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お金の流れを変えるとき No.143[2016年05月17日(Tue)]
日本生態系協会 会報「エコシステム」No.143
−金融と自然資本 −
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私たちの生存の土台である自然資本を湯水のごとく使い、直接・間接的に自然を消費することにたくさんのお金が使われてきました。しかし今、金融業界は持続可能な社会に向けて、地球温暖化に影響を与える投資先から手を引き始めるなど、お金の流れが変わりつつあります。



自然を守るお金の流れ

人は価値を認めたものにお金を使います。
「生物多様性を守ることは重要である」と言われている一方で、なぜそこに十分なお金が使われていないのでしょうか。
自然を守るということはどういうことなのか、お金の流れから考えてみました。

自然を守ることは何をもたらすのか

健全な自然生態系は、多くの野生の生き物たちのすみかとなったり、食料や水・材料を供給したり、薬のもととなる遺伝子を含んでいたり、災害を軽減したりと、直接・間接的にさまざまな恵みを与えてくれます。
これは、自然が長い時間をかけて育んでくれた私たちの公共の財産です。
自然を壊すことは、こうした財産を自ら大きく減らしているということになります。
生物多様性や健全な生態系を取り戻すためには、今ある自然を守りながら、失われた自然を再生していかなければなりません。
その取り組みにはお金が必要ですが、現状ではあまりお金が使われているとは言えません。
自然の価値が正しく理解されれば、自然を守る・取り戻すために「お金を使う」ことが当たり前となり、お金が流れていくことになります。
そもそもお金はどのように流れ、流れる先はどのような理由で決まっていくのでしょうか。

流れるお金

世の中にはさまざまなモノやサービスが場所や時間を超えて存在しています。
お金は、このさまざまな状況に存在するものを「金額」という共通の価値で取り引きできる、とても便利なものです。
そして投資や融資の世界では、「金額に見合うだけの何らかの利益が得られる」と期待と期待された時に、お金が流れ、取り引きが行われます。
銀行や保険・証券の会社などの金融機関は莫大な金額を扱います。
銀行は、利子を提供することでお金を集め(預かり)、そのお金をもとにほかの企業に金利をつけてお金を貸すことで利益を得たり、投資やファンドなどのさまざまな商品を通じてお金を回しています。
保険や証券の会社も、保険料や証券を販売したお金をもとに、ほかの企業に投資を行いお金を増やします。
このようにお金が流れ続けることで利益が生まれます。
このとき銀行や保険会社がお金を貸したり投資するのは、後に利益が確実に得られると判断しているからです。
そしてほとんどの場合、この利益とは「お金」のようにわかりやすいものです。
自然を守り、増やすことにお金が流れていかないのは、自然の価値が額に見合う利益のあるものとして十分に理解されていないこと、そして自然から得られる恵みが目に見えずわかりにくかったり、直接的ではなっかたり、得るのに長い時間がかかったりするためと考えられます。
工業文明から生態系文明へ No.137[2016年04月28日(Thu)]
日本生態系協会 会報「エコシステム」No.137
−右肩上がりの経済成長の限界−
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  • 国の経済を揺るがす地球温暖化

  • 疑う余地ない地球温暖化の進行

  • 日本の現状を課題

  • 主要国の取り組み

  • 自治体レベルの緩和策と適応策

  • 持続可能な未来に向けて




日本の現状と課題

地球温暖化の防止が世界的に急務となるなか、日本も具体的かつ野心的な数値目標を設定し実行する必要があります。
しかし、壮大な長期目標に掲げる傍ら、短中期目標は低い水準にとどまり、国内の実質的な削減は進んでいません。

求められる地道な削減

日本は、第一次安部内閣時代の2007年、世界全体の排出量を2050年までに半減するという「美しい星50」を提案しました。
また、第二次安部内閣の2013年11月には、「Actions for Cool Earth」を提案し、2050年世界半減、先進国80%削減という目標を掲げています。
しかし、その中身に目を移すと、目標の達成は主にCO2の回収・貯蔵・固定化などの技術革新や、途上国の排出削減への技術的・金銭的な支援にとどまっています。

安部首相は昨年11月の日米首脳会談で、緑の気候基金※1に最大約2,130億円を拠出する提案をしました。
もちろんこうした途上国への支援は評価に値します。しかし、同時に自国の排出量を80%以上削減して、世界に模範を示すことが必要です。

日本は京都議定書第一約束期間(2008年〜2012年度)に、基準年である1990年比6%減の目標を超え、8.4%の削減を達成しました。
しかし、これはこの期間の特例として認められた森林等吸収源3.9%と、京都メカニズム※2に基づいて取得したクレジット5.9%を差し引くことで達成したものです。

実際の排出量は減るどころかむしろ1990年比で1.4%増えています。また、2013年11月に発表した新目標は、2020年までに2005年比3.8%削減というもので、これを1990年比に置き換えると3.1%の増加となり、実質的には京都議定書の目標から後退する内容となっています。

日本の求められることは意欲的な短中期目標を掲げ、地道に削減することで、長期目標を確実に達成することです。

※1途上国による温室効果ガス排出の削減などを支援するための基金
※2他国において削減援助した分を、自国の削減分として用いることができる制度
自由貿易の限界と新たな挑戦 No.131[2016年04月22日(Fri)]
日本生態系協会 会報「エコシステム」No.131
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  • 地球の限界を超えた私たちのくらし

  • 貿易を通じて広がる私たちのくらしの影響

  • 自由貿易によって加速する自然破壊

  • 自然を守る政策とぶつかる自由貿易

  • 接続する社会に向けて「世界をリードする日本」になる




自由貿易によって加速する自然破壊

底辺の競争

国は、汚染物の規制や環境税など、自然を守るための規制や制限などを設けていますが、その程度は国によって大きく違います。
企業による活動は、今や世界中に広がっており、自然を守るための取り組みにはお金がかかるため、規制が弱い国で生産した方が、費用がかからず、安い商品をつくることが可能になります。

そのため、安さだけを求める企業にとっては、規制の弱い国の方が、工場等をつくる投資先として魅力的に見えてしまいます。

一方、国にとっても、企業を国内に誘致することで、産業育成や雇用増加、税収の増加など、さまざまなメリットがあります。

そのため、多くの企業にきてもらうために、規制を弱めてしまうことがあります。
さらにほかの国もそれに対抗し、それぞれの国が規制を弱めあうといった事態が起こります。

このような、規制を弱める方向へ向かう負の連鎖を、「底辺への競争」(Race to the bottom)といいます。

日本が経済への悪影響を理由に、温室効果ガス排出量の削減目標を低くしたことも一例といえます。
経済をささえる自然資本 No.130[2016年04月21日(Thu)]
日本生態系協会 会報「エコシステム」No.130
−古くなったGDP−
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  • 自然を浪費し続ける世界

  • 自然を資本としてとらえ始めた世界の潮流

  • 自然を経営に取り込む決断をした企業や国

  • 日本の現状

  • 自然を経済の中心にすえる


空気はただ、水は安いもの、自然はあって当たり前といった時代は終わっています。
健全な生態系サービスがあって、初めて経済や社会が成り立ちます。
自然は最も大切な資本なのです。日本は自然資本の回復に多額な投資が必要です。


日本の現状

自然資本の管理を欠いた成長戦略

リオ+20では、世界のさまざまな国や企業、機関が自然を資本ととらえ、接続可能な社会や経済の形成に向けた動きが明らかになりました。

日本も、「未曾有の大震災を経験した国として、自然と調和した真に接続可能な社会のあり方を見出すことが使命である」と外務大臣がスピーチしました。
しかし、2012年末に発足した第二次安部内閣のもとでは、接続可能性よりも経済再生が優先されています。

2013年6月に政府が発表した新しい成長戦略では、再生可能エネルギーや次世代蓄電池、自動車の開発や普及などを通じ、新たに170兆円を超える市場と、210万人の雇用の創出が掲げられました。

現在の日本の成長戦略で掲げる「グリーン」の考え方は、環境技術による、新しい成長産業の創出に限定されており、基盤となる自然という資本の接続的な利用や保護・再生という視点に欠けています。

自然資本の喪失を加速させる強靭化

東日本大震災の教訓を踏まえ、事前の防災・減災と迅速な復旧・復興に資する施策の実行に向けて、2013年5月に「防災・減災等に資する国土強靭化基本法」が国会に提出されました。

この法案に合わせて自民党が示した政策集「J-ファイル2013」では、大規模な災害に備えて国土全域で強靭な国づくりを進めることの具体策として、防潮堤や堤防の強化に加え、高速道路の整備や拡幅、新幹線の延伸などを掲げています。

今後、財政縮小が予想されるなかで、老朽化したインフラの維持管理や更新に必要な費用はますます増えていくため、新たなインフラへの投資に対しては長期的な視点から、事業の必要性や優先順位が議論されてきたはずでした。
しかし、結局は従来通りの公共事業の拡大に拍車がかかるきざしが見られます。
これでは、日本は自然資本の喪失をさらに加速させてしまい、世界の流れから脱落してしまいます。
新しい日本への投資 No.101[2016年03月23日(Wed)]
日本生態系協会 会報「エコシステム」No.101
−渾沌からの日の出−
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  • 日本の国づくりへの投資

  • 持続可能な国のつくりかた

  • 自然地を残す国々

  • 60%の自然地が確保された日本へ

  • 国の予算の1%を毎年、新しい日本をつくるために投資




日本の国づくりへの投資

戦後、日本の経済は勢いよく生長をつづけ、1970年代には9割の国民が自分を中流階級だと考える「一億総中流」の時代を迎えました。
日本が戦後の復興という当初の目標を達成したこの頃から、世界では「持続可能な国づくり」が大きなテーマになりました。
しかし日本は、将来世代の財産を消費しながらさらなる経済の発展をめざし、「持続不可能な国づくり」を進め、今に至っています。
お金と物と不振の渦巻く渾沌の日本から、100年先をみすえた自然と共存する美しい日本を世界に示す時を迎えています。

世界が迎えた転機

1774年にワットが発明した蒸気機関車は、イギリスで綿織物の大量生産や鉄道での輸送などを可能にし、石炭を資源とした産業革命へとつながりました。
石炭を大量に長い間燃やしつづけたために大気汚染が発生し、首都ロンドンは「霧の都」と呼ばれたほどです。
歴史上初めて石炭という化石燃料を使った文明は、産業の急速な発展をもたらしましたが、一方で、二酸化炭素の増加による地球温暖化という新しい環境問題にもつながりました。

この石炭文面は約100年続きましたが、1908年にアメリカの自動車会社が「T型フォード」と呼ばれる自動車を量産するようになり、ガソリン車を中心とする石油文明の時代へと変わっていきます。

しかし、その石油文明もたった100年しかもたないということが、1970年代に明らかとなりました。
1972年にスウェーデンのストックホルムで開かれた国連人間環境会議や、民間の研究機関であるローマクラブから発表されたレポート「成長の限界」をきっかけに、地球の資源をとりすぎないような持続可能な経済のあり方が問われはじめました。
大量の石炭と大量の石油を消費して成り立つ今の文明のあり方に、大きな問題があったのです。

持続可能な国をつくる投資

1992年にブラジルで開かれた地球サミットでは、180もの国々の参加によって、持続可能な社会への転換を地球規模で取り組むことが決められました。
日本もこのサミットに参加し、持続可能な国づくりに取り組むことを約束したものの、国内では石油を大量に消費し、自然を次々と破壊しコンクリートやアスファルトなどの人工的な環境に変えています。
世界が持続可能な国づくりに向けて方向を変える一方で、日本は転機を迎えることなく、持続不可能な道を歩んできてしまいました。

これまでの日本は、私たち現代世代を中心にした国づくりを進めてきました。
しかし、先祖が私たちに残してくれたように、私たちには将来世代が使う資源を残しておくという未来への責任があります。
ここで国づくりの方向を転換し、現代世代だけでなく、将来世代も豊かに暮らしていけるような、未来への投資をしていくことが必要です。
大きなリュックを背負う 肉・野菜 No.64[2016年02月15日(Mon)]
日本生態系協会 会報「エコシステム」No.64
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  • もっとはやく もっとたくさん

  • どこからどれだけ?

  • なぜ安い?

  • 流通に環境の視点

  • 節度ある社会へ




節度ある社会へ

私たちは企業から絶え間なく出されるさまざまな商品に、消費意欲をかき立てられ、「もっとはやく」「もっとたくさん」を求めてきました。
そしてそれに対応した流通の変化が、私たちの要望に応えてきたのです。

しかし、その大量流通のしくみを支えてきたのは、貴重な石油を始めとした資源です。

大量の資源を消費して、大量のモノを移動させ、環境への悪影響を十分に負担せずに利益をうみ出すという経済のあり方は、物質の循環を乱し、流通をどう変えていくか考えることも必要です。
例えば食べものの場合、可能な限り、地域でつくって地域で食べるというしくみへ変えていくことが大切です。

現在、WTOで進めている貿易自由化は、地球規模での持続的な社会をつくろうとの流れには逆行するものです。
自由貿易を進めることを前提として環境のことを十分に考えない貿易は、見直す必要があります。

環境に関する情報公開

限りある資源をいかに有効に利用するかということが、21世紀の大きな課題です。
そこで、まず国が率先して環境へ配慮した品物を買いましょうというのが「グリーン購入法」(2001年4月施行)です。

しかし、最終的には私たち消費者が、商品を必要最低限に買うことが求められます。
このためには、消費者が正しい判断をするための情報開示(環境ラベルなど)や賢い消費者を育てるための環境教育を進めることが不可欠です。
情報の公開は、消費者の知る権利(知らされる権利)を保証することです。

昨年のJAS(日本農林規格)法改正により、野菜や果物などを売る場合、名称と原産地を表示することが義務づけられました。
今後はその商品がどこで何を使ってつくられ、どんなルートで運ばれたものかといった環境情報の追加が求められます。
また、現在、エコマークを始め、私たちの国で広まっている環境ラベルの認定基準の項目に、モノを運ぶときに生じる環境への影響なども盛り込んでいく必要があります。

ムダなモノを買わない・買わせない

モノの移動に使う燃料や、流通のときに出るゴミなどに対して、税金をかけることで、大量流通にともなう環境問題をやわらげることができます。

私たちの国でもガソリンや軽油には、ガソリン税・軽油取引税などの税金がかけられています。
しかし、ガソリン・軽油にかけられた税金は、ほとんどが道路を整備することにあてられています。
国の面積あたりの道路の長さがアメリカやヨーロッパの国々より大きく上回った現在、「道路整備緊急措置法」といった法律を廃止して、燃料には環境税として新たに税金をかけ、税収の一部をモノの移動にともなう環境問題を改善するための財源として確保するなど、税のしくみをかえることも必要です。

こうした環境税の導入以外に、今の大量流通を引き起こす原因が、私たちの大量消費によることから、消費税を上げることも十分に検討の余地があります(EU諸国の消費税率は15〜25%)。

子どもたちのために

環境への悪影響が少ない輸送手段への切り替えを進めることは大切です。
しかし、これだけでは、問題は解決しません。モノの移動にともなう物質の循環の乱れをいかに少なくするかを、あわせて考えていくことが求められます。

海外からのめずらしい食べものがすぐに手に入ることが当たり前になると、そこから得られる満足感は下がり、今度はそれをいつでも食べることを望むようになります。
こうしたきりのない消費者の欲望の拡大や、それをかきたてる商売のしかたが、景気を刺激し、経済成長を支えてきたといえます。
一方、私たちは経済成長の陰で、大切な資源を、私たちの子どもや将来世代の分まで、持続不可能なペースで使い続けているのです。

私たちが口にする多くの肉や野菜は、環境問題、将来世代の貴重な資源などが詰まった大きなリュックを背負っています。
私たちの子どもや将来世代にとって暮らしやすい社会をつくるためにも、地域でつくって地域で食べる暮らしを進め、石油を中心とした貴重な資源の消費を前提としたモノの移動と、それにともなう環境問題を改善していく必要があります。
自由貿易の限界 No.55[2016年02月06日(Sat)]
日本生態系協会 会報「エコシステム」No.55
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  • 環境問題と貿易は深い関わりがある

  • 貿易が生みだした問題とその背景

  • ぶつかりあう自由貿易と環境政策

  • 食料は買ってくればよいのか

  • 輸送手段を見直す

  • 環境の枠組みのなかで貿易を考え直す

  • 貿易を持続可能なものとするために




環境問題と貿易は深い関わりがある

輸入大国、日本

日本は輸入大国です。
金額的には、今年1月の貿易収支が赤字になりましたが、年間を通してはまだまだ黒字の傾向です。
また、貿易によってどれだけのモノが出入りしているかを重さで見ると、日本は年間で5.6億tもの輸入超過となっています。
その内訳は海外から輸入した製品や原料は重さに直すと6.7億トン、これに対して輸出されたモノはわずか1.1億トンでした。
差し引き5.6億トンのモノが日本にあふれ続けていることになります。(輸出入の数値は平成10年)

モノは最終的には大量のゴミになる

モノの出入りが、国内に入ってくる方に大きく傾いているため、日本の狭い国土のなかにモノがあふれています。
あふれた大量のモノの多くはゴミとなります。
ゴミ処理場や埋めた地が不足して、次はどこにつくるかという議論は毎日のように聞かれます。
また、大量の食料や飼料、肥料を輸入して消費した結果、川や海など多くの場所で富栄養化が進み、自然に与える悪影響も大きくなっています。

先進国は大量のゴミを出し続けている

日本やその他の先進国では、国内外の資源を異常に消費し、大量のゴミを出すことで経済を成り立たせ、豊かで便利な生活を享受しています。
この経済のあり方は、20世紀に欧米が中心となって推し進めてきたものであり、これを確立したごく一部の国々が先進国と呼ばれています。
先進国は、貿易を拡大し、発展途上国の資源を安く大量に買い上げています。
この大量に輸入した資源を使って、大量生産・大量消費・大量廃棄を行い、原材料を加工してつくった付加価値の高い製品を輸出して外貨をかせぎ、再び資源などを大量に輸入するという構図になっています。
そして再び、大量生産・大量消費・大量廃棄を行い、地球温暖化問題や酸性雨、オゾン層の破壊といった国境を超えた環境問題を、発展途上国に先立って引き起こしてきました。
また、今の消費の勢いでは多くの地下資源が21世紀中にはなくなると予想され、再生可能である生物資源も生きる土台である自然生態系が大規模に破壊されることで、急速に失われています。
私たちは、国内にとどまらず海外の資源を大量に消費し、大量のゴミをまき散らし、環境問題を引き起こしていると言えます。

発展途上国は大量に自然を破壊し続けている

一方、発展途上国は環境問題とどのように関わっているのでしょうか。
輸出できる資源などは安価に買われ、工業製品として輸入するときは高価になっているという国際経済の構造のなか、多くの発展途上国が、莫大な国の借金を抱えることとなりました。
これら国の借金の総額は、1971年で2,950億ドル、98年には24,650億ドルと増えています。

発展途上国では、多くの人々が低所得を強いられ、栄養不足に陥っています。
財務省の重大な使命 No.54[2016年02月05日(Fri)]
日本生態系協会 会報「エコシステム」No.54
−環境を壊す税制から環境を守る税制へ−
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  • 税制は環境問題と深い関わりがある

  • 今の税制はどうなっているのか

    (1)大量消費の問題

    (2)土地税制が自然をけずる

  • これからの税制に求められるもの

    (1)資源の消費を抑えるために

    (2)自然を守るために

  • 環境問題の解決は財務省の使命




税制は環境問題と深い関わりがある

私たちは、いま環境問題という全地球規模の大きく、そして人類の生存にとって深刻な問題に直面しています。
さまざまな汚染物質の問題や、大量のゴミをどこでどうやって処理するのか、という問題を目にしない日はありません。
その一方では、野生の生きものたちが次々と姿を消したり、そうなる危険に瀕しています。
こうした環境問題は、私たちの20世紀の社会が、21世紀の人々に残してしまった大きな課題といえます。

ゴミ問題

地球温暖化問題や酸性雨、オゾン層の破壊、ダイオキシンをはじめとする、いわゆる環境ホルモンの問題など、環境問題といわれる減少が次々と噴出しています。

こうしたさまざまな現象がなぜ起きているのか、その本質を見ていくと、いずれも自然生態系を大量に破壊することで、大量生産・大量消費・大量破棄し、さらに自然生態系を破壊する、今の経済のあり方に問題があります。
私たちは物質的な豊かさを求め、その代償として膨大な二酸化炭素や窒素酸化物、フロンガスなども含めたゴミを出してきました。

ゴミを大量に出すということは、資源を大量に使うということにほかなりません。
その資源は限りあることから、将来世代に手渡せるよう、極力、消費しないことが必要です。

現在、ゴミ問題の対策として、リサイクルが行われていますが、つくったものはいづれゴミになるうえ、リサイクルするときにも新たな資源やエネルギーを使います。
したがって、リサイクルは根本的な解決とはならず、大量生産・大量消費・大量破棄の免罪符にもなりかねません。

ゴミ問題を解決するためには、消費を必要最小限に抑えた質素な生活をしていくことが必要です。

多くの野生の生きものが絶滅している問題

自然生態系の破壊は、野生の生きものの絶滅というもうひとつの深刻な問題を生み出しました。

これは乱獲なども原因となっていますが、生息地が開発などにより減少していることが主な原因であり、豊かな自然のある土地が次々と失われている問題といえます。

この背景には、”利用されていない土地”は、どんどん開発して利用していく、という戦略があったことは否定できません。
結果、自然林や湿地などが急速に減少しました。

自然豊かな土地は、そこに存在するだけでさまざまな恩恵を私たちにあたえてきれている、社会全体の共有財産です。
短期的な経済的な利益のために安易に開発してなくしてしまうことは、将来世代に大きな負荷を与えてしまうことになります。

税の役割

私たちは、国民の義務として税金を支払っています。
ところで、私たちはなぜ、税金を支払うのでしょうか。
私たちが生活するうえで、国や地方自治体が提供する教育や福祉、交通などといったさまざまな公共サービスを受けています。

国の税金のしくみを企画立案しているのは財務省です。
財務省はこのほかにも国が活動するための予算づくりや国の財産管理など、経済の舵取り役としての役割を担っています。

私たちは生活を意識するしないに関わらず、税金と関わっています。
したがって税金のしくみは、私たちの生活様式に対しても大きな影響を及ぼすことになります。

環境の視点を欠いた大蔵省

ゴミ問題や野生の生きものの絶滅に代表される環境問題は、今の税制がもつ問題点からも生じてきたといえます。
経済成長を最優先した国づくりに果たした大蔵省(現財務省)の役割は非常に大きかったと言えるでしょう。

このことは、逆にいえば私たちの生活と密着している、今の税制のしくみを見直し、活用すれば、環境問題を解決に向かわせるように、私たちの暮らしを変えていく効果が期待できます。

環境に深く関わりある税制ということで、最近は炭素税などの導入がよく話題に取り上げられますが、今月号では今までの税制の環境の視点でどう見直せばいいのかを見ていきます。
「狂争の世紀」から「共存の世紀」へ No.53[2016年02月04日(Thu)]
日本生態系協会 会報「エコシステム」No.53
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先進国だけが勝ち続けた「狂争の世紀」

人類史上、前例のない大変化が起きた

21世紀の幕開けという歴史的な年明けを迎えました。
私たちが歩んできた20世紀を振り返ってみると、人類史上、これほど驚異的な変化をとげた世紀はなかったと言えます。

19世紀末では世界の人口は約16億人でしたが、20世紀末では60億人以上に急増、世界経済の規模は100年で17倍と、どちらも人類史上前例のない急激な成長を遂げました。

科学技術も驚異的に発展し、1953年に遺伝子が二重らせん構造であると明らかになったことを発端にバイオテクノロジーが躍進し、それ以前にはつくりえなかった新しい生物を私たちは手に入れました。
1903年に初めて人間は飛行機で空を飛び、1969年には月へと飛んだのです。
通信や交通に関する技術の発展は、国際経済とも言うべき、国境を超えた経済体制をつくりあげました。
いまやインターネットは神経細胞のように世界のすみずみまで複雑に絡み合い、国際輸送は海路に加え空路も大量輸送の担い手となりました。

世界経済も飛躍的に成長しました。
しかし、その国ごとの格差は大きく、国内総生産(GDP)の大きさを地図で表すと、先進国が著しく大きくなることがわかります。

20世紀とは、特定の人々の活動サイズが、100年前の人々が想像できないほど大きくなった世紀だったと言えます。

石油文明の落とし子、"狂争"の社会

この疾走するような社会の大変化を支えたのは石油文明です。
18世紀、イギリスで産声をあげた産業革命により、モノづくりの体制が手工場から大量生産が可能な工場生産へと変わり始めます。
さらに石油が主要なエネルギー源に加わり、地下資源を大量に使うことで、モノを大量生産、大量消費、大量廃棄する、欧米型の「使い捨て文化」が生まれたのです。

輸送手段が高度に発達することにより、先進国は自国でモノをつくるよりも、発展途上国の資源や労働力を安く買い上げる方が、より強い競争力が得られることに着目し、自国の自然はもちろん発展途上国の自然も大量に破壊することで、物質的な豊かさを手に入れてきました。
発展途上国は今日、明日の糧を得ようと自国の自然を切り売りしたのです。

"狂争"の極めつけは2度起きました。先進国の利害の衝突することで引き起こされた世界大戦です。
経済的に豊かになろうとする先進各国が争い、発展途上国が巻き込まれた最大の悲劇でした。

今の私たちが享受している物質的な豊かさとは、将来世代や発展途上国の財産でもある自然を大量に食いつぶすことで成り立つ異常な豊かさです。
20世紀とは狂おしいほどに、自分たちだけが物質的な豊かさを手に入れようとした、まさに「狂争の世紀」だったと言えるでしょう。
環境自由主義経済に向けて No.41[2016年01月23日(Sat)]
日本生態系協会 会報「エコシステム」No.41
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  • ふくれあがり続ける私たちの借金

  • 今の自分たちさえよければいいのか?

  • 経済でいう「成長」とは自然の「消費」!?

  • 資源を消費しすぎない持続可能な社会へ

  • 環境自由主義経済の時代


山林に置き去りにされたゴミの山。
さびたドラム缶からは有毒な廃液が漏れていました。
こうしたゴミの処理も十分できないまま、私たちは、将来世代も必要とする自然の資源を消費し続けています。
現在の経済のしくみのなかでは、自然の価値が軽視されていることも問題です。
自然生態系が守られる範囲での経済活動を基本とする、「環境自由主義経済」へと向かうべき時がきています。


ふくれあがり続ける私たちの借金

◆苦しい日本の台所事情

私たちの国では、今年度は2回にわたり、国のお金を使って景気を回復させる対策をとることになりました。
しかし、国にはこれをまかなう十分なお金がりません。
そのため国の借金である国債がまた発行されることになっています。
今年度の国債の発行額は、過去最大の34兆円にも達するといわれています。
今年度の場合、国がこの一年に必要とするお金のおよそ4割が借金です。

◆利子だけでも1時間あたり13億円

こうして借金をふくらませているため、国の予算(一般会計)のうち借金を返す分が占める割合が年々増加しています。
この結果、社会保障・環境保全・教育などに十分な予算を割くことが難しくなってきています。

今年度の国の支払いのうちトップを占めるのは、国債の返済で約17兆3千億円です。
しかもその約7割は利子の支払いです。
借金そのものを減らす支払いは、残り3割ほどにすぎません。
これは、利子だけのために1時間あたり約13億円も支払っている計算になります。

◆借金をいつ返す?

「財政赤字は確かに問題ではあるが、まず現在の景気をよくすることが先で、景気がよくなれば赤字も減る」という考え方があります。
しかし国債での借金は、国債が戦後初めて発行された昭和40年度以降、好況、不況といった景気の変動にかかわらず、常に増え続けています。
また、日本の15歳から64歳(生産年齢)の人口は、1996年の8,716万人(総人口の69%)から2020年には15%減の7,381万人(同60%)、2050年には3分の2以下の5,490万人(同55%)にまで減少すると推定されており、経済力が衰えることが予想されています。
借金を増やして問題を先送りしても、将来、返せるというあてはなく、子どもたちに負担を押し付けることになるだけです。
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