性暴力に関する包括的な法は日本には存在していません。
いくつかある法の中で、性暴力を「犯罪」として、加害者に量刑を与えているのが
「刑法」です。
性暴力は、このように規定されています。
ちょっと長いですが、以下記載します。
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【第二十二章 わいせつ、姦淫及び重婚の罪】
(公然わいせつ)
第百七十四条 公然とわいせつな行為をした者は、六月以下の懲役若しくは三十万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する。
(わいせつ物頒布等)
第百七十五条 わいせつな文書、図画、電磁的記録に係る記録媒体その他の物を頒布し、又は公然と陳列した者は、二年以下の懲役若しくは二百五十万円以下の罰金若しくは科料に処し、又は懲役及び罰金を併科する。電気通信の送信によりわいせつな電磁的記録その他の記録を頒布した者も、同様とする。
2 有償で頒布する目的で、前項の物を所持し、又は同項の電磁的記録を保管した者も、同項と同様とする。
(強制わいせつ)
第百七十六条 十三歳以上の男女に対し、暴行又は脅迫を用いてわいせつな行為をした者は、六月以上十年以下の懲役に処する。十三歳未満の男女に対し、わいせつな行為をした者も、同様とする。
(強姦)
第百七十七条 暴行又は脅迫を用いて十三歳以上の女子を姦淫した者は、強姦の罪とし、三年以上の有期懲役に処する。十三歳未満の女子を姦淫した者も、同様とする。
(準強制わいせつ及び準強姦)
第百七十八条 人の心神喪失若しくは抗拒不能に乗じ、又は心神を喪失させ、若しくは抗拒不能にさせて、わいせつな行為をした者は、第百七十六条の例による。
2 女子の心神喪失若しくは抗拒不能に乗じ、又は心神を喪失させ、若しくは抗拒不能にさせて、姦淫した者は、前条の例による。
(集団強姦等)
第百七十八条の二 二人以上の者が現場において共同して第百七十七条又は前条第二項の罪を犯したときは、四年以上の有期懲役に処する。
(未遂罪)
第百七十九条 第百七十六条から前条までの罪の未遂は、罰する。
(親告罪)
第百八十条 第百七十六条から第百七十八条までの罪及びこれらの罪の未遂罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない。
2 前項の規定は、二人以上の者が現場において共同して犯した第百七十六条若しくは第百七十八条第一項の罪又はこれらの罪の未遂罪については、適用しない。
(強制わいせつ等致死傷)
第百八十一条 第百七十六条若しくは第百七十八条第一項の罪又はこれらの罪の未遂罪を犯し、よって人を死傷させた者は、無期又は三年以上の懲役に処する。
2 第百七十七条若しくは第百七十八条第二項の罪又はこれらの罪の未遂罪を犯し、よって女子を死傷させた者は、無期又は五年以上の懲役に処する。
3 第百七十八条の二の罪又はその未遂罪を犯し、よって女子を死傷させた者は、無期又は六年以上の懲役に処する。
(淫行勧誘)
第百八十二条 営利の目的で、淫行の常習のない女子を勧誘して姦淫させた者は、三年以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。
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「刑法」における性暴力の規定には、様々な問題があるのですが、今日は、この中でも、第百八十条の「親告罪」(しんこくざい)について取り上げてみます。
「親告罪」とは、「告訴がなければ公訴を提起することができない罪」です。
「被害に遭った人が、警察に告訴しなければ、裁判の対象にならない」ということです。
強かんのほか、名誉棄損罪や器物破損罪等が、親告罪として規定されています。
「親告罪」ではない犯罪には、殺人、強盗等があります。
これらは、被害に遭った人が警察に告訴しなくても、裁判の対象となります。
なぜ「親告罪」があるのか。
■1.本人がそれを「被害」として認識しなければ「犯罪」にならない
ということと
■2.被害に遭った人の意思を尊重する
ということがあります。
例えば、ある行為を、「名前が売れる」と捉える人もいれば、「名誉を傷つけられた」と捉える人もいます。
このため、一概に「罪」として規定することを避けているのです。
性暴力への親告罪の適用を考えてみましょう。
■1.について。
性行為は、愛情のある者同士が同意のもとで行えば、新たな生命を授かり、愛を深める素晴らしいものです。
しかし、愛情のない人から、もしくは一方の同意がない状態で行えば、性暴力になります。
人によって「性行為」「性暴力」に対する認識が異なることは、「何が犯罪か」の規定を難しくしています。
性暴力に遭ったことを相談して「それくらい我慢しなさい」「誰にでもあること」「被害妄想」と言われてしまうのは、ここにあります。
特に、婚姻、恋愛関係にある人同士の性暴力が、「犯罪」として認識されづらい理由でもあります。
■2.について。
性は本来プライベートなものです。
裁判の対象となることで、それが公になります。
このため、本人の意志によって、控訴を提起するかが決められます。
これについても、様々な課題があります。
◆1.被害者保護に対する責任が、被害者本人に転嫁されている
本来被害者のプライバシーは、法の下で守られるべきものです。
個人情報の不用意な露出が起こることなく、安心して裁判を受けられるような環境が、整えられることが必要です。
しかし、それができていないために、「プライバシーが守られないのが嫌なら裁判を起こすな」ということになっています。
◆2.告訴が「受け付けられない」「取り下げられる」
「平成23年度犯罪白書」によると、2009年に告訴された強かん件数は1360件。
このうち起訴されたのは568件、不起訴となったのは689件、家庭裁判所への送致が103件となっています。
他の犯罪と比較して、不起訴の理由で「起訴猶予」以外、「その他」の件数が多いことが特徴です。
【検察庁終局処理人数はこちら】
不起訴の理由は様々なですが、
★1.裁判になっても証拠不十分で罪を問うことが難しいため、不起訴にする
★2.加害者側が圧力をかけて告訴を取り下げさせる
といったことがあります。
★1.については、「警察が告訴を受け付けてくれない」というと「日本の法の下でそんなことがあるのか」と言われてしまいそうですが、本当に残念なことに、「性暴力の告訴が受け付けられない」という事実が存在しています。
日本の起訴有罪率は99%。
「起訴したからには絶対に有罪にしなければならない」という中で、物的証拠が残りづらい性暴力は、避けられてしまうのです。
★2.については、最近も、弁護士が、性犯罪被害者に示談を持ち込み告訴取り下げを迫ったことが「違法」とされました。
【2012年1月21日「毎日新聞」の記事はこちらです】
執拗な嫌がらせやストーカー行為等が伴うこともあります。
◆3.控訴されないことにより、加害者の罪が、日本社会の中で罪として認められないことになる
「性暴力が犯罪になるかならないか」が、社会の法ではなく、被害者の態度によって定められてしまうのです。
本来天秤にかかるはずではない「被害者保護」と「加害者処罰」が、天秤にかけられる矛盾が生じる。
この事実に、私たちは深く向き合う必要があります。
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