「官僚国家の崩壊」中川秀直 [2008年08月14日(木)]
自民党のいわゆる「上げ潮派」のリーダー格、中川秀直氏の決意表明的な色彩が強い最新刊。地方分権から外交まで、幅広い政策分野について考えが述べられているが、タイトルにもあるように官僚批判の部分が中心になっている。「官僚との死闘七〇〇日」と内容がオーバーラップする部分も多いが、長谷川氏とはまた違った政治家としての視点で描かれているし、政局を「カオスの縁」理論で説明するなど中川氏独自の考え方も出てきて面白い。また、霞ヶ関の体質についてよく研究しているという印象を受けた。 私が最近興味があるのは、今の霞ヶ関がなぜ多くの場面で機能不全に陥っているかという点だ。それについて中川氏はキャッチアップすべきモデルがなくなったという点を理由にあげ、以下のように述べる。 「やがて欧米をキャッチアップする時代は終わり、日本はフロントランナーの一員になった。指針はもはや海外にはない。海外にモデルがないと官僚は指導できない。かくして霞ヶ関は指導力を失った。」 この点は全く同意できる。ただ、官僚の中にアイデアマンがいないという訳ではない。個人として斬新なアイデアを出してもそれを組織として実現することが体質的に難しいのだ。 また、霞ヶ関の機能低下には、中川氏があげたのとは別に、もう一つ大きな理由があると思う。それは、今起こっている重要課題のほとんどが、各省庁をまたがっている問題だということだ。そのような場合、一省庁の部局単位では到底解決のアイデアが出てこないし、官僚も消極的になる。役人の発想では、基本的に自分の課の所管事項以外の部分については口を出さない。霞ヶ関と言えば権限の奪い合いばかりしているというイメージがあると思うが、実際には「これはうちの案件じゃない」と仕事を押しつけあう「消極的権限争議」のほうが多いのだ。 その点を考慮に入れると、やはり政治が官僚をうまく使いこなしながら改革を進めるためには、省庁の部局の枠を越える、課題解決のための組織づくりのうまさがカギなのではないだろうか。 |





