「第5回アフリカ開発会議」その2
2日目は6ヶ国のアフリカ各国首脳と会談した。
笹川アフリカ協会(本部スイス)からは、現地で活躍するオニヤンゴ会長(女性)を中心とした幹部も来日し、要人との会談にも適宜発言してもらった。
以下は会談の要旨です。
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ナイジェリア ンナンナムディ・サンボ(Namadi Sambo)副大統領
外務大臣、産業貿易投資大臣・陪席

ンナンナムディ・サンボ副大統領
【笹川】
25年前、貴国のオバサンジョ大統領と共に貧農に対する食糧増産プロジェクトであるササカワ・グローバル2000(以下SG2000)プロジェクトを立ち上げた。同席の我々の仲間であるサニ・ミコ(Sani Mico)が貴国ですばらしい成果をあげてくれ、彼がナイジェリア人であることを私は誇りに思っている。貴国からは約1億円の資金援助も受けている。連邦政府から当プロジェクトの拡大要請を受けており、12州で導入予定だが、州レベルとの交渉はあまり進んでいないので、閣下より連邦政府の熱意を伝えて頂き、我々との覚書(MOU)の締結を急ぐよう指示してほしい。
【副大統領】
SG2000の農業支援に感謝している。私はSG2000プロジェクトの手法を更に発展させたいと思っている。草の根の農民に有効な手段であり、州政府と組むことで更に成功すると思う。我々政府も農業のあり方を変えたいと考えている。
過去30〜40年間、世界食糧機関、世界銀行、アフリカ開発銀行からの支援は彼らの考えるプログラムだった。振り返ってみると、これらのプログラムは経済を変えるほどの大きな成果はなかったし、GDPへの農業貢献はわずかなものだった。これからはプログラムを多角化し、農業をビジネスとして考えねばならない。そのためには現在の灌漑設備への投資、中小規模の水力発電整備など、政府としても具体的な計画を立てている。中小の農家の育成は、彼らの生活向上につながる。私からも後押ししますので、ナイジェリアに覚書を提案するときはすばらしいプレゼンテーションをして下さい。
【笹川】
ご期待にそえるようにしましょう。私は小規模自作農民から、例えば農業協同組合のような事業を立ち上げ、草の根からのSocial Innovation(社会変革)が可能だと信じています。
話は変わりますが、私は40年以上もハンセン病制圧を続けています。7月24日、タイのバンコクで日本財団とWHOの共催でハンセン病サミットを開催します。貴国の保健大臣の出席を歓迎します。
【副大統領】
わかりました。必ず伝えます。
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エチオピア ハイレマリアム・デサレン(Hailemariam Desalegn)首相

ハイレマリアム・デサレン首相(右から二番目)
【笹川】
ハンセン病とG2000へのご支援の2点に簡単に言及します。
エチオピア政府のハンセン病制圧活動を非常に高く評価しますと同時に、ハンセン病患者・回復者への差別撤廃の国連決議案に賛同してくださったことにお礼を申し上げます。国連決議の原則とガイドライン(P&G)に関連して、日本財団では9月18日にアディスで“ハンセン病と人権”の国際会議を開催しますので、首相には基調講演者としてご参加頂くことを強く望んでおります。また7月24日にタイのバンコクで、WHOと日本財団共催でハンセン病サミットを開催しますので、是非、保健大臣のご出席をお願いしたいので、お伝えください。エチオピアがアフリカ大陸からのハンセン病制圧活動に指導的な役割を果たして頂いたことに改めて感謝いたします。
もうひとつは農業問題で、20数年エチオピアで活動させて頂いていることに心から感謝いたします。後ほどSG2000の最高責任者ルース・オ二ヤンゴとジュリアナの女性パワーから説明してもらいますが、何よりもDr. Aberraがお国で頑張ってくれ、私達のアフリカにおける小規模農民の生活向上の一つのモデルケースを作ってくれています。6万人の農業普及員を持っている国は、アフリカでは貴国だけです。私は昨日も総会で発言しましたが、小規模農家から収穫が上がることによって生活が向上する、いわゆるソーシャル・イノベーションが大企業からではなく、農民からできるという可能性をエチオピアが証明してくれていると思っています。エチオピアの永年の努力により、ようやくアフリカでも国家指導者が農業の重要性を認めるようになったことを喜んでおります。
先程のハンセン病の話について、コメントを頂ければと思います。
その後、農業の話を彼女たちから致します。
【首相】
私は閣下(笹川)が私どもの国に対して多大なご尽力をくださったことに対し、心からお礼を申し上げる機会を待っておりました。私はSG2000が始まったころは知事をしており、このプログラムがエチオピアで始まったこともはっきり知っておりました。当時草の根のリーダーとして、このプログラムは驚嘆するものでした。エチオピアでは大規模な農業普及プログラムを始めるにあたり、農業普及員の養成に関わり、そこから農民の生産性向上を中心に作業をして来ました。笹川さんのご支援があったからこそです。新しい首相という役職に着き、故メレス首相からも貴殿と一緒に農業に関わっているということをよく聴いていました。
ハンセン病プロジェクトの会議の開会式には参加させて頂きます。我々もこの問題が最も重要であると受け止め、国連決議案をいち早く支持しました。決議案の中には承認まで数年かかるものもあります。私は当時副首相兼外相を務めており、早急に承認することによって差別をなくすこのプロセスが、より早く実現すると考えました。私達は引き続き支援していきます。会議に参加することでそのお約束の意志表示をしたいと思います。人類すべて、差別を受けず自由になるには、各国政府および国民が強く認識することが大切だと思います。保健大臣もバンコク会議には参加させ、私ども政府の支持の表明をしたいと思います。
【Ruth(笹川アフリカ協会会長)】
AU(アフリカ・ユニオン)議長ご就任、おめでとうございます。笹川さんは非常に謙虚な方です。エチオピアを愛し、何回もこられています。エチオピアが好きだからこそ会議もエチオピアで開催されます。ご尊父の時代からの活動です。
SAFE(笹川奨学生)プログラムに関しても多くのエチオピアの大学と連携していますが、エチオピアほど農業普及員が育っている国はありません。ご存じの通り、多くのアフリカの国では農業普及活動は世界銀行主導による構造調整のために消えてしまいましたが、いまではエチオピアの小規模農家のメイズの輸出が私の母国ケニアまで届いています。
我々の地域事務所はエチオピアにあり、非常に重要な役割を果たしています。Dr. 宮本は東京在住の事務局長(Executive Director)ですが、毎月1回は必ずアフリカに来られます。この熱意からも、我々のパートナーシップがどのようなものか証明されると思います。4年前に仕事の大半をアフリカ人の手で行うことと決定しました。Country Directorもアフリカ人です。Dr. Julianaはタンザニア出身のアディス在住のManaging Directorです。Dr. Aberraは永年ケニアで仕事をしてきましたが、現在Country Director です。我々は非常に密接な連携を取りながら仕事をしています。
私はメレス首相のご葬儀にもお招きいただきました。1984年のエチオピアの飢餓でこのプログラムが導入され、2度とこのような経験したくないというエチオピアの声を耳に活動を始めました。
昨日、安倍首相が言われたことと同じように、このプログラムは搾取するのではなく、お互いがパートナーとして、共に目的を達成することです。また政府の政策にそって仕事を続けています。エチオピアは閣下のもとで更に成功され、アフリカ全土が必要としている偉大な指導者であることを確信しています。
【Juliana(笹川アフリカ協会事務局 タンザニア人】
SAA(笹川アフリカ協会)はエチオピア政府と仕事ができる恵まれた環境におります。SAAが政府の一部だと思っている人もいるほどです。政策変更、優先順位が変わったことなどもいち早く知ることが重要と考え、農務省(Ministry of Agriculture)とも定期的に協議をしています。今まで何も問題なくきていますので、これからも同じような形で仕事を続けて行きます。
【首相】
私もお二人が女性であり、また東アフリカ出身であることをとても嬉しく思います。指導者が女性であると細かいところまで気を配るという女性特有の持ち味が発揮されるのです。笹川さんも良く女性を理解しておられますね。
【宮本(笹川アフリカ協会専務理事)】
エチオピアでは安心して、快適に仕事に専念できます。
【首相】
偉大な指導者(メレス前首相)を失って大変心を痛めております。(涙ぐむ)
【Aberra(エチオピアの責任者)】
個人的にお話できる機会を頂き、お礼申し上げます。現在SG2000のCountry Director を8年務めております。それまでは農業研究者で、調査研究に専念していました。その頃は研究成果の技術を提供する側にいましたが、今はその技術を受け取る側に居ます。
1994年以来、一貫して笹川陽平会長の継続的なコミットメントがあったからこそ我々のプログラムが続けられています。エチオピア政府の政策に基づいて仕事をしていますが、食糧増産から、今日ではAgro-processing からpost-harvesting と言ったvalue-chain 全体に焦点を当て、更なる付加価値を農業分野につけていくこと、また市場へのアクセス、人材育成、そしてすべての分野においてのモニタリングを行っています。プログラムは非常に順調に行っています。笹川会長はメレス前首相から更にエクステンションサービス強化に努めて欲しいという依頼を受け、SAAおよびBMGFと共に実現に向かっています。エチオピア政府のご協力にも感謝しています。笹川会長はRuthが言われたとおり非常に謙虚な方で、エチオピアを思う気持ちは大変強いものです。エチオピア政府が他のアフリカ諸国のお手本となっておられることに感謝します。お話できて大変光栄です。
【首相】
エチオピアの大学も皆さまのプログラムを非常に高く評価していますね。笹川会長のアワサ大学名誉博士号に敬意を表します。
笹川会長は貧困からの救済という非常に崇高なことを達成されました。我々も、これからも共に目的を達成するために貢献し続けます。
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ガーナ ジョン・ドラマニ・マハマ(John Dramani Mahama)大統領

ジョン・ドラマニ・マハマ大統領
【笹川】
25年前から、貧しい農民への農業協力をして来ましたが、もっとも成功した国はガーナです。Cape Coast 大学の農業普及員の養成に多大な協力を下さり、ガーナ政府と大学には心から感謝いたします。今年はこの養成プログラム(SAFE)の20周年となるので、アクラで11月に農業普及員の活躍を祝うために会議を開催します。大統領も彼らの激励のためにご参加頂ければ幸いです。
農業の改革を通して貧しい農民からのSocial Innovation の可能性が実現できるということを話して頂ければ、アフリカ大陸のすべての農民に夢と希望を与えることができます。継続してガーナを中心として農業指導を続けていきたいと思っています。
また、世界はこれから海の資源と海の管理が重要になってくると思います。日本財団はスウェーデンの世界海事大学で、ガーナから10人近い優秀な奨学生を教育しています。アフリカではすでに100人を超える卒業生がいます。彼らを集めてアクラでこれからの海の資源管理について話し合う新しい観点からの会議も計画しています。
【大統領】
これまでのご支援に感謝します。笹川という名前は知らない人はいません。笹川さんはもっとも貧しい人たちである農民に目を向けてくださいました。過去に私達はIMFや世銀の支援を受けてきましたが、彼らの支援は経済発展に視点を合わせていたもので、さらに貧しい農民を増やすという結果に終わりました。笹川プロジェクトだけが農民のために、我々ガ―ナ政府と手を組んで実行してくださいました。
【笹川】
ローリングス大統領のころ、よくガ―ナでハンセン病の制圧活動もして来ました。ガーナでは患者数も減りました。2年前の国連総会での差別撤廃の決議案に賛同して頂き、お礼を申し上げます。大統領にもこの問題に関心を持って頂ければ幸いです。
11月訪問の際、またお目にかかれますことを願っております。
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ベナン トマ・ヤヤイ・ボニ(Thomas Yayi Boni)大統領

トマ・ヤヤイ・ボニ大統領
当方に時間なく、挨拶のみでした。
【大統領】
笹川さん、何回もベニンにご招待をしていますが、中々いらして頂けませんね。安倍首相からもベニンでの工場建設のご支援を頂けるとのことで、ゾマホン大使には数ヶ月本国に行って貰う予定です。もし成功しなければ彼は首にします(笑)
【笹川】
私は今、日本政府より新しい任務を言い渡され、ミャンマーで忙しくしていますが、早急に大統領の期待に答え、訪問します。
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ウガンダ ヨウェリ・カグタ・ムセベニ(Yoweri Kaguta Museveni)大統領

ヨウェリ・カグタ・ムセベニ大統領
【笹川】
10年前にカ―タ―大統領と一緒にお会いして以来ですね。ウガンダでのSG2000は、大統領の強い指導力のもと、最も成功している国の一つです。また、マケレレ大学では素晴らしい奨学生達が農業の専門家として育っています。
私の役目はここまでで、ここからはSG2000を支えている最も強い勢力である女性陣と代わります。
【Ruth】
私はSAAとSAFEの会長です。私どもは20年以上前からウガンダで仕事をしています。あの時、カーター大統領と故ボーログ博士と一緒に大きな会議を開きましたが、私は会議に参加して笹川のプログラムが気に入り、それから私の関わりは始まったのです。
ボーログ博士はアジアの緑の革命の父です。2009年に亡くなりました。その時から私は理事会のメンバーになりました。私の専門は食糧・栄養学です。マケレレ大学栄養学部とも密接な関係があります。大使として活躍されたDr. Joyceは私の親友です。それからRosalline はウガンダのCountry Director で獣医師の資格を持っています。
【Rosalline(ウガンダの責任者)】
獣医師学位と農業管理の修士学位を取得しています。ウガンダでは当初43districtでプログラムを実施し、現在は18districtとなりました。小規模農家のための食糧の安全保障を実現するのが目的です。食糧増産、Agro-processingから post harvest、そして官民パートナーシップとして農民を民間セクターにつなげ、市場へのアクセスを実現しています。
最初から主たる資金援助は日本財団から供出して頂いており、大変感謝しています。最近の新しいパートナーはドイツのK&S Kali社ですが、このプロジェクトの面白いところは、モバイルトラックです。このトラックは村から村へ移動し農民を指導すると同時に、土壌ラボを積載しており、土壌試験ができるようになっています。土壌試験を実施し、肥沃な土壌作りのために異なる地域にあった肥料使用を勧めています。
【Ruth】
このドイツの肥料のユニークな特徴は、マグネシウムを含んでいることです。宮本さんとともに鉱山の地下まで行ってきましたが、ここの土壌はマグネシウムが欠乏しているので土壌にも有益で、その土壌で育った農産物を食べる人間にも栄養が供給される得点を持っています。
【Rosalline】
大統領は東部ウガンダでのユースプログラムの解説に行かれたと思いますが、あのセンターも笹川協会のお陰です。現在さらに14カ所増えています。
【Juliana】
私は農業経済の修士と博士課程を修了しました。SAAでは4カ国(ウガンダ、エチオピア、マリ、ナイジェリア)を統括するManaging Directorを務めています。それぞれの国にCountry Director がおり、同じvalue-chainプログラムを全国に展開しています。“畑から食卓へ”を目指すプログラムです。
【大統領】
米作に関しても沢山のことをしてきたでしょう?
【笹川】
はい、14カ国に米作、その他を導入してきましたが、特にネリカ米ですね。
【大統領】
知っていますよ。だけれど我々のアジアの友人はウガンダ特有の食物のことを知っているかね? 特にキビが炭水化物、タンパク質、鉄分を含んだ非常に栄養化の高い食物であるので、少し考えてみる価値があると思うよ。
【Juliana】
私達は各国でプログラムを導入するときにはメイズ、キビ、米、豆、ソルガムなどを植えますが、基本的には農民が望む物を育てます。
【大統領】
メイズも米もキビよりは栄養化が低いですよ。私は毎日キビとバナナを食べています。
【Juliana】
エチオピアではインジェラを植えています。キビよりもっと細かい粒子です。
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モザンビークのアルマンド・エミリオ・ゲブーザ(Armando Emílio Guebuza)大統領は、ポルトガル語のため、記録を残せませんでした。

アルマンド・エミリオ・ゲブーザ大統領