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2019.06.10
企画展 新河岸川流域のみらい
荒川知水資料館で新河岸川をテーマにした企画展を開催します



2019.06.03
アルバイトの募集
「森の墓苑」の管理スタッフと総務事務アシスタントを募集します。



日本生態系協会では、隔月で会報「エコシステム」を発行しています。
自然と伝統に囲まれた美しいまちと、子どもたちの笑顔が輝く暮らし。
日本をそんな持続可能な国にすることが、私たち(公財)日本生態系協会の目標です。
その目標のために、持続可能なまちづくりに関する提案活動、ビオトープの調査・研究、普及啓発などを行っています。

会報エコシステムでは、日本生態系協会が調査した結果や、日本国内・海外の生物保護・環境保護の活動などに関して、最新の事例を紹介しています。

このブログではエコシステムの一部を紹介させて頂きます。
すべての内容をご覧になりたい方は、会員登録をお願いします。
協会の会員制度について
昆虫がいない No.163[2019年06月12日(Wed)]
日本生態系協会 会報「エコシステム」No.163
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  • 激減する昆虫

  • 昆虫がいなくなると

  • 減少の要因
    自然地の破壊
    光害
    農薬による影響

  • 日本でも昆虫を守る行動を


日本中で、そして世界で激減している昆虫。
姿は小さくても、生態系のなかで担う役割はとても大きいのです。
日本でも昆虫を守るための法律や行動計画が必要です。



昆虫がいなくなると

自分の知らないところで昆虫がいなくなったとしても生活には影響がない・・・と思う人も多いのではないでしょうか。
ところが、昆虫は生態系のなかで重要な役割を担い、私たち人間の食べものから文化まで密接な関わりがあります。

植物や動物への減少の連鎖

昆虫は、現在知られているだけでも世界で100万種を数え、地球上に生活する生物の種の大半を占めています。
まだ名前がついていない多くの種や未発見の種も含めると、その数はさらに2〜5倍になると考えられています。
日本だけでも3万種以上の昆虫が記録されていますが、実際にはその同数かそれ以上が未発見であると推測されます。

このように膨大な種数を誇る昆虫は、熱帯から寒帯、低地から高山まで、深海を除く地球上のあらゆる場所に進出し、さまざまな地域、地域ごとの多様な環境にくらしています。
−65℃以下になる南極、乾燥した砂漠、油田にくらす昆虫もいます。
そして、それぞれの環境にくらす植物や動物と相互に関わり合いながら生きています。
昆虫は、地域の生態系のなかで、消費者や分解者として、きわめて重要な役割を担っているのです。

昆虫がいなくなったら、どのようなことが起きるのでしょうか。
多くの植物は、昆虫によって花粉が運ばれ子孫を残しています。
また、多くの動物が昆虫を食物としています。
昆虫がいなくなってしまうと、これらの植物や動物は生き残ることができなくなり、その影響は次々に連鎖していくと考えられます。

私たちの暮らしと昆虫との関わり

私たちの生活と昆虫との間にも、さまざまな関わりがあります。
人類の長い歴史のなかで、ミツバチやカイコなどの昆虫は大きな恵みをもたらしてきました。
蜂蜜の採取や絹糸の生産は、現在も養蜂業や蚕糸業として営まれています。
また、カイコの蛹やイナゴ、ハチの幼虫など、さまざまな昆虫が食用とされてきました。
昆虫はタンパク質やミネラルを豊富に含むことから、食料としても有望であると考えられています。

私たちが食べている農作物や果樹の多くは、野生のハナバチやハナアブの仲間、飼育されているミツバチなどの昆虫によって、送受粉がなされています。
昆虫は、農作物や果樹の栽培に不可欠な存在です。
また、農作物や果樹を害する生きものを捕食したり寄生したりする昆虫も天敵として重要です。
近年では、昆虫の優れた機能や形態などを模倣するバイオミメティクス(バイオミミクリー)の研究が盛んに行われるようになってきました。
例えば、昆虫の微細な構造による発色(構造色)を利用した繊維、蚊の口針を模倣した医療用の無痛注射針、スズメバチが生産するアミノ酸化合物由来の脂肪燃焼ドリンクなどが実用化されています。
昆虫は、文学や芸術、教育、娯楽にいたるまで私たちの文化とも深く関わっています。
日本では古来、初夏の蛍狩りや秋の虫聴きなどで昆虫と親しんできました。
万葉の時代から現代まで、昆虫を詠んだ俳句や短歌は数多く知られ、音楽や絵画にも取り上げられています。
また、昆虫は私たちの身近な生きものとして、教材としても有用です。

このように、私たちは昆虫から多大な恩恵を受け続けてきました。
将来にわたって私たちが幸せに暮らすには、昆虫からのさまざまな恵みが必要です。
昆虫がいなくなれば、私たちや将来世代の幸福な暮らしも成り立たなくなります。
日本をこわす外来の生きものたち No.162[2019年03月22日(Fri)]
日本生態系協会 会報「エコシステム」No.162
−経済にも大きな影響 −
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私たちの活動に伴って持ち込まれた外来種が、生態系や地域の産業、文化にも影響をおよぼしています。
持続可能な地域をつくるために、さまざまな立場の人が連携・協働する必要があります。



私たちの暮らしにおよぶ外来種の影響

110兆円にのぼる外来種による被害

今、世界各地で外来種による問題が起こっています。
私たち人間の活動に伴って持ち込まれた外来種が、在来の野生の生きものを減少させたり、農林漁業、観光業など経済や人の健康を脅かしたりしています。
2010年に公表されたIUCN(国際自然保護連合)の報告書※1 によると、外来種による全世界の被害総額は、推定で1兆4千億ドル(当時の日本円で約110兆円) にのぼっています。
国際的に深刻な問題となっており、外来種によって引き起こされる被害を防止することが求められています。

日本国内での外来種の影響

日本国内でも、外来種によって私たちの暮らしにもさまざまな影響が懸念されています。

農業への影響

2018年に農林水産省が公表した資料※2によると、アライグマによる全国の農作物被害金額は2017年度に3億2,000万円でした。
レンコンが特産品の徳島県鳴門市では、アカミミガメがレンコンの新芽を食害することによる被害額を1,500万円と算出しています(2011年公表)。
また、西日本を中心に分布が拡大しているスクミリンゴガイ(通称:ジャンボタニシ)は、水田の若いイネを食害します。
これまで、2005年に沖縄県石垣市では2,000万円、2010年 に岡山県南部では1,600万円の 被害総額が推定され、分布地域全体で膨大な金額となることが容易に想像できます。

観光業への影響

日本は、海に囲まれた島国で南北に長いことや、複雑な地形であることなどにより、野生の生きものの種数が多く、固有種(特定の限られた地域にのみくらす種)も多く見られます。
特に南西諸島や小笠原諸島には、地域固有の遺伝子を持った種が多く生息、生育しており、これらを活かした観光業が営まれています。
外来種によって競合や遺伝子汚染が起こり、固有種が失われれば、長い間かけてきた進化の歴史がなくなってしまいます。
自然観光資源をもとに地域振興を目指す日本にとって、悪影響をもたらします。
実際、小笠原諸島はグリーンアノールなどの外来種問題を数多く抱え、島の固有の生きものの生息、生育が危ぶまれていたことから、世界自然遺産への登録が円滑には進みませんでした。
防除が進んだことで、2011年に世界自然遺産に登録され、2010年度まで2万人前後だった観光客が、2011年度以降、2013年度まで3万人以上に増加し、その後も2万5千人前後の観光客が訪れています。

治水への影響

河川の堤防一面に、セイヨウアブラナやセイヨウカラシナが黄色い花を咲かせている光景を見たことがある人は多いことでしょう。
これらは、通常一年草で、地上部とともに地下茎か枯れるため、堤防に隙間ができ、堤体の弱体化を招くとされています。
もし、大洪水により堤防の決壊が起きた場合、人の命を脅かす災害を生む可能性もあります。
また、その被害額ははかり知れません。

文化財への影響

アライグマが木造の神社や寺院などへ侵入し、屋根裏での糞尿、建造物や美術工芸品の破損といった被害を起こしています。
これまでに40都道府県で被害が確認されており、京都府や奈良県では国宝や重要文化財への被害も報告されており、深刻な問題となっています。

※1:1UCN (2010) Invasive species and climate change form a 'deadly duo', warn top scientists
※2:農林水産省(2018)全国の野生烏獣による農作物被害状況
世界を平和にみちびくチベットの人々 No.161[2019年03月21日(Thu)]
日本生態系協会 会報「エコシステム」No.161
−持続可能な生き方−
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  • チベットの人々の、自然とともにある暮らし

  • チベットの暮らしの根底にあるもの

  • 日本に息づく自然観 自然・生きものに対する敬意

  • 地球の限界を超えたわたしたちの暮らし

  • 新しい時代にふさわしい 自然に寄り添った生き方


広大な草原で身の丈にあった伝統的な暮らしをおくるチベットの遊牧民の人々。
一つしかない地球の一員としての責任を持ち、持続可能な生き方を探すとき、チベットをはじめとする自然とともに培った伝統的な知恵と文化は、さまざまな手がかりを与えてくれます。



チベットの暮らしの根底にあるもの

伝統的な 暮らしが今も続けられているチベット。
チベットの人々に根差すものは何なのでしょうか。
人々との出会いの中で、チベット高原ならではの自然のもと、長い年月をかけて培われてきた価値観や独自の文化を垣間見ることができました。

厳しくもろい自然、そこでの暮らし

「世界の屋根」と称されるチベット高原は、総面積約250万kuのユーラシア大陸の中央に広がる世界最大級の高原です。
南にヒマラヤ山脈、北はクンルン山脈などに囲まれ、高標高のため寒く乾燥し、気温差が大きく1日の中に四季があると言われるほどです。
またこの厳しい気候に適応した地域固有の動植物が数多く生息・生育しています。
黄河、長江、メコン川、インダス川など大河の源流を有することから、「アジアの給水塔」とも呼ばれています。

かつては、豊かな草原や、特に南部や東部では原始の森が広がっていましたが、近年深刻な自然破壊が進んでいると言われています。
森林は乱伐により、1950年の面積2,520万haから、1985年には1,357万haと約半分にまで減少しました。
また森林や草原の劣化によって、土壌流出や、砂漠化、動植物の絶滅などが危惧されています。
寒冷で乾燥した環境での森や草地の再生は困難であるため、チベット高原の自然破壊はより深刻と言えます。

とはいえ、中国の国務院報道弁公室が2018年に発表した白書「チベット高原における生態文明建設状況」には、「希少野生動物が自然に生息している場所で高原生物種の遺伝子バンクであると同時に、中国ひいてはアジアにとって重要な生態安全バリアでもある」とされ、チベット高原は依然として、地球で最もクリーンな地域の一つであることが記されています。

チベットの人々は、厳しくも豊かで、そして脆い唯一無二の自然を生き抜くなかで、この土地に合った募らし方や生活文化を築いてきました。そしてそれは今もなお強く息づいています。

無用な殺生はしない

慈悲深いと言われるチベットの人々。
テーブルに虫がとまっていたらどうするかを聞いてみると、ほとんどの人が追い払うだけで殺さないと答えます。
赤ちゃんを連れたある若い男性は、「大人は絶対に殺しません。子どもが殺そうとしたら、学校や家族の大人が、命あるものは平等で大切であることを教えます」と話しました。
カム地方の小さな街では、車に礫かれないようにと、毎朝、道路の虫たちを手で拾い、草原に戻す人たちにも出会いました。
チベットの人々は昔から自分より他人や生きものを大切にする利他の精神を持っていました。
さらに、すべての命は死ぬと別の人間や生きものに生まれ変わる輪廻転生という仏教の考え方も加わり、命を大切にする習慣が先祖代々身についているのです。

チベットの人々の心を支えるもの

チベットの人々は聖地巡礼に熱心な民族だと言われています。
チベットには多くの聖地が存在し、中でもチベット自治区の中心の街ラサには、ベチット高原全域から巡礼者が訪れます。
ジェクンドの近くで出会った4人組の家族は、チベット高原北東部の甘粛省から巡礼の旅を続けていました。
4人のうち2人は初めての巡礼で、ーか月前に出発したと言います。
ジェクンドから巡礼の目的地ラサまでは約1,000kmほどの道のりがあります。
おそらく、これからさらに1か月以上歩き続けるのでしょう。

私たちと話している途中、4人は通りかかった車を止めました。
少し話をして、その車に4人分の大きな荷物を乗せると、車は4人を置いて走り去りました。
知り合いかと尋ねると、初対面だが、荷物を15km先の町まで運んでもらうよう頼んだと言います。
4人が休んでいた道ばたのテントも、自分たちで用意したものではなく、目の前に住んでいる人が巡礼者のために立てたものでした。
チベットの人々にとって、巡礼者に対して協力することはごく当たり前の習慣になっているのです。

チベット仏教特有の祈りの形式に「五体投地」があります。
合掌した手を額、喉、心臓の三か所につけたのち、うつぶせになり、また立ち上がり、自分の身の丈だけ足を踏み出す一、これを繰り返しながら祈ります。

聖地では、五体投地をして祈るチベットの人々を多く見ます。
また、人々の祈りは、さまざまな形で風景の中に見ることができます。
多くの寺院はもちろんのこと、川の両岸に積まれた経文などが彫られたマニ石や、山の中腹に無数にはためく、タルチョという経文が書かれた五色の旗も、人々の祈りの形の一つです。
政治的に複雑な問題を抱えるなかでも、伝統的な価値観や考え方、そして人と人との支え合いが見られます。
これからのゴルフ場 No.160[2018年11月28日(Wed)]
日本生態系協会 会報「エコシステム」No.160
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  • 自然破壊の代名詞だったゴルフ場

  • ゴルフ場は生きものにやさしいの?

  • 生物の多様性を守るゴルフ場とは?

  • 生物多様性保全に力を入れる

  • ドイツのゴルフ場

  • 地域の人々に愛される自然豊かなゴルフ場


自然破壊の代名詞とも言われてきたゴルフ場。
数十ヘクタール規模の広大な敷地は、その利用や管理の内容によって、地域の生態系ネットワークを強化するものにも、健全な地域づくりにも大きく貢献できます。



自然破壊の代名詞だったゴルフ場

自然破壊や農薬汚染が全国的問題となったゴルフ場開発

かつて、ゴルフ場は自然破壊の代名詞のように扱われていました。
それは、ゴルフ場開発のために森林伐採や地形改変が行われ、芝生維持のために散布される農薬や化学肥料が周辺に流出して水が汚染されるというイメージのためです。

実際、1980年代から1990年代には各地でゴルフ場開発に反対する市民運動が立ち上がり、関連するシンポジウムや書籍も多数、開催、出版されました。

失われた森などの面積は東京23区以上

ゴルフ場開発によって、どれほどの自然が失われてきたのでしょうか。
はっきりとしたデータはありませんが、国が出している地図情報をもとに試算したところ、現在ゴルフ場のホール(ゴルフをプレーする区域)として利用されている部分の合計面積は全国で約13万haでした。

ゴルフ場開発がブームとなる直前の約40年前にその場所がどうだったか調べてみると、森林が約7万ha、湖沼・河川が約1,700ha、荒地(草はらや湿地帯)と水田がそれぞれ約4,000haなどであり、建物用地はわずかに300ha程度、畑やその他用地は約5万haでした。

つまり、日本ではこの40年の間に、ゴルフ場開発だけで東京23区の1.3倍ぐらいの面積に匹敵する8万ha程度の森林や湿地などが失われたことがわかりました。
建設後、ゴルフ場内に、まったく異なる地域の植物や園芸種が導入される例も多くあります。
波力発電 No.159[2018年10月18日(Thu)]
日本生態系協会 会報「エコシステム」No.159
−海のエネルギーが地域を豊かにする −
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  • 持続不可能なエネルギー戦略

  • 海という貴重な資源

  • 波力発電をめぐる課題

  • 波力発電に関わる国の支援

  • 地産地消エネルギーで地域活性化

  • 賢い海の利用を


周りが海に囲まれた日本において、有望なエネルギー源と考えれるのが海のもつ波の力です。
自然を壊さず、地域に利益をもたらす再生可能なエネルギー源として、波力発電の技術開発を進めていく必要があります。



海という貴重な資源
電気などのエネルギーを安定して確保できるようにすることは、日本の大きな課題の一つです。
日本が持つ貴重で大きな資源である「海」を、持続可能な社会の実現に向け、どのように利用していくのかを考えていく必要があります。
長い海岸線をもつ日本で波の力を有効活用することができれば、多くのエネルギーを生み出す財産になります。

世界中で進む海を利用した発電方法

海が持つ力は非常に大きなものです。
現在、潮汐や潮流のように、さまざまな海の力を発電に利用する取り組みが進んでいます。
海の力の中でも、とくに、暮らしに近い場所で得られるエネルギーとして、「波の力」があります。

1989年の運輸省港湾技術研究所(当時)の調査資料によると、「日本周辺の波パワーの総平均量は3,600万kW」にものぼります。
仮にこのエネルギーをすべて電力に変えられれば、1年間で3,154億kWhとなり、日本の総発電量(平成28年度は1兆444億kWh)の約30%にもおよびます。
実際は、波エネルギーをすべて発電に利用できるわけではありませんが、その一部を利用できるようになるだけでも、地域にとっては大きな財産となります。

波力発電の大きなメリットの一つとして、同じ面積当たりで得られるエネルギーの量が大きいことが挙げられます。
同じ面積から得られるエネルギーで見た場合、波力は風力の約5倍、太陽光の20〜30倍もの力があると言われています。

また、波は常に発生していることから、時間帯などによらず安定して発電ができることもメリットとして挙げられます。

海という資源に囲まれる日本

日本は海まで含めてみた場合、世界でも非常に広い国であるという特徴があります。
日本の海岸線の長さは、世界第6位の3万3,889kmで、アメリカやオーストラリアよりも長い海岸線を持っています。
こうした国土の特徴を活かして海の力を利用することで、多くのエネルギーを生み出すことができます。

また、日本人は昔から、海を利用してきました。
日本には2,866もの漁港があり、現在も多くの人々が海とかかわりながら暮らしています。
つまり、海は、電気を必要とする生活の場に近いという利点があります。

陸地が狭い日本には資源がないとよく言われます。
しかし、持続可能な社会を実現するためのエネルギー源はすぐ近くにあるのです。

波力発電の歴史

波力を使った発電方法は、非常に古くから研究が進められてきました。
フランスでは1799年に特許申請が出されています。
実際の発電の事例としては、1910年にフランスのボルドーに近い海岸に出力1kWの波力発電機が取り付けられたことが最初です。

日本でも1964年に開発された、船が安全に航行するための目印となるブイ(益田式航路標識用ブイ)の電源として波力発電は活用されています。
今や、波力を電源とするブイは、世界中に広がっています。

国内でとくに関心が高まったのは、1970年代に国際的な紛争の影響で世界的に石油の価格が上昇した時期(オイルショック)です。
その際、エネルギー不足への危機感を背景に研究が本格化し、1978年、本格的な波力発電の実証実験が始まりました。
しかし、石油価格が安定してからは消極的になり、2003年以降しばらくは大規模な波力発電の実証実験は途絶えました。

その後、地球温暖化の問題が深刻化するのに伴い、波力発電の開発も再開され、2016年10月には、岩手県久慈市の久慈港に、防波堤を利用した実証実験設備である「久慈波力発電所」が設置され、日本で初めての波力発電の商業運転が行われました。

このほかにも、福井県越前町において、海岸の岩場を掘り取って潮吹き穴を開け、その中で波の動きが引き起こす風を使って発電を行うブローホール型の波力発電の実験が行われています。
そこで得られた電力は、電気自動車の充電に使われるなど、実用に向けた取り組みが進んでいます。

日本では波力発電の本格的な商業利用はいまだ実現していませんが、今後の発展が期待されます。
海の恵みを拒絶する日本の復興 No.158[2018年07月12日(Thu)]
日本生態系協会 会報「エコシステム」No.158
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  • 海岸線に延びるコンクリートの防潮堤

  • グレーインフラでは将来世代の暮らしを守れない

  • コンクリートが好きな日本人

  • 津波災害からの復興と再建

  • 自然を取り戻す世界の沿岸

  • 宝の海と生き続ける


コンクリートの堤防に1兆4000億円、これが日本の復興。
自然との共存、それが世界の復興です。


宝の海と生き続ける

海と折り合いをつける

悠久の昔から、豊かな恵みをもたらしてきた宝の海。
時にまちを飲み込み、尊い命を奪う畏れの対象にもなってきました。
国は、四方を海に固まれた国土を守ることを目的として、潮や砂の流れ、地形などをもとに海岸線を71に区分し、すべての海岸で、都道府県が海岸保全基本計画を策定しています。
港はもちろん、海に面してまちや農地などがある場所では、海岸線に人工的な構造物をつくり、津波や高潮、高波などから防護する、ということが基本となってきました。

しかし東日本大震災では、海岸線につくってきた防潮堤を、津波は軽々と乗り越え、多くの命と資産が失われてしまいました。
人間が自然をコントロールし抑え込もうとしても、その猛威の前にはなすすべがないと、あらためて思い知らされたのです。
ようやく国は、海岸線で防護する、というこれまでの考え方を転換しつつあります。
東日本大震災のような、数百年から千年に1回程度の頻度で発生し、甚大な被害をもたらす最大クラスの津波に対しては、防護だけでなく避難を軸に、高台へ早く逃げるためのルートや施設をつくったり、まちの高台移転を含め、海に近い場所の土地利用を見直したりして、海辺の地域全体で対応しようという方針です。

ただ残念ながら、海岸線自体の考え方は変わっていません。
全国一律に、防潮堤をさらに高く分厚くするという姿勢です。
被災地で建設が進む防潮堤は、これまで以上に、まちと海を隔てる巨大な壁となり、景色は一変しました。
肝心の海が見えなくなり、海とともに暮らしてきたまちらしさが失われ、人々の心は、海から、そしてまちから離れつつあります。
命を守るためにと防潮堤をつくっても、防潮堤の背後のまちから人がいなくなってしまっては、元も子もありません。

大事なことは、津波のおそれがある場所から遠ざかり、海辺の地域でそれぞれに培われてきた風土や生業、歴史や文化を活かして、これからも住み続けたい、訪れてみたいと思えるまちをつくることです。
海と折り合いをつけながら、賢くしなやかに暮らしてきた先人の経験や知恵が、重要な鍵となります。

自然の盾で、将来に渡って命と暮らしを守る

コンクリー卜でつくった防潮堤の寿命は、数十年から百年です。
次に津波が来る時まで持たないのです。
一方、多様な生きものを育む海岸の自然には、激しい波のエネルギーを弱めて穏やかにする働きがあります。
しなやかで厚みのある自然の盾となり、大きな防災・滅災効果があるのです。
また、豊かな水産資源をすることに加え、美しい自然は地械の魅力や価値を高め、観光の目玉にもなるので、地域の経済を支える基盤とも言えます。
子どもたちや将来の人々のことを考えたとき、海岸にもともとあった湿地や樹林、砂丘、砂浜、干潟、藻場などを再生し効果的に活用することが、将来に渡り海辺のまちで生き続けるための条件となるはずです。

海岸の自然は、自然の作用が生み出す地形や生態系なので、回復力もあり、維持管理の費用は少なくて済みます。
一方、海岸から流域に目をやると、川にはダムやたくさんの堰(せき)があり、砂の供給や移動が妨げられています。
自然の盾が機能するためには、合意形成をしながら人工的な構造物を撤去し、自然の営みを取り戻すことが不可欠です。

津波の被災地における教訓を絶対に無駄にしてはなりません。
沿岸の土地利用の制限や補助金の活用によるまちの移転など、あらゆる政策を駆使して、宝の海と共存するしなやかなまちをつくり直し、世界が求める持続可能な地方創生を果たすことが、今を生きる私たちの使命です。
渡り鳥が減っている No.157[2018年07月11日(Wed)]
日本生態系協会 会報「エコシステム」No.157
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  • 世界の環境を見ている渡り鳥

  • 7割が渡り鳥

  • 狭まる生息環境

  • 渡り鳥が求める自然環境

  • 欧米における国境を越えた取り組み

  • 世界共通の財産を守る


自分の翼だけで、壮大な旅を続ける渡り鳥。
その貴重な鳥たちの生息地を打ち壊した日本。
干潟、草地、森の再生が今、求められています。


7割が渡り鳥

私たちが国内で見る鳥のうち約7割が渡り鳥です。
どのような鳥がいて、またどのような環境を必要としているのでしょうか。

国境を越える季節

四季の変化がはっきりしている日本では、季節によって北へ南へと移動する多様な渡り烏を見ることができます。
例えば、春には、前述したツバメが、東南アジアからやってきて子育てをします。
無事に巣立ったヒナは、数か月後にはすぐに一人前になり、秋には東南アジアへとまた海を越えて戻っていきます。
初夏の森には、同じく東南アジアから渡ってきたオオルリの美しい声が響きます。
春と秋には、シギ・チドリの仲間たちが繁殖地であるシベリアと、越冬地である東南アジアやオーストラリアなどを行き来する途中で、栄養補給や羽を休めるために日本に立ち寄ります。
トウネンという小さなシギの仲間は、体重がわずか25g程度しかありませんが、そんな小さな体で、往復2万km以上という距離を移動します。
冬になると、短い夏に豊富な食物に恵まれるロシアなどの北の国で子育てを終えたカモやガンの仲間などが、巣立った若鳥を連れて日本にやって来ます。
そのほかにも、日本国内で山地から低地へ移動するような、小規模な渡りをする鳥もいます。

日本で確認されている鳥のうち約7割もの種が、何らかの形で渡りをしながらくらしています。

渡り鳥が必要とする環境

季節によって生活する場所を変える渡り鳥たちには、子育てをする繁殖地、冬を過ごす越冬地、移動する間に休憩場所として立ち寄る複数の経由地が必要で、どれか一つでも欠けてしまえば生きていけません。
また、それぞれの地域で必要とする環境も種によってさまざまです。

例えば、タカの一種であるサシバは林と水田が一体となっている里地里山に好んで生息しますが、カモたちは河川や湖沼に、シギ・チドリたちは干潟や淡水湿地に飛来します。
渡り鳥全体を見ると、森、湿地、河川、湖沼、干潟などの自然環境に加え、水田、畑など、人聞に近い環境を利用する種もいます。
多様な渡り鳥たちの生活を支えるためには、日本各地で多様な環境がしっかり守られている必要があります。
お花見の姿〜ソメイヨシノの弱み〜 No.156[2018年04月06日(Fri)]
日本生態系協会 会報「エコシステム」No.156
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  • 画一性より多様性

  • お花見も多様に楽しむ

  • 大量植栽が生みだす問題

  • 自然との共存を目指した並木

  • 在来種によるエコロジカル・ネットワークを


桜は日本の春の代名詞な存在ですが、将来のまちに本当に必要とされるのはサクラ並木ではなく、さまざまな在来な植物によって取り戻された自然の生態系です。


画一性より多様性

春の観光の柱、サクラ

今年もサクラの季節がやってきます。ソメイヨシノがあたりを美しく薄紅色に染める時期は、日本の四季のなかでも最も心躍る時期であるという人も多いことでしょう。
今やサクラの人気は世界的なものです。
サクラの美しさそのものに加えて、いわゆる「お花見」‐咲き誇るサクラの下でにぎやかに飲食する‐が、日本独特の風習として海外にも広く知られるようになっています。

訪日外国人の数は大幅に増加を続けていて、この10年間で約2倍になっています。サクラの季節である3月から4月は夏のバカンスシーズンと並ぶ人気のシーズンとなっていて、4月だけで250万人以上が日本を訪れています(日本政府観光局調べ、2017年月別訪日外客数)。
日本を訪れる人たちは1回の滞在で1人あたり平均13万円ほどを支出し、日本の経済に貢献しています。

さらに、お花見シーズンを含む4月から6月にかけて日本を訪れた観光客に観光庁が実施したアンケートの結果によると、お花見などの「四季を体感できる活動」を「今回した」人の割合は21.6%。一方で、そのような活動を「次回したい」と答えた人の割合は29.7%と、より大きな割合となっています。
大多数の訪日外国人たちが体験する「日本食を食べる」、「ショッピング」などは「今回した」人の割合に比べ「次回したい」と回答した人の割合が大幅に少なくなることとは対照的な結果です。
日本の春は、外国人たちにとって非常にエキゾチックかつ魅力的なもので、次こそは楽しみたい、あるいは何度でも楽しみたいものと思われているようです。

特に最近はSNSの発達もあり、一面に咲き誇るサクラの名所を訪れるだけでなく、サクラに彩られた田園風景や、歴史や伝承をもつサクラを探訪し、背景にある物語をサクラのある風景と共にインターネット上に掲載するなど、外国人たちによるサクラの楽しみ方が急速に多様化しているようです。
お花見の文化を発達させてきた日本人自身はもちろんのこと、外国から訪れる観光客にとっても、サクラは日本の春の代名詞的な存在であるようです。

サクラとのうまい付き合い方を考えたい

サクラとお花見を世界的な観光資源に押し上げたのは、ソメイヨシノの働きによるところが大きいことは間違いありません。
ソメイヨシノの美しさは一種類を大量に植えてこそのものですが、まちの魅力づくりを大量のソメイヨシノに頼っていていいものかという疑問があります。

全国の街路樹の本数集計を続けている国土政策総合研究所によると、全国に500種以上ある高木の街路樹のなかでサクラ種はイチョウに次いで2番目に多く、全体の約8%を占めています。
一方、日本植木協会などの調べでは、植木として出荷可能なサクラの約3分の2がソメイヨシノです。
この二つのことから、日本の街路樹の5%程度がソメイヨシノであるといえます。
多様な気候風土のもと、地域性に富んだ非常に豊かな植物相を育む日本ですが、まちの中を見ている限りではソメイヨシノの国であるという印象があります。

これほどに多く用いられているソメイヨシノですが、多くの人の目を引き付ける期間は1週間足らずしかありません。
その一方で、ほかの季節にも多様な魅力を発揮する樹木が日本にはたくさんあります。
将来世代にとって本当に必要なのは本来の自然を構成する在来種です。
ソメイヨシノという単一種が並ぶまちから、地域在来のさまざまな草木が見られるまちにする必要があります。

※平成29年4‐6月度訪日外国人消費動向調査
「生態特区」で接続可能な地域づくり No.155[2018年01月18日(Thu)]
日本生態系協会 会報「エコシステム」No.155
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自然再生を進めるうえで問題となる「法律にもどづく規制」を改革する方法の一つとして、国に対して直接提案を行うことができる「特区制度」は、有効なしくみです。


自然がつくりあげた私たちのくらし

自然によってつくられた文化と景観

日本は国土が南北に長いことから、地域ごとに気候も異なり、全国各地でそれぞれの自然環境に影響を受けた文化が息づいています。
お正月の飾り、おせちやお雑煮も自然の影響を受け地域ごとに発展をとげています。

鏡餅の下に置く飾りも地域によって、ユズリハやウラジロなどその地域に分布する植物を使っています。
ともすれば何もないと見られがちな日本の農産村地域ですが、その独特の自然や歴史、文化を活かして産業・観光振興を行い、活性化に成功している地域があります。

徳島県上勝町では、どこにでもある葉っぱを料理などのつまものとして販売するビジネスを展開し、町おこしに大きく貢献しています。
埼玉県の飯能市は、観光・エコツーリズム推進課を設置し、伝統的な里山の景観を活かしたエコツアーを数多く展開して町おこしにつなげています。

韓国、中東、南米、欧米諸国など海外からの視察も多数受け入れています。
岐阜県飛騨市の、里山を自転車で巡るツアーでは、ガイドがその歴史や文化を丁寧に説明し、海外の旅行者から人気を得ています。

雇用の創出や外国からの観光客の取り込みといった地方創生を進めるうえでも、日本の多様な文化を育んできた自然は重要な役割を果たしています。

自然の価値を見直す

また、近年の人口減少等によって税収が減少し、費用のかかる従来のコンクリートなどによる大規模な防災施設の維持が難しくなっていくなかで、生態系のさまざまな機能と回復力を活かした防災・減災(Eco-DRR)が注目されています。
町おこしや防災・減災に限らず、日本人のくらしは昔から、自然の恩恵(生態系サービス)を受けています。

世界を見ると、2010年10月に報告書が公表された「自然の恩恵を経済的に評価する国際的な取り組み(生態系と生物多様性の経済学(TEEB))」の試算によれば、生態系の破壊による世界の経済的損失は、進行する生態系の破壊を抑制する対策を取らなかった場合、年間で約162〜365兆円にのぼるとされています。
一方で、熱帯雨林やサンゴ礁、マングローブ林などさまざまなタイプの自然が各国で保護地域に指定され守られていますが、そこから得られる生態系サービスは年間約405兆円にものぼるとされています。

そして、この額の約百分の一、年間約3.6兆円をかければ、これらの保護区を守ることができるという報告がされています。
古代から「豊葦原の瑞穂国」と言われる日本で、湿地は国を特徴づける自然の一つです。

環境省の試算では、全国の湿地が有するレクリエーション等への利用価値だけで年間約106〜994億円にのぼるとされています。
水質の浄化や二酸化炭素の吸収・固定などほかのさまざまな機能まで含めると、年間約8,391〜9,711億円にもなります。

つまり、知らず知らずのうちに私たちは毎年約1兆円分の生態系サービスを湿地から受け取っているのです。
くらしや財産を守るという視点からも、自然の価値を見直す必要があります。

※当時のレート(1ドル=約81円)で計算
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