「究極の医療サービス」
―在宅看護センター―
高齢化が急速に進む社会では地域・在宅ケアの必要性が高まり、看護師が果たす役割が一層大きくなる。そんな思いで2014年にスタートした日本財団在宅看護センター・起業家育成事業の第5期研修生の修了式が1月25日行われ、研修を終えた17人が新たに在宅看護センターの開設を目指すことになった。誰もが終末期を病院より自宅で過ごしたいと願う。そんな社会の実現に向け、在宅看護をさらに充実させたいと思う。
第5期研修生は東京〜沖縄まで10都府県の男性3人、女性14人。全員が今秋までに在宅看護センターや訪問看護ステーションを立ち上げる予定で、既に1〜4期生が開設した全国45ヶ所のセンターと合わせ、本事業で研修を受けた看護師による在宅看護センターは北海道から沖縄まで62ヶ所に広がることになる。「日本財団在宅看護ネットワーク」の一員として活発な活動に期待している。
事業は、少子高齢化が急速に進む中、子供の健康から高齢者の予防介護、終末期の看取りまで幅広く行う地域・在宅ケアの強化が急務との考えでスタートした。笹川記念保健協力財団の事業を日本財団が支援する形で進めており、8ヶ月にわたる研修の支援やセンター立ち上げに向けた建設費や備品、車両など可能な限りの支援を行っている。
修了式では喜多悦子・笹川記念保健協力財団会長が研修生1人ひとりに修了証を授与、2月1日に広島市南区で「しおり在宅看護センター」を開設する野田真由美さんが修了生を代表して「看護師が世界を変える誇りを持って、みんながみんなを支える社会の一端を担いたい」と力強く挨拶した。
筆者、喜多会長とともに記念撮影
同じ広島市安芸津町の武田康子さんは、昨年6月に始まった研修期間中に西日本豪雨災害で自宅が被災、近くの県立安芸津病院も浸水被害で一時、診療不可能になった。看護師仲間3人、事務方1人と協力して町内の空き店舗を改修、6月には訪問看護センターを立ち上げる予定で「人口減少で産婦人科医院がなくなるなど落ち込んでいる地域医療を仲間と支えていきたい」という。
センターを立ち上げれば、地域医療を支える専門家と経営者としての二つの役割を担い、当然、新たな苦労もある。そんな訳で「とにかく目配り、気配り、心配りを」と激励するとともに、「皆さんの努力で30年後、家庭で終末を迎えるようになれば、それこそ医療の究極のあり方」と期待を述べた。