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2009年12月11日

本当にわかることはできなくても、わかる努力はできる 

10月13日のブログ
http://blog.canpan.info/shiawasenamida/archive/92
で紹介した研修会で講師を務められた、東京都立中部総合精神保健センター 保健福祉部長で精神科医の井上悟氏
http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/chusou/index.html
から、「心の病を理解するのに適した書籍」として紹介のあった、村上春樹著「アンダーグラウンド」を読みました。
http://shop.kodansha.jp/bc2_bc/search_view.jsp?b=2085755

この書籍は、1995年3月20日に発生した地下鉄サリン事件で、被害に遭われた方とその家族、計62名の方へのインタビューが掲載されています。

被害に遭われた方への治療にあたっている精神科医中野幹三氏は、被害に遭われた方がPTSDを発症することについて、このように説明しています。

この事件の場合、何がなんだかわけのわからないままに、ある日いきなり死の淵に引きずり込まれたわけです。そこに居合わせた方々にとって、それは底知れぬ恐怖の体験だったはずです。おまけにサリンの怖さというのは、これまでに一度も言語化されたことのない種類のものです。こんな事件はまったく未曾有のものですから。だから被害者の方も本当の意味では、そのときの恐怖感をまだきちんと言語化できていないのだと思いますね。結局うまく言語化できないから、そのかわりに身体化するしかないということになります。感じていることを言語に置き換える、あるいは意識化する回路ができていません。だから仕方なく無理に押さえ込んでしまおうとする。でもいくら懸命に押さえ込んでも、身体の方は自然に反応してしまいます。それが「身体化」ということです。(pp..118-119)

そして先の中野氏からは、被害に遭われた方へのこんなメッセージもありました。

後遺症で悩んでおられる方は、気楽に私どもの門を叩いてください。とにかく来てみてほしい。その結果として「あなたは大丈夫です、心配ないですよ」と言われたら、それでいいわけですからね。ですかlら不安があればいつでも来てみてください。「こんな軽いのに行ってもいいのかな」という風には思わないでください。どんなかたちにせよ、もし何か苦痛があれば、専門家に一回相談してみることですね。(p.129)

被害に遭っていない私たちに何ができるのか。著者である村上氏はこのように語っています。

たしかに地下鉄サリン事件によって深い傷を負った被害者の方の気持ちからすれば、この本を書いている私は「安全地帯」からやってきた人間であり、いつでもそこに戻っていける人間である。そんな人間に「自分たちの味わっているつらい気持ちがほんとうにわかるわけはない」と言われても、それはしかたないと思う。まさにそのとおりである。わかるわけはないと思う。しかし、かといって、そこでそのまま話がぷつんと終わって、相互的なコミュニケーションが断ち切られてしまったら、私たちはそれ以上どこにもいけないだろう。あとに残るのはひとつのドグマでしかない。
そのとおりでありながら(そのとおりであることを相互認識しながら)、あえてそれを超えていこうと試みるところに、論理の煮詰まりを回避した、より深く豊かな解決に至る道が存在しているのではあるまいかと考えている。(p.714)

性暴力被害ゼロネットワーク「しあわせなみだ」が関わる性暴力被害に遭われた方も、まさに想いを抱えています。
「被害に遭っていない人に、被害者の気持ちが本当にわかるわけはない」。
本当にそのとおりです。
でも、村上氏が指摘しているように、それで終わらないこと、関係を切らないこと、です。

被害に遭われた方の本当の気持ちをわかることはできません。
でもわかる努力はできます。
そして心の傷を乗り越えることを応援したいという気持ちを持ち、自分にできることをしたいと思っています。

そんなメッセージを伝えていかれればと思います。
そしてあなたが同じ気持ちを持ってくれたら、とても嬉しいです。
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