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「官僚との死闘七〇〇日」長谷川幸洋 [2008年08月06日(水)]
安倍政権の「改革」を影で支えたチームのルポタージュである。著者と高橋洋一氏、「教授」と呼ばれる学者の3名の動きを軸に、安倍政権発足〜現在までの政治状況が描かれている。

「政治VS霞ヶ関」、「上げ潮派VS財政再建派」という二つの対立軸の中、東京新聞の記者である著者が政権中枢の政策決定に関与し、改革を進めようとする。それに対し霞ヶ関がいかなる抵抗をしたか、実名つきで語られる。

私が面白かったのは第三章「大型補正の密謀」だ。2006年秋のこと、財務省は2兆円もの大型補正予算の検討をはじめた。景気が好調だった当時、税収の自然増が5兆円に達した。普通の人間なら、「財政赤字で苦しいのだから、その分財政再建にまわせばいいじゃん」と思うだろうが、役所の理屈ではそうはいかない。

2006年の財政赤字は当初予算で30兆円。5兆円をすべて財政再建に回してしまうと、それが25兆円に減る。そうなると次年度以降の予算編成では、「赤字25兆円」を議論の出発点とせねばならない。歳出削減のハードルも高くなる。そうならないように2兆円は使ってしまい、議論の出発点を「赤字27兆円」にとどめておこうというわけだ。

役人経験の無い方はこの理屈は理解しにくいと思うが、役所的な組織はとにかくフリーハンドを求めるのだ。それこそが権力の源泉だからである。裁量の余地がなければ財務省主計局の影響力はそれだけ落ちる。ちなみに、日銀がデフレが続いているにもかかわらず事あるごとに利上げを画策するのも、それによって金融政策のフリーハンドを確保したいからだ。

当時、各省の若手の役人の友人たちとの飲み会で、この補正予算の話題が出た。「バカバカしい。さっさと5兆円分借金返せよ」とみんな言っていた。ところが役所の最高幹部クラスでは、チャンスとばかりに予算の確保に走る。

とはいえ、役所にはしっかりと国民のために働いてもらわなければならない。「役所=悪」という発想では難しいだろう(著者も役人を手厳しく批判をしてはいるが、そのようなステレオタイプの発想には組しないようだ)。役人をいかに使いこなすか、政治サイドはその研究を徹底的に行うべきではないかと思う。
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