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2019年03月01日

第24回 春夏秋冬 音を楽しむ

暖かい日差しの中、縁側で鳴らして遊んだ鉄琴の音の記憶。ホンワカした空気に不思議な音階が結構似合っていました。でも、この鉄琴の音の外れ方は、一体どんな法則で作られたのでしょうか。

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鉄琴
>玩具の鉄琴


昭和30年代ごろまで、玩具としての鉄琴や木琴は、だんだん短くなる鍵盤の形と可愛らしい絵が優先で、ドレミに整えることなど考えていなかったようです。
権平俊子著『性格・才能をよく育てる本 子どもを伸ばすおもちゃの世界』(青い鳥社 1969年)には、幼児期の子供に与える楽器としての鉄琴・木琴は、「できるだけ音程のしっかりしたものを選びます。」と書かれています。西洋音楽普及に伴って、幼児の音感を育てるためには、巷で目にする木琴や鉄琴の音階があまりひどかったからでしょう。ただ、ひどかったというより、もともと音に対する考え方が違うのですから、そのころの玩具の音律がドレミから外れていても仕方ありません。

これまで紹介してきた日本の季節の楽器は、ドレミに調律されているわけではなく、一音を奏でる楽器として作られてきました。紹介していない邦楽演奏の太鼓、三味線、横笛なども、音色にこだわっていますが、本来、ピアノの音階を奏でる目的の楽器ではありませんでした。

水の音や葉ずれの音、波が石を洗う音や松風の音。「火の用心」の拍子木、鍛冶屋が鉄を打つ音、機織りの音、唐臼の音、豆腐屋のラッパに霧笛の音など、自然の音色や生活の中で聞こえる音色が、「日本の音」「日本の音楽」となりました。春の鳥笛は、ピョロピョロと混じり合う音、ペンペン草も赤貝の蛙も、その複雑な音色で自然を表し、虫笛は微妙に音をずらして揺れる音色で虫の声を工夫し、風で鳴る風鐸も鳴子も、神様の声を表す鈴の音も、微妙に異なる音高で独自の音色を作りだしています。
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水鳥笛
>陶器製の水鳥笛


沖縄にも北海道にも、独自の素朴な楽器があります。沖縄舞踊に欠かせない竹製の「四つ竹」、竹や黒檀で作った三板(さんば)。北海道には竹で作られた口琴「ムックリ」があります。
>沖縄の四つ竹


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三板(黒檀製)
>三板


「四つ竹」は、弥生時代の埴輪に登場して以来、現在は歌舞伎音楽にも登場します。ムックリも東日本各地の古墳で発見される打楽器です。
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歌舞伎の四つ竹
>歌舞伎の四つ竹

モンスーン地帯に生活する私たちに身近な自然の素材は木と竹。その木と竹が、楽器の世界で活躍します。私たちの作り上げてきた楽器文化は実に豊かで、人々の暮らしと自然とが近しい関係にあるからこそ、楽器たちには四季折々の響きが反映されました。

生活のほとんどが法則化されデジタル化されている現代、日本の音文化は今後どのように変容して行くのでしょうか。再び、自然との密接な関わりや人間らしさを取り戻せるかどうかは難しい課題です。でも、子どもたちは目を輝かして、アナログで素朴な楽器の音遊びを楽しみます。素朴だからこそ、豊かな可能性があり、心の癒しにもなるこれらの楽器たちの響きを受け継いでほしいと思っています。
2年間に登場した様々な楽器たちの音を、順番に重ねて聞いてみてください。個々の響きが重なって、春夏秋冬の音色がきっと聞こえてくることでしょう。


文:茂手木潔子(日本文化藝術財団専門委員/聖徳大学教授)
楽器写真撮影:服部考規
音源制作:film media sound design
※スピーカー等の環境によって、再生されない場合があります。 


新品気鋭の写真家、服部考規さんの撮りおろし写真と、film media sound designによる楽器音の録音ともにご紹介してきた季節の音めぐりも、今回で幕を閉じます。お世話になったご関係者の皆様に御礼申し上げます。

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