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セボネ12月号特集「「失語症カフェ」はじめました 〜コミュニケーションのバリアフリーをめざして〜」 [2017年12月14日(Thu)]

「失語症カフェ」はじめました 
〜コミュニケーションのバリアフリーをめざして〜

 「言葉」は私たちがコミュニケーションをとる上で、必要不可欠なものです。しかし、突然の事故や病気で、「言葉」を使ったコミュニケーションが難しくなると、今までの生活が一変してしまいます。
 失語症への理解を深め、失語症会話パートナーの活動の幅を広げようと、梅丘で「失語症カフェ」の試みが始まりました。「失語症会話パートナー世田谷連絡会」の横井美代子さんにお話をうかがいました。

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9月の失語症カフェの様子


◆「失語症」のむずかしさとは

 脳卒中や事故による脳損傷の後遺症で、失語症は起こります。脳の萎縮によって起こる認知症とは違い、左脳にある言語野が損傷することにより、「話す」「聞く」「読む」「書く」ことが難しくなります。症状は人によってさまざまで、話を聞いて理解することはできるけれど、自分の想いを話すのが難しい人や、一見会話ができているように見えても、相手の言葉を理解するのが難しい人もいます。判断力や記憶力は変わりませんが、適切な言葉を引き出すのが困難になったり、言葉と意味の関連付けが難しくなったりします。

 NPO法人全国失語症協議会によると、患者は全国に30万〜50万人いると推定されていますが、その実態はなかなか解明できず、社会における理解や支援が進んでいないのが現状です。言葉の障害は外見でわかりにくく、自分の思いをうまく伝えることができないため、もどかしい思いをして、会話や外出をする機会が減り、孤独になってしまいがちです。


◆思いに寄り添うパートナー

 そんな失語症の方のコミュニケーションをサポートするのが、「失語症会話パートナー(以下、会話パートナー)」です。もともとは、カナダで失語症の人のための会話パートナーの養成を行っている、ということを知った言語聴覚士が「日本でも会話パートナーを養成しよう」と呼びかけたところから始まりました(現在はNPO法人「和音」)。2000年に第1回目の「失語症会話パートナー養成講座」が開催され、横井さんはその第2回目に参加しました。

 養成講座は失語症の基礎知識を学ぶ座学と、実際に失語症の方とのコミュニケーションを支援する実習形式で行われます。横井さんは、実習で訪れた世田谷区立総合福祉センターの失語症のグループの会話パートナーとして、講座終了後も継続してかかわり、15年以上活動してきました。

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お話をうかがった横井さん

 自主グループでは、失語症の方が7〜8人集まって会話を中心とした活動をしています。病院で言語聴覚士が失語症の方の言葉のリハビリをするときには1対1ですが、ふだんの会話は複数で行われることがほとんどです。失語症の方にとって集団の中で会話することは貴重な機会であり、集団の中で言葉を回復していくのです。

 「例えば、話すことはできるけど相手の話を理解するのが難しい人には、会話パートナーが要点をかいつまんでわかりやすく筆記し、その人の理解度を確認しながら、みんなの会話の輪に入っていけるよう支援をします。一方、頭の中に言葉はあるけど、話すのが難しい人に対しては、言いたいことをゆっくりと聞き出して、本人に代わって伝え、会話がスムーズにいくよう支援します」と横井さんはいいます。会話パートナーには、失語症の方の理解を助けたり、失語症の方の思いを伝えたりする役割があるのです。

 「言葉に不自由がなければ自分の意思で選んだ言葉を発言できますが、失語症の方はそれが難しいので、思いを代弁するときには、言葉の選び方に特に気をつけています」と横井さん。会話パートナーの大事な道具は、「地図」「カレンダー」「紙と鉛筆」のほか、会話のきっかけとなるような絵や文字が載っている「コミュニケーションボード」などがあります。

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「コミュニケーションボード」があると会話もスムーズ。

 失語症の自主グループの活動は「自分の思いが話せる場、ゆっくり話を聞いてもらえる場」になっています。会話パートナーはあくまでもボランティアなので言葉のリハビリはしませんが、こうしたていねいなサポートをうけた会話を重ねることによって、失語症の方の意欲を引き出すことができるのかもしれません。


◆当事者を尊重する支援

 世田谷区では2005年から毎年養成講座を開催し、「失語症会話パートナー」を養成しています。講座を受講する方のなかには、ご家族が倒れて失語症になり、そのために学び始める人もいるといいます。ある日突然、病に倒れ、言葉を失い、以前のような会話が難しくなるということは、本人にとっても家族にとっても、大きなショックを受けることは想像に難くありません。

 また、失語症は認知症と間違えられたり、状況を理解していないと誤解されて子ども扱いされてしまうこともありますが、頭の中には言葉も感情もあります。会話パートナーは「その人の尊厳を尊重して接すること」を鉄則とし、言葉だけでなく目線の動きや表情などにも注目し、感情の変化を見逃さないようにしています。

◆失語症をもっと知ってほしい

 「この2年ほどで失語症を取り巻く状況も変わってきている」と横井さんはいいます。障害者総合支援法で「意思疎通支援」という枠組みが規定され、昨年度からモデル事業として「失語症者向け意思疎通支援者の養成講座」も実施されています。今後は全国的に展開されていくそうです。

 失語症の場合、会ったその場からすぐに十分な会話支援ができるわけではなく、ある程度コミュニケーションを重ねて、その方の症状や背景等を知っていかないと会話のサポートが難しいという課題もあります。制度やしくみを充実させていくのはこれからのようです。
「失語症ゆえに当事者の方が自ら社会に対して声をあげるのは難しく、声が届きにくいので、会話パートナーが発言していかなければと感じています」


◆だれでもどうぞ「失語症カフェ」


 この13年で、世田谷区で養成された会話パートナーは120人をこえているそう。長年、失語症の方の会話をサポートしてきた横井さんに、転機が訪れました。ある失語症の方から、「養成された会話パートナーはたくさんいるらしいけど、いったいどこにいるの?」と尋ねられました。「総合福祉センターの自主グループでは活動しているけど、失語症の人はもっといろんなところにいるのに、どうしてもっと活動を広げないの?」と問われました。

 その声に押されるように、徐々に「会話パートナーの活動の幅を広げていきたい」「失語症に対する世間の認知をもっと高めていきたい」という想いが、会話パートナー仲間のなかで強まっていきました。「失語症の方に寄り添うつもりで支援をしてきたけれど、もう一歩積極的になったほうがいいんじゃないか、と思うようになったんです」と横井さんは振り返ります。

 ちょうどその頃、世田谷ボランティア協会の拠点のひとつである梅丘ボランティアビューローのスタッフとして働き始めた横井さんは、ビューローの事業として「失語症カフェ」を立ち上げることを提案しました。そして今年5月に開催した第1回目のカフェには24人が集まり、第2回の9月には30人をこえる人たちで大賑わいでした。失語症の方やご家族のほか、高齢者施設の職員、言語聴覚士をめざす学生、会話パートナーがたくさん集まり、情報交換したり、交流を図りました。

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***
「失語症カフェ」に参加した方の感想

・失語症の人とのコミュニケーションの取り方について学びたいと思って来ました。

・どのような病気でも憂鬱になりますが、気持ちを前向きに持つことが大切だと思います。
そのきっかけを見つけられるカフェだと思います。

・言語聴覚士の先生のお話、とてもよかったです。グループ内でも意見交換できました。

***


◆夢が広がる 地域に広がる 

 年明け1月12日(金)には第3回目の「失語症カフェ」を計画しています。会話パートナーが失語症の方々の活動についてご紹介し、お茶を飲みながらゆったりとお話を聞くことができます。
「ご近所の方や失語症のことをよく知らない人にもぜひ来てもらえたらと期待しています。そして、くつろぎのひとときに、おいしいコーヒーをいれてくださるボランティアも募集しています」

 2階にある梅丘ビューローまでは階段をあがらなければならず、失語症の方のなかには足にまひのある方もいるので、できればバリアフリーな環境で実施したいところです。横井さんをはじめ、会話パートナーたちは「梅ヶ丘に限らず、こんな場がもっといろいろな場所にあったらいいな」と考えています。さっそく、尾山台のほうに住んでいる方からも「地域で失語症カフェをやってみたい」という声があがっているそうです。認知症を地域で支えようと「認知症カフェ」は区内のあちこちで開催されるようになってきましたが、「失語症カフェ」の試みが広がるのも、もうすぐかもしれません。
(取材/編集委員 家井・伊藤、事務局 宮崎)

第3回「失語症カフェ」
日時:2018年1月12日(金)13時半〜15時半(要申込み)
会場:梅丘ボランティアビューロー
参加費:300円
問い合わせ:03-3420-2520
http://www.otagaisama.or.jp/1-wanted/20171213/5880.html



Posted by setabora at 21:36
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