「ハンセン病と人権」その2
―国連人権理事会で決議―
7月2日、第29回国連人権理事会において、日本政府提出の「ハンセン病差別撤廃決議」が94カ国の共同提案国を集めて全会一致で採択されました。
ハンセン病に関する日本の人権外交の画期的成果が一つ増えたことになります。
本決議は、2010年の国連総会決議で各国政府等に十分な考慮を払うように求めていたハンセン病に関する差別等の問題を解決するための「ハンセン病患者・回復者及びその家族に対する差別を撤廃するための原則及びガイドライン」の実施状況に関する調査を、国連人権理事会の下部機関である諮問委員会に求め、2017年6月に開催予定の第35回国連人権理事会に「P&G」のより広範な普及とより効果的な実施のための実践的な提言を含んだ報告書の提出を要請する内容です。
日本財団は2000年代初頭から「ハンセン病は人権問題である」と国連人権高等弁務官事務所等に働きかけを続けてきており、日本政府が提出し全会一致で採択されたハンセン病に関する2008年、2009年、2010年の国連人権理事会決議や2010年の国連総会決議を全面的に協力してきました。
今回の国連人権理事会決議を歓迎し、今後も世界各国に未だに根強く残るハンセン病感者・回復者やその家族に対する偏見や差別の解消を目指し、残りわずかな人生を燃焼させていきたいと思います。
以下、多少専門的になりますが、ハンセン病と国連人権理事会との関係と日本財団の活動について羅列しました。
○より具体的には、諮問委員会は第35回国連人権理事会(2017年6月開催)に「原則とガイドライン」のより広範な普及とより効果的な実施のための実践的な提言を含んだ報告書の提出を求められている。
○この報告を受けて、国連人権理事会において、2017年6月の理事会会合において、この議題が討議されることとなる。
○この決議の重要な点は、そもそも2010年に採択された決議で各国の十分な配慮が求められた「原則とガイドライン」には、条約のように法的な拘束力がなく、そのままにしておくと形骸化してしまう恐れがあるところ、そうさせないために5年後の調査・レビューを諮問委員会が実施し、差別と各国における対応の現状を明らかにするところにある。そして、その調査結果をもとに、具体的・実効的な方策を検討し、人権理事会において継続的に審議をすることにより、拘束力のない「原則とガイドライン」を拘束力ある施策へと発展させるところにある。
○日本財団は、2010年の決議と「原則とガイドライン」を受けて、世界5大陸において、その社会的認知を高めるための国際シンポジウム「ハンセン病と人権」を政治リーダー、保健担当実務者、メディア、NGO、人権専門家、ハンセン病患者、回復者などの参加を得て実施してきた。また同時に、「原則とガイドライン」の実効的な運用をどのようにするのがよいかを検討する国際ワーキンググループを人権問題の専門家の協力を得て組織し、その活動を支援してきた。その活動の成果は、現状分析の報告書、モデル・アクション・プラン、現状把握のための質問書のひな形などとして結実し、2015年6月18日にジュネーブで行った国際シンポジウムにおいて発表した。これらの成果物は、今後の諮問委員会による調査および実効的施策の策定の参考となることを確信する。
○この決議の趣旨は、全世界でハンセン病に関連する差別問題に苦しむ人々の人権を守るため、人権理事会においてハンセン病差別問題を議論し、差別を撲滅するための実効的な方法などを検討することを目的としている。
○日本政府は、ハンセン病患者・回復者・その家族に対する偏見・差別の解消に向けて人権理事会において、2008年、2009年、2010年の3年連続で、差別撤廃決議案を提出し、いずれも全会一致で採択された。そして、人権理事会諮問委員会が作成した「ハンセン病差別撤廃に向けた原則とガイドライン」に「十分配慮」することを求める2010年の決議については、国連総会本会議で同年12月に全会一致で採択された。
○今回(2015年7月)の人権理事会において採択された新たな決議は、2010年の決議から5年が経過し、各国による「原則とガイドライン」の実施状況を確認・レビューすることが必要であるとの認識のもとで、ハンセン病の差別撤廃に向けた取り組みをさらに前進させるための仕組みづくりに関する検討を目指すものである。
○具体的には、2010年の国連総会決議で各国政府等に「十分な考慮」を払うよう求められていた「ハンセン病患者・回復者及びその家族に対する差別を撤廃するための原則及びガイドライン」の実施状況に関する調査を国連人権理事会の下部機関である諮問委員会に求めている。