よみがえる川 No.147[2016年09月30日(Fri)]
日本生態系協会 会報「エコシステム」No.147
−川の自然再生で築く接続可能な社会 −
川は、私たちや将来世代の人々にも多くのめぐみをもたらし続けてくれる、豊かな暮らしの基盤です。
しかし人による地球温暖化による影響と、生物多様性を失ってきました。
川は今、「環境」「治水」「利水」の時代を迎えています。
姿を変えた川
日本にはたくさんの川が流れています。
ほとんどの川では、その時々の時代の要請を受けて、さまざまな改修が施され、姿を変えてきました。
「命の水」を循環させる川
大地に降った雨は、地表を低い方へ流れ、いく筋もの集まりが川となります。
山で生まれた川は、川底や川岸を削りながら、土砂や砂を運び、運びきれない分はたい積します。
たい積物は山地と平地の境で扇状地として、また河口では三角州として、あるいは洪水後は自然堤防として地形をつくります。
その間、川は蛇行しながら窒素・リン・ケイ素などの栄養素を運び、多くの植物や動物の命を支えます。
また、私たち人間も安全な水を得たり、水産資源を利用したり、観光やレクリエーションの場として利用したりと川から多くの自然のめぐみを受けています。
川は、私たちが生きていくうえで欠かせない「命の水」を循環させるという大切な役割を果たしています。
姿を変えた川
水源から河口まで、川は地形に応じて流れる速さやその姿を変え、さまざまな動植物の生息・育成環境(ビオトープ)を生みだしています。
しかし、戦後の高度成長期を中心に、洪水などの被害を抑える治水や、水力発電を含め水の利用を容易にする利水の目的で、私たちは川にさまざまな改修を加え、その姿を変えてきました。
本来は山から海までひと続きで流れている川にダムや堰をつくり、その流れを分断しています。
あるいは、川から水があふれないよう、また降った雨は速やかに海へ流すという目的で、高い堤防を設け、川の流れを直線化し、川の環境を単調にしてきました。
そして生きものがすみにくく、行き来がしにくいつくりになりました。
私たち人間は、多少の台風が来ても水が溢れない川に慣れ、昔の人々が住むことを避けていた自然堤防の中にまで生活の場を広げ、まちは発展してきました。
しかしながらこの状況は、ひと度洪水が起きると、その被害も大きいということになります。
記憶に新しい2015年9月の関東・東北豪雨では、利根川水系の鬼怒川で複数の堤防から水があふれ、甚大な被害が生じました。
近年では、異常気象も頻発するようになり、川に近づきすぎた人々の生命や財産を守りきれない事態も起きています。
これまでにつくってきたダムや堰は、老朽化し、何もしなければいずれ使えなくなる時がきます。
人口減少に伴い税収が減ることにより、こうした人工構造物を維持管理していくことが難しくなっていくという問題も出ています。
これから持続可能な社会を築いていくうえで、川はどのような姿であるのが望ましいのでしょうか。
また、私たちは川とどのようにつきあっていくべきなのでしょうか。
今号では、川の自然再生について考えます。
−川の自然再生で築く接続可能な社会 −
- 姿を変えた川
- 治水・利水+環境
- 国内の川の自然再生
- 川を自然に戻す ドイツの事例から
- 川の自然再生で接続可能な社会を
川は、私たちや将来世代の人々にも多くのめぐみをもたらし続けてくれる、豊かな暮らしの基盤です。
しかし人による地球温暖化による影響と、生物多様性を失ってきました。
川は今、「環境」「治水」「利水」の時代を迎えています。
姿を変えた川
日本にはたくさんの川が流れています。
ほとんどの川では、その時々の時代の要請を受けて、さまざまな改修が施され、姿を変えてきました。
「命の水」を循環させる川
大地に降った雨は、地表を低い方へ流れ、いく筋もの集まりが川となります。
山で生まれた川は、川底や川岸を削りながら、土砂や砂を運び、運びきれない分はたい積します。
たい積物は山地と平地の境で扇状地として、また河口では三角州として、あるいは洪水後は自然堤防として地形をつくります。
その間、川は蛇行しながら窒素・リン・ケイ素などの栄養素を運び、多くの植物や動物の命を支えます。
また、私たち人間も安全な水を得たり、水産資源を利用したり、観光やレクリエーションの場として利用したりと川から多くの自然のめぐみを受けています。
川は、私たちが生きていくうえで欠かせない「命の水」を循環させるという大切な役割を果たしています。
姿を変えた川
水源から河口まで、川は地形に応じて流れる速さやその姿を変え、さまざまな動植物の生息・育成環境(ビオトープ)を生みだしています。
しかし、戦後の高度成長期を中心に、洪水などの被害を抑える治水や、水力発電を含め水の利用を容易にする利水の目的で、私たちは川にさまざまな改修を加え、その姿を変えてきました。
本来は山から海までひと続きで流れている川にダムや堰をつくり、その流れを分断しています。
あるいは、川から水があふれないよう、また降った雨は速やかに海へ流すという目的で、高い堤防を設け、川の流れを直線化し、川の環境を単調にしてきました。
そして生きものがすみにくく、行き来がしにくいつくりになりました。
私たち人間は、多少の台風が来ても水が溢れない川に慣れ、昔の人々が住むことを避けていた自然堤防の中にまで生活の場を広げ、まちは発展してきました。
しかしながらこの状況は、ひと度洪水が起きると、その被害も大きいということになります。
記憶に新しい2015年9月の関東・東北豪雨では、利根川水系の鬼怒川で複数の堤防から水があふれ、甚大な被害が生じました。
近年では、異常気象も頻発するようになり、川に近づきすぎた人々の生命や財産を守りきれない事態も起きています。
これまでにつくってきたダムや堰は、老朽化し、何もしなければいずれ使えなくなる時がきます。
人口減少に伴い税収が減ることにより、こうした人工構造物を維持管理していくことが難しくなっていくという問題も出ています。
これから持続可能な社会を築いていくうえで、川はどのような姿であるのが望ましいのでしょうか。
また、私たちは川とどのようにつきあっていくべきなのでしょうか。
今号では、川の自然再生について考えます。