GDP日中逆転 国民に冷静な対応促す中国
[2010年08月25日(水)]
内閣府が8月16日に発表した試算によると、今年第2四半期(4-6月)における中国の米ドル建て名目国内総生産(GDP)が遂に日本を上回った。
日中関係にとって新たな時代の転換点だが、これを機に両国が補完的なパートナーとして関係を成熟させるか対立するかは我々日中双方の一人一人の態度次第だ。
新たな転換点
日本の十倍の人口を持つ中国が経済規模で日本を上回るのは今さら驚くことではないが、日中関係の歴史においては新たな時代の転換点だ。
1972年の国交正常化以来の日中関係を振り返ると、約10年ごとに4つの時代に区分できる。
70年代は日中間の「関係構築期」として、72年の日中共同宣言以後次々と実務協定が結ばれるとともに、日中平和友好条約の交渉が続けられた。1978年には条約締結に至るとともに、中国が改革開放路線に舵を切ると、1979年には日本の中国への経済援助(ODA)供与も開始され、80年代は日中関係の「発展期」となった。
その後80年代末の冷戦終結は日中関係にも様々な形で影響し、90年代は「動揺期」となった。この時期、日本と中国は、中国における六四事件や地下核実験などを巡って外交関係が冷却化することもあったが、経済関係は着実に発展してきた。特に01年の中国WTO加盟を契機に日中間の経済関係は飛躍的に進展し、2000年代は「相互依存深化期」と呼ぶべき時期となった。
過去40年、日中関係は時に歴史認識などを巡って対立することもあったが、大局としては一貫して友好協力を拡大し、援助・被援助という非対称の関係からより対等な互恵関係へと発展してきた。
こうした流れの延長上で、新たな10年が始まる今年、中国の名目GDPが日本を追い抜いくことを契機に、2010年代が日中関係の「成熟期」となることを期待する。
技術力や社会発展度に比較優位のある日本と、経済規模や発展余地に比較優位のある中国とが補完的なパートナーとして、お互いの利害と立場を尊重し合いながら引き続き関係発展を続けられたら、10年代は日中関係の「成熟期」と呼ぶにふさわしい時代になるだろう。
関係成熟か対立か
しかし逆に、中国が日本を抜いて世界第二位の経済大国となることが、日中関係の「対立期」の幕開けとなってしまう危険性が日中両国内にくすぶっている。
日本側では、中国の経済規模が日本を追い抜くことによって、中国を潜在的な脅威と感じる人が増える可能性がある。
2000年前後に日本でよく使われた「中国脅威論」という言葉は最近あまり使われなくなり、むしろ中国の経済発展を好意的に捉える傾向が広まりつつある。
しかし、こうした傾向は、中国を脅威と感じる人がいなくなったことを意味するのではなく、むしろ中国を潜在的な脅威と感じることが一般化したために、改めて殊更に中国を脅威として騒ぎ立てることが少なくなったのだと考えられる。
事実、日本政府(内閣府)が毎年実施している世論調査によれば、中国に親しみを感じている日本人は1980年には78.6%を占めていたが、90年代には親しみを感じる人と感じない人が半々で拮抗するようになり、2004年以降は親しみを感じない人の割合が親しみを感じる人の割合を大きく上回るようになり、2008年には親しみを感じない人が66.6%と占めるまでになった。
2009年には親しみを感じる人の割合が若干上昇したが、日本人の約3分の2が中国に対して批判的であるという傾向に変わりはない。
日本人の中国に対する親近感
(出所:内閣府『外交に関する世論調査』2009年版)
一方の中国側では、世界二位の経済大国という自尊心が過度になれば、日本軽視につながりかねない。
もし中国の人々が周辺国を軽視する態度や周辺国の懸念に配慮しない態度を示せば、周辺国の人々は一層中国を脅威と感じることになるだろう。そうなれば、中国を取り囲む国際情勢を悪化させることにつながり、中国自身にとっても決して望ましいことではないはずだ。
この点につき中国政府は、商務部の姚堅報道官が「日本は中国にとって最大の輸入国であり、地域協力においても重要な協力パートナーだ」(商務部HP 2010年8月17日)と述べるなど、国民に冷静な対応を促す。
各種報道も、中国の一人当たりGDPは3800ドル(世界105位前後)で、一日収入1ドル未満の人も1億5千万人いることなどを強調し、慢心を戒める論調だ。これが功を奏したか、中国ネットメディア「環球網」によれば、ネット利用者の94%が「中国経済世界二位」という見方に反対だという(中国網日本語版2010年8月20日)。
ただし、世界第二の経済大国と見られたくない背景には、国際社会からより多くの責任を求められたくないという利己的な事情もあると思われる。
日本と中国はお互いにとって最重要パートナーの一つである。客観的に見れば、この日中関係の大局は向こう2010年代においても不変のはずである。日本と中国が今後の10年を「成熟期」とするか「対立期」とするかは、我々日中双方の一人一人がこうした大局を正しく理解し、お互いを対等なパートナーとして尊重し合うことができるかどうかにかかっている。
(東京財団HPより転載)
日中関係にとって新たな時代の転換点だが、これを機に両国が補完的なパートナーとして関係を成熟させるか対立するかは我々日中双方の一人一人の態度次第だ。
新たな転換点
日本の十倍の人口を持つ中国が経済規模で日本を上回るのは今さら驚くことではないが、日中関係の歴史においては新たな時代の転換点だ。
1972年の国交正常化以来の日中関係を振り返ると、約10年ごとに4つの時代に区分できる。
70年代は日中間の「関係構築期」として、72年の日中共同宣言以後次々と実務協定が結ばれるとともに、日中平和友好条約の交渉が続けられた。1978年には条約締結に至るとともに、中国が改革開放路線に舵を切ると、1979年には日本の中国への経済援助(ODA)供与も開始され、80年代は日中関係の「発展期」となった。
その後80年代末の冷戦終結は日中関係にも様々な形で影響し、90年代は「動揺期」となった。この時期、日本と中国は、中国における六四事件や地下核実験などを巡って外交関係が冷却化することもあったが、経済関係は着実に発展してきた。特に01年の中国WTO加盟を契機に日中間の経済関係は飛躍的に進展し、2000年代は「相互依存深化期」と呼ぶべき時期となった。
過去40年、日中関係は時に歴史認識などを巡って対立することもあったが、大局としては一貫して友好協力を拡大し、援助・被援助という非対称の関係からより対等な互恵関係へと発展してきた。
こうした流れの延長上で、新たな10年が始まる今年、中国の名目GDPが日本を追い抜いくことを契機に、2010年代が日中関係の「成熟期」となることを期待する。
技術力や社会発展度に比較優位のある日本と、経済規模や発展余地に比較優位のある中国とが補完的なパートナーとして、お互いの利害と立場を尊重し合いながら引き続き関係発展を続けられたら、10年代は日中関係の「成熟期」と呼ぶにふさわしい時代になるだろう。
関係成熟か対立か
しかし逆に、中国が日本を抜いて世界第二位の経済大国となることが、日中関係の「対立期」の幕開けとなってしまう危険性が日中両国内にくすぶっている。
日本側では、中国の経済規模が日本を追い抜くことによって、中国を潜在的な脅威と感じる人が増える可能性がある。
2000年前後に日本でよく使われた「中国脅威論」という言葉は最近あまり使われなくなり、むしろ中国の経済発展を好意的に捉える傾向が広まりつつある。
しかし、こうした傾向は、中国を脅威と感じる人がいなくなったことを意味するのではなく、むしろ中国を潜在的な脅威と感じることが一般化したために、改めて殊更に中国を脅威として騒ぎ立てることが少なくなったのだと考えられる。
事実、日本政府(内閣府)が毎年実施している世論調査によれば、中国に親しみを感じている日本人は1980年には78.6%を占めていたが、90年代には親しみを感じる人と感じない人が半々で拮抗するようになり、2004年以降は親しみを感じない人の割合が親しみを感じる人の割合を大きく上回るようになり、2008年には親しみを感じない人が66.6%と占めるまでになった。
2009年には親しみを感じる人の割合が若干上昇したが、日本人の約3分の2が中国に対して批判的であるという傾向に変わりはない。
日本人の中国に対する親近感
(出所:内閣府『外交に関する世論調査』2009年版)

もし中国の人々が周辺国を軽視する態度や周辺国の懸念に配慮しない態度を示せば、周辺国の人々は一層中国を脅威と感じることになるだろう。そうなれば、中国を取り囲む国際情勢を悪化させることにつながり、中国自身にとっても決して望ましいことではないはずだ。
この点につき中国政府は、商務部の姚堅報道官が「日本は中国にとって最大の輸入国であり、地域協力においても重要な協力パートナーだ」(商務部HP 2010年8月17日)と述べるなど、国民に冷静な対応を促す。
各種報道も、中国の一人当たりGDPは3800ドル(世界105位前後)で、一日収入1ドル未満の人も1億5千万人いることなどを強調し、慢心を戒める論調だ。これが功を奏したか、中国ネットメディア「環球網」によれば、ネット利用者の94%が「中国経済世界二位」という見方に反対だという(中国網日本語版2010年8月20日)。
ただし、世界第二の経済大国と見られたくない背景には、国際社会からより多くの責任を求められたくないという利己的な事情もあると思われる。
日本と中国はお互いにとって最重要パートナーの一つである。客観的に見れば、この日中関係の大局は向こう2010年代においても不変のはずである。日本と中国が今後の10年を「成熟期」とするか「対立期」とするかは、我々日中双方の一人一人がこうした大局を正しく理解し、お互いを対等なパートナーとして尊重し合うことができるかどうかにかかっている。
(東京財団HPより転載)

















