「自立困難な障害者・高齢者の再犯防止プロジェクト」委員会
日本財団は、身寄りがなく自立が困難な障害者や高齢者の再犯防止と、彼らの生きがいある生活の場の提供とその可能性について研究するため、司法や福祉をはじめとする有識者による委員会を立ち上げた。
法務省の調査では、親族などの受け入れ先がない満刑釈放者は7000人を超え、うち自立困難な高齢者や障害者は1000人と推計されている。65歳以上の満刑釈放者の半数は2年以内に再犯に及び、知的障害者の4割は生活苦を理由に罪を犯している。
今後、刑務所が最後のセーフティネットとなっている現状に対し、解決策を探ろうと取り組んでいくことになる。
以下は委員会での挨拶要旨である。
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挨拶要旨
2011年1月24日
日本財団ビル8階
日本財団は、社会の中では見えにくい、しかし大変重要な問題を探し出し、解決していこうと行動している組織です。
例えば、私たちは長年にわたり東南アジアで義肢装具士の育成や聾者の高等教育を支援してきました。ベトナム政府はこれらの活動に刺激されて障害者基本法の制定に動きだし、日本財団の協力で法律として制定するに至りました。
その他にも、世界的に有名な聾学校であるギャローデット大学に発展途上国から留学できる奨学金制度、また、手話のための辞書の開発や日本の手話を言語として認められるような活動も行っております。
私たちはホスピスという概念が日本に定着する前から、終末医療の分野で緩和ケアを実践できるホスピスナースの養成を15年以上にわたり実施してきました。これまで養成してきたホスピスナースは3000人以上に上ります。医療技術だけでなく、心のケアも含めたプログラムを展開してきたのです。
今回、障害者や高齢者の再犯防止の観点から、その防止策を考えようということで委員会が立ち上がったわけですが、この問題には極めて人間的な対応が必要になると考えられます。そして非常に困難な課題でもあると思います。しかし、私たちの組織は百の議論も重要ですが先ずは一歩を踏み出すこと、行動に移すことがさらに重要だと考え活動しています。
本日は日頃現場でご努力されている皆さまにお集まりいただいております。この問題では固い殻の中に閉じこもっている人の心を開かせるための人間的なアプローチがカギとなるでしょう。私は制度や仕組みを作ることは難しいとは思っていません。むしろ殻の中に閉じこもっている一人ひとりの心を開かせることのできる、そして魅力的な対応ができ、相手に心から信頼される人をどのように養成するのかが重要な課題ではないかと考えます。
この問題を広く社会に理解させることも重要でます。そして、そのような支援や活動をより具体的に、効果的にしていくため、皆さまのご協力をお願い致します。
私たちは必ず行動に結びつけます。皆さまにはそれぞれの専門分野からのお知恵やご指導を賜り、この問題の解決への行動を起こしていただければと願っております。