【染色家】村尾草染さん [2009年06月13日(Sat)]
今治市の山の手朝倉、大きくてシャレた家々が立ち並ぶ一角にある、染色家村尾草染さんのお宅を訪れました。
花々に彩られた庭を抜けて玄関をくぐると、白いタオル生地の山々にデ〜ンと出迎えられました。 初めてお会いした村尾さんは、人懐こい笑顔で「これが終わったら、次は五百枚染めなイカンのよ」とタオル会社からの手染めの注文に追われる毎日だそうです。 首都圏のデパートでは、柔らかな風合いのタオルマフラーがここ最近の売れ筋なのだそうです。 村尾さんの家の裏手にある『藍美工房』と書かれた小さな建物で、天然素材による染色品が生み出されているのでした。 村尾さんが草木染めをはじめたのは、京都で学生時代にアルバイトで習ったのがきっかけ。そのころは反物を染めていたそうです。それが面白くなり、故郷の今治に戻りタオル会社に 就職。 しかしそこで見たものは、ホルマリン等の化学薬品にまみれた製品ばかりだったそうです。 京都で学んだことを生かすため、大量生産の現場に見切りをつけて独立。草木染め職人の道へ。 しかし、時は高度経済成長の真っ盛り。作ればいくらでも売れた時代に手作業で染色できるのはごくわずか。二束三文でしか相手にしてもらえず、厳しい生活が続いたそうです。 それでも工夫を重ね、タオル生地を染める独自の手法を編み出しながら、 「いつか陽の目を見るときが来る」と信じて、自分を勇気づけながら仕事に 励んだそうです。 近年、「化学薬品の害は、川から海へ、やがて人へと戻ってくる」ことに 誰もが気づき、自然にやさしいエコの時代が微笑み始めました。 「江戸時代までは、日本人も自然の草木染めをしよったんよ。明治初期に科学染料が開発されて量産化されるまでは・・・」 村尾さんによると、明治中期に始まった日本のタオル産業は初めから大量生産体勢だったそうで、タオル生地を染める職人技術はこれまでほとんど無かったとのこと。 ほとんど手探りで道を究めてきた村尾さんは、様々な経験を積み重ねながら「思いを込め、物作りに妥協しない」スピリッツを作品に注ぎ込んでいます。 「頭に描いたものが、そのまま出来たらそれは良い作品なのか?ワシは 出来上がりが想像できるものはつまらんと思う。そやから『究極の染め』は、 どんな仕上がりになるかわからん、"くちゃくちゃ染め”やと思うとる。でも売 れんのよ、作るのはすごく面白いけんど。」 と笑いながら、 「どれが良くて、どれが失敗作か?みんな答えはバラバラよ。人間でもそう やろ、何でこの子はダメと決めつけるんやろな。こういう染めの作品にも、 失敗は無いんや。素人がやったけんいうて、不細工ってことは決してないん よ。」 ●さて、シクロツーリズムしまなみでは、村尾さん直伝 「草木染」 体験をご案内しています。身近な自然素材で、肌にもやさしい手 染めの体験。今治産のタオルやTシャツをあなたのオリジナル色 に染めて、世界にひとつ、あなただけの作品を手がけてみません か…? 詳細は『シクロツーリズムしまなみ』まで 電 話 :0898-33-0069 体験場所:随時ご案内いたします。 所要時間:2時間〜 期間:通年 定員:5〜50名 料金:5000円/人(材料費、指導料含む) 要予約:7日前まで Reported by Kazunari Utsunomiya |