「自殺について」
―若者の死因の第一位は自殺―
今年の4月から「改正自殺対策基本法」が施行され、すべての自治体に自殺対策計画の策定が義務化されるようになった。しかし問題は複雑で、法律が改正されたからといってすぐに効果が出るわけではない。
日本財団はこの問題に対処すべく「いのち支える自殺対策プロジェクト」をスタート。今年の8月2日〜9日、まずは全都道府県4万人を対象に大規模な自殺意識調査を行った。
その結果を要約すると
1. 4人に1人(25.4%)が本気で自殺を考えたことがある
2. 自殺未遂経験者(過去1年以内)は全国で53万人超(推計)
3. 5人に1人(21.7%)が身近な人を自殺で亡くしている
4. 若者層(20〜39歳)は最も自殺のリスクが高い世代
という、驚くべき結果が出た。
2015年度の自殺者は24,025人と、1日平均65人が日本のどこかで自らの命を断っていることになる。
主要7ヶ国の自殺率(人口10万人当たりの自殺者数)は、イタリア 6.4、イギリス7.5、カナダ11.4、ドイツ12.5、アメリカ13.7、フランス15.8に比べ、日本は20.7と圧倒的に高い数字である。理由は就職難、過労、いじめ、失業、生活苦、多重債務、うつ病など多岐にわたるが、真剣に語れる相談相手もなく、孤立して追い込まれた結果ともいえる。
日本財団では「いのち支える自殺対策プロジェクトチーム」の芳川龍郎チームリーダーを中心に、長野県(自殺者415人, 自殺率19.7)と東京都江戸川区(自殺者137人, 自殺率20.1)の2地域をモデルに、3年後には2地域での自殺者数20%減の数値目標を設定して自殺対策専門家6名を育成し、2地域の行政と連携して
@自治体内に設置する首長主導の「自殺対策戦略会議(仮)」への参画
A地域の自殺実態分析に基づいた総合戦略の立案支援
B自殺対策に関わる自治体職員や地域住民等への研修支援
C自殺対策のための地域ネットワークの強化支援
D地域住民への啓発、メディア発信等を通じた全国への啓発
などを通じて、目標を達成する自殺対策の成功モデルを作りたいと、ささやかではあるが、活動を開始した。この費用の総額は約2億4800万円となる。
阿部守一長野県知事と自殺対策プロジェクトの協定書を交わし、対策をスタートさせた
日々の生活の中で、身近に自殺を考えているいる人が多いことに驚きを憶えるる。親しく会話をしている人の中にも、心の中で死を意識している人がいるのかも知れない。この調査結果を見たとき、他人事ではなく、社会を構成する人々がお互いの言動や行動を気にかけながらコミュニケーションを取っていくことが重要ではないかと、改めて心に刻んだ。
佐藤久男さん(NPO法人あきた自殺対策センター「蜘蛛の糸」理事長)が活躍されている秋田県は、約30年にわたって自殺率ワースト1位を続けてきた。佐藤久男さんらの長年の努力の結果、2002年に「蜘蛛の糸」を設立し、2003年、559名だった自殺者が2015年は278名と、13年間で半減した。
日本財団は、多くの人々の力を結集して一人でも多くの尊い命を救いたいとの強い思いを持って、息の長い活動を続けて行きたいと願っている。