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「融解連鎖」風間直樹 [2010年03月26日(金)]
東洋経済の敏腕記者、風間直樹さんの新著で、前作「雇用融解」の続編的な本です。前作の評価が非常に高かったため、今回はどうかな…と思って読んでみると、さすが、まったく期待を裏切りません。読んで損はない本だと思いました。

労働者、経営者、組合など、労働をめぐる諸問題の当事者へのくい込み具合が前作より増しており、地べたを這いながらの必死の取材を想像させます。その結果分かった事実を淡々と記述し、日本の労働の抱える問題点を抉っていきます。

個人的に一番興味深かったのは第3章「派遣業大手グッドウィルの破滅」の部分で、感慨深いものがあります。私は経済産業省を退官し、自営業を始めるまでの間、さまざまな非正規雇用の現場を経験しました。グッドウィルで日雇い派遣も経験し、そうした現場がいかに悲惨であるかを経験しておりました。

グッドウィルは違法な二重派遣のスキームで、派遣法で禁止されている港湾業務への派遣を行っていました。そうした違法な派遣の被害者の男性のエピソードが以下のように綴られます。

「…07年2月、GWスタッフとして東和リースを介した二重派遣で港湾業者・笹田組の指揮下で作業していた27歳の男性が、左脚を脱臼骨折し3本の靭帯が切れる重傷を負った。ヘルメットも与えられず倉庫内の荷崩れを戻している最中、再度の荷崩れに巻き込まれた。笹田組の所長は救急車を呼んでくれと何度も叫んだ男性の主張に耳を貸さず30分近く放置し、結局、自社のワゴン車で新橋の病院まで連れて言った。処置までの時間ロスが響き血行障害を起こしており、危うく片足切断こそ免れたものの、3カ月もの入院生活を余儀なくされた。」

「男性は6年前から時期によっては月曜日から金曜日までほぼ毎日、GWの定番として働いてきた。そんな男性が罹災後、見舞いに訪れたGWの支店長に真っ先に尋ねたのが、同社独自の「保険」の支払いについてだった。それに対して支店長は「保険はない。今回は労災で賄う」と返答した。この「保険」こそが、一稼働につき200円控除さえっる不明朗な賃金天引きとして社会問題化した「データ装備費」だ。当時男性に渡された「スタッフマニュアル」には、控除は業務上の事故に備え、スタッフが運営する安全共済の掛け金と説明されている。契約が完全に反故にされた格好だ。」

最大手のグッドウィルですらこうなのですから、どれだけ多くの登録型派遣の労働者が「食い物」にされてきたかが容易に想像がつくというものです。ところが、現在国会審議中の派遣法改正においても「常時雇用」の定義問題を整理せずに行われるため、グッドウィル的な登録型派遣のやり方の余地も沢山残ることになります。おそらく民主党にとっては、法律を改正した「形」だけが大事で、実際の派遣労働者が救われるかどうかはあまり気にしていないのかもしれません。

個人的には、鳩山総理に読んでほしい本No.1です。もっとも、お金の苦労をまったくしたことがない方がいくら読んでも理解できないかもしれませんが…。

本ブログの読者の皆様も、前著とあわせてぜひお読みいただきたいと思います。
Posted by 佐藤孝弘 at 14:20 | 経済 | この記事のURL