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地方の創生にとまどう地方 No.139[2016年04月30日(Sat)]
日本生態系協会 会報「エコシステム」No.139
−注視する世界−
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  • 「地方創生」とは

  • これまでの地域活性化策の問題点

  • 自分たちのまちの戦略、「地方版総合戦略」をつくる 〜地方創生のヒント〜

  • これからの地方創生のあり方 〜自然環境を基盤にしっかり捉える〜

  • 接続可能な地方の創生 そして接続可能な日本へ




「地方創生」とは

896の地方自治体が消滅するかもしれない。
各地で人口急減、高齢化が進むなか、どのようにしたら日本を接続可能な社会に変えることができるのか。
私たちの国は、正念場を迎えています。

「ひと・しごと・まち創生法」の成立

昨年(2014年)5月に、日本創生会議(座長・増田寛他元総務相)から、「若い女性の人口が2040年までに5割以下に減ってしまう市区町村が全国に896ある。
全体のじつに半分にあたるこの896の自治体は、このままいくと将来消滅してしまう可能性がある。
その一方で、大都市・東京への人口の集中がさらに極端なかたちで進んでいく」というレポートが発表されました。

日本の総人口が減少することは、高度成長期に失った人と自然とのバランスを回復するという観点から、基本的に望ましいことです。

しかし、東京への一極集中がさらに進み、多数の地方が消滅してしまうことは問題です。
例えば、首都直下地震が起こった場合、その一つの地震で、日本全体が麻痺することになりかねません。

また、今のようなかたちで少子・高齢化が続くと、65歳以上人口の割合(高齢化率)が、全国平均で10年後に30%、40年後には40%になる、という問題もあります。
14歳以下の年少人口割合は、全国平均で40年後に10%を切り、子どもがほとんどいない状況になると予測されています。

地方ではさらにその傾向が強まると考えられます。

この状況を回避するため、昨年(2014)11月に国会で「ひと・しごと・まち創生法」という法律がつくられ、12月に「地方創生」に向けた国の総合戦略が発表されました。

国がいう「地方創生」とは

「地方創生」とは具体的にどのようなことでしょうか。
国は、地方創生には3種類あり、それぞれについて次のように説明しています。

@しごとの創生

地方で産業の活性化などに取り組むことで、地方での働き口を増やす。
若い人たちを地方に引きつけるために、「相応の賃金、安定した雇用形態、やりがいのあるしごと」という点にも注意する。

女性に地方に住み続けてもらうために、地方で女性が活躍できる場をつくる取り組むも進める。

Aひとの創生

地方への新しい人の流れをつくるために、しごとの創生を行いつつ、若者の地方への移住・定着を促すしくみを設ける。

若い人たちが地方で安心して仕事にチャレンジでき、また、子どもが産み育てられるよう、結婚から妊娠・出産・子育てまで、切れ目のない支援を実現する。

Bまちの創生

地方での生活の素晴らしさが実感でき、また安心して暮らせるようにする。

人口増加期に郊外開発で市街地が広がった地方都市では、財政の関係から、今後は医療・福祉などのサービスを、まち全体に行き渡らせることはできない。
市街地をまちの中心部に縮小する取り組みを進める。

地上の流れ 地下の水 No.138[2016年04月29日(Fri)]
日本生態系協会 会報「エコシステム」No.138
−水の流れは自然がいい感謝とおそれを胸に−
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氾濫原は元の自然に戻す 〜川や低い土地では〜

洪水被害を受けやすい場所は元々の自然に戻す

アメリカでは、1993年にミシシッピ川とミズーリ川流域を中心に発生した大洪水がきっかけで、川を堤防と堤防の間の狭い空間に押し込めることはできない、という考えが国民の間で広がりました。そして、堤防やダムなどの構造物による従来の対策ではなく、氾濫原の土地利用を規制する方法が注目されるようになりました。

こうしたことから洪水後、「危険の緩和および移転の援助に関する法律」が制定され、政府の補助金を元に自治体が不動産を買い上げる「バイアウト(買い上げ)・プログラム」が実施されました。
これにより、ミズーリ州では100を超えるプログラムのもと、洪水によって損害を受けた数千戸の住宅・建物を買い上げ、洪水の危険がある氾濫原地域からの移転を行いました。

その結果、のちに発生した大洪水では、かつてのような被害が出ることはありませんでした。
また、買い上げられて公有地になった土地は自然に戻されたり、レクリエーションの場として利用されたりしています。

生物多様性を豊かにし、洪水被害を軽減させる遊水地

静岡県静岡市の麻機(あさはた)遊水地は、かつては沼地でしたが、土を入れて生産性の高い水田がつくられました。
しかし、1974年(昭和49年)に発生した集中豪雨で大きな被害を出したことから、県が水田を買い取り、水田を掘り下げて洪水時の水を溜める遊水地につくりかえました。
遊水地では、土中に眠っていたさまざまな植物が再生し、数多くの野鳥が飛来するなど、多様な生きもののすみかとなっています。
そして、本来の目的である洪水被害の軽減に役立つとともに、レクリエーションの場としても利用されています。
工業文明から生態系文明へ No.137[2016年04月28日(Thu)]
日本生態系協会 会報「エコシステム」No.137
−右肩上がりの経済成長の限界−
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  • 国の経済を揺るがす地球温暖化

  • 疑う余地ない地球温暖化の進行

  • 日本の現状を課題

  • 主要国の取り組み

  • 自治体レベルの緩和策と適応策

  • 持続可能な未来に向けて




日本の現状と課題

地球温暖化の防止が世界的に急務となるなか、日本も具体的かつ野心的な数値目標を設定し実行する必要があります。
しかし、壮大な長期目標に掲げる傍ら、短中期目標は低い水準にとどまり、国内の実質的な削減は進んでいません。

求められる地道な削減

日本は、第一次安部内閣時代の2007年、世界全体の排出量を2050年までに半減するという「美しい星50」を提案しました。
また、第二次安部内閣の2013年11月には、「Actions for Cool Earth」を提案し、2050年世界半減、先進国80%削減という目標を掲げています。
しかし、その中身に目を移すと、目標の達成は主にCO2の回収・貯蔵・固定化などの技術革新や、途上国の排出削減への技術的・金銭的な支援にとどまっています。

安部首相は昨年11月の日米首脳会談で、緑の気候基金※1に最大約2,130億円を拠出する提案をしました。
もちろんこうした途上国への支援は評価に値します。しかし、同時に自国の排出量を80%以上削減して、世界に模範を示すことが必要です。

日本は京都議定書第一約束期間(2008年〜2012年度)に、基準年である1990年比6%減の目標を超え、8.4%の削減を達成しました。
しかし、これはこの期間の特例として認められた森林等吸収源3.9%と、京都メカニズム※2に基づいて取得したクレジット5.9%を差し引くことで達成したものです。

実際の排出量は減るどころかむしろ1990年比で1.4%増えています。また、2013年11月に発表した新目標は、2020年までに2005年比3.8%削減というもので、これを1990年比に置き換えると3.1%の増加となり、実質的には京都議定書の目標から後退する内容となっています。

日本の求められることは意欲的な短中期目標を掲げ、地道に削減することで、長期目標を確実に達成することです。

※1途上国による温室効果ガス排出の削減などを支援するための基金
※2他国において削減援助した分を、自国の削減分として用いることができる制度
使われない農地40万ヘクタール No.136[2016年04月27日(Wed)]
日本生態系協会 会報「エコシステム」No.136
−自然に戻す国、無断にする国 −
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  • 全国で「使われなくなった農地」が増えている

  • 使われなくなった農地はどうしたらよいのか

  • 使われなくなった農地は自然に戻しておく

  • 耕作放棄地を自然に戻すためには

  • 海外において、農地を自然に戻した例

  • 美しい自然を取り戻すために




美しい自然を取り戻すために

将来世代の財産である土俵と遺伝子を守る

これからの日本の接続可能なくにづくりやまちのづくりに向けて、美しい自然とを取り戻し、多種多様な野生の生きものを将来世代に残していく必要があります。
植物が育つための基盤である土俵が失われてしまっては、私たちは生きていくことができません。
また、新たに医薬品を開発したり、農作物の品種改良を進めていくうえでも、多様な野生の生きものが持つ遺伝子を資源として保護していかなければなりません。

そのためにも、使われなくなった農地は自然に戻しておく、という考え方が必要です。
山間部や、平地であっても災害を受けやすい場所の耕地放棄地は、維持や管理にかかるお金が少なくてすむ自然へ戻しておくという考えが重要となります。

自然に戻していく際には、草地や湿地、自然の森などが持つ、多面的な機能の特徴をしっかりと把握し、地域の要望を満たした、住みやすいくにづくり・まちづくりに役立つ自然へと戻していく、という考えが求めれます。

提案1 行政などが耕作放棄地を取得し、官と民が協働して再自然化を進めていくしくみを設ける

自然公園の特別地域、高潮や洪水・土砂災害といった災害にあいやすい場所など、農業を営むよりも、自然に戻して多面的な機能を高めることが求めれる場所にある耕作放棄地は、国や地方公共団体が取得し、官と民が協働して自然再生を進めていく制度を設けます。

提案2 所有者のわからない耕作放棄地を、環境NGOが生物の多様性の保護を目的として管理できるしくみを設ける

耕作放棄地が所有者のわからない土地であった場合、行政はその土地が耕作放棄地であることなどを公表し、所有者でなくともその耕作放棄地の管理ができるような制度を設けます。
管理については、自然に悪い影響を与える外来種は駆除しますが、その以外は定期的な草刈りなど最低限の作業にとどめます。
管理の担ぎ手としては、環境NGOなど、自然環境の保護に専門的な知見を持つ団体にたくせるようにします。
一定の年数が経過した後も、なお耕作放棄地の所有者が名乗り出ない場合は、原則として公有地となるようにし、自然の持つ多面的な機能がより強く発揮されるよう、自然再生を進めます。

求められる政治家のリーダーシップ

ここに示した提案は、山から沿岸部まで、離島も含め、日本全土の土地利用に関わるものであり、複数の省庁が関係しています。
現在の省庁の中で制度化し、自然再生などの事業を進めていくことは困難です。
美しい自然を子どもたちにプレゼントするためにも、50年、100年先を見すえた、省庁の枠をこえて政策を示すことのできる、政治家の強いリーダーシップが求められます。
風土は個性 個性あるまちを、つくる時 No.135[2016年04月26日(Tue)]
日本生態系協会 会報「エコシステム」No.135
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まちに個性と魅力を取り戻す
これまでグレーインフラに力を注いできた日本のまち。今、多くの自治体で人口減少が進み、維持しきれないことが
わかっています。国土交通省でも今年、景観法制定10年を契機に制度の点検や見直しを進めています。
世界の人が集まる個性と魅力あるまちにするには何が必要なのか、考えます。

人口減少時代のまちのあり方

2014年5月、有識者による政策提言組織「日本創世会議」の人口減少問題検討分科会が、「若年女性の流出により、2040年には全国の896市区町村が消滅の危機に直面する」という試算結果を発表しました。

896年市区町村は、今ある自治体数の約半分を占め、この試算結果は多くの自治体に衝撃を与えました。

今、人口減少が進む多くの自治体では、まちの個性と魅力を生かし、観光客や二地域居住者といった交流人口を増やすことで、人口減少の影響を緩和し、地域の活力を維持しようという取り組むを進めています。
しかし、コンクリート製のビルなど従来のインフラ(グレーインフラ)によるまちづくりの結果、どこに行っても同じような景観が広がり、まちの個性が感じられにくくなっています。
また大量の地下資源を使ってつくれらたインフラはいずれ大量のゴミになるため、接続可能なまちは言えません。
グレーインフラに頼らず、人が「住みたい」「訪れたい」と思う個性あるまちづくりが、接続可能な経済への第一歩です。

個性を生み出す三つの要素

魅力ある、個性的なまちとして注目される自治体には、次の三つの要素があります。

1 地域の生物多様性を取り戻す

私たちにとって多様な恵み(生態系サービス)を与えてくれる自然を未来に残すことは、接続可能な社会をつくる上での基本となっています。

自然は、気候や地形の違いなど、地域ごとの特徴があり、地域ならではの自然を特色として打ち出しているまちは、ブランドの構築につながっています。

自然の質が落ちた地域は、豊かな生物多様性を取り戻す必要があります。

2 地域の伝統や歴史を生かした景観を守る

多様な風土を持つ日本では、地域によってさまざまな文化が育まれてきました。

伝統的な家屋の構造は地域により異なるほか、まちの成立の歴史によってまちなみも特徴がありました。

このような伝統や歴史を生かしたまちは、住民の誇りを持たせると同時に、独特の雰囲気により、来訪者に個性ある環境を提供することができます。

3 地域資源を活用したエコツーリズムに取り組む

交流人口を増やす代表的な取り組みである観光では、団体で観光地を巡るものから、少人数での体験や地域の人との交流が中心のものへと関心が移っており、地域の自然や伝統を楽しむエコツーリズムが人気を集め、地域経済の活性化の手段として注目されています。

世界をリードするチャンスを手にした日本 No.134[2016年04月25日(Mon)]
日本生態系協会 会報「エコシステム」No.134
−人口減少というチャンス、グリーンインフラへのチャンス−
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人口の減少はグリーンインフラを取り込むチャンス

日本では人口が減少しつつあります。困った問題として悲観的にとらえれがちですが、日本の適正人口は5,500万人。
接続可能なまつやくにのあり方を考えた時、日本では人口が減ることは良いことであり、また、それはグリーンインフラの考えを取り込むチャンスと言えます。

日本の人口は50年後、今の3分の2にまで減少

日本の人口は、現在およそ1億2,710万人で、2007〜2010年の約1億2,800万人をピークに、翌2011年から減少し続けています。
国立社会保障・人口問題研究所の推計では、2026年に1億2,000万人を下回り、その後も減少を続けます。
2048年には1億人を下回って約9,913万人となり、2050年には約9,708万人、2060年には約8,674万人になるとされています。
日本の人口は、50年後には、今の約3分の2になるということです。

人口1万人以下のまちの人口は約半分に

国交省では、2010〜2050年までの人口減少率を全国平均で約24%と推計しています。
政令指定都市や人口30万人以上の都市では人口減少が約20%程度にとどまる一方、人口が1〜5万人のまちでは、
人口減少率が約37%、1万人未満のまちでは約48%にもなるとしています。
つまり、人口の少ないまちほど、人口が大きく減少するということです。
離島については、現在、離島復興法の対象となっている258の島のうち、約1割が無人島になる可能性があるとしています。

まちのなかや郊外の空いた土地でも自然を再生

日本では、高度成長期に、人口が増えるにしたがって、まちなかに残されていた森や湿地、農地がどんどん破壊され、宅地化していきました。
また、道路が郊外へと延びるようつくられ、車も普及し、郊外での宅地化が次から次へと進み、まちは急速に拡大していきました。

しかし、人口が減少し始め、すでに地方においては郊外はもちろん、まちなかでも、近年は人が住まなくなる場所が目立ちつつあります。

悲観的にとらえられることが多い現象ですが、日本の適正人口は5,500万人(本誌2012年5月号参照)。
土地利用に余裕ができ、人が住まなくなった土地を自然に戻すチャンスがきたと言えます。

例えば、空き家は全国平均で総住宅数の13.1%。人口が減少していくことで、今後、各地でさらに増加していくと考えられます。

こうした流れをただ見ているのではなく、広がりすぎている今のまちを接続可能なまちにしていくチャンスととらえ、@郊外に住む人々を、まちの中心部にできた空き家に補助金を出して移転してもらったり(それにより空いた郊外部の土地は再自然化)、またはA空き家を取り壊し、跡地は草地などにして、地域住民の健康づくりの場、子どもたちがバッタやチョウと遊ぶことができる場とするなどの戦略を立てることが重要です。
野草を忘れた日本 No.133[2016年04月24日(Sun)]
日本生態系協会 会報「エコシステム」No.133
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  • 野草から恵み

  • 野草は勝手に生えるもの?

  • 生きものを支える野草

  • かつての草地は-芝生と、繁茂する外国の草花

  • アメリカでの取り組み

  • 日本の野草を増やす




生きものを支える野草

野草は、人間以外の生きものにとっても、なくてはならない存在です。
生物多様性を豊かにしていくうえで欠かせない、野草の重要性を紹介します。

生態系を支える野草

植物は、生態系ピラミッドを底辺から支えていて、いろいろな動物の食物となっています。
例えば、チョウは幼虫の時に植物の葉を食物にしますが、多くのチョウは特定の種類の葉しか食べません。
日本で見られるチョウのうち、野草を食物としているチョウは86種と、全体の約36%を占めています。
これらのチョウは、食物となる野草がないと生きていくことができません。
成虫になったチョウは花の蜜などを食物にしますが、富士山麓の森林地帯で調査を行った研究では、チョウが食物として蜜を吸っていた植物45種類のうちの80%(36種)が野草で、
樹木はわずか20%(9種)であったと報告されています[1]。これは、森林地帯であっても、林の縁(へり)などの明るい場所に多くの種類の野草が生え、それらがチョウの重要な食物になっていることを示しています。

花と花の間を行き来して、花粉を運ぶハチやアブは、植物が実をつけることを助けるという大事な役割を果たしていますが、同時に、花粉を食べることで生きています。
花が咲く時期はそれぞれの種によって決まっていますので、ハチやアブにとっては、咲く時期が異なる多くの種類の花が、春から秋にかけて途切れることなく、順に咲いていくことが必要です。

日本の在来植物は、野草が約7割を占めていますので、多くの種類の野草が生育していることで、葉を食べる虫も、また花粉を食べる虫も、多くの種類が生きていくことができるのです。
※【引用】[1]北原正彦(2000)トランセクト調査によるチョウ類成虫の食物資源利用様式の解析とそれに基づく群集保全への提言。
昆虫と自然 35(14):4-9
ミツバチからの警報 No.132[2016年04月23日(Sat)]
日本生態系協会 会報「エコシステム」No.132
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自然の恵みを受け続けるために〜ミツバチに起こっている異変から、日本の農業の進むべき道を考える〜

接続可能な農業への転換は現代世代の責務

自然の生態系は、私たちの経済と社会を支える基盤です。現在も、また将来にわたっても、私たちが幸せに暮らすには、生態系からのさまざまな恵みに頼らなければなりません。
第一次産業である農業や養蜂業も、生態系からの恩恵を受けて成り立っています。
健全な生態系があってこそ、接続可能な農業や養蜂業を営むことができます。

現代世代の選択は、将来世代が幸福に暮らせるか否かを左右します。現代を生きる私たちには、食料生産の増大と合理化を目指し、生態系の破壊をもたらしてきた近代農業から、生態系への負担を最小にとどめる接続可能な農業への転換を図り、健全な生態系と豊かな恵みを将来世代に引き継ぐ責務があります。
日本においても、農薬の使用を減らしていくことを基本理念として、大胆な数値目標を掲げ、目標の達成に向けて具体的な施策を進めることが望まれます。

ミツバチや生態系への影響が懸念されるネオニコチノイド系の農薬とフィプロニルは、将来世代の負の遺産になりかねません。
これらの農薬については、予防原則に基づき、生態系に深刻な影響をおよぼさないことが明らかになるまで、使用を控えることが求められます。
将来世代に対する責務を深く自覚し、農薬による水域と陸域の生態系への影響を評価する手法をさらに充実させ、農薬取締法に基づく農薬の審査・登録基準を見直す必要があります。

地域の個性を磨き上げ、世界に貢献する

ミツバチとも共存できる生態系への負荷が小さい農業に地域で取り組み、その取り組みを施策や補助金等で支援し、消費者がその農産物を購入することは、食料の安全保障をもたらします。
また、自然の風景や生きものは地域ごとに特性があり、そこから地域固有の文化や伝統も生み出されます。
それぞれの地域の持つ伝統文化を継承し、個性を磨き上げることで、地域の魅力は高まります。

地域の個性を活かし、農産物の安全の価値を向上させることは、非常に変化の激しいグローバル化の荒波にも耐えられる、魅力あふれる接続可能な地域づくりにつながります。

日本と同じ気候帯に位置し、稲作を中心とするアジアの国々でも、農薬に依存していることが問題になっています。
日本が国を挙げて、環境保全型農業および有機農業の技術を確立し、個性が輝く地域をつくるしくみを築き上げ、その技術やしくみを提供することで、アジア諸国の農業や地域づくりに貢献することができます。
接続可能な農業や地域づくりに向けた国際協力は、日本が国際的な信頼を得るためにも果たすべき役割の一つです。

ミツバチの起こっている異変を、私たちのくらしのあり方に対する自然からの警鐘と受け止め、これからも自然の恵みを受け続けることができるよう、社会全体で問題の解決に向けた取り組みを着実に進めなければなりません。
自由貿易の限界と新たな挑戦 No.131[2016年04月22日(Fri)]
日本生態系協会 会報「エコシステム」No.131
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  • 地球の限界を超えた私たちのくらし

  • 貿易を通じて広がる私たちのくらしの影響

  • 自由貿易によって加速する自然破壊

  • 自然を守る政策とぶつかる自由貿易

  • 接続する社会に向けて「世界をリードする日本」になる




自由貿易によって加速する自然破壊

底辺の競争

国は、汚染物の規制や環境税など、自然を守るための規制や制限などを設けていますが、その程度は国によって大きく違います。
企業による活動は、今や世界中に広がっており、自然を守るための取り組みにはお金がかかるため、規制が弱い国で生産した方が、費用がかからず、安い商品をつくることが可能になります。

そのため、安さだけを求める企業にとっては、規制の弱い国の方が、工場等をつくる投資先として魅力的に見えてしまいます。

一方、国にとっても、企業を国内に誘致することで、産業育成や雇用増加、税収の増加など、さまざまなメリットがあります。

そのため、多くの企業にきてもらうために、規制を弱めてしまうことがあります。
さらにほかの国もそれに対抗し、それぞれの国が規制を弱めあうといった事態が起こります。

このような、規制を弱める方向へ向かう負の連鎖を、「底辺への競争」(Race to the bottom)といいます。

日本が経済への悪影響を理由に、温室効果ガス排出量の削減目標を低くしたことも一例といえます。
経済をささえる自然資本 No.130[2016年04月21日(Thu)]
日本生態系協会 会報「エコシステム」No.130
−古くなったGDP−
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  • 自然を浪費し続ける世界

  • 自然を資本としてとらえ始めた世界の潮流

  • 自然を経営に取り込む決断をした企業や国

  • 日本の現状

  • 自然を経済の中心にすえる


空気はただ、水は安いもの、自然はあって当たり前といった時代は終わっています。
健全な生態系サービスがあって、初めて経済や社会が成り立ちます。
自然は最も大切な資本なのです。日本は自然資本の回復に多額な投資が必要です。


日本の現状

自然資本の管理を欠いた成長戦略

リオ+20では、世界のさまざまな国や企業、機関が自然を資本ととらえ、接続可能な社会や経済の形成に向けた動きが明らかになりました。

日本も、「未曾有の大震災を経験した国として、自然と調和した真に接続可能な社会のあり方を見出すことが使命である」と外務大臣がスピーチしました。
しかし、2012年末に発足した第二次安部内閣のもとでは、接続可能性よりも経済再生が優先されています。

2013年6月に政府が発表した新しい成長戦略では、再生可能エネルギーや次世代蓄電池、自動車の開発や普及などを通じ、新たに170兆円を超える市場と、210万人の雇用の創出が掲げられました。

現在の日本の成長戦略で掲げる「グリーン」の考え方は、環境技術による、新しい成長産業の創出に限定されており、基盤となる自然という資本の接続的な利用や保護・再生という視点に欠けています。

自然資本の喪失を加速させる強靭化

東日本大震災の教訓を踏まえ、事前の防災・減災と迅速な復旧・復興に資する施策の実行に向けて、2013年5月に「防災・減災等に資する国土強靭化基本法」が国会に提出されました。

この法案に合わせて自民党が示した政策集「J-ファイル2013」では、大規模な災害に備えて国土全域で強靭な国づくりを進めることの具体策として、防潮堤や堤防の強化に加え、高速道路の整備や拡幅、新幹線の延伸などを掲げています。

今後、財政縮小が予想されるなかで、老朽化したインフラの維持管理や更新に必要な費用はますます増えていくため、新たなインフラへの投資に対しては長期的な視点から、事業の必要性や優先順位が議論されてきたはずでした。
しかし、結局は従来通りの公共事業の拡大に拍車がかかるきざしが見られます。
これでは、日本は自然資本の喪失をさらに加速させてしまい、世界の流れから脱落してしまいます。
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