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2018.05.22
関東・水と緑のネットワーク
第10回の募集を開始しました。



2018.05.21
エコネット会員
会報「エコシステム」最新号を掲載しました。



日本生態系協会では、隔月で会報「エコシステム」を発行しています。
自然と伝統に囲まれた美しいまちと、子どもたちの笑顔が輝く暮らし。
日本をそんな持続可能な国にすることが、私たち(公財)日本生態系協会の目標です。
その目標のために、持続可能なまちづくりに関する提案活動、ビオトープの調査・研究、普及啓発などを行っています。

会報エコシステムでは、日本生態系協会が調査した結果や、日本国内・海外の生物保護・環境保護の活動などに関して、最新の事例を紹介しています。

このブログではエコシステムの一部を紹介させて頂きます。
すべての内容をご覧になりたい方は、会員登録をお願いします。
協会の会員制度について
お花見の姿〜ソメイヨシノの弱み〜 No.156[2018年04月06日(Fri)]
日本生態系協会 会報「エコシステム」No.156
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  • 画一性より多様性

  • お花見も多様に楽しむ

  • 大量植栽が生みだす問題

  • 自然との共存を目指した並木

  • 在来種によるエコロジカル・ネットワークを


桜は日本の春の代名詞な存在ですが、将来のまちに本当に必要とされるのはサクラ並木ではなく、さまざまな在来な植物によって取り戻された自然の生態系です。


画一性より多様性

春の観光の柱、サクラ

今年もサクラの季節がやってきます。ソメイヨシノがあたりを美しく薄紅色に染める時期は、日本の四季のなかでも最も心躍る時期であるという人も多いことでしょう。
今やサクラの人気は世界的なものです。
サクラの美しさそのものに加えて、いわゆる「お花見」‐咲き誇るサクラの下でにぎやかに飲食する‐が、日本独特の風習として海外にも広く知られるようになっています。

訪日外国人の数は大幅に増加を続けていて、この10年間で約2倍になっています。サクラの季節である3月から4月は夏のバカンスシーズンと並ぶ人気のシーズンとなっていて、4月だけで250万人以上が日本を訪れています(日本政府観光局調べ、2017年月別訪日外客数)。
日本を訪れる人たちは1回の滞在で1人あたり平均13万円ほどを支出し、日本の経済に貢献しています。

さらに、お花見シーズンを含む4月から6月にかけて日本を訪れた観光客に観光庁が実施したアンケートの結果によると、お花見などの「四季を体感できる活動」を「今回した」人の割合は21.6%。一方で、そのような活動を「次回したい」と答えた人の割合は29.7%と、より大きな割合となっています。
大多数の訪日外国人たちが体験する「日本食を食べる」、「ショッピング」などは「今回した」人の割合に比べ「次回したい」と回答した人の割合が大幅に少なくなることとは対照的な結果です。
日本の春は、外国人たちにとって非常にエキゾチックかつ魅力的なもので、次こそは楽しみたい、あるいは何度でも楽しみたいものと思われているようです。

特に最近はSNSの発達もあり、一面に咲き誇るサクラの名所を訪れるだけでなく、サクラに彩られた田園風景や、歴史や伝承をもつサクラを探訪し、背景にある物語をサクラのある風景と共にインターネット上に掲載するなど、外国人たちによるサクラの楽しみ方が急速に多様化しているようです。
お花見の文化を発達させてきた日本人自身はもちろんのこと、外国から訪れる観光客にとっても、サクラは日本の春の代名詞的な存在であるようです。

サクラとのうまい付き合い方を考えたい

サクラとお花見を世界的な観光資源に押し上げたのは、ソメイヨシノの働きによるところが大きいことは間違いありません。
ソメイヨシノの美しさは一種類を大量に植えてこそのものですが、まちの魅力づくりを大量のソメイヨシノに頼っていていいものかという疑問があります。

全国の街路樹の本数集計を続けている国土政策総合研究所によると、全国に500種以上ある高木の街路樹のなかでサクラ種はイチョウに次いで2番目に多く、全体の約8%を占めています。
一方、日本植木協会などの調べでは、植木として出荷可能なサクラの約3分の2がソメイヨシノです。
この二つのことから、日本の街路樹の5%程度がソメイヨシノであるといえます。
多様な気候風土のもと、地域性に富んだ非常に豊かな植物相を育む日本ですが、まちの中を見ている限りではソメイヨシノの国であるという印象があります。

これほどに多く用いられているソメイヨシノですが、多くの人の目を引き付ける期間は1週間足らずしかありません。
その一方で、ほかの季節にも多様な魅力を発揮する樹木が日本にはたくさんあります。
将来世代にとって本当に必要なのは本来の自然を構成する在来種です。
ソメイヨシノという単一種が並ぶまちから、地域在来のさまざまな草木が見られるまちにする必要があります。

※平成29年4‐6月度訪日外国人消費動向調査
「生態特区」で接続可能な地域づくり No.155[2018年01月18日(Thu)]
日本生態系協会 会報「エコシステム」No.155
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自然再生を進めるうえで問題となる「法律にもどづく規制」を改革する方法の一つとして、国に対して直接提案を行うことができる「特区制度」は、有効なしくみです。


自然がつくりあげた私たちのくらし

自然によってつくられた文化と景観

日本は国土が南北に長いことから、地域ごとに気候も異なり、全国各地でそれぞれの自然環境に影響を受けた文化が息づいています。
お正月の飾り、おせちやお雑煮も自然の影響を受け地域ごとに発展をとげています。

鏡餅の下に置く飾りも地域によって、ユズリハやウラジロなどその地域に分布する植物を使っています。
ともすれば何もないと見られがちな日本の農産村地域ですが、その独特の自然や歴史、文化を活かして産業・観光振興を行い、活性化に成功している地域があります。

徳島県上勝町では、どこにでもある葉っぱを料理などのつまものとして販売するビジネスを展開し、町おこしに大きく貢献しています。
埼玉県の飯能市は、観光・エコツーリズム推進課を設置し、伝統的な里山の景観を活かしたエコツアーを数多く展開して町おこしにつなげています。

韓国、中東、南米、欧米諸国など海外からの視察も多数受け入れています。
岐阜県飛騨市の、里山を自転車で巡るツアーでは、ガイドがその歴史や文化を丁寧に説明し、海外の旅行者から人気を得ています。

雇用の創出や外国からの観光客の取り込みといった地方創生を進めるうえでも、日本の多様な文化を育んできた自然は重要な役割を果たしています。

自然の価値を見直す

また、近年の人口減少等によって税収が減少し、費用のかかる従来のコンクリートなどによる大規模な防災施設の維持が難しくなっていくなかで、生態系のさまざまな機能と回復力を活かした防災・減災(Eco-DRR)が注目されています。
町おこしや防災・減災に限らず、日本人のくらしは昔から、自然の恩恵(生態系サービス)を受けています。

世界を見ると、2010年10月に報告書が公表された「自然の恩恵を経済的に評価する国際的な取り組み(生態系と生物多様性の経済学(TEEB))」の試算によれば、生態系の破壊による世界の経済的損失は、進行する生態系の破壊を抑制する対策を取らなかった場合、年間で約162〜365兆円にのぼるとされています。
一方で、熱帯雨林やサンゴ礁、マングローブ林などさまざまなタイプの自然が各国で保護地域に指定され守られていますが、そこから得られる生態系サービスは年間約405兆円にものぼるとされています。

そして、この額の約百分の一、年間約3.6兆円をかければ、これらの保護区を守ることができるという報告がされています。
古代から「豊葦原の瑞穂国」と言われる日本で、湿地は国を特徴づける自然の一つです。

環境省の試算では、全国の湿地が有するレクリエーション等への利用価値だけで年間約106〜994億円にのぼるとされています。
水質の浄化や二酸化炭素の吸収・固定などほかのさまざまな機能まで含めると、年間約8,391〜9,711億円にもなります。

つまり、知らず知らずのうちに私たちは毎年約1兆円分の生態系サービスを湿地から受け取っているのです。
くらしや財産を守るという視点からも、自然の価値を見直す必要があります。

※当時のレート(1ドル=約81円)で計算
空いた土地 使わない土地 No.154[2017年11月14日(Tue)]
日本生態系協会 会報「エコシステム」No.154
−もとの自然を取り戻す −
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人口減少を迎える今こそ、くにづくり、地域づくりの基盤となる自然を、自治体が買い取り、自然再生することが大切です。


人口が減ることはいいことも、困ることも

人口減少も、さまざまな形があります。
また、人口減少から派生する問題や可能性はどこにあるのでしょうか。
国に求められている持続可能なくにづくり、地域づくりの良い機会を迎えます。

人口減少にあわせた社会を

現在、日本では、全国的に少子高齢化となり、また地方ではさらに過疎化という理由も加わり、人口減少が進んでいます。
急速な高齢化は社会保障に関する費用が増えるため、大きな財政負担となります。

社会保障として給付している費用は年間2.6兆円のペースで膨らんでいます。
一方で、少子化に伴う生産人口の減少によって、税収が減り、財政状況が今以上に悪化することが懸念されます。

また、過疎地域のために必要な道路づくりなどを継続しようとすると、その分、国や地方自治体の財政負担も大きなものとなります。
例えば、雪国における市町村道の年間維持管理費は、1kmあたり90万円程度かかります。

このように、地域の人々にとって最低限の生活環境を維持することだけでも、多くのお金がかかります。
ところが、人口が減少していくことで、さまざまな設備を維持し続けるための予算を確保することが、年々難しくなってきています。

現在の日本全体の財政は、不足する税収を補うために借金を重ねることで支えられています。
2016年時点の国の借金は対GDP比で232.4%となっており、2010年以降、危機的な財政に苦しむギリシャの200%よりも高い比率になっています。
このような財政赤字をいつまでも続けていくことはできません。

そのため、社会や経済のしくみや、まちづくりなどの土地の使いかたを、人口減少という現実をふまえ、すぐに考えなおす必要があります。

少子高齢化による人口減少

では、現在の日本における人口減少はどのような状況なのでしょうか。
日本全体でみると、平成17年(2005年)に死亡数が出生数を上回り、以後、同じ状態が続いています。

平成23年(2011年)には死亡数が出生数よりも20万人以上多くなり、その差はさらに開き続けています。

こうした人口減少の一方で、高齢者の割合が高まっています。
2014年現在における、65歳以上の高齢者人口は3,300万人で、日本全体の約4人に1人の割合です。

これが2060年には、2.5人に1人が65歳以上になるとも言われています。
国立社会保障・人口問題研究所の推計によると、日本の人口減少傾向は今後も続き、2053年にはI億人を割り、2065年には約8,808万人(現在の約7割)になると推測されています(出生中位(死亡中位)推計)。

過疎化による人口減少問題

日本全体の人口が減少していることに加えて、都市への人口集中こよる周辺地域の過疎化が進むことが問題となっています。
特に東京圏(埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県)への人口の移動が進んでおり、2016年の東京圏への転入超過は11万7,868人となっています。
2015年および2016年において、人口の転出よりも転入が多かった都道府県は、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、愛知県、大阪府、福岡県の1都1府5県にすぎません。

国上交通省『国土の長期展望』(平成23年2月)によると、2005年に比べて2050年時点で人口が増加するのは、東京や名古屋周辺など全国の1.9%の地点に限られているとされています。
さらに、2005年時点で人の居住のあった地点のうち、21.6%が居住する人のいない場所になると推定されています。

都市部に人口が集中するとともに、現実に、かつて人の住んでいた地域から人がいなくなっているところもあります。

総務省と国土交通省の調査によると、2010年から2015年の5年間で99市町村にあった190集落がなくなったとされています(うち27集落は東日本大震災被災に伴うもの)。
人が住まなくなることで今後10年以内になくなる可能性のある集落は570集落とも言われており、今後も増えていくと考えられます。
大型水鳥と地域振興 No.153[2017年11月13日(Mon)]
日本生態系協会 会報「エコシステム」No.153
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大型水鳥をシンボルにエコネットを構築し、環境と経済が共鳴する新しいまちづくりが全国各地で始められています。


自然との共生がつくり出す風景

自然と共生して暮らしてきた先人たちの知恵が、まちの文化となり、特色ある風景をつくってきました。
しかし、経済発展を求めるなかで、地域らしさを象徴する文化、美しい風景が失われていきました。
外国からの訪問者が増加するなか、自然とともにあった美しい風景を取り戻し、それをまちの活性化につなげていく動きが始まっています。

まち中の風景

日本は南北に長く、気候区分は北海道から南西諸島まで六つに分けられています。
その土地の気候、地形、自然環境が、生活様式に影響し、街並みをつくりあげ、個性となりました。

たとえば夏は暑く、台風が多い沖縄の伝統的な家屋は、強風に耐えることに重きを置いてつくられています。
サンゴでできた石垣、赤土を焼いたオレンジ色の瓦屋根は軒が長く、家は平家で低いなど-。

家の周りに植えられたふくぎが防風林の役割を果たし、また辻々にある緑は、暑さの中で心地よい風を生み出します。
あるいは豪雪地帯の北陸では、重く湿った雪が滑り落ちるよう釉(うわぐすり)が塗られた丈夫な能登瓦が黒々と光っています。

散居村として知られる砺波平野では、雪の吹き溜まりで家が埋もれないよう、垣入(かいにょ)と呼ばれる防雪・防風林が見られます。

ここに挙げたものはほんの一例にすぎませんが、このような地域ごとの特徴ある「風景」は、その地に住む人が自然と付き合いながら生きていくための知恵や工夫から生まれたものでした。
同時にこの特色こそが旅人を楽しませる魅力の一つとなっていました。

しかし近年さまざまな技術が開発され、また、便利さや経済発展を求めるなかで、こうした風景が失われつつあります。

農村の風景

まちの中だけでなく、郊外や農村の風景も変わりました。
かつての農地や農業水路、川は生物の多様性に富み、コウノトリやニッポニア・ニッポンの学名をもつトキといった大型水鳥が、人々とともにくらしていました。

着物や伝統的な工芸品には、しばしば大型水鳥が描かれており、その存在が人にとってとても身近だったことがわかります。

しかし、乱獲のほか営巣木となる大木が切られたり、採食場である水田地帯に毒性の強い農薬が使われるようになったり、田や水路の構造が変わったことで教を減らし、コウノトリやトキのいる風景は、30〜40年以上前に日本から失われました。

近年、地域のさまざまな人が協力し、国とも連携しつつ、自然との共生が生み出したかつての美しい風最を取り戻し、それを経済の活性化など、まちの社会経済面での課題解決につなげていこうという動きがあります。
生きている海岸線 No.152[2017年08月07日(Mon)]
日本生態系協会 会報「エコシステム」No.152
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コンクリートで固められた海岸線とは対象に、エコトーンがあり、さまざまな生きものがくらす海岸線…。
生きている海岸線は命を守り、経済と社会の発展になくてはならないものです。



「生きている海岸線」を取り戻そう

コンクリートではなくエコトーンを

海から陸へと移り変わる海辺のエコトーンは、多様な野生の生きものを育み、豊かな漁業資源の源となってきました。
これらは私たちの文化を育み、美しい景色と共に地域の観光資源ともなり、また同時に高波などの自然災害を和らげてくれる場でもありました。
一方、平地が少ない日本では、波による浸食から国土を守り、新たに広げることが必要とされてきた面もあります。
その結果、波を防ぐ堅い構造物が広範囲に設置され、より海に近い場所まで開発が進められました。
また新たに土地を生み出すために、大規模に埋め立てが行われてきました。
利用可能な土地は、確かに増えました。
しかし、その影で多くの海岸では、海辺のエコトーンは分断され劣化し、あるいは消失し、エコトーンが残る本当の自然の海辺はわずかとなってしまいました。
今、日本の人口は減少に向かい、また温暖化による海面上昇も進みつつあります。
海の前面に設置したコンクリートの構造物は、いずれ確実にゴミになります。
またその前の段階で維持していくのに多くのコストがかかってきます。
私たちは、持続可能な海岸管理を考えていく必要があります。

埋め立てをやめる

まず、産業や農業のために、これ以上、海岸を埋め立てることはやめるべきです。
そして、現在使われなくなった農地や利用されなくなった工業用地は自然に戻していく必要があります。
また、港に出入りする船の航路確保のための土砂の浚渫に対しては、その土砂を活用して干潟を再生する事業が有効な場合があります。
その際は、場所選びを慎重に行い、それ自体も重要な浅瀬の環境の新たな埋め立てにならないよう注意する必要があります。
今後は、長期的な視点から沿岸の土地利用を見直し、維持管理にコストがかかる場所では、かつての埋立地に海の水を引き入れることにより土地を海に帰していくことも考えるべきです。

川と海のつながりを取り戻す

砂浜は、山の土砂が川の流れによって運ばれることにより、また海に面した崖の海岸が波で少しずつ削られることにより、長い時間をかけてつくられます。
しかし、かわにの上流につくられたダムにより、本来は山から流れてくる土砂がダムの中で溜まってしまったり、堤防などの海岸の構造物によって砂が移動しなくなったりすることで、砂浜がやせていく状況が日本の各地で見られます。
今後、ダムの本体の老朽化が進み、維持管理費は増大していきます。
構造物によって土砂も波も「止める」ことを主眼としてきたこれまでのやり方に対して、これからは川から海への土砂の移動、また波による海の中の土砂の移動など、広域での土砂の移動を維持・管理する観点から、砂浜も再生していくことが求められています。
維持可能な地域社会・地域経済をどう実現するかは全国的な課題ですが、海辺の自然再生、すなわち、多様な生きものがくらし、常に変化する「生きている海岸線」を再生することは、その有力な答えとなるものです。
川は治めるから共存するへ No.151[2017年05月31日(Wed)]
日本生態系協会 会報「エコシステム」No.151
−川の法律改正から20年 −
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河川法の目的に「環境」が加えられ、今年で20年の節目を迎えます。
この間、ある一定の成果は得られましたが、取り組みはまだまだこれからです。
50年先100年先を見据えた川づくりが、いま、求められています。



ダムと堤防では守りきれない

気候変動の時代を迎えて
気候変動により、今後ますます高まる水害の危険。
「治める」から「共存する」へと発想の転換が求められる川の現状を見ていきましょう。

鬼怒川の決壊が突きつけた現実

2015年9月9日から11日にかけて発生した「平成27年9月関東・東北豪雨」では、台風17号、18号の影響により、鬼怒川一帯が猛烈な豪雨に見舞われました。
各観測所で既往最多雨量を記録し、全川にわたり急激に水位が上昇しました。
鬼怒川の中流部では堤防が決壊、氾濫した流れは、およそ10km下流の常総市の水海道地区まで到達し、市の約3分の1に相当する約40kuが浸水、常総市では2名の方が亡くなり、約4,300名の住民が救助されました。
家屋の流出、損壊および浸水等、9,000棟近くが被害を受け、浸水が解消するまでに10日間を要するという規模の大きさとなっています。
2016年8月の「平成28年度北海道豪雨」においても、相次いで台風が発生、いずれも北海道に上陸し、東部の札内川や空知川の堤防が決壊するなど大きな被害となりました。
また数年前、広島市で大規模な土砂災害が発生した「平成26年8月豪雨」など、かつては“記録的”とされるような豪雨が、近年では毎年どこかで発生している状況になっています。
今後、気候変動は激化すると予測されており、このような災害はどこでも起こりうることであり、災害規模も大きく、頻度も増えていくと考えられます。
さて、鬼怒川の大水害を踏まえて、平成27年12月に、社会資本整備に関する審議会より「大規模氾濫に対する減災のための治水対策のあり方について」と題する答申がなされました。
それによると、気候変動によりダムや堤防等の能力を上回る洪水の発生頻度が高まることが予想されることから、社会の意識を「施設の能力には限界があり、施設では防ぎきれない大洪水は必ず発生するもの」へと変え、社会全体で洪水氾濫に備える必要があるとしています。

新しい発想と対策

気候変動により、今後高まることが予想される水害リスクに対して、河川法の改正から20年を迎える現在において、以下のような発想と対策が必要だと考えられます。


@発想の転換「治水」から「共存」へ

今後は、ダムや堤防などの施設では防ぎきれない大洪水は必ず発生するものだと意識し、今までの「治水」や「利水」といった川を「治める」という考え方から、私たちの生存基盤である自然の川と「共存」していく、という方向に考えを変える必要があります。

A土地利用の見直しによる対策

私たちはダムや高い堤防をつくることで、川のすぐ近くまで生活の場を広げてきました。
しかしながら、この状況は、鬼怒川のケースのように、ひと度、計画規模以上の洪水が起こると、その被害も甚大になります。氾濫による被害を受けやすい場所には生活空間をつくらず、被害を受けにくい場所に移住や都市機能を徐々に移転するなど、土地利用の状況を考慮した対策が必要です。

B流域全体での対策

今後は、ダムや堤防に頼りすぎず、使われなくなった農地などを湿地に戻してそこに氾濫した水を流す、雨水浸透マスにより雨水を地下に浸透させるなど、流域全体で洪水を受け止めていくような対策が求められます。

ささえが必要な子どもたちにも自然体験 No.150[2017年03月31日(Fri)]
日本生態系協会 会報「エコシステム」No.150
−ビオトープ管理士・こども環境管理士の活用 −
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  • 誰もが必要な自然体験

  • 実践者が語る 特別支援学校で自然体験に取り組む理由

  • 命の大切さを実感する学校ビオトープ

  • 地域の特別支援学校が集う学校ビオトープ

  • 美しい自然と歴史ある修道院で学ぶ

  • 特別支援学校の子どもたちにも充分な自然体験を


思いやる心や豊かな感性を育む自然体験は、障がいのある子どもたちにも新しい発見や生きる喜びをあたえてくれます。


誰もが必要な自然体験

人生や社会にとって必要な感性

私たちが生きていくうえで欠かせない能力の一つに「感性」があります。
感性とはそもそも何でしょうか。

中学校の学習指導要領では、「対象・事象からよさや美しさなどの価値や心情などを感じ取る力」と定義されています。

つまり、豊かな感性があれば、日々の暮らしの中でさまざまな気付きや感動に出会い、コミュニケーションにも良い影響をもたらします。

それは、結果としてより暮らしやより良い社会をつくることにもつながります。

文部科学省の中央教育審議会では、社会や産業の構造が変化していく中、私たち人間に求められるのは、「感性を豊かに働かせながら、どのような未来を創っていくのか、どのように社会や人生をよりよいものにしていくのかを考え、自分なりに試行錯誤し新たな価値を生み出していくこと※」ではないかと言う議論がなされています。

現代において、感性を育むことは人生や社会にとって極めて重要なのです。

豊かな感性は自然が育む

では、豊かな感性を育むために大切なことは何でしょうか。
それは、直接的な体験活動です。中でも、自然体験は感性を最大限に伸ばします。

多くの野生の生きものが織りなす自然は、複雑な系(システム)を形づくり、多様性に富んでいます。
この多様さが、気付きや発見、感動の多さにつながっていきます。

五感を刺激し、感性の発達を促す気付きは、飼育活動や栽培活動、また、農体験だけでは得られません。

こうしたことから、誰もが日常的に自然体験を行えるようにする必要があります。
それは、自力ではなかなか活動範囲を広げることができない障がいのある人でも同じです。

意図的に体験の機会を創出したり、配慮をしたりする必要があります。

家庭で日常的に自然と触れさせようとした場合、手間や労力、適切な場所や時間の確保など、家族の負担が大きくなります。

そのため、障がいのある子どもたちが日中の大半を過ごす、特別支援学校での取り組みが重要になります。

※H28.7.7 中央教育審議会 教育課程部 総則・評価特別部会(第10回)「『社会に開かれた教育過程』の実現と、総則を軸とした教育過程の総体的構造の可視化」における取りまとめより一部抜粋
世界との約束 No.149[2017年01月30日(Mon)]
日本生態系協会 会報「エコシステム」No.149
−環境諮問会議の創設を −
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接続可能な国をつくることは世界との約束。
環境と経済の両立こそが健全な日本へのただ一つの道です。


国土全体で自然環境の保護・再生を

いろいろな省庁がそれぞれ国土を管理

重要な自然、具体的には野生の動物や植物を守る仕事は、国レベルでは環境省の仕事とされています。
例えば、環境省が運用を担当している「自然環境保全法」では、原生的な自然として奥山を中心に国内15か所を原生自然環境保全地域などに指定し、開発されないようにしています。
また同じく「絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律」では、175種類の動植物を国内希少野生動植物種に指定し、捕獲や採取がされないようにしています。
一方で環境省が2015年に発表した資料では、3,596種もの野生の生きものが絶滅のおそれがあるとされています。
準絶滅危惧種なども含めると5,643種にのぼりますが、これらの生きものが生息・育成している場所は、奥山の保護区域ばかりではありません。
例えば絶滅のおそれのある汽水・淡水魚類の多くは里地里山・田園地域に生息しています。
また、藻場・干潟・砂浜などの沿岸地域も生態系の中で多くの生きものを支える大切な場所となっています。
保護地域でない場所も同様に重要なのです。
こうした場所でどのように自然を守るのか、またどの場所を利用するのかなど、土地利用の仕方がとても重要になりますが、国土の約66%を占める森林については林野庁が、また国土の約12%を占める農地については農水省が政策を考えています。

省庁ごとの取り組み

1997年に改正された河川法では、川の自然環境を保護・再生することが、治水や利水とならんで重要な目的と位置づけられました。
この河川法改正に代表されるように、現在、多くの省庁で野生の生きものへの配慮が始まっています。
森林については現在、地球温暖化をやわらげたり、土砂災害を防いだり、希少な野生の生きものを守ったりする多面的な機能が発揮されるような森づくりが始まっています。
農地についても「多面的機能の発揮」と言う言葉が使われ、農地を生息の場とする野生の生きものを守る取り組みも始まっています。
しかし、森林にせよ農地にせよ、省庁にはそれぞれの土地利用に目的や目標があります。
人口減少・高齢化の時代を迎え、管理できなくなった人工林や農地を自然に戻していくというような大局的な考えはなく、そうした場所での自然再生について環境省がリーダーシップをとって進めることもできません。
地球サミットから四半世紀が過ぎましたが、こうした背景もあり、自然を保護・再生する取り組みのスピードは遅く、日本の自然環境をめぐる危機的な状況はほとんど改善されていません。
地方創生 No.148[2016年12月06日(Tue)]
日本生態系協会 会報「エコシステム」No.148
−自然を再生して活かす −
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  • 新しいまちづくりの機会が到来

  • 地方が抱える課題

  • 自然の機能を活かしたグリーンインフラ

  • 地方にあるものを磨く

  • 資源をつむいで高める地方の魅力

  • 豊かな自然で地方創生を


人々のくらしを接続可能なものとしていくためには、中長期的な視点に立ったまちづくりのビジョンが必要となります。
そのためには、その地域本来の自然を守り育てていくことが重要です。


地方が抱える課題

日本では赤字財政が続き、国と地方を合わせた借金の額は平成26年には1,000兆円を超え、なおも毎年30兆円を超えるペースで借金の額が増え続いており、決して、持続的な経済とは言えません。
これからのまちづくりにおいて、これまでのように人工構造物に偏ったインフラ整備を続けていては、維持・管理のために財政負担がさらに増え続け、かえって地方の負担が増えてしまいます。

危機に瀕まる国や地方の財政

平成26年度(2014年度)には、教育や福祉などの歳出を歳入でまかなうことができない「赤字」状態の都道府県や市区町村はありませんでした。
では、本当に地区自治体にとっての財政危機は存在しないのでしょうか。
平成25年度の市区町村の経常収支比率をみると、80%を超えている自治体が全体の約9割(1,488自治体)を占めています。
経常収支比率とは、収入に対して、人件費や公債費などの必ず支払いをしなければならない支出がどれだけの割合であるのかを示すものです。
一般に、市の経常収支比率は75%程度が望ましいとされ、80%を超えると財政構造は弾力性失いつつあると評価されます。
経常収支比率が高いということは、その分、財政が硬直化して、政策などで自治体が自由に使えるお金が少なくなり、地域活性化のための取り組みのような新規の事業実施が難しくなるとともに、社会や経済状況の変化などのような新たに生じる問題への対応が低下していることを意味します。
ほとんどの地方自治体は、財政的に余裕があるわけではないのです。
また、内閣府が2016年8月に発表した報告書『地域の経済2016』によると、高齢化によって働き手が減少するとその地域の生産力・供給力は低下する一方で、食費の支出などの需要の低下はそれほど減ることはないため、2030年度には38道府県で、消費のような需要の方が地域の生産能力よりも大きくなり、生産力が赤字となると推測されています。
さらに、経済活動の変化は地方の税収額にも影響します。
現在、地方自治体間の財源の不均衡を調整し、すべての地方自治体が一定の水準を維持しうるよう財源を保障する見地から、国が税金を徴収して、そのお金を地方に再分配する地方交付税制度が実施されています。
上述の内閣府の報告書によると、地域の差が大きくなることで、2030年には現在の1.5倍の地方交付税が必要となると推測されています。
一方、国の債務は急速に増加を続けており、2015年の政府総債務残高は対GDP比で248%となっており、世界で最も深刻な債務国となっています。
政府総債務残高の対GDP比率で世界第2位のギリシャでも178%に過ぎません。
借金を重ねることで、現在の日本の財政はかろうじて支えられているのです。
このような社会情勢の変化や財政事情なども考慮して、それぞれの自治体はどのように持続可能な地域社会をつくっていくのかを模索していく必要があるのです。

地方が抱える問題

現在、多くの自治体では、住民サービスの確保と財政問題対策の両立に頭を悩ませています。
今後、財政悪化に伴う住民サービスの質の低下をきっかけにして、自分が住む地域に魅力を感じなくなった住民が、より魅力的なせいかつかんきょうを求めてほかの自治体に転出するケースが増えることが懸念されます。
ほかの自治体への人口流出が進むと、自治体の財源(税収)が減少し、それに伴う住民サービスの低下、さらには、そのことが住民の転出をさらに加速させる、といった負の循環に陥る可能性もあります。
また、人が減ることで、管理のされない土地が増える可能性も懸念されます。
人口の減少などの理由で放置されたり、所有者がわからなくなる土地は30年間で約300万haに上るとも言われています。
このような土地をいかに持続的な形で維持・管理していくかが大きな課題となっています。

重い財政負担となるグレーインフラ

人々が暮らしていくためには、インフラの整備も必要です。
しかし、コンクリートなどの地下資源を利用してつくったグレーインフラは、建設時点だけでなく、維持・管理にも継続して費用を必要とし、自然環境や景観への影響も懸念されます。
さらに、耐用年数を超えたグレーインフラは、いずれ解体処分をする必要があります。
例えば、コンクリートの耐用年数は50年〜60年程度とされています。
仮にコンクリートでインフラをつくったとしても、徐々に老朽化することで機能が低下し、いずれは解体撤去を行わねばなりません。
総務省が全国の自治体を対象とした平成25年の調査では、解体撤去の意向のある公共施設の数は全国で1万2,251件で、平均築年数は41年、費用は4,039億円程度(1件当たり約3,500万円)となっています。
グレーインフラをつくる際には、いずれ解体撤去を行い、大量に生み出されるゴミを処分したうえで、同じものを新たにつくることが可能かどうかを考える必要があります。
このように、グレーインフラをつくる際には、いずれ解体や撤去のような、後始末のための負担が生じることを考慮する必要があります。
さらに解体・撤去の後に生じるゴミの処分も考えなければなりません。
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