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2017年11月01日

第8回 鈴の音

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鳥居 撮影:服部考規

このところめっきり寒くなりました。11月は神楽月とも言うそうです。10月に出雲に出かけていた全国の神様が地元に戻って仕事を始めるのでしょう。
神楽の音といえば鈴。神楽舞で鳴らされる鈴は、10個以上の鈴が集まったタイプで、古い鈴では一つ一つの鈴が違う音の高さに作られています。

神道鈴.JPG
古い神道鈴 撮影:服部考規
>>古い神道鈴

ところが、昭和40年代以降に作られた鈴は、どの鈴も皆同じ音高で、響きに深みがありません。
欧米の鈴が、同音高、同音質で作られている影響で、均一な音が良いとされたためでしょうか。

>>新しい神道鈴

日本には昔から「めいめい(銘々)」という言葉があります。「銘々箸」とか「銘々茶碗」のように使われます。語源は「面々」で、それぞれの顔の違いを意味していますから、「めいめい」は、一つ一つ異なったものが集まっている状態のことをいうのです。日本の古い鈴はまさに銘々異なった音が集まって響きあう鈴で、この柔らかい音色こそが日本の音文化を象徴する音色です。

日本各地の土産物の中でも、ストラップや装飾品などには、ほとんど鈴がついています。なぜ何にでも鈴がついているのでしょうか。元国立劇場で雅楽や声明公演を手掛けた演出家の木戸敏郎さんが、鈴について興味深い話を書いています。宮内庁や熱田神宮の大きな鈴の中には小さな鈴がいっぱい詰まっている音がするそうで、木戸さんは、この状態を大祓いの詞「神(かん)留(づま)ります」を引用して、神様がいっぱい詰まっている状態だと表現しました。(木戸敏郎「神留ります」『日本及日本人』平成7年爽秋号pp.108−110日本及日本人社)。神様がいっぱい詰まっていれば、振った時に鳴る音は神様たちの声。その声を身に着ければ厄除けグッズとなるわけです。

東海道を行く旅人の荷物や婦女子を乗せた馬の臀部に下がる鈴の束。馬鈴です。
葛飾北斎の『東海道五十三次』の馬の背に掛けた布の両端には、必ず2対の鈴が下がっています。その目的は、布がずり落ちないための「重し」だったのではないかと思われますが、道中で鳴る鈴の音色が旅の安全を祈っていたことも確かでしょう。この鈴束も異なった音高の集まりです。
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馬鈴 撮影:服部考規 
馬鈴によっては、異なった音高にするために鈴の大きさを変えたものもありますから、意図的に銘々の音を出そうとしていたことが分かります。
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馬の鈴 撮影:服部考規 

「おてのーせ、おてのーせ、おーふりおとして おーさーらい」
冬の気配を感ずる時雨の季節には、家の中で姉たちとお手玉で遊んだことを覚えています。
家ごとに手作りのお手玉は、華やかな模様、地味な模様と様々に作られ、ここにも「銘々」の世界がありました。一つ一つの玉には、小豆・小石・数珠玉・麦など、異なる響きの素材が入れられ、目にも耳にも色彩豊かな世界で少女たちは遊んでいたのです。中には結び目に鈴を付けたものもありましたから、お手玉も鈴の一種と考えられていたのかもしれません。
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お手玉 撮影:竹内敏信 (日本玩具博物館所蔵)
>>お手玉


次回は、「木の音が呼ぶ年の暮」です。

文:茂手木潔子(日本文化藝術財団専門委員/聖徳大学教授)
音源制作:film media sound design
※スピーカー等の環境によって、再生されない場合があります。

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