今週一週間は、アップステートニューヨークで緑に囲まれながら、研修を行った。アキュメンのチーフマネージメントオフィサーであるアンの別荘は、映画に出てくるような洒落たたたずまい。石造りの暖炉を囲む居間、12人が食事できる長いテーブルがあるダイニングスペース、なごやかな光が差し込むキッチンの間にらせん階段がはしり、それぞれのベッドルームに導いてくれる。200エーカーの土地、プール、ジャグジー付きの六角形のお宅で、12人が狭さを感じることなく共同生活を行った。マンハッタンから二時間少々のドライブの距離で、このような別荘を持つためには、かなりの資産家でないと無理のようだ。
一・二日目は、能力開発チームのディレクターであるハリーと、フェローシッププログラムマネージャーのブレアを交えて、現在の自分をより深く理解し、将来の姿を想像する実習を行った。終始一貫、和やかな雰囲気だった。振り返ってみれば、この二日間は、三・四日目の大イベントに備えた、ジョギングにしか過ぎなかったのだろう。他のフェローと、実習、食事、料理を共にし、星を眺めるジャグジーにつかりながらも、私を含め数人のフェローは、密かに課題図書を読み進めているようだった。
そして、ついに三・四日目が来た。アキュメンの創設者・CEOである、ジャックリーンを囲んで、朝から晩まで、課題図書について議論した。ジャックリーンはソクラテス手法で、フェローひとりひとりの道徳観、倫理観、世界観を聞きながら、プラトーからハヴェルに至るまでの歴代リーダーの考え方を説いていく。議論のテーマは、よい社会(Good Society)。 ジャクリーンは、理事会から、フェローとリーディングする時間を最小限にしてほしいと再三言われているが、いくら忙しくてもこの時間だけは削除することができないと言っているのだと説明した。フェロープログラムの根幹は、道徳観、倫理観をジャックリーンとフェローと共有し、その過程で築き上げたそれぞれの社会発展のヴィジョンを、ビジネス手法を手段にして、フィールドで実現化する努力を体感することあるのだ。
課題図書の紹介に入る前にここで、フェローを4人ほど紹介する。(残りのフェローは、次回のブログで行う予定。)
スレー(ガーナ出身)
ガーナでの電子工学分野の経験と、取りたてのMBAを生かして、太陽発電LEDランプの販売促進を行うD. light Design(インド)での研修を予定している。将来はガーナで起業を志す。戦略家で野心家だが、素直で正直な一面も持つ。この10月に初めてパパになるので、密かに出産に立ち会うことを心待ちにしている。得意料理:ガーナ風ピーナッツバタースープ
ジョセファット(ウガンダ出身)
地方コミュニティー開発プログラムの経験と、持続可能な開発の修士号を持つ。道徳観に満ちた情熱家。普段は物静かだが、話し出すとかなりの雄弁家になる。研修は、ケニアで持続可能な農業運営を低所得農家に推進するWestern Seeds で行う予定。小さいころは、ろうそくの下で勉強し、初めて電気を見たときの面白いストーリーを展開してくれた談話家。台所に入ったことは長年ないと言っていたが、どうやら料理に大変興味があるらしく、料理係のフェローに、手伝うことはないかと尋ねまわっていた。
ガムチライ(ジンバブエ出身)
ジンバブエで、青年企業家を育成する事業を運営していた一児の母。研修は、糖尿病網膜症治療を低価格で提供するUpper Hill Eye and Laser Center (ケニア)で行う予定。落ち着いた物腰で、議論に、常に、アフリカからの視点を提供してくれる。知識にと正義感に満ちている。得意料理:ジンバブエ風ビーフシチュー
サラ(ロサンゼルス出身)
LAでNPO系の住宅開発コンサルタントを四年半していた。彼女は、パキスタンで低所得層に対して住宅を提供する営利を目的とした住宅会社AMCで研修をする予定だ。帰国後は、大学院に行くことを考えている。背の高さと堂々とした話しぶりも手伝い、彼女のプレゼンスは目を引くものがある。自分の道を信じて突き進む迫力には圧倒される。
得意料理;ベガン野菜の照り焼き、カボチャサラダ。
さて、課題図書の話に戻る。 各課題図書は、1ページから30ページほどの抜粋のみだが、二日間で、23人のリーダーの考え方を垣間見た。課題図書は以下の通り。
Good Society Readings
Rights and Responsibilities
The Universal Declaration of Human Rights
Martin Luther King, Jr., Letter from Birmingham Jail
Aung San Suu Kyi, A Culture of Peace, Democracy, and Human Rights
Fareed Zakaria, A Conversation with Lee Kwan Yew
Liberty and Social Order
Isaiah Berlin, Two Concepts of Liberty
Wendell Berry, The Contrariness of a Mad Farmer
Simon Bolivar, The Angostura Address
Niccolo Machiavelli, The Prince
Thomas Hobbes, Leviathan
Langston Hughes, Democracy
Equality and the Quest for Social Justice
Nelson Mandela, Long Walk to Freedom
Karl Marx, The Communist Manifesto
Tillie Olsen, Oh Yes
Rousseau, Social Contract
Alexis de Tocqueville, Democracy in America
Community and the Search for Humanity
Bible: Genesis
Rachel Carson, Silent Spring
The Four Noble Truths or the Basic Doctrines of Theravada Buddhism
Vaclav Havel, Philadelphia Liberty Medal
Amin Maalouf, On Identity
Binyavanga Wainaina, How to Write About Africa
Property and Productivity
Idn Khaldum, The Muqaddimah
Arthur Okun, Equality and Efficiency: The Big Tradeoff
Plato, Republic
Amartya Sen, Development as Freedom
15時間にわたる議論の中で、彼ら彼女らが、人間の本質を悪としたのか、善としたのか、さらに、利他または利己主義としたのかを議論した。さらに、彼ら彼女らが説いた、道徳、正義、自由、平等、人間性を理解しようとした。その過程で、各フェローが如何なる社会を築きていきたいのか、どのリーダーの考え方に共感するのか意見を交わし合った。さらに、まったく異なった文化と場所で育ったフェローが、世界観・価値観を共有し合った。ジャクリーンは、その透きとおった響き渡る声で、ネルソンマンデラの、またはキング牧師の残した有名なセリフを読み上げ、彼らがなぜ、法を犯してまでも、正義を獲得するよう同志に訴えたのか、その理由を我々に問いかけた。
最終日は、各自疲れモードで(前日に夜中の2時まで、夜に強いフェロー間でジャグジーにおいて、再び議論を展開したこともあり)、足をひきずりながら、マンハッタン経由でフラッシングまで帰ってきた。一週間が瞬く間に過ぎた。駅のホームで、週末を別の場所で過ごすフェローと別れる時には、なぜか妙なさびしさに襲われた。