
【「パートナーによる性被害当事者のサポートを考える」アンケート調査報告書】==============
「2025年版犯罪白書」が公表されました。
その中でも、今年の白書で特に注目したいのが、第7編第5章 特別調査A「精神障害を有する者等の性犯罪被害」です。
これまで十分に可視化されてこなかった、精神障害のある人の性犯罪被害の実態が整理されています。
この調査は、「精神障害のある人の性犯罪被害は、表に出にくい」という問題意識のもと、刑事事件として有罪が確定した記録を分析し、被害の特徴や構造を明らかにしたものです。
■ 調査の対象

調査対象となったのは、
・精神障害のある被害者:176人
・精神障害のない被害者:349人(比較対象)
いずれも、2018年から2022年までに、性犯罪で有罪判決が確定した事件が対象となっています。
■ 被害者の属性から見えること

性別は、どちらの群でも女性が9割前後を占めています。
精神障害のある被害者の障害の内訳を見ると、
・知的障害:74.4%
・発達障害:19.9%
・その他(うつ病、統合失調症など)
と、知的障害のある人が特に多いことが分かります。
また、事件当時は
・施設通所:63.6%
・医療機関への通院:25.6%
など、多くの人が何らかの支援を受けながら生活していました。
■ 被害が起きやすい時間帯と場所

精神障害のある人の被害は、
深夜よりも日中から夕方にかけて起きやすく、
16時〜17時59分が最多(23.4%)でした。
被害場所は、
「学校・就労先・療養所・デイケア施設等」が27.8%と最も多く、
生活や支援の場そのものが被害の現場になっていることが示されています。
■ 加害者との関係性と「年齢」から見える特徴

犯罪白書では、加害者について「被害者から見た立場」だけでなく、犯行時の年齢層も分析されています。
ここに、精神障害の有無によるはっきりした違いが見られました。
まず、加害者との関係性を見ると、
精神障害のある被害者では、
・支援関係者:33.0%
・面識なし:29.5%
・知人:21.0%
となっており、支援やケアの関係性の中での被害が最も多いことが分かります。
一方、精神障害のない被害者では、
・面識なし:60.2%
・知人:20.6%
・教育関係者:5.4%
と、面識のない加害者による被害が多数を占めています。
■ 加害者の年齢に見られる違い

加害者の犯行時の年齢層を見ると、ここにも両者の間で明確な違いがありました。
精神障害のある被害者に対する加害者では、
・40〜49歳:23.3%
・65歳以上:23.3%
と、中高年層の割合が高いことが特徴です。
特に、65歳以上の加害者の割合が高い点は、精神障害のない被害者の場合とは大きく異なります。
一方、精神障害のない被害者に対する加害者では、30歳未満が29.5%と、若年層の加害者が中心となっています。
関係性と年齢をあわせて見ると、精神障害のある人の性犯罪被害では、
・支援関係者など立場のある相手
・年齢が被害者よりも上の中高年層
による被害が起きやすい構造が浮かび上がります。
単に「知人か、知らない人か」ではなく、年齢差や力関係、依存関係が重なり合うことで、被害が起き、そして声を上げにくくなっている可能性が示唆されます。
■ 被害に「気づけなかった」現実

被害当時の認識について見ると、
精神障害のある被害者では、
被害を認識していた:38.6%
認識不十分:30.7%
認識なし:30.7%
と、約6割が被害を十分に認識できていませんでした。
このことは、被害申告の困難さにもつながっています。
■ 被害申告と発覚までの時間

実際に被害を申告した割合は、
精神障害あり:65.3%
精神障害なし:91.7%
と、大きな差がありました。
さらに、犯行から捜査機関に発覚するまで、
1年以上かかったケース:12.5%
に上り、被害が長期間、見えないまま続いていたケースも少なくありません。
■ この調査が私たちに突きつけるもの

犯罪白書が示したのは、精神障害のある人の性犯罪被害が、
・身近な関係性の中で起きやすく
・日常の場で発生し
・被害として認識されにくく
・声を上げるまでに時間がかかるという
構造的な問題です。
支援のあり方、社会のまなざし、制度の設計そのものが問われています。
これまで「障害のある人が性被害に遭っている」という事実は、現場の声としては知られていても、公的なデータとして示される機会は限られていました。
今回の犯罪白書は、そうした被害を社会全体の課題として可視化したという点で、大きな意味を持つものだと感じています。

しあわせなみだでは、障害のある性暴力被害当事者や、その周囲の支援者が「どこに相談すればいいのかわからない」「支援につながるハードルが高い」と感じてしまう現状に向き合ってきました。
今回の犯罪白書を手がかりに、今後も発信を続けていきます。
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