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2012年10月01日

第二十五回 烏勘三郎

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烏(からす) 烏(からす) 勘三郎(かんざぶろう)
うが家(え)コ 何処だべ
         小沢(こざわ)の松原
うが家(え)さ 寄って
小豆まんま 三杯(さんべェ)
白いまんま 三杯
ガーオガオど かっぽげ


この歌は弘前の唄です。
「ガーオガオ=ガアー、ガアー」と鳴き声が濁るのはハシボソガラスで、
「カアー、カアー」と鳴くのはハシブトガラスです。
その名のとおり、ハシボソガラスはスマートで、
ハシブトガラスはくちばしが太くておでこでています。

この歌は、空が真っ赤に染まる夕焼け頃、
ねぐらに帰ろうと、ガアー、ガアーと鳴いて飛んでいくのを見て、
子どもたちが囃し立てる唄なのです。
昔の子どもたちは仲間たちとカラスを見ると追っかけて囃し立てていたのですね。
なんだかその姿が目に見えるようです。

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「勘三郎」とは鳥の異称。
擬人法から勘三郎と呼んだのでしょう。
また、カラスの頭の「カ」から勘左衛門とかも呼んで、
親愛感をあらわしていたと思えます。
そういえば、このようなこともいわれますね。

「鳥はカアカア勘三郎、雀はチュウチュウ忠三郎、
鳶は(とんび)は熊野の鉦(かね)叩き、一日叩いて米三合」


「うが家(え)コ」の「うが」は方言で「おまえ」のことです。
「何処だべ」は、「何処だや」の意味。
「かっぽけ」は、これも方言で「かっこめ」の意味で、
大急ぎで食べることです。

カラスの唄はわりと多く残っています。
福島では、

烏(からす)何処さ行ぐ

 烏 烏 何処さ行ぐ
 天寧寺の湯さ行ぐ
 手に持った(の)何だ
 粟米 粉米
 俺にちっと呉んにゃいが
 呉れれば 減る
 減ったら 作れ
 作れば 冷(つ)みでェ
 冷(つ)みだが あだれ
 あだれば 熱ッち
 熱ッちが 退げ
 退げば 痛い
 痛げりゃ 鼬(いたち)の糞つけろ

 
呉んにゃいがは、「呉れないか」の意味です。
冷(つ)みでェは、「冷たいなら」。
熱ッちがは、「熱いなら」。

カラスは何処へ行くのでしょう。
それは、東山温泉です。
温泉に入るカラスとはどんなカラスでしょうね。
これは擬人法で、みんなの良く知っている人物だったのかもしれませんね。
天寧寺は若松市の東南の郊外にあり、もとは北会津東山村です。

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また、奈良ではこんな歌も、

    烏(からす)こい

  烏(からす)こーい 餅やろぞ
  十二の餅と 柘榴三つと
     代え代えしよ
  宙で取ったら 皆やろぞ
  足で取ったら 皆かえせ


昔は、正月に餅をついた時、小さな餅をこしらえて
カラスにやりに行ったのでしょうか。
それにしてもカラスと食べ物がからむ歌詞が多いですね。
カラスはきっと食いしん坊と思われていたのでしょうか。
知能指数が高く、学習能力もあり、
そして、子どもへの愛情もたっぷりの鳥なのです。

大正時代にもカラスの愛情たっぷりな素敵な歌が作られています。
それは野口雨情作詞の童謡『七つの子』です。
皆様もよくご存知ですね。

   七つの子
             野口雨情
  からす なぜなくの
  からすは山に
  かわいい七つの
  子があるからよ
  かわい かわいと
  からすは なくの
  かわい かわいと
  なくんだよ
  山の古巣に
  いって見てごらん
  丸い目をした
  いい子だよ


この歌はやはりいいですね。

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資料:『わらべうた 日本の伝承童謡』
           町田嘉章・浅野健二編  岩波文庫
   『なつかしの わらべ歌』 川原井泰江著 いそっぷ社
posted by 事務局 at 14:40| Comment(0) | わらべうた
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