生物の多様性を守るのは行政の義務 No.106[2016年03月28日(Mon)]
日本生態系協会 会報「エコシステム」No.106
−市・区・町・村の最も大切な仕事は自然地の買い取り−
まちなかに自然を
開発により、いたるところで生きもののすみ場所が分断され、自然の質が下がっています。
生態系の恵みをこれから先も安定して受けるために、どのように自然を増やし、まちなかにひきこめばよいのでしょうか。
分断された自然をつなぐエコロジカル・ネットワーク
今ある自然は守りながら、こま切れになってしまった自然をつなぎ、生きものが移動するための道すじを確保したり、より豊かな自然を回復させる取り組みがエコロジカル・ネットワーク(エコ・ネット)です。
高次消費者の巣や食物を捕る場所など、自然的価値が高い「コアエリア」と、その周辺地域の「緩衝帯」、そして生きものの移動が可能となり連続的な自然環境の「コリドー」などで構成されます。
まちづくりの計画において「私たち人間が生活をいとなむ場所」と「野生の生きものがくらす場所」をはっきりと示し、土地を確保することにより、生物の多様性を守り、また人間にとっても持続的に生態系の恩恵を受けることができるのです。
国レベルでのエコ・ネットの形成の重要性に関しては、第三次生物多様性国家戦略および国土形成計画(全国計画)のなかで指摘されています。
また、首都圏や近畿圏、中部圏といった広域圏レベルの地域づくりの計画においても、エコ・ネットを推進していくとする方針が示されています。※
身近なまちづくに直結する自治体レベルではどうでしょうか。
平成20年5月につくられた「生物多様性基本法」によると、生物の多様性を確保するための地域戦略をつくるよう努めなければならないとされています。
その際、生きものの視点で土地利用のあり方を考えるエコ・ネットの考え方は必要不可欠です。
地域の自然環境を把握し、森や川といった自然をどのようにネットワークさせて増やしていくのか…。
農地や林地、人間が利用する居住地や施設、道路などをどのように配置するのか…。
それぞれの自治体が地域の実状に沿って、戦略的に生物の多様性が守れるよう、計画図をつくる必要があるのです。
※例えば、中部圏広域地方計画では「中部圏が誇る豊かな自然の維持・保全と持続的な利用を図るため、生物多様性地域戦略の策定・推進を始め、鳥獣保護・管理、緑の回廊「コリドー」の整備等により、野生生物の生息環境や生態系の保護・管理による中部圏エコロジカルネットワークの構築を推進する。(略)」とされています。
さまざまなレベルのエコロジカル・ネットワーク
ため池で一生を終えるメダカ、県境も越える広大な森にくらすツキノワグマ、季節によりくらす国を変えるガンやカモ類など、体の大きさや食べ物の採り方、子育ての方法などによって、野生の生きものが必要とする環境のタイプやその面積はさまざまです。
このため、エコ・ネットを検討し、形成していくにあたっては、いろいろな野生の生きものの生態を理解したうえで、国際的な視点も踏まえ、全国、広域圏、都道府県、市区町村、また流域圏など、さまざまな空間レベルで、各レベル間の整合性についても充分に考慮する必要があります。
−市・区・町・村の最も大切な仕事は自然地の買い取り−
- 「生物の多様性」を守るのは地域から
- 世界が注目する「生物の多様性」
- まちなかに自然を
- 運河を軸にしたエコ・ネット
- 世界の自治体の取り組み
- みんなが輝くまちになるために
まちなかに自然を
開発により、いたるところで生きもののすみ場所が分断され、自然の質が下がっています。
生態系の恵みをこれから先も安定して受けるために、どのように自然を増やし、まちなかにひきこめばよいのでしょうか。
分断された自然をつなぐエコロジカル・ネットワーク
今ある自然は守りながら、こま切れになってしまった自然をつなぎ、生きものが移動するための道すじを確保したり、より豊かな自然を回復させる取り組みがエコロジカル・ネットワーク(エコ・ネット)です。
高次消費者の巣や食物を捕る場所など、自然的価値が高い「コアエリア」と、その周辺地域の「緩衝帯」、そして生きものの移動が可能となり連続的な自然環境の「コリドー」などで構成されます。
まちづくりの計画において「私たち人間が生活をいとなむ場所」と「野生の生きものがくらす場所」をはっきりと示し、土地を確保することにより、生物の多様性を守り、また人間にとっても持続的に生態系の恩恵を受けることができるのです。
国レベルでのエコ・ネットの形成の重要性に関しては、第三次生物多様性国家戦略および国土形成計画(全国計画)のなかで指摘されています。
また、首都圏や近畿圏、中部圏といった広域圏レベルの地域づくりの計画においても、エコ・ネットを推進していくとする方針が示されています。※
身近なまちづくに直結する自治体レベルではどうでしょうか。
平成20年5月につくられた「生物多様性基本法」によると、生物の多様性を確保するための地域戦略をつくるよう努めなければならないとされています。
その際、生きものの視点で土地利用のあり方を考えるエコ・ネットの考え方は必要不可欠です。
地域の自然環境を把握し、森や川といった自然をどのようにネットワークさせて増やしていくのか…。
農地や林地、人間が利用する居住地や施設、道路などをどのように配置するのか…。
それぞれの自治体が地域の実状に沿って、戦略的に生物の多様性が守れるよう、計画図をつくる必要があるのです。
※例えば、中部圏広域地方計画では「中部圏が誇る豊かな自然の維持・保全と持続的な利用を図るため、生物多様性地域戦略の策定・推進を始め、鳥獣保護・管理、緑の回廊「コリドー」の整備等により、野生生物の生息環境や生態系の保護・管理による中部圏エコロジカルネットワークの構築を推進する。(略)」とされています。
さまざまなレベルのエコロジカル・ネットワーク
ため池で一生を終えるメダカ、県境も越える広大な森にくらすツキノワグマ、季節によりくらす国を変えるガンやカモ類など、体の大きさや食べ物の採り方、子育ての方法などによって、野生の生きものが必要とする環境のタイプやその面積はさまざまです。
このため、エコ・ネットを検討し、形成していくにあたっては、いろいろな野生の生きものの生態を理解したうえで、国際的な視点も踏まえ、全国、広域圏、都道府県、市区町村、また流域圏など、さまざまな空間レベルで、各レベル間の整合性についても充分に考慮する必要があります。