日本財団公益コミュニティサイト CANPAN CANPANブログ:公益法人,NPO,CSR,社会貢献活動のための無料ブログ

日ベトナム経済連携協定(JVEPA)発効で何が変わるか [2009年10月05日(月)]
10月1日、日本とベトナムとの間で「経済上の連携に関する日本国とベトナム社会主義共和国との間の協定」が発効した。

日本にとっては11番目の経済連携協定(EPA)であり、ベトナムとしては初の二国間EPAとなるこの日越EPAは、2007年1月から約1年8ヶ月に及ぶ政府間交渉の末に昨年9月に大筋合意に至り、その後のテキスト確定作業や批准手続きなどを経て、このたび発効の運びとなったものである。

政府は、「往復貿易額の約92%を協定発効後10年間で関税撤廃」し、あわせてサービス貿易の自由化や関連分野の連携強化を図ることによって、「日・ベトナム間の貿易の拡大、投資活動の促進及び経済関係全般の強化に貢献する」と、その意義を強調している。

しかしながら、これまでに日本が各国と結んできた各EPAを見てみると、どれも政府が言うほどの効果をあげているようには見えない現実がある。実際のところ、この日越EPA発効の意義はどこにあるのか、また、日本企業にとってどのような影響があるのか。本協定の交渉に携わった一人として、自省を込めて検討してみたい。

1.日越EPAの意義
まず率直に認めなければならない点は、この日越EPAによって関税面で大きなメリットが生まれるとは言い難い点である。

ベトナムは、この日越EPAによって、日本からの輸入品については現在の貿易額ベースで約93%を最終的に関税撤廃するとしているが、それが実現するのは16年も経ってからのことである。

特に、自動車部品、鉄鋼、電気電子部品など、日本企業にとって関心の高い物品については、ほとんどが関税即時撤廃の対象とはなっておらず、その多くが10年から15年という長い時間をかけて徐々に関税を下げていくと約束しているにすぎないのである。

こうした物品は、日系企業がベトナムを生産基地として活用する際に日本から持ち込まれる中間財であり、その多くについて関税撤廃のメリットが大きくない以上、日越EPAによる関税撤廃の意義を殊更に強調することはできようもない。

加えて、一部の物品については、EPA交渉の間にベトナムが既に一般的な関税率(実行最恵国税率)を引き下げたため、すでに日越EPAで日本に約束した関税率よりも低くなっているものまである。

また、取引ロットの大きくない中小企業にとっては、原産地規則証明書取得のための手間ひまや発行手数料(従来のEPAの例で言えば、2000円/件+500円/品)も加味すれば、大筋合意された関税削減のメリットも相殺され、大きな効果は期待できない。

強いて言えば、日本がEPA・FTAを締結していないものの、ベトナム(ASEAN)とは締結(見込み)している有望市場国(中国、韓国、インドなど)に対して、ベトナムは関税優遇のハブとしての位置付けが期待されうるが、いずれにせよ日越EPAによる関税引き下げに過度な期待は持たないほうがよく、すぐに日系企業に大きな恩恵をもたらすとは言い難い。

2.日越EPAに期待する点
こうした状況ではあるものの、日本に何の恩恵ももたらさないわけではない。エビや熱帯果物など、ベトナム特産の一部の農林水産品が即時関税撤廃されることから、これら農林水産品の輸入業者や消費者にとっては多少のメリットがあるだろう。

また、知的財産保護について、日越当局間で協議メカニズムが構築され、またベトナム当局による取り締まりのエンフォースメント強化に日本が協力を約束したことも進歩と言える。

さらに「ビジネス駆け込み寺」として、ベトナム進出日系企業からの問い合わせを一元的に受け付ける連絡窓口がベトナム政府内で指定されるとともに、その連絡窓口と進出日系企業との間のコミュニケーションを大使館や指定機関(JETRO現地事務所と予想される)が取り次いでくれるようになるという。

また、ベトナムでの(電気電子や自動車関連の)部品・中間財の調達に貢献する現地裾野産業の育成に日本が協力を約束した点も評価できる。この点については、すでに昨年12月の協定署名の段階で、二階俊博経済産業大臣とヴー・フィー・ホアン・ベトナム商工大臣との間で、関係文書が交わされており、裾野産業育成にかかるアクション・プランの作成と、同プランで特定された優先的プロジェクトが実施されることになっている。

ほかにも、ベトナムからエビ・イカなどの食品を輸入する日本にとって、その安全と密接な関係のあるベトナムの動植物検疫行政について情報交換や協議のメカニズムが日越EPAによって構築されることもメリットだと言えよう。

まとめ
以上をまとめれば、主要産品の関税撤廃などの即効性を日越EPAに期待することはできないものの、むしろ「ビジネス駆け込み寺」制度の構築といった関税以外のメリットを活用しつつ、税関手続き円滑化や知的財産保護、裾野産業育成など、日越EPAの枠組下で今後進むであろうビジネス環境の向上に期待したい。

(東京財団HPより再掲)