政策も、わが
国のそれらは、「地域再生政策、地域再生研究の先進国」としばしば認識されている
英国と比較して、遜色の無い水準だということでした。今週も、実は私の2回目のセ
ミナー報告として、日本の「内発的発展論」にかかわる報告し、議論をしましたが、
あらためてそれぞれの国がぞれぞれの現実の中で理論形成をしていることがはっきり
とわかりました。むしろ、そうした違いを「先進」とか「遅れ」とかではなく、「当
然のもの」としてエンジョイする研究姿勢ことが、実は「遅れている」と実感してい
ます。
私の滞在も残り3ヶ月となっております。帰国後直ちに震災復興や農山村再生の動
きに参加できるように、今後はリハビリに努めたいと思います。来年2月には3回目
のセミナー報告を予定しており、「中山間地域直接支払制度」や「集落支援員制度」
等の個別の取り組み、そして「緑の分権改革」の理念と実践、また各地方自治体の集
落対策等について報告をしようと思っております。おそらく、「やり方は大いに違う
が、ハートは同じだ」という類の反応があるのではないかと、今から予想し、楽しみ
にしております。
日本のニュースがインフルエンザの流行が始まってことを伝えております。先生
方におかれましても、何よりもご自愛下さい。
良い年をお迎え下さい。そして、改めて日本の農山村再生を祈ります。
小雪の降るニューカッスルにて
小田切 徳美