日本音楽の世界では竹の楽器が大活躍していますが、吹いて鳴らすもの、打って鳴らすもの、こすって鳴らすものなど、鳴らし方もいろいろ工夫されています。
竹法螺
この写真は、歌舞伎で使う竹の法螺貝「竹法螺(たけぼら)で、戦いの場面で大太鼓と銅鑼の音の合間を縫って吹きます。両手で支えて左端の吹き口を唇で覆ってホルンのように吹くと、「ブオー」という法螺貝の音になります。
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日本音楽の横笛や縦笛はすべて竹で作られています。雅楽の「龍笛(りゅうてき)」、能の横笛「能管(のうかん)」、長唄囃子や祭囃子で使う「篠笛(しのぶえ)」、そして「尺八」。リードの付いた笛には、雅楽の「篳篥(ひちりき)」や「笙(しょう)」があります。篳篥は雅楽の「うねるような旋律」を、「笙」はパイプオルガンの音色を小さくしたような音で、笛や篳篥の旋律を支えて包み込むような和音を奏でます。笙のリードと同じ構造を持つアイヌの楽器「ムックリ」(口琴)も竹でできていますね。さらに、馬・牛・鶯・鶏や虫の声など擬音笛もいろいろあり、竹の笛で身近な動物や鳥、虫の声を表現しています。
竹は中が空洞なので打つと心地よい響きがしますから、竹そのままを紐で吊るしただけでも楽器になります。
次の写真は、昭和40年代に京都嵯峨野で入手した竹の鳴子(なるご)です。風が吹くと竹同士が打ち合わされて音を出します。この頃、各地で見かける竹鳴子は、インドネシアなどアジア製ばかりで、日本製は全く見かけなくなりました。音色もかなり違いますね。
竹鳴子
>竹鳴子
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歌舞伎で使う「竹こだま」という楽器も、竹の特徴を活かした打楽器です。竹筒を横にして両端に紐を取り付けて吊るし、T字型の撞木で打って音を出します。山間の風情を表わす場面で打たれます。
竹こだま
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「竹こだま」には太めの竹を用いるので、新しいと割れやすく、年月をかけて割れないように乾燥させてから楽器にするので、見た目は単純ですが結構手間のかかる楽器なのです。でも、自然の竹ですから一本一本音高や音色が異なるので、数本を打ち合わせて遊ぶと楽しい楽器です。
さて、次の不思議な形の楽器は、竹の根っこで作った手作り木魚です。新潟県上越市内の庶民的な骨董店で見つけたものですが、いつの時代かわかりません。日本製です。下の写真のように、丸い形のへこみから竹が生えていたこともわかります。
竹根の木魚
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この木魚、よく響く木魚でなかなか良い音なのです。この木魚を何に使ったのかは不明ですが、身近な素材から音の出るものを作る発想は、日本各地で見られます。
目にも美しいだけではなく、響きも心地良い。そして食べれば美味。モンスーン気候の湿気の多い地域で育つ竹ですが、日本の音文化を豊かにしている代表的な素材です。
次回は「石を鳴らす」です。
文:茂手木潔子(日本文化藝術財団専門委員/聖徳大学教授)
楽器写真撮影:服部考規
音源制作:film media sound design
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