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「コウノトリ繁殖支援プロジェクト@2020神栖」目標達成![2020年09月15日(Tue)]
コウノトリ繁殖支援プロジェクト@2020神栖への寄付金が、8月に目標額200万円を達成しました。たくさんの温かい応援、本当にありがとうございました!
目標達成につき、寄付金の募集は終了しますが、今後の活動については当協会ホームページでご報告していく予定です。今後とも応援よろしくお願いします。

寄付金総額:2,073,500円(119件)※9/1時点

写真は、本プロジェクトで建てた第1基人工巣塔で羽を休めるコウノトリです。
(撮影:阿部正行氏)

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昆虫がいない No.163[2019年06月12日(Wed)]
日本生態系協会 会報「エコシステム」No.163
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  • 激減する昆虫

  • 昆虫がいなくなると

  • 減少の要因
    自然地の破壊
    光害
    農薬による影響

  • 日本でも昆虫を守る行動を


日本中で、そして世界で激減している昆虫。
姿は小さくても、生態系のなかで担う役割はとても大きいのです。
日本でも昆虫を守るための法律や行動計画が必要です。



昆虫がいなくなると

自分の知らないところで昆虫がいなくなったとしても生活には影響がない・・・と思う人も多いのではないでしょうか。
ところが、昆虫は生態系のなかで重要な役割を担い、私たち人間の食べものから文化まで密接な関わりがあります。

植物や動物への減少の連鎖

昆虫は、現在知られているだけでも世界で100万種を数え、地球上に生活する生物の種の大半を占めています。
まだ名前がついていない多くの種や未発見の種も含めると、その数はさらに2〜5倍になると考えられています。
日本だけでも3万種以上の昆虫が記録されていますが、実際にはその同数かそれ以上が未発見であると推測されます。

このように膨大な種数を誇る昆虫は、熱帯から寒帯、低地から高山まで、深海を除く地球上のあらゆる場所に進出し、さまざまな地域、地域ごとの多様な環境にくらしています。
−65℃以下になる南極、乾燥した砂漠、油田にくらす昆虫もいます。
そして、それぞれの環境にくらす植物や動物と相互に関わり合いながら生きています。
昆虫は、地域の生態系のなかで、消費者や分解者として、きわめて重要な役割を担っているのです。

昆虫がいなくなったら、どのようなことが起きるのでしょうか。
多くの植物は、昆虫によって花粉が運ばれ子孫を残しています。
また、多くの動物が昆虫を食物としています。
昆虫がいなくなってしまうと、これらの植物や動物は生き残ることができなくなり、その影響は次々に連鎖していくと考えられます。

私たちの暮らしと昆虫との関わり

私たちの生活と昆虫との間にも、さまざまな関わりがあります。
人類の長い歴史のなかで、ミツバチやカイコなどの昆虫は大きな恵みをもたらしてきました。
蜂蜜の採取や絹糸の生産は、現在も養蜂業や蚕糸業として営まれています。
また、カイコの蛹やイナゴ、ハチの幼虫など、さまざまな昆虫が食用とされてきました。
昆虫はタンパク質やミネラルを豊富に含むことから、食料としても有望であると考えられています。

私たちが食べている農作物や果樹の多くは、野生のハナバチやハナアブの仲間、飼育されているミツバチなどの昆虫によって、送受粉がなされています。
昆虫は、農作物や果樹の栽培に不可欠な存在です。
また、農作物や果樹を害する生きものを捕食したり寄生したりする昆虫も天敵として重要です。
近年では、昆虫の優れた機能や形態などを模倣するバイオミメティクス(バイオミミクリー)の研究が盛んに行われるようになってきました。
例えば、昆虫の微細な構造による発色(構造色)を利用した繊維、蚊の口針を模倣した医療用の無痛注射針、スズメバチが生産するアミノ酸化合物由来の脂肪燃焼ドリンクなどが実用化されています。
昆虫は、文学や芸術、教育、娯楽にいたるまで私たちの文化とも深く関わっています。
日本では古来、初夏の蛍狩りや秋の虫聴きなどで昆虫と親しんできました。
万葉の時代から現代まで、昆虫を詠んだ俳句や短歌は数多く知られ、音楽や絵画にも取り上げられています。
また、昆虫は私たちの身近な生きものとして、教材としても有用です。

このように、私たちは昆虫から多大な恩恵を受け続けてきました。
将来にわたって私たちが幸せに暮らすには、昆虫からのさまざまな恵みが必要です。
昆虫がいなくなれば、私たちや将来世代の幸福な暮らしも成り立たなくなります。
日本をこわす外来の生きものたち No.162[2019年03月22日(Fri)]
日本生態系協会 会報「エコシステム」No.162
−経済にも大きな影響 −
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私たちの活動に伴って持ち込まれた外来種が、生態系や地域の産業、文化にも影響をおよぼしています。
持続可能な地域をつくるために、さまざまな立場の人が連携・協働する必要があります。



私たちの暮らしにおよぶ外来種の影響

110兆円にのぼる外来種による被害

今、世界各地で外来種による問題が起こっています。
私たち人間の活動に伴って持ち込まれた外来種が、在来の野生の生きものを減少させたり、農林漁業、観光業など経済や人の健康を脅かしたりしています。
2010年に公表されたIUCN(国際自然保護連合)の報告書※1 によると、外来種による全世界の被害総額は、推定で1兆4千億ドル(当時の日本円で約110兆円) にのぼっています。
国際的に深刻な問題となっており、外来種によって引き起こされる被害を防止することが求められています。

日本国内での外来種の影響

日本国内でも、外来種によって私たちの暮らしにもさまざまな影響が懸念されています。

農業への影響

2018年に農林水産省が公表した資料※2によると、アライグマによる全国の農作物被害金額は2017年度に3億2,000万円でした。
レンコンが特産品の徳島県鳴門市では、アカミミガメがレンコンの新芽を食害することによる被害額を1,500万円と算出しています(2011年公表)。
また、西日本を中心に分布が拡大しているスクミリンゴガイ(通称:ジャンボタニシ)は、水田の若いイネを食害します。
これまで、2005年に沖縄県石垣市では2,000万円、2010年 に岡山県南部では1,600万円の 被害総額が推定され、分布地域全体で膨大な金額となることが容易に想像できます。

観光業への影響

日本は、海に囲まれた島国で南北に長いことや、複雑な地形であることなどにより、野生の生きものの種数が多く、固有種(特定の限られた地域にのみくらす種)も多く見られます。
特に南西諸島や小笠原諸島には、地域固有の遺伝子を持った種が多く生息、生育しており、これらを活かした観光業が営まれています。
外来種によって競合や遺伝子汚染が起こり、固有種が失われれば、長い間かけてきた進化の歴史がなくなってしまいます。
自然観光資源をもとに地域振興を目指す日本にとって、悪影響をもたらします。
実際、小笠原諸島はグリーンアノールなどの外来種問題を数多く抱え、島の固有の生きものの生息、生育が危ぶまれていたことから、世界自然遺産への登録が円滑には進みませんでした。
防除が進んだことで、2011年に世界自然遺産に登録され、2010年度まで2万人前後だった観光客が、2011年度以降、2013年度まで3万人以上に増加し、その後も2万5千人前後の観光客が訪れています。

治水への影響

河川の堤防一面に、セイヨウアブラナやセイヨウカラシナが黄色い花を咲かせている光景を見たことがある人は多いことでしょう。
これらは、通常一年草で、地上部とともに地下茎か枯れるため、堤防に隙間ができ、堤体の弱体化を招くとされています。
もし、大洪水により堤防の決壊が起きた場合、人の命を脅かす災害を生む可能性もあります。
また、その被害額ははかり知れません。

文化財への影響

アライグマが木造の神社や寺院などへ侵入し、屋根裏での糞尿、建造物や美術工芸品の破損といった被害を起こしています。
これまでに40都道府県で被害が確認されており、京都府や奈良県では国宝や重要文化財への被害も報告されており、深刻な問題となっています。

※1:1UCN (2010) Invasive species and climate change form a 'deadly duo', warn top scientists
※2:農林水産省(2018)全国の野生烏獣による農作物被害状況
渡り鳥が減っている No.157[2018年07月11日(Wed)]
日本生態系協会 会報「エコシステム」No.157
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  • 世界の環境を見ている渡り鳥

  • 7割が渡り鳥

  • 狭まる生息環境

  • 渡り鳥が求める自然環境

  • 欧米における国境を越えた取り組み

  • 世界共通の財産を守る


自分の翼だけで、壮大な旅を続ける渡り鳥。
その貴重な鳥たちの生息地を打ち壊した日本。
干潟、草地、森の再生が今、求められています。


7割が渡り鳥

私たちが国内で見る鳥のうち約7割が渡り鳥です。
どのような鳥がいて、またどのような環境を必要としているのでしょうか。

国境を越える季節

四季の変化がはっきりしている日本では、季節によって北へ南へと移動する多様な渡り烏を見ることができます。
例えば、春には、前述したツバメが、東南アジアからやってきて子育てをします。
無事に巣立ったヒナは、数か月後にはすぐに一人前になり、秋には東南アジアへとまた海を越えて戻っていきます。
初夏の森には、同じく東南アジアから渡ってきたオオルリの美しい声が響きます。
春と秋には、シギ・チドリの仲間たちが繁殖地であるシベリアと、越冬地である東南アジアやオーストラリアなどを行き来する途中で、栄養補給や羽を休めるために日本に立ち寄ります。
トウネンという小さなシギの仲間は、体重がわずか25g程度しかありませんが、そんな小さな体で、往復2万km以上という距離を移動します。
冬になると、短い夏に豊富な食物に恵まれるロシアなどの北の国で子育てを終えたカモやガンの仲間などが、巣立った若鳥を連れて日本にやって来ます。
そのほかにも、日本国内で山地から低地へ移動するような、小規模な渡りをする鳥もいます。

日本で確認されている鳥のうち約7割もの種が、何らかの形で渡りをしながらくらしています。

渡り鳥が必要とする環境

季節によって生活する場所を変える渡り鳥たちには、子育てをする繁殖地、冬を過ごす越冬地、移動する間に休憩場所として立ち寄る複数の経由地が必要で、どれか一つでも欠けてしまえば生きていけません。
また、それぞれの地域で必要とする環境も種によってさまざまです。

例えば、タカの一種であるサシバは林と水田が一体となっている里地里山に好んで生息しますが、カモたちは河川や湖沼に、シギ・チドリたちは干潟や淡水湿地に飛来します。
渡り鳥全体を見ると、森、湿地、河川、湖沼、干潟などの自然環境に加え、水田、畑など、人聞に近い環境を利用する種もいます。
多様な渡り鳥たちの生活を支えるためには、日本各地で多様な環境がしっかり守られている必要があります。
ミツバチからの警報 No.132[2016年04月23日(Sat)]
日本生態系協会 会報「エコシステム」No.132
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自然の恵みを受け続けるために〜ミツバチに起こっている異変から、日本の農業の進むべき道を考える〜

接続可能な農業への転換は現代世代の責務

自然の生態系は、私たちの経済と社会を支える基盤です。現在も、また将来にわたっても、私たちが幸せに暮らすには、生態系からのさまざまな恵みに頼らなければなりません。
第一次産業である農業や養蜂業も、生態系からの恩恵を受けて成り立っています。
健全な生態系があってこそ、接続可能な農業や養蜂業を営むことができます。

現代世代の選択は、将来世代が幸福に暮らせるか否かを左右します。現代を生きる私たちには、食料生産の増大と合理化を目指し、生態系の破壊をもたらしてきた近代農業から、生態系への負担を最小にとどめる接続可能な農業への転換を図り、健全な生態系と豊かな恵みを将来世代に引き継ぐ責務があります。
日本においても、農薬の使用を減らしていくことを基本理念として、大胆な数値目標を掲げ、目標の達成に向けて具体的な施策を進めることが望まれます。

ミツバチや生態系への影響が懸念されるネオニコチノイド系の農薬とフィプロニルは、将来世代の負の遺産になりかねません。
これらの農薬については、予防原則に基づき、生態系に深刻な影響をおよぼさないことが明らかになるまで、使用を控えることが求められます。
将来世代に対する責務を深く自覚し、農薬による水域と陸域の生態系への影響を評価する手法をさらに充実させ、農薬取締法に基づく農薬の審査・登録基準を見直す必要があります。

地域の個性を磨き上げ、世界に貢献する

ミツバチとも共存できる生態系への負荷が小さい農業に地域で取り組み、その取り組みを施策や補助金等で支援し、消費者がその農産物を購入することは、食料の安全保障をもたらします。
また、自然の風景や生きものは地域ごとに特性があり、そこから地域固有の文化や伝統も生み出されます。
それぞれの地域の持つ伝統文化を継承し、個性を磨き上げることで、地域の魅力は高まります。

地域の個性を活かし、農産物の安全の価値を向上させることは、非常に変化の激しいグローバル化の荒波にも耐えられる、魅力あふれる接続可能な地域づくりにつながります。

日本と同じ気候帯に位置し、稲作を中心とするアジアの国々でも、農薬に依存していることが問題になっています。
日本が国を挙げて、環境保全型農業および有機農業の技術を確立し、個性が輝く地域をつくるしくみを築き上げ、その技術やしくみを提供することで、アジア諸国の農業や地域づくりに貢献することができます。
接続可能な農業や地域づくりに向けた国際協力は、日本が国際的な信頼を得るためにも果たすべき役割の一つです。

ミツバチの起こっている異変を、私たちのくらしのあり方に対する自然からの警鐘と受け止め、これからも自然の恵みを受け続けることができるよう、社会全体で問題の解決に向けた取り組みを着実に進めなければなりません。
すべてのまちに生物の多様性を守る戦略を No.129[2016年04月20日(Wed)]
日本生態系協会 会報「エコシステム」No.129
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生物の多様性を守り、増加させる地域戦略の役割

世界の多くの地域で生物多様性を重視したまちづくりが進められる一方、これまでの日本のまちづくりのほとんどは、健全な生物多様性を確保する視点がない、持続不可能なものがほとんどでした。
しかし、自然と共存したまちづくりに取り組んできた地域もあります。
地域の生物多様性を守る「生物多様性地域戦略」をつくり、地方公共団体のまちづくりの計画を組み入れて、「自然との共存」をまちづくり計画の基盤にすることが必要です。

地域の生物多様性を守るためにすべての市やまちに「生物多様性地域戦略」が必要

生物多様性が豊かであればあるほど、より高い質とより多くの量の生態系サービスを受けることができます。
逆に、生物多様性が乏しい場合は、お金を出すなどして他の地域からサービスを買う必要が出てきます。
日本では、目先の利益を優先し、豊かな生物多様性を失ってきました。その結果、不足した生態系サービスを他の地域から買うといった、持続可能でないまちづくりが、都市部だけでなく、ほとんどの農村部でも進められてきました。

その一方で、地域が主体となり、地域の生物多様性を守り育て、得られる生態系サービスをまちづくりに生かそうとする取り組みが行われてきた地域もあります。
そこでは、地方公共団体や民間団体が生物多様性の保護・再生を目的として土地を買い上げたり、学校ビオトーブをつくって活用したり、農薬や化学肥料を使わない、環境にやさしい農業などを行ってきました。

生物多様性を守り、生態系サービスを持続して受けられるようにすることと、土地をどのように利用していくかということには、密接な関係があります。
そのため、土地を利用する方法を決めるまちづくり計画に、地域の生物多様性を守るために「生物多様性地域戦略」を入れ込むことが求められます。

しかしながら、2012年度までに地域戦略をつくっている地方公共団体はごく少数です。
都道府県レベルでも公表済みなのは23ですが、市区町村レベルでは約1,740市区町村のうち、公表済みは30であり、これは全体の約2%※だけです。
また、すでにつくられた一部の地域戦略は多くの問題を抱えており、日本の各地域の生物多様性を守るためには不十分です。
※平成25年3月末段階、市区町村は政令指定都市を含みます。これに加え、現在27市区町村が「生物多様性地域戦略」を策定中ですが、これを含めても全体の約3%にしかなりません。

土地の確保を柱としていない

生物多様性を保護・再生するうえで最も重要なのが、土地を確保することです。
しかし、今までにつくられた地域戦略では、最も重要な「土地の確保」が柱になっていません。
これは、地域戦略がまちづくり計画の根幹ではなく、枝葉のような位置づけになっている、またはそのような認識でつくられているということの証拠です。
生物多様性を守ることについて関心の低かった、昭和の時代につくられたまちづくり計画は、いまだに強い力を持っています。
そのため、このまちづくり計画によって生じた生態系サービスの低下について、仮に地域戦略で課題としてとらえていたとしても、対策をはっきりと打ち出せない、また、十分な予算がつかないという状況となっています。

地域の生物多様性を守る取り組みへの国の支援が不十分

国には、地域戦略をつくるための支援制度はありますが、地域戦略を実行するための支援は不十分です。
このため、現在の地域戦略の多くは、目標となる数値などの具体性に乏しいだけでなく、規模も小さいものになっています。

開発によって消失しそうな民有地のまとまった森があるとします。
地方公共団体の視点に立てば、森を開発して利用することで得られる利益を選ばずに、森を保護して持続可能に利用することで得られる利益を選ぶということは、大変な決断力を要します。
国は、地方公共団体が後者を選びやすくするために、財政的な支援等で後押しする必要があります。
コウノトリと育む持続可能な経済 No.124[2016年04月15日(Fri)]
日本生態系協会 会報「エコシステム」No.124
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  • 新しい時代の“先進国”を目指して

  • 生きものと共存する持続可能なまちづくり

  • 生態系サービスが支える豊岡市の経済

  • 生態系と経済の両立




生態系と経済の両立

世界の価値観が変わる

大量生産、大量消費、大量廃棄により成り立ってきた、20世紀からの経済成長は終わりを告げています。
地球上の資源は有限であり、ゴミ捨て場もまた有限です。
地球は、私たちがおもっていたよりも、ずっと小さかったのです。

成長の限界にいち早く気づいた多くの国々では、すでに国づくりの基準が変わり始めています。
これまでは、GDPランキングなどに代表されるように、経済力のある国が、イコール先進的であるという考え方が一般的でした。
しかし、今では、持続可能な社会を築いている国こそ本当の意味で豊かであると、世界の価値観が変わってきています。
今後は、これまでの持続不可能な経済から、地球の有限性にもとづいた持続可能な経済へと向かっていくことになります。

コウノトリが舞う魅力的な地域づくり

今から約200年前、日本には各地でコウノトリの舞うまちが見られました。しかし、明治時代にはいってからは狩猟と環境の悪化により急激に数を減らし、1956年に特別天然記念物に指定されたにも関わらず、1971年には日本の空から姿を消しました。

こうしたなか、関東地域では、私たちの協力が全面的に支援し、「コウノトリ・トキの舞う関東自治体フォーラム」(代表理事・根本崇 野田市長)が2010年に設立され、活発な活動が展開されています。
この一大プロジェクトは、水辺の生態系ピラミッドの頂点であるコウノトリをシンボルとして、その野生復帰を通じたエコロジカル・ネットワークの形成と地域経済の振興を目的としています。

コウノトリの舞う魅力的な地域づくりをめざし、現在、千葉県野田市をはじめ、29の先進的な市町村長がこのフォーラムに加盟しています。
日本の経済の中枢を担う関東圏での取り組みであるだけに、今後は、コウノトリの野生復帰を視野に入れた経済効果の試算を進めることが求められます。
コウノトリの舞う空は、生態系と経済が一体化し、将来の子どもたちが安全・安心に暮らせる地域づくりを意味しています。

さあ、あなたのまちも

日本は古くは豊葦原と呼ばれ、みずみずしく豊かな自然、歴史を育んできました。
北から南まで長さ約3,000kmにわたる国土は、複雑な地形と四季の変化により、山の自然、里の自然、水辺の自然など、さまざまな生態系をつくり出しています。
それぞれの風土には、地域の生態系に応じた多様な生きものが息づいています。
豊岡市や関東地域におけるコウノトリの事例にとどまらず、これからの自治体は、地域ごとにシンボルとなり生きものを決め、自然再生をして、持続可能なまちづくりを進めていくことが有効です。
北から南まで、日本全国どこにでも、自然と歴史が一体になった「地域らしさ」があります。
このように、豊かな生態系からの恵みに支えられ、地域の自然と歴史を育む美しいまちの姿が、結果として持続可能な経済、社会にもつながっていくのです。
いま、なぜコウノトリなのか No.123[2016年04月14日(Thu)]
日本生態系協会 会報「エコシステム」No.123
−世界にただ一つの美しいまちづくり−
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  • 関東の29もの市町村が動き出した!

  • コウノトリとともに

  • なぜ、コウノトリなのか?

  • 世界で進む、コウノトリをシンボルとした地域づくり

  • 求められる価値観の転換




なぜ、コウノトリなのか?

かつての日本の農村にくらしていた「コウノトリ」の特徴に注目し、多くの自治体が自然と共存する持続可能な地域づくりのシンボルとして掲げています。
自然環境の特性や地域づくりの目標によっては、ほかの生きものがシンボルになることもあります。
みなさんの地域では、どんな生きものがシンボルとなるでしょうか?

多様で豊かな生態系のシンボル

両翼を広げると約2mにもなるコウノトリは、水辺の生態系ピラミッドの頂点に立つ完全肉食の大型鳥類で、1日に約500g/羽(ドジョウだと70〜80匹)を食べます。
また、日によっては何百kmもの移動を行い、移動範囲が最もせばまる子育ての時期でも、半径約2kmのなわばりを持つことが知られています。
コウノトリがその地域に生息・繁殖するということは、その食物となる多くの生きものが四季を通じて育まれている豊かな自然環境があり、広域的にネットワークされていることの証でもあります。

地域産業の新たな展開のシンボル

コウノトリは、田んぼなどの水辺を中心にくらしています。
食物となる生きものを育む環境にやさしい農法を実施する田んぼで生産された米は、人間にとっても安全・安心な米として、またコウノトリがくらしているという物語を付加価値とするブランド米として販売するなど、地域農業の振興につながります。
また、コウノトリやその子育てが多くの人をひきつけ、地域の交流人口の増加にも寄与するなど、地域産業を活性化させるシンボルともなります。

自然と共存するくらしのシンボル

コウノトリは、赤ちゃんを運んでくる物語で知られるほか、古くから田んぼの広がる里山で人と近い距離でくらし、大型で白く美しい姿や優雅な飛翔などから、幸せを運ぶ”瑞鳥”として地域の人に親しまれ愛されてきた鳥です。
また、人里近くで人目を気にすることなく子育てをするその姿は、人の子育てとも結びつけて捉えられやすく、”自然と共に生きる”ということを実感させてくれる鳥でもあります。
自然と共存する地域づくりの必要性を、どんなに多くの理屈を並べて説明するよりも、コウノトリが実際に地域でくらすことによって、人々に自然と共に生きる感動を与え、心を動かし、行動を引き出すことにつながります。
大切な日本の海を守るために No.122[2016年04月13日(Wed)]
日本生態系協会 会報「エコシステム」No.122
−ノーテイクの海洋保護区をつくる−
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  • 多様な生き物を育む日本の海

  • 悪化する海の生態系

  • 大切な海を守れない日本

  • あるべき海洋保護区

  • 海域の30%を海洋保護区に、10%をノーテイク・ゾーンに




悪化する海の生態系

地球を支える海は…

海は地球の全表面の4分の3を占め、海水は地球上の水の97.5%にもなります。
また、地球を安定した気候に調整したり、生きものにすみかを提供したりと、地球上の生命を維持するうえでなくてはならない存在です。そして人間もまた、海から魚介類などの食料を得るとともに、水質浄化やレクレーションといったさまざまな恩恵である生態系サービスを受けながら生活しています。

しかし世界の海では、人間活動の影響でサンゴ礁の約20%、マングローブ林については約35%が破壊されるなど。海の生態系は悪化しています。

日本の海のついても、高度経済成長期に行われた埋立や護岸などの開発により、産卵場や稚魚などの成育場となる干潟や藻場、自然海岸などの貴重な環境を多く失いました。特に、埋め立てなどが盛んに行われた東京湾では、明治維新以降に干潟の95%が失われています。

人間活動の影響を受けやすい内湾などの閉鎖性の水域では、工業・農業などの産業排水、家庭から出る生活排水などによる水質汚濁で赤潮や青潮が頻繁に発生するようになりました。また、海水中の酸素濃度が低下する貧酸素水塊が大規模に起こり、魚や貝などの生きものがすみにくい状態になっています。

このほか、温暖化により海流の変化や海水温の上昇などで、海藻が密生する海中林が大規模に消失する磯焼けやサンゴが死滅する白化現象などが各地で起きて問題となっています。

枯渇する水産資源

世界人口の増加や中国の経済発展などにより、世界の一人あたりの水産物の消費量は過去約50年間で2倍に増えました。また、今後も世界人口のさらなる増加や新興国の発展などにより、水産物の需要が増えると見込まれています。

しかしながら、世界の海の漁業生産量はすでに頭打ちとなっています。国連食糧農業機関(FAO)の調査によれば、世界の水産資源となる魚介類の19%が過剰に獲られ、8%が枯渇の状態にあります。

日本の水産物については、イワシやサバなど主要な魚種のうちの約40%は過剰に獲られた状態となっています※。この原因は、沿岸域の開発などによって産卵・生育の場となる藻場や干潟の減少、一部の水産資源については回復力を上回る漁獲などの影響によるものと指摘されています。
※平成23年度我が国周辺水域の資源評価(水産庁)
朱鷺・コウノトリの復活は 日本国民の義務 No.110[2016年04月01日(Fri)]
日本生態系協会 会報「エコシステム」No.110
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  • トキ・コウノトリがいる風景

  • トキ・コウノトリと生態系サービス

  • トキ・コウノトリを絶滅に追いやった原因

  • 日本の原風景

  • トキ・コウノトリを呼び戻す試み

  • トキ・コウノトリの野生復帰に向けて




トキ・コウノトリと生態系サービス


私たちの生活の基盤となっている生態系。

その生態系から私たちがいただいている恵みを生態系サービスといいます。
生態系サービスは、供給サービス、調整サービス、基盤サービス、および文化的サービスの4種類に分けられています。

暮らしに欠かせない生態系サービス

私たちの生活に欠かすことのできないものとして、食べものや燃料、木材や服、きれいな水や空気などがあります。
また、生活に適した温度や湿度、気持ちの安らぎや命の大切さの理解といったことなども必要です。
さらには、製造、流通や観光、金融などの第二・三次産業も不可欠ですが、これらはすべて生態系サービスによってもたらされ、成り立っているものです。
それだけではなく、地域に固有の祭りや食べもの、暮らしといった伝統文化や、人と人との社会関係にも生態系サービスは強く関わっています。
つまり、生態系サービスを十分に受けることで、私たちの幸せな暮らしは成り立っていると言えます。
これは、過去も現在も、そして未来も変わることはありません。

トキ・コウノトリと人が共存している環境とは、私たちの生活の基盤となっている生態系が健全に保たれているということであり、それは私たちが暮らしていくために必要な生態系サービスの質が高いことを意味しています。

健全な社会に欠かせない生物の多様性

私たちが記憶の中にもっており原風景や原体験は、生まれ育った地域における固有の生態系によって得られたものです。
また、乳幼児期に自然のなかで遊ぶことで、道徳観や正義感が身についたり、命の大切さを知ることなどにつながり、心の豊かな人間に育ちます。
このような効果を狙い、ドイツ等のEU諸国では初等教育において生物の多様性に関するカリキュラムを充実させており、「健全な社会をつくるために欠かせないものは健全な生態系である」ということが広く理解させています。

外来の生きものや、ある特定の生きものだけに囲まれた、生物の多様性が守られていない生活では、健全な生態系を理解することができず、ひいては健全な社会をつくることもできません。
持続可能なくにづくりのために失ってはいけないもの…それじゃ生物の多様性なのです。

「生物多様性基本法」とは

生物の多様性を保全し、その恵みを将来にわたって受け取ることができるように、自然と共存する社会をつくり、地球環境を保全することを目的に、2008年6月に制定された法律です。
この法律は、生物の多様性が人類の生存基盤だけでなく、文化の多様性も支えていることや、国内外における生物の多様性が危機的な状況にあること、日本の経済社会が世界と密接につながっていることも記しています。
そして、生物の多様性の保全および持続可能な利用に関する施策を、総合的かつ計画的に推進することを宣言しています。
しかし日本の現状は、森林、農地、陸水、および沿岸などすべての生態系において、生物の多様性が減少していると環境省は評価しています。
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