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これがラムネの生きる道 [2009年07月23日(Thu)]

ガラス瓶のなかでカラカラと踊るビー玉、シュワッと広がるさわやかな甘さ、夏の昼下がりに恋しくなる “ラムネ”。 

しまなみ海道でつながる向島(広島県尾道市)、細い路地の一角に、ラムネの清涼飲料水を製造販売している『後藤鉱泉所』がある。

木の扉、木枠の窓、板張りの天井…レトロな店構えに思わず引き寄せられる人は多いに違いない。


間口にはケースが積み上げられ、旧式の冷蔵庫に瓶入りの飲料水が冷やされていた。

「一本飲みんしゃぁ」
プシュッと栓を開けてくれたのは、ご主人の後藤忠昭さん。宇津井健似の男前だ。

「自分は三代目。表の看板は初代のまんまよ。」 開業は昭和5年。79年間営業を続ける老舗だ。

「うちは女房と二人で切り盛りしとるから、今の生産量が精一杯。
飲料水を作りよるのは、広島では二軒だけ。」

後藤さんの所では、ラムネのほか5種類の清涼飲料水を製造販売している。

学校の教室ほどの広さの工場内を見せてもらった。

「飲料水の仕事は、えらいんよね(しんどい)・・・」と言う。手間がかかり、運ぶ際はズシリと重い。ビンだとなおさらだ。

「じゃけど、世の中はゴミの山でしょう。便利さに流されてビンからペットボトルの時代になったけど、リターナブル(容器再使用)の時代へ戻らなイカンと思うんじゃがのぉ。」

「夏祭りや納涼祭でラムネを売ると、飲み終わってポイッとゴミ箱にビンを捨てよる。
リターナブル瓶のことを皆知らんのよ。」

奥様の勝子さんは、広島の山間部出身。42年前にお見合いでお嫁に来たそうだ。「辛抱ばかりです」と言いながらも明るく元気に笑う。

最近は、小学生が社会見学で地元の工場や会社を回って来るそうだ。「うちではラムネの話をして、工場を見学させて、最後にラムネを一本飲ましてあげるんよ。ほんなら大喜びでねえ。子どもらの一番人気よ。」

「初代が凝った人でね、この建物は上等な木材でしっかり作ってあるから、今だに狂いがない。私らが仕事をやめた
後も建物は残したいけど、どうしたらええんじゃろうね。」

「そしたら孫がね、学校でラムネブームになったらしゅうて、鼻が高かったんじゃろうね。
“ボク、ラムネ屋になる”って言うてからにねぇ・・・」そう嬉しそうに話してくれた。


ラムネの由来とされるレモネード(レモン風味のソーダ水)は、イギリス生まれ。
幕末の頃、日本に持ち込まれ、明治期に国内全域に広まった。
庶民の飲み物として親しまれるが、やがて新しい飲み物(コーラ等)に
押されてしだいに衰退していく。

昭和40年代にレトロブームで再び光を浴び、大人には懐かしく、
子どもには新しい飲み物として人気を復活させるが、その後、缶飲料や
自動販売機の登場、スーパーの出現で、ラムネを売る小売商店
の減少とともに再び衰退する。


日本の炭酸飲料水の歴史を作ってきたのは各地の『鉱泉所』なのだが、現在も製造を続けている所は数えるほどしかない。

しかし、最近はテレビや雑誌の取材のおかげで、遠くは北海道からわざわざ足を運んでラムネを飲みに来るお客さんもいるそうだ。

ラムネのリターナブル用ビンは製造が中止されて久しく、貴重な物のため、遠方への発送は出来ないからだ。

「どうしてもビンをくれ言うお客さんには、傷入りで使えなくなったビンをあげるんです。
それでも、ええもんもろた言うて喜ばれとるね。」

鉱泉所の存在は、観光にも一役買っているようだ。

「ビールも同じやけど、ラムネもビンが一番美味い。缶やペットボトルはガス(炭酸)量が
どうしても低いけんな」と、ビン入りの美味しさの秘密をこっそりと教えてもらった。

甘味を抑えたすっきり味が特徴の後藤ラムネ。遠路はるばる飲みに来る価値、
充分にありなのだ。


【後藤鉱泉所(後藤ラムネ製造販売所)】
広島県尾道市向島町兼吉3-755-2
電   話 0848-44-1768
営業時間 8:30〜17:30頃
定 休 日 日曜・祭日
Reported by Kazunari Utsunomiya
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