グリーンピア田老の仮設にて 13:00〜震災後の今年の四月、取り敢えず被災地に出向き、その地で豊かなネットワークを持つ人たちに出会い、状況をお聞きしてから私に何ができるか考えてみようと思いたち、福島、宮城、岩手と巡る旅をしました。
てくりという岩手に根付いて生活する人たちを、美しい写真と共に丁寧に綴り、挽きたての珈琲でも飲みながらゆっくりと読みたくなるようなミニコミ誌があります。仙台のクラフトギャラリーで、そのてくりを発行している、盛岡の<まちの編集室>の木村敦子さんを訪ねてみたらと紹介されました。
そのとき、被災地で亡くなられた方たちの周りの人たちが、メモリアル・キルトを縫っていく時間と場所を作っていけないだろうかとの、おぼろげなイメージが私にはありました。そのことを木村さんに話すと、<たいまぐら>というところに住んでいる安倍智穂さんに会ってみたらどうでしょうかと、すぐアドヴァイスをいただきました。そのときは、時間的な折り合いがつかずお会いできなかったのですが、電話の向こうの何とも明るい声が印象に残りました。
その後6月に仲間と共に、三陸の被災地を巡る旅をしましたが、同行した澤畑明見さんも、安倍さんのことを彼女の書かれた本から知っていて、ぜひお会いしてみたいとのこと。
そんな風にして、私たちと安倍智穂さんが繋がっていきました。
その明見さんから、グリーンピア田老の、そしてそこに至るまでの文章が届きました。
染めた後、白生地を乗せ、リプリント
人と人とが出会う野染めの旅 私と斎藤洋さんとの出会いは、私の住んでいる
世田谷の雑居まつりで、今から20数年前になります。雑居まつりとは、「地域の問題は地域住民の手で…!」を合い言葉に世田谷にとどまらず他県からも福祉・教育・食・環境・平和・国際協力などさまざまな分野で活動している団体やグループが集まって開催しているおまつりです。ちなみに今年は100団体近い参加を得て36回目を迎えます。
その雑居まつりの生みの親の一人が夫・澤畑勉で、
通称ヒゲと呼ばれています。彼の主義主張は、思想・信条を乗り越えて「いのちと人権を守る」こと。これはおまつりのテーマでもあるので、斎藤さんの活動とは、おのずとつながりました。20数年前の雑居まつりでエイズ・メモリアル・キルト展を企画し、ここで出会ったのです。
当時私たち夫婦は区内の児童館・学童クラブに勤務していましたので、雑居まつりの後も、斎藤さんのライフワークである野染めを、折りをみて企画し、楽しませていただいているうちに野染めの魅力にはまり、現在に至っている次第です。
5年前に私たち夫婦はそれぞれ将来への思いを抱いて、早期退職をしました。夫は大学院へ。私はあるきっかけからバスケタリーを始めました。2年ほど前、京橋のINAXブックギャラリーに参考になる本を探しに行った際に、安部智穂さんの
『森の暮らし・たいまぐら便り』(KTC中央出版・2008/6/18発行)を見つけました。暮らしの中の写真がとても素敵で魅力がいっぱい、そして何よりプロフィールを見てますます親近感を覚え,即購入しました。私の本棚の中央に置いてあり時々見ては楽しんでいます。
3.11 東北大震災以降 放射能の事もあり東北支援をと思いながらも手につかず、悶々としていた時に、斎藤さんの活動のメールが私の目と心に飛び込んできました。
「私にできることがあれば参加したい!」という思いで斎藤さんのこの野染めの旅の活動にご一緒させていただきました。
6月に岩手方面に行く事を山形の友人に伝えたところ、安部智穂さんも避難所へいち早くお裁縫箱を届けたり、ワークの活動をされていると聞き、斎藤さんに伝えたところ直ぐ安部さんとの活動につながり6月には憧れのたいまぐらへ伺うことができ、この9月にも再会することができました。
今回は安部さんの活動拠点である樫内・田老の仮設住宅の2か所で野染めをして来ました。そこでの皆さんの手作りへの想いや意識の高さにとても心うたれました。
樫内で野染め後、お裁縫箱、布、編み針、毛糸など選んでいらっしゃる方が、「次はどんなポシェットをつくろうかな?」と話しながら「もうこれで4個目のポシェットなんですよ!」と言って作品を見せてくださいました。端切れを上手く工夫し、とても楽しんで試行錯誤されている様子がみられ、その時のその方の笑顔がとても印象的でした。
また、夏に向けて帽子作りをしたそうで、やはり端切れや衣類などでリメイクしたものでした。その方にとても良く似合っていて素敵でした。が、何より自分で作ったという気持ちがとても嬉しそうで、その様子が微笑ましかったです。
田老で出会ったハンチング帽子作家の大棒レオ子さんは野染めをしていた時の様子は快活そのものでしたが、ハンチング帽子を見せてくださった時のレオ子さんは、野染め時のレオ子さんとは思えないほどに真顔で真摯な様子がとても印象に残りました。レオ子さんのお人柄が伺えたように思いました。帽子は、つばのあるものからジーンズをリメイクしたハンチングなど、素材も含めバラエティに富んでいて、お店に並べられるような完成度の高いものでした。
そしてキルトの可愛いエプロンも衣類などをリメイクした作品となっていました。
これから寒くて長い冬を迎えるにあたり、毛糸の帽子など、その季節に添った手づくり品を安部智穂さんが試作に試作を重ね、皆さんに作品を提供しているそうです。
帽子を作られた方が「この帽子を私たちに教えるために、安部さんは3つも4つも作って色々試して教えてくれるんですよ!」とおっしゃっていました。震災後直ぐに活動を始めた安部智穂さんのこれまでの濃やかな関わり方が、樫内・田老の仮設住宅の皆さんの心の励みとなり、手づくりへの意欲が高まり、お互いが育ち合う関係となって、素敵な作品たちを生みだしてきたのだなと確信しています。
何より安部智穂さんの笑顔で皆さんの心の縒りがほぐれていく様子が目に浮かびました。
そんな素敵な出会いに立ち会えたことに感謝しています。
10月6日 深謝 澤畑明見
安倍智穂さんと仲間たち。
この半年力を合わせてきた雰囲気が伝わってきます。
左端が澤畑明見さん
大棒レオ子さんと、帽子たち