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ミツバチからの警報 No.132[2016年04月23日(Sat)]
日本生態系協会 会報「エコシステム」No.132
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自然の恵みを受け続けるために〜ミツバチに起こっている異変から、日本の農業の進むべき道を考える〜

接続可能な農業への転換は現代世代の責務

自然の生態系は、私たちの経済と社会を支える基盤です。現在も、また将来にわたっても、私たちが幸せに暮らすには、生態系からのさまざまな恵みに頼らなければなりません。
第一次産業である農業や養蜂業も、生態系からの恩恵を受けて成り立っています。
健全な生態系があってこそ、接続可能な農業や養蜂業を営むことができます。

現代世代の選択は、将来世代が幸福に暮らせるか否かを左右します。現代を生きる私たちには、食料生産の増大と合理化を目指し、生態系の破壊をもたらしてきた近代農業から、生態系への負担を最小にとどめる接続可能な農業への転換を図り、健全な生態系と豊かな恵みを将来世代に引き継ぐ責務があります。
日本においても、農薬の使用を減らしていくことを基本理念として、大胆な数値目標を掲げ、目標の達成に向けて具体的な施策を進めることが望まれます。

ミツバチや生態系への影響が懸念されるネオニコチノイド系の農薬とフィプロニルは、将来世代の負の遺産になりかねません。
これらの農薬については、予防原則に基づき、生態系に深刻な影響をおよぼさないことが明らかになるまで、使用を控えることが求められます。
将来世代に対する責務を深く自覚し、農薬による水域と陸域の生態系への影響を評価する手法をさらに充実させ、農薬取締法に基づく農薬の審査・登録基準を見直す必要があります。

地域の個性を磨き上げ、世界に貢献する

ミツバチとも共存できる生態系への負荷が小さい農業に地域で取り組み、その取り組みを施策や補助金等で支援し、消費者がその農産物を購入することは、食料の安全保障をもたらします。
また、自然の風景や生きものは地域ごとに特性があり、そこから地域固有の文化や伝統も生み出されます。
それぞれの地域の持つ伝統文化を継承し、個性を磨き上げることで、地域の魅力は高まります。

地域の個性を活かし、農産物の安全の価値を向上させることは、非常に変化の激しいグローバル化の荒波にも耐えられる、魅力あふれる接続可能な地域づくりにつながります。

日本と同じ気候帯に位置し、稲作を中心とするアジアの国々でも、農薬に依存していることが問題になっています。
日本が国を挙げて、環境保全型農業および有機農業の技術を確立し、個性が輝く地域をつくるしくみを築き上げ、その技術やしくみを提供することで、アジア諸国の農業や地域づくりに貢献することができます。
接続可能な農業や地域づくりに向けた国際協力は、日本が国際的な信頼を得るためにも果たすべき役割の一つです。

ミツバチの起こっている異変を、私たちのくらしのあり方に対する自然からの警鐘と受け止め、これからも自然の恵みを受け続けることができるよう、社会全体で問題の解決に向けた取り組みを着実に進めなければなりません。
すべてのまちに生物の多様性を守る戦略を No.129[2016年04月20日(Wed)]
日本生態系協会 会報「エコシステム」No.129
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生物の多様性を守り、増加させる地域戦略の役割

世界の多くの地域で生物多様性を重視したまちづくりが進められる一方、これまでの日本のまちづくりのほとんどは、健全な生物多様性を確保する視点がない、持続不可能なものがほとんどでした。
しかし、自然と共存したまちづくりに取り組んできた地域もあります。
地域の生物多様性を守る「生物多様性地域戦略」をつくり、地方公共団体のまちづくりの計画を組み入れて、「自然との共存」をまちづくり計画の基盤にすることが必要です。

地域の生物多様性を守るためにすべての市やまちに「生物多様性地域戦略」が必要

生物多様性が豊かであればあるほど、より高い質とより多くの量の生態系サービスを受けることができます。
逆に、生物多様性が乏しい場合は、お金を出すなどして他の地域からサービスを買う必要が出てきます。
日本では、目先の利益を優先し、豊かな生物多様性を失ってきました。その結果、不足した生態系サービスを他の地域から買うといった、持続可能でないまちづくりが、都市部だけでなく、ほとんどの農村部でも進められてきました。

その一方で、地域が主体となり、地域の生物多様性を守り育て、得られる生態系サービスをまちづくりに生かそうとする取り組みが行われてきた地域もあります。
そこでは、地方公共団体や民間団体が生物多様性の保護・再生を目的として土地を買い上げたり、学校ビオトーブをつくって活用したり、農薬や化学肥料を使わない、環境にやさしい農業などを行ってきました。

生物多様性を守り、生態系サービスを持続して受けられるようにすることと、土地をどのように利用していくかということには、密接な関係があります。
そのため、土地を利用する方法を決めるまちづくり計画に、地域の生物多様性を守るために「生物多様性地域戦略」を入れ込むことが求められます。

しかしながら、2012年度までに地域戦略をつくっている地方公共団体はごく少数です。
都道府県レベルでも公表済みなのは23ですが、市区町村レベルでは約1,740市区町村のうち、公表済みは30であり、これは全体の約2%※だけです。
また、すでにつくられた一部の地域戦略は多くの問題を抱えており、日本の各地域の生物多様性を守るためには不十分です。
※平成25年3月末段階、市区町村は政令指定都市を含みます。これに加え、現在27市区町村が「生物多様性地域戦略」を策定中ですが、これを含めても全体の約3%にしかなりません。

土地の確保を柱としていない

生物多様性を保護・再生するうえで最も重要なのが、土地を確保することです。
しかし、今までにつくられた地域戦略では、最も重要な「土地の確保」が柱になっていません。
これは、地域戦略がまちづくり計画の根幹ではなく、枝葉のような位置づけになっている、またはそのような認識でつくられているということの証拠です。
生物多様性を守ることについて関心の低かった、昭和の時代につくられたまちづくり計画は、いまだに強い力を持っています。
そのため、このまちづくり計画によって生じた生態系サービスの低下について、仮に地域戦略で課題としてとらえていたとしても、対策をはっきりと打ち出せない、また、十分な予算がつかないという状況となっています。

地域の生物多様性を守る取り組みへの国の支援が不十分

国には、地域戦略をつくるための支援制度はありますが、地域戦略を実行するための支援は不十分です。
このため、現在の地域戦略の多くは、目標となる数値などの具体性に乏しいだけでなく、規模も小さいものになっています。

開発によって消失しそうな民有地のまとまった森があるとします。
地方公共団体の視点に立てば、森を開発して利用することで得られる利益を選ばずに、森を保護して持続可能に利用することで得られる利益を選ぶということは、大変な決断力を要します。
国は、地方公共団体が後者を選びやすくするために、財政的な支援等で後押しする必要があります。
コウノトリと育む持続可能な経済 No.124[2016年04月15日(Fri)]
日本生態系協会 会報「エコシステム」No.124
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  • 新しい時代の“先進国”を目指して

  • 生きものと共存する持続可能なまちづくり

  • 生態系サービスが支える豊岡市の経済

  • 生態系と経済の両立




生態系と経済の両立

世界の価値観が変わる

大量生産、大量消費、大量廃棄により成り立ってきた、20世紀からの経済成長は終わりを告げています。
地球上の資源は有限であり、ゴミ捨て場もまた有限です。
地球は、私たちがおもっていたよりも、ずっと小さかったのです。

成長の限界にいち早く気づいた多くの国々では、すでに国づくりの基準が変わり始めています。
これまでは、GDPランキングなどに代表されるように、経済力のある国が、イコール先進的であるという考え方が一般的でした。
しかし、今では、持続可能な社会を築いている国こそ本当の意味で豊かであると、世界の価値観が変わってきています。
今後は、これまでの持続不可能な経済から、地球の有限性にもとづいた持続可能な経済へと向かっていくことになります。

コウノトリが舞う魅力的な地域づくり

今から約200年前、日本には各地でコウノトリの舞うまちが見られました。しかし、明治時代にはいってからは狩猟と環境の悪化により急激に数を減らし、1956年に特別天然記念物に指定されたにも関わらず、1971年には日本の空から姿を消しました。

こうしたなか、関東地域では、私たちの協力が全面的に支援し、「コウノトリ・トキの舞う関東自治体フォーラム」(代表理事・根本崇 野田市長)が2010年に設立され、活発な活動が展開されています。
この一大プロジェクトは、水辺の生態系ピラミッドの頂点であるコウノトリをシンボルとして、その野生復帰を通じたエコロジカル・ネットワークの形成と地域経済の振興を目的としています。

コウノトリの舞う魅力的な地域づくりをめざし、現在、千葉県野田市をはじめ、29の先進的な市町村長がこのフォーラムに加盟しています。
日本の経済の中枢を担う関東圏での取り組みであるだけに、今後は、コウノトリの野生復帰を視野に入れた経済効果の試算を進めることが求められます。
コウノトリの舞う空は、生態系と経済が一体化し、将来の子どもたちが安全・安心に暮らせる地域づくりを意味しています。

さあ、あなたのまちも

日本は古くは豊葦原と呼ばれ、みずみずしく豊かな自然、歴史を育んできました。
北から南まで長さ約3,000kmにわたる国土は、複雑な地形と四季の変化により、山の自然、里の自然、水辺の自然など、さまざまな生態系をつくり出しています。
それぞれの風土には、地域の生態系に応じた多様な生きものが息づいています。
豊岡市や関東地域におけるコウノトリの事例にとどまらず、これからの自治体は、地域ごとにシンボルとなり生きものを決め、自然再生をして、持続可能なまちづくりを進めていくことが有効です。
北から南まで、日本全国どこにでも、自然と歴史が一体になった「地域らしさ」があります。
このように、豊かな生態系からの恵みに支えられ、地域の自然と歴史を育む美しいまちの姿が、結果として持続可能な経済、社会にもつながっていくのです。
いま、なぜコウノトリなのか No.123[2016年04月14日(Thu)]
日本生態系協会 会報「エコシステム」No.123
−世界にただ一つの美しいまちづくり−
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  • 関東の29もの市町村が動き出した!

  • コウノトリとともに

  • なぜ、コウノトリなのか?

  • 世界で進む、コウノトリをシンボルとした地域づくり

  • 求められる価値観の転換




なぜ、コウノトリなのか?

かつての日本の農村にくらしていた「コウノトリ」の特徴に注目し、多くの自治体が自然と共存する持続可能な地域づくりのシンボルとして掲げています。
自然環境の特性や地域づくりの目標によっては、ほかの生きものがシンボルになることもあります。
みなさんの地域では、どんな生きものがシンボルとなるでしょうか?

多様で豊かな生態系のシンボル

両翼を広げると約2mにもなるコウノトリは、水辺の生態系ピラミッドの頂点に立つ完全肉食の大型鳥類で、1日に約500g/羽(ドジョウだと70〜80匹)を食べます。
また、日によっては何百kmもの移動を行い、移動範囲が最もせばまる子育ての時期でも、半径約2kmのなわばりを持つことが知られています。
コウノトリがその地域に生息・繁殖するということは、その食物となる多くの生きものが四季を通じて育まれている豊かな自然環境があり、広域的にネットワークされていることの証でもあります。

地域産業の新たな展開のシンボル

コウノトリは、田んぼなどの水辺を中心にくらしています。
食物となる生きものを育む環境にやさしい農法を実施する田んぼで生産された米は、人間にとっても安全・安心な米として、またコウノトリがくらしているという物語を付加価値とするブランド米として販売するなど、地域農業の振興につながります。
また、コウノトリやその子育てが多くの人をひきつけ、地域の交流人口の増加にも寄与するなど、地域産業を活性化させるシンボルともなります。

自然と共存するくらしのシンボル

コウノトリは、赤ちゃんを運んでくる物語で知られるほか、古くから田んぼの広がる里山で人と近い距離でくらし、大型で白く美しい姿や優雅な飛翔などから、幸せを運ぶ”瑞鳥”として地域の人に親しまれ愛されてきた鳥です。
また、人里近くで人目を気にすることなく子育てをするその姿は、人の子育てとも結びつけて捉えられやすく、”自然と共に生きる”ということを実感させてくれる鳥でもあります。
自然と共存する地域づくりの必要性を、どんなに多くの理屈を並べて説明するよりも、コウノトリが実際に地域でくらすことによって、人々に自然と共に生きる感動を与え、心を動かし、行動を引き出すことにつながります。
大切な日本の海を守るために No.122[2016年04月13日(Wed)]
日本生態系協会 会報「エコシステム」No.122
−ノーテイクの海洋保護区をつくる−
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  • 多様な生き物を育む日本の海

  • 悪化する海の生態系

  • 大切な海を守れない日本

  • あるべき海洋保護区

  • 海域の30%を海洋保護区に、10%をノーテイク・ゾーンに




悪化する海の生態系

地球を支える海は…

海は地球の全表面の4分の3を占め、海水は地球上の水の97.5%にもなります。
また、地球を安定した気候に調整したり、生きものにすみかを提供したりと、地球上の生命を維持するうえでなくてはならない存在です。そして人間もまた、海から魚介類などの食料を得るとともに、水質浄化やレクレーションといったさまざまな恩恵である生態系サービスを受けながら生活しています。

しかし世界の海では、人間活動の影響でサンゴ礁の約20%、マングローブ林については約35%が破壊されるなど。海の生態系は悪化しています。

日本の海のついても、高度経済成長期に行われた埋立や護岸などの開発により、産卵場や稚魚などの成育場となる干潟や藻場、自然海岸などの貴重な環境を多く失いました。特に、埋め立てなどが盛んに行われた東京湾では、明治維新以降に干潟の95%が失われています。

人間活動の影響を受けやすい内湾などの閉鎖性の水域では、工業・農業などの産業排水、家庭から出る生活排水などによる水質汚濁で赤潮や青潮が頻繁に発生するようになりました。また、海水中の酸素濃度が低下する貧酸素水塊が大規模に起こり、魚や貝などの生きものがすみにくい状態になっています。

このほか、温暖化により海流の変化や海水温の上昇などで、海藻が密生する海中林が大規模に消失する磯焼けやサンゴが死滅する白化現象などが各地で起きて問題となっています。

枯渇する水産資源

世界人口の増加や中国の経済発展などにより、世界の一人あたりの水産物の消費量は過去約50年間で2倍に増えました。また、今後も世界人口のさらなる増加や新興国の発展などにより、水産物の需要が増えると見込まれています。

しかしながら、世界の海の漁業生産量はすでに頭打ちとなっています。国連食糧農業機関(FAO)の調査によれば、世界の水産資源となる魚介類の19%が過剰に獲られ、8%が枯渇の状態にあります。

日本の水産物については、イワシやサバなど主要な魚種のうちの約40%は過剰に獲られた状態となっています※。この原因は、沿岸域の開発などによって産卵・生育の場となる藻場や干潟の減少、一部の水産資源については回復力を上回る漁獲などの影響によるものと指摘されています。
※平成23年度我が国周辺水域の資源評価(水産庁)
朱鷺・コウノトリの復活は 日本国民の義務 No.110[2016年04月01日(Fri)]
日本生態系協会 会報「エコシステム」No.110
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  • トキ・コウノトリがいる風景

  • トキ・コウノトリと生態系サービス

  • トキ・コウノトリを絶滅に追いやった原因

  • 日本の原風景

  • トキ・コウノトリを呼び戻す試み

  • トキ・コウノトリの野生復帰に向けて




トキ・コウノトリと生態系サービス


私たちの生活の基盤となっている生態系。

その生態系から私たちがいただいている恵みを生態系サービスといいます。
生態系サービスは、供給サービス、調整サービス、基盤サービス、および文化的サービスの4種類に分けられています。

暮らしに欠かせない生態系サービス

私たちの生活に欠かすことのできないものとして、食べものや燃料、木材や服、きれいな水や空気などがあります。
また、生活に適した温度や湿度、気持ちの安らぎや命の大切さの理解といったことなども必要です。
さらには、製造、流通や観光、金融などの第二・三次産業も不可欠ですが、これらはすべて生態系サービスによってもたらされ、成り立っているものです。
それだけではなく、地域に固有の祭りや食べもの、暮らしといった伝統文化や、人と人との社会関係にも生態系サービスは強く関わっています。
つまり、生態系サービスを十分に受けることで、私たちの幸せな暮らしは成り立っていると言えます。
これは、過去も現在も、そして未来も変わることはありません。

トキ・コウノトリと人が共存している環境とは、私たちの生活の基盤となっている生態系が健全に保たれているということであり、それは私たちが暮らしていくために必要な生態系サービスの質が高いことを意味しています。

健全な社会に欠かせない生物の多様性

私たちが記憶の中にもっており原風景や原体験は、生まれ育った地域における固有の生態系によって得られたものです。
また、乳幼児期に自然のなかで遊ぶことで、道徳観や正義感が身についたり、命の大切さを知ることなどにつながり、心の豊かな人間に育ちます。
このような効果を狙い、ドイツ等のEU諸国では初等教育において生物の多様性に関するカリキュラムを充実させており、「健全な社会をつくるために欠かせないものは健全な生態系である」ということが広く理解させています。

外来の生きものや、ある特定の生きものだけに囲まれた、生物の多様性が守られていない生活では、健全な生態系を理解することができず、ひいては健全な社会をつくることもできません。
持続可能なくにづくりのために失ってはいけないもの…それじゃ生物の多様性なのです。

「生物多様性基本法」とは

生物の多様性を保全し、その恵みを将来にわたって受け取ることができるように、自然と共存する社会をつくり、地球環境を保全することを目的に、2008年6月に制定された法律です。
この法律は、生物の多様性が人類の生存基盤だけでなく、文化の多様性も支えていることや、国内外における生物の多様性が危機的な状況にあること、日本の経済社会が世界と密接につながっていることも記しています。
そして、生物の多様性の保全および持続可能な利用に関する施策を、総合的かつ計画的に推進することを宣言しています。
しかし日本の現状は、森林、農地、陸水、および沿岸などすべての生態系において、生物の多様性が減少していると環境省は評価しています。
企業が生物の多様性を守る No.107[2016年03月29日(Tue)]
日本生態系協会 会報「エコシステム」No.107
−企業も多くの生きものの恩恵を受けている−
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  • 生物の多様性はなぜ大切か

  • 生物多様性と経済

  • 失われる生物の多様性

  • 生物の多様性を取り戻す企業の取り組み

  • 健全な生態系なくして健全な社会はありません




失われる生物の多様性

生物の多様性の価値を計算にいれていない経済

私たちはお金と引き替えに、商品を簡単に手に入れることができます。
ところが、市場で売買される商品の価格のほとんどは、生物の多様性に与える影響を計算に入れていません。
その結果、はるか遠くの地域で伐採された木材や、大量の化石燃料を使って生産された食料、再生産が難しい鉱物などが、日本では信じられないほど安い価格で売られてる、ということがおこります。

生物の多様性の価値を正しく評価しない経済によって、自然の再生産力をはるかに上回るスピードで土地の開発や資源の消費が拡大しました。
その影響は、多くの野生の生きものの生息地の破壊とその絶滅という形で地球全体に広がっています。

世界の科学者や政府の機関などでつくる国際自然保護連合(IUCN)の報告では、地球上の約4万8,000種の生物を調べたところ、2009年の時点で約36%に当たる1万7,291種に絶滅のおそれがあるとの結果が出ました。
生物の多様性は、目に見える形で失われています。

日本においても、ほ乳類・は虫類・両生類については、国内にくらす種(亜種などを含む)の約半分が、鳥類はおよそ2割が、私たち人間の活動を主な原因として、すでに絶滅、または絶滅が心配されている状況になります。
また、こうした状況は、自治体レベルでみると一層深刻なものとなっています。

このままの速度で生物の多様性を失い続けると、一昨年に発生した世界的な金融危機とは比較にならないほどの経済的な損失が発生するだけでなく、気候の変化やそれによる農作物や漁業資源の減少など、多様性を失った地球の生態系が私たちにおよぼす影響ははかりしれません。

経済の活動を持続的なものとしていくためにも、経済活動によって起こった、また今後起きる、生物の多様性の減少分を、経済的な価値からも評価する必要があります。

安く買えるからくりは?

私たちは、商品の本来の価値、またはかかる費用よりもはるかに安い値段で買い物をしていると言えます。
例えば現在のしくみでは、材木の値段は、切り出すための費用、運搬費用をはじめとした、商品化に必要な費用を加えて決まります。
樹木には、「酸素をつくる」、「二酸化炭素を固定する」、「土砂が流されるのを防ぐ」、「野生の生きものを育む」といった、上であげた費用だけでは計算できない、たくさんの価値があります。
しかし、これらの働きに対する価値は、値段に適切に反映されていません。

将来世代にも自然のめぐみを残すためには、自然が回復できる範囲で自然のめぐみを利用することが必要です。
それができない場合には価格が高くなるはずです。
将来世代が受けられるはずの自然のめぐみを回復させることなく使い続けていることで価格は安くなり、大量の消費につながっているのが今の状態です。
豊かすぎる生活は、子どもたちや将来の人々の財産を使い続けることで実現しているのです。
ニッポニア・ニッポン No.76[2016年02月27日(Sat)]
日本生態系協会 会報「エコシステム」No.76
−絶滅をしていった日本のトキは何を言いたかったのだろう−
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  • 140年の苦難 日本のトキ

  • 過去から学ぶ トキが生きるために必要なこと

  • 野生復帰は可能か? 課題山積! 日本の環境

  • トキの復活に成功した中国の取り組み

  • 100年先のビジョンと戦略をつくるトキ




140年の苦難 日本のトキ

Nipponia nippon

学名、「ニッポニア・ニッポン」。属名・種小名ともに「日本」の名を持つことから、トキは、日本を代表する撮りといえます。
江戸時代の文献をひも解くと、トキについての記載が多くあり、当時は日本全国に生息していたことがうかがえます。

東アジアに広く分布し数百万羽もいたといわれるトキは、20世紀に入ると、乱獲や生息地の環境の悪化で急速に減少し、次々と姿を消して行きました。
日本でも多く明治の中頃までは多く生息していましたが、その後数を減らし、大正末期には絶滅したと考えられていました。

人目を避けるようにきらしていたトキは、1930年代に能登半島や佐渡などで再発見され、特別天然記念物、国際保護鳥の指定を受けましたが、こうした対策も個体数の減少の歯止めにはなりませんでした。
1981年、残った5羽が人工増殖のためにすべて捕獲されましたが、努力は実らず、2003年10月に学名だけを残し、日本からは姿を消しました。

人の脅威と弱者の試練

トキはおもに水辺や湿地を生活の場所とし、田んぼなど身近な場所でも普通に見ることができる野鳥でした。
江戸時代、八代将軍徳川吉宗がトキを捕らえた記録や、1824年の『武江産物志』には、隅田川沿いの千住にもトキが生息していたと記された文献が残っています。
田んぼに飛来しドジョウや小魚、昆虫をえさにしていたトキは、植えた苗を踏み荒らすことから農家の人々からやっかい者扱いされていました。
新潟の「鳥追い歌」の中には、サギ、カモ、スズメ、そしてトキも害鳥として入っていました。

江戸時代から厳しく取りしまられてきた鳥獣の捕獲の制限は明治になって廃止され、一般の人にも銃による狩りが許されるようになりました。
途端に害鳥であったトキは狩りの対象となり多くの数が殺されました。
また、1881年当時の大蔵省の記録によると、トキの美しい羽は装飾用として商品価値が高まり、日本から海外への主要な輸出品となり、乱獲に拍車がかかりました。
1908年に保護鳥に指定された時には、日本列島のほとんどの地域から姿を消していました。

再発見の後は、全国的に保護の意識が高まりましたが、太平洋戦争の始まりとともにトキの存在は軽んじられていきました。

国土を増大するために開発が優先され、巣づくりやねぐらのために必要な森や餌場となる湿地は破壊され、戦後の混乱期を終えるまでトキの保護を口にする者はいませんでした。
日本の近代化がはじまってから絶滅するまでの間、トキは試練の日々を過ごしていたわけです。
カエルに異変 -人への静かな警告- No.67[2016年02月18日(Thu)]
日本生態系協会 会報「エコシステム」No.67
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  • カエルが減っている!

  • カエルってどんな生きもの?

  • どうして減った?−カエルにしのびよる影−

  • カエルを襲う、目に見えないもの

  • 私たちのくらしの中にもしのびよる脅威

  • カエルから人への静かな警告




カエルから人への静かな警告

カエルだけでなく、人への影響も

カエルの体は私たちヒトと比べて薄い皮膚で覆われています。
湿った土の上にいれば腹の皮膚を通して水分補給ができるほどです。
水中でも陸上でもくらせるカエルはさぞかし便利だろうと想像しがちですが、水の中から陸上までの環境すべてが健全にそろっていないと生きていけないデリケートな生きものであるのです。
どこがひとつでも環境が失われたり、汚染されたりすれば、数が減ったり、奇形が出たりとさまざまなサインとなって現れます。

カエルから発信されるサインは、生態系のバランスや化学汚染など、私たちのくらしている環境の悪化をいち早く知らせてくれているのです。
今、私たちはこのサインをしっかりと受け止めて、私たち自身のくらしを見つめ直す必要があります。
カエルは人と比べると、薬剤に敏感で、ごく微量の薬品でも奇形が発生したり、死亡したりすることがわかってきました。
私たちは野菜や果物など、作物の多くに農薬を使っています。
私たちが食べているお米は、カエルが死に絶えた田んぼからとれたものなのです。

さまざまな薬剤の使用は社会全体の問題でもあります。
個人的に殺虫剤を使うのをやめたり、無農薬栽培の野菜を買うことはできても、一歩外にでれば、バスの車内や公共施設の室内は、農薬で消毒してあるのがあたりまえです。

農産物には残留農薬の基準値が定められていますが、農薬ゼロとは言っていません。
カエルに見られたような免疫力の低下が私たちの体でも起こっているかも知れません。
農薬は毒性を抑えたり、分解速度の速い薬剤の開発が進められてはいますが、安全であるとはいえません。
社会全体で除草剤や殺虫剤の安易な使用をやめるしくみをつくる必要があります。

カエルが激減する、あるいは絶滅するということは、人間の生活の基盤である自然生態系が壊れているということなのです。
カエルが安全にすめる生態系を取り戻すことは人間の義務です。
姿をけしつつあるカエルが発する静かな警告―。私たちは重く受け止めなければなりません。
日本の自然を壊す生きものたち -移入種- No.66[2016年02月17日(Wed)]
日本生態系協会 会報「エコシステム」No.66
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  • 私たちのまわりにあふれる移入種

  • 移入種が日本の自然を壊す?!

  • 人の手による生きものの高速大移動

  • 逃げ出したセイヨウオオマルハナバチ

  • 取りのぞくには膨大なお金がかかる

  • 世界の取り組み

  • どうする、移入種 責任をとるのは誰?

  • 私たちがすべきこと、してはならないこと




どうする、移入種

責任をとるのは誰?

日本でもようやく移入種対策の本格的な検討がはじまりつつあります。
新しい体制に求められるのはどのようなことでしょうか。

持ちこまない・移動させない

これまで見てきたように、移入種は自然を壊し、原状回復には多くの費用がかかります。
とりかえしのつかない影響を防ぐには、基本的に、移入種を持ち込まない、利用しないという方針を示すことが重要です。

持ち込んだ人、得をした人が責任をとる

移入種を利用する場合には、自然に対する厳密な影響評価を行うことが必要不可欠です。

しかし、このような制度に基づいた手続きを行った上で移入種を持ち込んだとして、地域の自然に対して絶対安全とはいえません。
しかし、現在の制度では、予期せず屋外に逃げだして自然に影響を与えたり、予期せず伝染病が広がったとしても、法制度上の手続きを踏んでいれば、その責任は問われません。
多くの場合持ちこんだ人やそれで得をした人の負担とはならず、私たちの税金でその対応がなされるため、社会的な不公平が生じています。

自然は人類の生存基盤であり、将来世代との共通の財産であることから、それを壊してしまうということは大変なことです。
壊した側にはそれ相応の責任が求められるべきです。

例えば、事故の場合に甚大な被害をもたらすものとして、原子力があります。原子力利用に関する法制度には、もし事故が起きたとき、法制度上では問題が無くても責任が問われ、原状を回復させる義務がある、「無過失責任」、「完全賠償」の仕組みが取り入れられています。
持ち込んだ人が企業である場合には、その危険に対して最後まで責任をもつことは、当然企業にこの重いような責任を課すことで、移入種の利用が抑えられるという効果も予想されます。
そのため、移入種に関する法制度にも、「無過失責任」「完全賠償」の制度を取り入れることが必要です。

わかりやすい枠組みづくり

現在、移入種を持ち込む際には、その目的ごとに担当機関も制度も異なっているので、移入種に対する考え方が統一されていない、どこに対応を求めればよいのかがわかりにくい、などといった問題があります。
このようなバラバラの状態を改善するには、個別の制度を束ねるおおもとの法律を定めることが必要です。
そのなかで、移入種に対する基本的な考え方や利用の基本原則を統一し、また、共通の問い合わせ窓口を設置するなど、関係する機関の連携を進める必要があります。
同時に、移入種を持ち込むかどうかの判断、持ち込まれてから悪影響が出た場合の現状回復までを十分に検討できる体制の整備が必要です。
その際には、移入種による自然への影響が最大の課題であることから、国としては環境省がリーダー的な役割を果たし、必要に応じて関与することができる体制が求められます。
また、国民の協力も欠かせないため、情報公開を進め、政策の決定過程において、積極的に意見をきき、それを反映させていくことが重要です。

移入種に関する法制度については、世界の各国もまだ試行錯誤の段階です。
今、日本において、理想的な制度をつくることができれば、世界に対して大きな貢献となるでしょう。
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