博愛の精神で活躍されている日野原先生(写真・左)と筆者
「聖路加国際病院とあるポスター」
前回「聖路加国際病院と日野原重明先生」で触れた通り、聖路加国際病院は、多少、病院事情を知る立場にいる私にとって、近代的施設は勿論のこと、医師、看護師、検査技師、ボランティアに至るまで、その対応は親切丁寧であり、ウィリアム・オスラーを師と仰ぐ日野原先生は、すでに師を超えた存在であられ、先生のヒューマニストとしての医療実践の指導は、病院の隅々までに及んでいるといっても過言ではない。
そこに遠慮がちに貼られた小さなポスターに、私は驚かされたのである。
「暴言・暴力、診察の妨げになるような行為は慎んで下さい。他の患者に迷惑をかけないで下さい」
とした上で、次のような行為が暴言・暴力ですとあった。
1.叩く、殴る、蹴る、抱きつく、噛む、押し倒す、手を握って離さない。
2.刃物や凶器を向ける。
3.病院内の施設や器具を破損する。
4.「バカヤロー」など、乱暴な言葉で大声を出す。
5.診察の妨げになる話をして、医療者を拘束する。
6.病院に落ち度がない要求を執拗に話す。
7.自宅に押し掛ける。家族に危害を及ぼすと脅す。
聖路加国際病院院長
私は悲しくなった。昔は医者は「お医者様」と呼ばれ、尊敬の対称であった。しかも聖路加国際病院では、日々、医療従事者は勿論のこと、一般事務職員に至るまで、患者、家族、来訪者への対応は親切を極め、他の病院の追従を許さないほどヒューマニズムにあふれた病院であり、そこに貼られたポスターだったからである。
感情の乱れから、何とか助けてほしいと手を握って離さない場合はあるかも知れない。孤独の生活の中で、人恋しさでついつい多忙な医師に長話の可能性があることはある程度想像もつく。しかしそれ以外は全く異常である。
戦後、民主主義といわれる制度は、国民にあらゆる権利があることを教え、強調してきた。日本ほど民主主義における国民の「崇高な義務」を教えることを怠ってきた国はない。
学校の教育現場では、児童の給食費の未払いや、何かとクレームをつけてくるモンスター・ペアレントが出現し、現場の教師を困惑させている。病院にもモンスター・ペイシェント(患者)が多く発生しているということか。
厚生労働省の調査によると、全国約3270病院における累積未収金が1年間で約219億円増加、3年間で約426億円になったと指摘している。
このポスターを見る限り、全て病院内で一度ならず発生したからこそ、やむにやまれず苦渋の決断で貼り出されたものだろう。そこには医師に診ていただくというような謙虚な態度はみじんもない。
悲しい世の中に変質してきている。一般論として、医療過誤への対応、医師、病院に対する不信感は、より国民に権利意識を増大させ、医師から見れば、診察では患者のクレームを恐れ、安全な対応の範囲となってしまったのか・・・。
医師と患者の間に、目に見えない不幸なギスギスした関係が惹起しているのかもしれない。
ヒューマンに徹して患者、家族の苦しみに対応してきた聖路加国際病院にしてしかり。院長をはじめ、関係者の皆さんの苦悩が察せられる。
(次回4月2日は、「刺身大好き、ソマレ・パプアニューギニア首相」です)
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※ 3月24日掲載の「決定版・永田町を舞う謎の鳥」に「夕焼け」と名乗る方から度々コメントをお寄せいただいております。お返事を出したいと思いながらも、メールアドレスが登録されていないため苦慮しております。次回、コメントをいただける場合は、アドレスをご登録いただければ幸甚です。