
「週刊東洋経済」の風間直樹さんによるルポ。風間さんは私と同世代で友人なのだが、極めて優秀な記者で、本書も出版された時には話題となった。
本書は主に2006年頃の取材による内容であるが、企業がいかなる手段で雇用に関するコスト削減をしているかといいう事例がこれでもかというほど出てくる。金融危機が表面化する前の段階でこうなのだから、現在ならなおさらひどいだろう。いわゆる「偽装請負」や外国人研修生からの搾取などの具体的な事例が、労働法制の説明とセットで解説されていく。
また、付録でついているインタビューが面白い。金融危機以降、企業による一方的な内定取り消しや、非正規雇用の解雇、雇い止めなどが問題になっているが、不況を非正規労働者のリストラで乗り切るというクセのついた経営者の発想を知るには本書は大変勉強になる。
グッドウィルの折口氏は本書のインタビューで、ワーキングプアが社会問題になっていることについてこう答えている。
「確かにフリーターといわれる人は、年収の低い人が多いですよ。だけど、自由があります。時間がありますからね。私は、おカネの軸と時間軸というのは同列だと思っています。…中略…いずれにしても人材サービス会社や企業は何も強制していないということです。君たちはこれで働きなさいと強制しているんじゃなくて、彼らはその道を選んでいるのです。」
このように、「非正規雇用を選ぶのはすべて自分の自由な選択に基づいている」という発言は別な派遣会社の社長のスピーチでも聞いたことがある。これは、本気なのか、大いなる自己欺瞞なのだろうか。今の時代、自ら望んでフリーターになる人はそれほど多くはない。
また、ザ・アールの奥谷社長は、労働行政や労基署の役割について、以下のように言う。
「はっきり言っていらない。労働省はいらない。労基署もいらない。要するに国が働き方をどうしろ、こうしろなんていくこと自体、ナンセンス。個別企業の労使関係の契約で決めていけばいいことですよ。」
といったような経営者もいるという前提で雇用のルールは考えなければならない。労働の問題を考えたい方にはぜひ一度お読みいただきたい一冊だ。