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セボネ2月号特集「もっと語ろう不登校」の20年〜「自分語り」の場として〜 [2016年02月02日(Tue)]

「もっと語ろう不登校」の20年

〜「自分語り」の場として〜



 いまから20年前、世田谷の子どもの現場にかかわる有志が集まり、「世田谷こどもいのちのネットワーク(通称こいのち)」が生まれました。そしてその年、「いじめよとまれ!」と題したシンポジウムが開催され、多様な分科会からたくさんの出会いが生まれました。
 そのうちのひとつ、不登校分科会がその後も継続して、月1回実施されてきたのが「もっと語ろう不登校」です。主宰してきたのは、「オープンスペース“Be!”」の佐藤由美子さんと「フリースクール僕んち」の高橋徹さん。2016年3月で第200回目を迎えることを記念して、主宰者の2人に寄稿していただきました。


◆「もっと語ろう不登校」の はじまり 

 いじめを苦にした子どもの自殺が相次ぎ、話題となっていた20年前の1996年、危機に瀕する子どもたちのためのサポートシステムを生み出したいと願う、世田谷の子どもにかかわる有志が集まり、「世田谷こどもいのちのネットワーク」が立ち上がりました。

 そしてその年、3回にわたる「いじめよとまれ!」イベントを開催。多様な分科会からたくさんの出会いが生まれました。その内のひとつの分科会で、その後も月1回継続してきたのが「もっと語ろう不登校」です。世田谷区教育委員会の後援を得て、毎月区のお知らせやセボネでお知らせしてきましたが、2016年3月で記念すべき200回を迎えます。

 当初5、6人いた世話人も今は3人。それぞれ不登校の子どもの親や関係者たちです。世話人の活動拠点「NPO僕んち」(主宰者/高橋徹)と「オープンスペース“Be!”」(主宰者/佐藤由美子)を交互に会場として提供しています。

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写真/僕んち玄関

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写真/“Be!”の入口
今は、この2つの場所が交互に会場となっている。


◆「不登校」という現象の裏側に

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 「もっと語ろう不登校」は、「語り合う」ことが趣旨の会ではありますが、この会は当事者だけのものでも、いわゆる親の会でもありません。
 国の学校制度を完全に否定するわけではありませんが、この会ではまず、「学校に行かないで育つのもひとつの選択」という考え方を共有しています。子どもの「不登校」という外側に現れた現象だけを問題にするのではなく、そのひとつひとつの異なった背景に耳を傾け、分かち合います。

 子どもが学校に行かなくなると、とかく大人はわかりやすい原因を学校の教師やクラスメイト、家庭内に探そうとします。しかし、原因はひとつだけということはありません。いくつものことが偶然重なりあって、「不登校」という現象となって現れるのです。

 さらに、「不登校」という現象は社会が宿している複雑な問題の氷山の一角でもあります。例えば、私たちの社会にはどんな歴史があり、どんな社会体制であり、どんな価値観を当たり前として成り立っているのか、などを改めて問い直す事なくしては、不登校の子どもが何故、死を考えるほど苦しんでしまうのか理解することはできません。

 そのような観点から、この会は不登校の当事者や家族だけでなく、不登校現象を共に考え語り合いたい方であれば、どなたでも歓迎することにしてきました。

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心理カウンセラーの内田良子さんを招いて学習会を開催(2007年3月)


◆大切にしてきた「自分語り」

 「もっと語ろう不登校」で考えていきたいのは今、苦しみの渦中にある当事者のことです。不登校現象の広がりを語るにしても、「今」「ここ」で、目前の本人・家族が直面している困難にしっかり耳と心を傾け、それに共感するところが入口でありたいという姿勢を守っています。

 会の進行は、参加者が順番に自己紹介をしていく形をとっていますが、お願いしているのは、他者の語りにじっくり耳を傾けるだけでなく、自分の番が来たら、一人称で自分を語ることです。もちろん「今日はパス」もあり、聞いているだけの参加もありです。でも、覗き見的、評論家的な一般論語りはご遠慮願っています。時折現れる取材者であっても、まず自分を語っていただくことにしています。

 そうやって順繰りに語り続け、耳を傾け続けて20年の間に、「自分語り」という合言葉が生まれました。


◆「大丈夫」じゃなくても大丈夫!

 20年を経ようとしている今、改めて強く意識していることがあります。
それは、「『大丈夫』じゃなくても大丈夫!」という姿勢です。不登校に直面した本人や親の悩みの中心には、「このまま学校に行かないで、将来どうなっちゃうんだろう?」という心配があります。学校というひとつの成長の場から長く離れてしまうと、社会で独り立ちしていけないのではないだろうか、という不安です。

 それに関しては、ほとんどの場合、案ずるよりは産むが安しです。そばにいる大人が子どもの「今」に丁寧に応える対応をしていれば、その子なりの時期が到来したら巣立っていく、ということを実感しています。もちろん、中には自力ではなかなか巣立てない場合もあります。世間的な意味で、「大丈夫」とは言えないかもしれません。

 でも、そんな時こそ、世田谷版「おたがいさま!」の出番です。「大丈夫じゃない」時に、だれに助けを求めるのか、どう助け合うのか、どんな社会資源を利用できるのか、語り合う中で、そんなつながりや情報を手にし、周辺の関係を耕しておくのも、大人の大切な役目でしょう。

 家庭や親自身に様々な困難があったり、子ども自身が自覚できていなかった「原因」がずっと後で見えてきたり、順調にみえていた人が青年期に達してから、どう社会参加していいか分からず苦しむということだって、少なくありません。この会は、そんな若者や大人の居場所にもなっています。

 ここが「学校に行かなくても大丈夫! しっかり寄り添う大人がいれば、子どもはその子らしく一歩一歩成長し、育っていくよ!」というメッセージを分かち合い、しっかり届けていく場であること、そして、たとえ「大丈夫じゃない!」事態であっても、その問題とどう向き合っていくのかを語り合える場でもありたいと、いつも願ってきました。

 20年も続けていると、子どもだった人は若者となり、大人たちは「老い」に直面しています。直面する問題は、次々と違った形で目の前に現れ、それら全てがつながっているのだと改めて実感させられます。
 「不登校」を学齢期の問題として狭く閉じ込めてしまわず、より広い視野に解き放つことの意味を、この会こそ発信できるのだろうと、思えるのです。

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長い年月の中では、仲間を失ったことも。「偲ぶ会」を開き、思い出を語り合った。


◆つながりが生み出されている

 「世田谷こどもいのちのネットワーク」が母体ということもあり、当初からこの会は、つながりの中にあります。しかし更に、この会を積み重ねるうちに、「僕んち」と「オープンスペース“Be!”」とでは、若者支援の活動の連携も育ってきました。

 地理的に近いということもあり、年月を共有することによる信頼関係も育まれ、2つの居場所のメンバー同士、スタッフ同士の交流や助け合いもスムーズです。困難を抱え、単独ではなかなか支えきれないケースでも、こうして地域の中に、複数の多様なサポートポイントがあり、そのスタッフ同士の気心が知れているということは、当事者の方がたにしてみれば、とても恵まれた環境と言えるのではないかとの自負もあります。

 世田谷区教育委員会が月2回のペースで主催する「不登校保護者の集い」にもつながっています。高橋は助言者として参加、佐藤は運営スタッフとしてお手伝いしています。また佐藤は、他の仲間と共に、「18歳以上のアスペルガー親サロン」(数か月に一度の語り合う会)を立ち上げることにもなりました。
 「もっと語ろう不登校」の20年の歳月は、学齢期の子どもたちから青年期の若者たちまで、その成長をひとつながりのものとして捉える姿勢と知恵を、私たちの中に育んでくれたのではないでしょうか。
(寄稿/主筆・佐藤由美子、加筆・高橋徹)

NPO僕んち http://members3.jcom.home.ne.jp/bokunchi/
電話1(プッシュホン)03-3327-7142(高橋) (世田谷区代田4-32-17 サンハイツB)

オープンスペース“Be!” http://be-here.org/
電話1(プッシュホン)03-5300-5581(佐藤) (世田谷区赤堤1-15-13)

「もっと語ろう不登校 part199」
2月13日(土)14時〜 オープンスペース“Be!”にて
参加費300円
問合せ:電話1(プッシュホン)03-5300-5581(佐藤)

「不登校 保護者のつどい」(月2回開催)
2月17日(水)10時〜13時 北沢タウンホール
http://www.city.setagaya.lg.jp/kurashi/103/137/542/d00008531.html


Posted by setabora at 22:13
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