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生態文明 No.146[2016年08月01日(Mon)]
日本生態系協会 会報「エコシステム」No.146
−中国の挑戦 −
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  • 変わりつつある中国

  • 森林の分野 退耕還林環還草

  • 湿地の分野 国家湿地公園の設置

  • 生物多様性 急ピッチで進む自然保護区の設置

  • GDP偏重の見直しに着手


隣国中国において、近年、生態系の保護・回復に向けた取り組みが急ピッチで進められています。
日本との間を渡り鳥も行き来する中国で今、具体的にどのような取り組みが行われているのか。
その概要を紹介します。



森林の分野 森林の分野 退耕還林環還草(たいこうかんりんかんそう)

耕作を止めてその土地を森や草地の戻す「退耕還林還草プロジェクト」。
1999年のプロジェクト開始以来これまでに対象となった場所は、荒れ地だったところの林地化などを含めて約3千万ha。
単純平均で年約200万haのペースで進められています。

1998年夏の大水害

中国では水土流失・砂漠化、黄砂・砂嵐に対して、生活・産業を根本から脅かす問題として、これまでも対策を取っていましたが、いずれも不十分なものでした。
こうしたなか1998年の夏に、長江と黒竜江省を流れる松花江流域で大洪水が発生し、死者4,150人、被災者2億5千万人以上、直接的な経済損失だけで約2,500億元と、GDPの伸び率を2%押し下げる被害がありました。
原因として、健全な森林があれば提供されていた洪水防止機能などの生態系サービスが、長江などの河川の中の上流域において発揮されていないことが挙げられました。
この1998年大水害の後、中国はすぐに「退耕還林還草プロジェクト」と「天然林保護プロジェクト」の開始を決定しました。

退耕還林還草プロジェクト
〜世界最大の生態回復プロジェクト〜


退耕還林還草プロジェクトとは、土壌が流れやすい山の傾斜地を開墾してつくった耕地などを森や草地に戻して河川中上流域の洪水防止能力などを高めることと、これらの地域で生活する低所得の農民の経済状況の改善を目指すプロジェクトです。
国は、農家の「参加耕地面積」に応じて補助金を支払います。
そして傾斜が25度以上ときつく、もともと農業に適していなかったこうした土地での耕作をやめさせ、経済性の高いほかの仕事への就労を支援しています。
農家の自発的意志により、集落全体が補助金をもらって町の集合住宅に引っ越し、運送業などに従事するといった事例もあります。
多額の補助金が必要となりますが、洪水防止をはじめ国民全体の利益になり、また国民の多数を占める農家の利益にもなるとの考えに基づいています。
取り組み開始から2013年までの15年間に、耕作地の林地化が約927万ha、荒れ地の林地化や放牧禁止による林地化が約2千万haと、計約3千万haで行われています。
これは単純平均でも、毎年約200万haのペースで進められてきた計算になります。
植林の内容は、プロジェクト開始当初は政府主導で「もともとの植生の回復」が重視されていました。
ただし近年は農家の意向を重視し、所得向上の観点から果実が収穫でき経済効果が期待できるアンズやくるみ、桃などが多く植えられているようです。
黄土高原など見渡す限り砂漠のような状況が各地で見られる現状を踏まえ、「とにかくまず林の状態にすることが重要」(国家林業局へのヒアリング)との考えによるものです。

「農産物の提供」から「生態系サービスの提供」へ

中国では、どの地域が工業製品の生産に適した場所か、あるいは農産物の主要供給地とするのに適切がといったことをまとめた全国図をつくっています。
退耕環林環草は「農産物の提供」が一旦は適切とされた地区を、中国語で「生態産品の供給」、すなわち洪水防止や土壌流失防止などの生態系サービスの提供を主な任務とする地区に変えるもの、過去の誤った任務の割り当て方を修正するものと説明されています。

費用対効果

2013年までに約3千万haの土地で実施された退耕環林環草プロジェクト。
この取り組みに中国はこれまでに約3,500億元(約5兆2,500億円)を投じています。
これについて中国では2015年に費用対効果を試算しています。
退耕環林環草を実施している地域のうち、長江・黄河中上流域の13省の地域についての試算結果のよれば、水源涵養効果が年3,680億元(約5兆5,200億円)、土壌保育効果が年942億元(約1兆4,100億円)、二酸化炭素固定等の効果が年1,560億元(約2兆3,400億円)、大気浄化効果が年1,920億元(約2兆8,800億円)などとされました。
これらを見る限り、退耕環林環草プロジェクトは現在のことろ費用対効果が非常に高く、社会経済効果を十分にあげていると言えます。
※1元=15円換算

天然林保護プロジェクト

退耕環林環草プロジェクトと並行して始まったのが「天然林保護プロジェクト」です。
「退耕環林環草プロジェクト」が主に急傾斜地にある耕地や荒れ地を森や草地にするものであるのに対し、天然林保護プロジェクト」は残された天然林を守ることを主としています。
具体的には、長江・黄河中上流域における天然林の商業的伐採の全面禁止、木材生産量の削減、森林面積の増加などの取り組みが行われています。
退耕環林環草と天然林保護の両プロジェクトは、中国における数ある環境に関する取り組みのなかでも、中国が持続可能な発展の道を歩むことができるがどうかに関わる、特に重要な取り組みと言えます。
タグ:中国
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