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2012年02月14日

高齢者への性暴力を見えなくするもの


【3/3:東京】女性応援!特別講演会&大交流会に、「しあわせなみだ」代表中野が登壇します

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日本には性暴力を含めた「虐待防止法」と名のついた法律が3つあります。

「児童虐待の防止等に関する法律」
「障害者虐待の防止、障害者の養護者に対する支援等に関する法律」
「高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律」

今日はこの中でも「高齢者虐待防止法」にスポットを当ててみたいと思います。

どうして、高齢者を対象とした「虐待防止法」が制定されているのでしょうか。
それは、高齢者が、権利侵害を受けやすい立場にあるからです。
ここでは3つ、挙げてみます。

***

■1.高齢者が暴力に遭うことが想定されていない

「日本は高齢者を敬う文化だ、高齢者の暴力なんてあるはずがない」という一種の「信念」は、まだまだ残っています。
厚生労働省が行った調査では、平成22年度に虐待と判断された件数は、養護者によるものが16,668件、介護施設従事者等によるものが96件となっています。

【「平成22年度 高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律に基づく対応状況等に関する調査結果」はこちら】

まず、高齢者も暴力に遭うということを、前提にすることが必要です。


■2.高齢者自身の意志を尊重する中で、虐待が温存されるリスクがある

高齢者には
「住み慣れた自宅で最期まで過ごしたい、たとえ暴力に遭っていても、自宅から離れるのは不安」
「子どもには苦労をかけたから、これくらいの暴力は仕方がない」
「自宅の恥を見せたくない」
といった考えから、暴力を我慢し続ける傾向があります。
また高齢者本人に認知症の症状などがあると、暴力に遭っているという認識を持ちづらく、逆に暴力から遠ざけようとする行為を「余計なお世話」「自分をだまそうとしている」と捉えることもあります。
子どもの場合は、子どもの安全を最優先に考え、行政には、子どもの意志を無視してでも、暴力を振るう親から引き離す権限が与えられています。
しかしい高齢者は、それができません。


■3.高齢者の性に対する誤解と偏見

虐待の中でも、特に性暴力については、他の虐待(身体・精神・経済・放棄放任)と異なるバイアスがかかります。
それは「高齢者に性を求めるなんて、あるわけないでしょ」という前提です。
「高齢者虐待防止法」では、性暴力は、「高齢者にわいせつな行為をすること又は高齢者をしてわいせつな行為をさせること」と規定されています。
具体的にはこのようなものが挙げられます。

・性行為の強要
・不必要に性器に触れる
・身体を露出させたままにする
・性に関する暴言を吐く

また、特に「着替え」や「排泄」等、身体を他人に見せる必要がある介護が、異性によって行われることも、考えていかねばなりません。
具体例を挙げてみると、「性暴力」として捉えるべき場面は、たくさんあることに気づかされます。

また「高齢者だから、これくらいいいだろう」「介護されているんだから、これくらい仕方がない」はてまた「高齢者は性に飢えてるんだから、少しくらい刺激を与えた方がいいんだ、それを高齢者自身も望んでいるんだ」といった考えまであります。

そして性暴力を発見しても、性に関する相談は、まだまだ難しいです。
せっかく相談しても、「色ボケじじい」「良かったんじゃない、ばあさんも」とかわされてしまうこともあります。
こうした発想が、高齢者への性暴力を見えづらくしています。

***

2000年4月から施行された「介護保険法」は、介護を、行政による「措置」から、利用者と事業者の「契約」に変えました。
それは介護を権利として位置付ける、とても大きな役割を果たしましたが、行政が関わらなくなったことにより、「暴力がある」と訴えなければ対応できない仕組みを生み出しました。

また高齢者虐待防止法には、児童虐待防止法と異なり、後半に「高齢者の養護者に対する支援等に関する」という言葉がついています。
これは、養護者(高齢者の介護に携わる人)による高齢者への暴力の背景に、養護者を応援する仕組みの不足がある場合が少なくないからです。
このため、高齢者虐待防止法自体は、暴力を振るった養護者への罰則は、規定されていません。

家族介護を前提とする文化の中で、介護保険制度を利用できない養護者もいます。
「介護のために人を入れるなんて恥だ」
「嫁が舅、姑の介護をするのが当然」
「面倒を見ないなんて、親不孝だ」
といった考えの中で、たった1人で介護を担い、孤立し、心身とも疲れ果てた中で、その辛さを高齢者に向けることがあります。
また、経済的事情により、制度を利用したくてもできない場合もあります。

養護者による暴力を防ぐためには、「介護保険制度の利用」「当事者グループの活用」等、養護者自身を応援する機能が求められています。

しかし、どのような理由があっても、暴力そのものが許されるわけではありません。
本来、高齢者と養護者の人権は、対立するものではありません。

「高齢だから」その人の人権が軽くなることはありません。
子どもも、障がい者も、そして高齢者も、かけがえのない人権であることに代わりはありません。

私たちには、暴力をなくす責任があります。

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