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2018年03月01日

第12回 ひなまつり

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桃の花 撮影:服部考規

3月3日、桃の節句・・・と言っても、桃の花が咲くにはもう少し待たなくてはなりません。でも、日差しには春の暖かさを感ずる今日このごろです。3日は雛の節句とも呼ばれ、女児の健康や成長を祈る祭りです。
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五人囃子 撮影:服部考規
雛祭りの響きといえば五人囃子。雅楽の楽器を持っている例もたまに見かけますが、五人囃子は能の囃子の楽器4人と、地謡1人の合計5人のことです。写真の人形の右から「張扇(はりおうぎ)」「横笛(能管 のうかん)」「小鼓(こつづみ)」「大鼓(おおつづみ)」「締太鼓(しめだいこ)」の役で、「張扇」は謡や囃子の稽古でリズムを打つための扇を閉じた形の道具です。
東京や新潟などで見かけた雛壇の五人囃子では、小鼓と大鼓を持つ人形が逆になっていたり、大鼓の向きが変な向きだったりと、なかなか正しい持ち方になっていません。この人形は資料として私の手元にあるのですが、小鼓役の左手が小鼓の紐に届かなかったり、大鼓も左腕の下に入らなかったりと、正しい位置に楽器を置けません。音楽を専門にしているものの目からは、どうして?と思うような作りが多いのです。
でも、実証的に作ってしまってはつまらない、不即不離的に、だいたいの雰囲気が合っていればそれで良い・・という、ある意味で歌舞伎の作り方にも似たゆったりとした考え方が、いかにも日本らしいなあと思ってしまいます。

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犬張り子 撮影:服部考規
雛祭りのお雛様とお内裏様の左右には、犬張子が置かれることもあります。これは、お雛様を守る役割だそうですが、犬張子の犬は背中に「でんでん太鼓」を背負っています。
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でんでん太鼓のいろいろ 撮影:服部考規
「でんでん太鼓」は、もともと大陸から伝来して雅楽の中で使われた「振鼓(ふりつづみ)」をルーツとしますが、アジアでも日本でも、太鼓を打つことが厄除けだったり、雨乞いや豊年祈願だったりして、太鼓は祈りの楽器でもありますので、「でんでん太鼓」にもその役割が与えられているのです。「振鼓」は彩色された革で作られていますが、「でんでん太鼓」の素材は布や紙です。皮面を打つ素材は、金属鈴、木球、豆、ビーズなどで、それぞれに音が異なります。
>でんでん太鼓(布に鈴)

>でんでん太鼓(布に豆)

>でんでん太鼓(紙に豆)

地域固有の「でんでん太鼓」には、笛を吹くと紙人形が太鼓を打つからくり式の「犬山のでんでん太鼓」もあります。
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犬山でんでん太鼓 撮影:服部考規
>犬山でんでん太鼓


女児の健康を祈るための発音玩具には、こんな珍しいものもありました。オランダのライデン国立民族学博物館に所蔵されている、背中に美しい花を付けた雀の玩具です。
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ライデン国立民族学博物館の「福良雀」 撮影:Jan Zweerts
これは、『嬉遊笑覧(きゆうしょうらん)』(巻六)や『うなゐの友』(四編p.12、六編p.1)に登場する「福良雀(ふくらすずめ)」ではないかと思われます。
どちらの資料にも音が出ることは書かれていませんが、ライデンの福良雀は振るとカラカラと音がしました。

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手毬 撮影:竹内敏信
春の訪れの気分には、手まりがよく似合います。全国各地に伝統的な手毬の文化がありますが、地域によっては、大小の手毬が雛飾りの一つとして天井から吊り下げられることもあります。新潟県栃尾市の手毬には、様々な草の実が入っていて、手毬ごとに音色が違います。

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栃尾の手毬の中身 撮影:服部考規
様々な色合いを楽しむばかりでなく、手毬を突くと、カラカラ、コロコロ、シャリシャリ・・・と、音色も色々聞こえてきます。
>手毬(大)

>手毬(小)


先人たちは、幸せを祈り、健康を祈るために、季節ごとに変化するかそやかな響きに耳を傾けて、身近な祈りの道具に取り入れてきたのです。

次回は「春 蝶が舞う」です。

<参考文献>
『嬉遊笑覧』喜多村信節(きたむらのぶよ)著 
 日本随筆大成編集部編 昭和8年11月 東京 成光館出版部
 原著は1830年(文政13)10月刊 江戸時代の風俗百科事典
『うなゐの友』清水晴風著 1891年(明治24)11月5日初版 東京 芸艸堂
 全10巻からなる日本伝統玩具の図版 


文:茂手木潔子(日本文化藝術財団専門委員/聖徳大学教授)
音源制作:film media sound design
※スピーカー等の環境によって、再生されない場合があります。
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