
気鋭の労働法学者による基本書。複雑な労働法の体系を極めてわかりやすく説明している。事例も豊富で、仕事の現場と法律の関係をイメージできるようになっている。おそらくこれから学生が労働法を学ぶ時の基本書として永く読まれるだろう。
また、「そもそもなぜ労働法があるのか」といったような根本から説きおこしているので、私のように制度改正を視野に政策研究をしている人間にとっては非常にありがたい。著者も労働法の改革を念頭におき、本書の最後の考察で「「個人」か「集団」か?」と問うている。労働者をバラバラの個人としてとらえるか、一つのカタマリとしてとらえるかで労働法の体系もまったく別なものになってしまうのだ。
働き方・生き方が多様化し、組合の組織率が20%を割っている現状では、「集団」の再生というのも容易ではないだろう。労働紛争をみても個別紛争の割合が増えてきているようだ。
一方、労働者を個人としてとらえると企業との交渉力は明らかに落ちるわけで、それへの手当が必要となる。今のところ答えは出せていないが、今後取り組んでいきたい。正規・非正規の格差の問題についての政策的な対応もその中から出てくるだろう。