鹿児島震度5強に見る正常バイアス [2017年07月12日(Wed)]
鹿児島で昨日震度5強の地震があり、地震がほとんどない鹿児島県民としては、大変な事態だったと思います。 お怪我などされたみなさま、大事なものが壊れてしまったみなさま、お見舞い申し上げます。 熊本の地震の時も鹿児島が震源ではなかったですし、そもそも鹿児島は桜島が噴火する以外は大地が揺れることはほとんどないのであの長さの揺れは恐怖だった思います。 鹿児島で生まれ育ち、東北で311を経験した立場から、この2日の鹿児島の人たちの反応を見て感じた危機感を記しておきます。 「鹿児島は地震がないところだから、余震もないだろう。大丈夫」 このようなコメントが散見されました。 一般の人だけならともかく、人の命をあずかる立場の人もこのようなコメントをされていて、鹿児島の自然災害への危機感の乏しさを痛感しました。 「鹿児島は地震のない県。余震は起きない」 このように科学的な根拠もなく安心することを「正常バイアス」と呼びます。 東日本大震災の時も、あのような大きな地震で、津波警報も出ていたにもかかわらず、「大丈夫だろう」という正常バイアスがかかり、多くの人たちの命を奪いました。 そして、津波が来た後、家族を捜索する際にも壊滅的な地域の人たちですら、「うちの家族は逃げて助かってるに違いない」という、正常バイアスが働きました。 いざ最悪の事態が生じた時に、人は最悪の事態を考えられないものなのです。 311の時に震災直後のワイドショーのとある専門家の言葉をよく思い出します。 福島原発がいつ爆発するか?という時に、MCが「これ、爆発したらどうなるんでしょう?」とゲストコメンテーターのある専門家に尋ねました。 その「専門家」は「想像したくないですねぇ〜〜〜」と言って最悪の事態が起きたらどうなるかを東北に住む私たちに教えてはくれませんでした。 100キロ圏内に住んでいた私は「想像して答えてよ!!」とテレビに向かって怒りましたが、正常バイアスというのはつまりそういうことなんだと思います。 最悪のことは考えられない。考えたくない。 さて、全国各地で自然災害がありますが、朝倉の人たちがあの雨量を想定していたでしょうか?東北の人たちが40mの津波を想像していたでしょうか?常総市の人たちが鬼怒川の決壊を想定していたでしょうか? 「余震はないでしょう」と思ってる鹿児島の人たちと同じようにみなさん「大丈夫」と思っていたんです。 でも結果として人の命が奪われたのです。 それは抗いようのない自然の節理かもしれません。 けれども、「このあたりは地震がそもそもない地域だから」という正常バイアスは被害を確実に拡大させる要因です。 百歩譲って、あなたが自分のこころの安寧のために、そう思う(思いたい)のはいいです。 けれども、どうか「余震は来ないよ」、そのような発言で、人々に根拠のない安心感を与え油断させないでください。 その安易な発言があなたの周りの人やあなた自身を油断させ、「想像したくなかった状況」に遭遇した時に大事な人たちを危険にさらします。 なにか災害が起きた時に、被害を最小限に食い止めるのは、みなさんの知識と意識と行動です。 「この辺りは地震のない地域だから大丈夫」という漠然とした知識による安心ではなく、根拠のある知識でしっかり危機感(意識)をもって行動できると、救える命も増えると思うのです。 |
Posted by
高橋聡美
at 22:09