「深刻化する海洋問題」
―専門家の人材養成―
最近、海洋問題については国際的に関心度も高まり、気候変動、海洋汚染、魚類の乱獲、酸性化による植物プランクトンの激減、海洋ゴミ、中でもプラスティックゴミの海洋への流出は、細分化され魚類の体内に蓄積され、食物連鎖の課程で最終的には人体に悪影響を及ぼすといわれている。科学的に証明することは難しいので、なおさら大問題である。また、海底資源の探査および採取技術の開発等々、問題は多岐にわたる。
海洋は既に人口100億人時代を目前に「悲鳴」を上げているにもかかわらず、17世紀のオランダの海洋学者グロティウスが提唱した「海洋は無限だ」を前提にしており、具体的行動は今まだなされていない。
私は1000年、2000年先の人類の生存を考えるには、海洋の安全な保全無くしてあり得ないと確信している。とは申すものの、地球の7割を占める海洋に立ち向かう日本財団は「蟷螂の斧」(トウロウのオノ―カマキリのオノ。力がないこと)に過ぎない。
日本財団では30年前よりコツコツと海洋問題の専門家を育成し、今や世界で141カ国1300名の専門家を養成してきた。最近もスウェーデンの世界海事大学の笹川奨学生30名が日本研修に訪れた。アルゼンチン、アゼルバイジャン、バングラディッシュ、カンボジア、カメルーン、コロンビア、エジプト、ジョージア、ガーナ、インド、インドネシア、日本、ヨルダン、ケニア、マレーシア、モルジブ、モロッコ、ミャンマー、ナミビア、ナイジェリア、パキスタン、スリランカ、セントキッツネイビス、タンザニア、タイ、トルコ、バヌアツ、ベトナムと、28ヶ国の多土多材の専門家が訪れてくれた。多分、日本財団は世界の海洋関係の人材ネットワークでは、超一流の海洋学者を含め、世界有数ではないだろうか。
海洋国家を自負する日本は、世界の海洋問題解決へのリーダーシップを発揮すべきで、日本財団はその一翼を担いたいと日々努力しているところである。